2024年08月17日

第3481夜:第三の名物?【米子(鳥取)】(後編)

 日本酒に切り替えた。境港の千代むすび、鳥取の日置桜。どちらも辛口でシャープ。千代がより鮮烈な辛口だ。

 メインの握り降臨。桶に3貫×5種。目を剥いた。言わずもがなの圧巻。店頭のA型看板にも強調されていたが、圧倒的な自信が感じられる。肉系2貫、魚系2貫、そして穴子。どれもタレらしきものが掛かっており、シゴトが施されている。この点だけは江戸前だ。

 炙りたての鳥取産和牛サーロインから…。溶けた。もちろん寿しは大好物だが、牛、豚、鶏、羊などの獣肉系はあまり旨いと思ったことがない。変わり種だな、ぐらいの認識。むしろスルーする。「本当に旨い寿司を食べたことありますか?」という店のキャッチに首肯した。

 続いて、恐らく鳥取産和牛のローストビーフ。少しだけ山葵をチョン。噛みしめるほどに上品な赤身の旨味が溢れる。高貴なのに柔軟。艶やかにして貞操。まいりました。

 地酒で心宥め、3貫目の中トロ。文字通り、トロけた。シツこさ皆無。舌触りも夜の味。

 最後は穴子。何かトッピングされている。口に運ぶ…。濃厚なコクが加わった。全く新たな薬味である…。後から知ったが、クリームチーズだった。穴子寿司にクリームチーズをのせようなど考えつかない。センスであり、冒険であり、勝利である。 

 〆の粗汁と一緒に「米子茶碗蒸し」が。初耳だ。「牛骨ラーメン」「さばしゃぶ」はノボリはためき、取扱店マップ的なチラシもある。しかし、米子茶碗蒸しとは…。第三の名物か。

 蓋を外す。まあ、普通のビジュアル。具を味わう。旨い。カニ、鶏肉、三つ葉…。

 ほんのわずかだが、異質な食感がある。ただ、その正体が分からない…。理事長が解を我らに与えた。「春雨」だった。米子茶碗蒸しには春雨が入るそうな。

 面白い。発想も、食感も。そして、何よりも茶碗蒸しとしての完成度が高すぎる。これだけで無限に呑める。粗汁は薄味仕立てでその分アラの風味が浮きだっている。

 唐揚あたりまでは、まあ普通の創作系程度に思っていた。中盤から後半にかけて一気にまくってきた。満足感が駆け上がった。そろそろお開きに、というタイミングで、口直しでないガチのデザート。プリンである。

 私、49歳になって初めてプリンにハマっている。『めしばな刑事タチバナ』の影響が色濃い。「プリンの道」を歩むべく、デザートと対峙。

 前半のミニサイズの面影なし、手加減なしのプッチンプリンサイズ。いくつかのフルーツがトッピング。淡麗と濃厚が交互に押し寄せてきた。

 米子の夜。理事長チョイスの最高の店を堪能できた。理事長が帰り際、もう一軒あると我らに伝えた。それは、次年度のお楽しみにおっしゃる。粋な笑みである。もう一度、米子に来れる予感が湧きたってきた。

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眼福。

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試啜。

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桃源。

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感謝。

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2024年08月16日

第3480夜:第三の名物?【米子(鳥取)】(前編) 

 米子茶碗蒸し。牛骨ラーメン、さばしゃぶと並ぶ山陰の商都・米子の名物である(らしい)。

 2023年2月から米子入りした6回とも酒席をご一緒させて頂いたのが商店街K益理事長と鳥取県中央会M本氏。お店は毎回異なっていた。理事長が毎回セッティングして下さった。

 2回目のさばしゃぶは鮮烈。初経験。その時は気づかなかったが、最終回に我が定宿にチェックインした際、ロビーで「さばしゃぶマップ」発見。2か国語表記の気合っぷり。市内の7店舗が紹介され、私が堪能したお店もしっかり載っていた。

 1回目が地元超人気居酒屋、2回目がサバしゃぶ、3回目が焼鳥、4回目が焼肉、5回目がチーズフォンデュ、そしてフィナーレが「創作寿司」である。

 ジャズが流れるモダンな店内。すし屋とは1oも思えない。客層も若い。ワインの銘柄も充実。理事長はコース料理を予約されていた。6回の無事終了完遂を、生ビールの乾杯で祝う。

 先付3寸は帆立刺、生ハムとポテサラのイクラ3粒トッピング、烏賊刺。どれもシゴトが施され、何もつけずそのままで。

 掛け値なしに一口サイズ。ミニすぎて味が分からぬが、上品であること、手間がかかっていることは伝わった。烏賊など、このサイズをどうすれば細切りにできるのか。すごい技術だ。

 続いて「鰹とツキノワのカルパッチョ」。ツキノワ?白身魚のビジュアルだが、まさか熊じゃ…。店員さん曰く、マトウダイらしい。納得したが後から疑問も湧いてくる。なぜツキノワ?

 生2杯の後は白ワインに切り替え。海鮮と白ワインのマリアージュというヤツを試みる。

 銘柄分からぬだがグラスワイン、キリっと冷えてシャープな辛口。魚介に合いそうだ。

 3品目は唐揚。大ぶりである。熱々サクサクである。付け合わせのスィートコーンやおくらソテーも力強く旨い。

 とても美味しいが、疑問が湧いてきた。普通の創作料理どころか、定番系の店なのか。私は保守的ゆえ変化を好まない。定番なら定番でむしろ歓迎である。

 4品目に目を剥いた。量とすればお茶碗サイズのミニの3色丼。ウニ、イクラ、カニ。中央に卵黄が。崩して食べるようだ。私は崩さず、それぞれをツマミに白ワイン。

 カニ、日本海の旨味がムッチリ詰まっている。ウニ、蕩ける官能の悶絶。イクラ、青春のスプラッシュ。白ワインで追いかける。日本酒なら余韻が膨らむ。キリっと冷えた辛口の白は余韻をリセットする。次の一口を全く新鮮に味わえる。

 前半はツマミに、後半は卵黄を潰し口へ…。体内の奥の芯が疼いてきた。贅沢すぎる。

 ここで、シャーベット。もう、シメか。寿司は出てこなかったが、3色丼は圧巻。納得すると、デザートでなく「口直し」と店員さん。この寿司が出てくるという。

 二重の驚きである。シャーベットはユズ。2口サイズだが、本当に口が治った。〔次夜後編〕

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寿司屋に見えぬ外観。

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先付三寸。

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カルパッチョ。

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唐揚。

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テンション爆上がり。

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まさに、中締め。

posted by machi at 06:57| Comment(0) | 鳥取県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月15日

第3479夜:よってごしない本通り【米子(鳥取)】

 アーケード撤去。アーケード信仰が根強かった西日本の厳しい商店街における令和5年時点で私が感じる最大最強の課題である。撤去したくてもできない諸事情も共通している。撤去行為がスムーズになる支援を得るためは…こんなバカブログといえ、活字に残す躊躇いがある。

 メリット・デメリット両方あれど、空き店舗で困っている商店街にとっては百害。一方、空き店舗皆無で人通りもあり賑わって商品も売れる商店街にとっては、ほぼ百利に近い。

 一つだけ言えることがある。空き店舗に悩むアーケード商店街にとって最も手っ取り早い空き店舗解消策は、アーケードを撤去することである。

 2023年2月から計6回山陰の大阪こと米子へ足を運んだ。行政、組合員、電力会社、元国営通信会社等と折衝を重ね、未来の米子の為に撤去が実現。初訪問時点でアーケード撤去は確定し、夏ごろに解体工事が着工されていた。

 中心部の4つの商店街で構成する米子市本通り商店街振興協議会。その構成団体である四日市町商店街振興組合K益理事長が圧倒的なリーダーシップ。私が最後に訪れた11月中旬はアーケードの基礎と天枠は残っていたが天窓が撤去されていた。

 雨が降っていたため、遠くから見ればアーケード商店街のど真ん中を闊歩しているのに傘をさしているトリックアートな光景だ。

 アーケードを外せば「店が他より多い単なる道路」か「開放感のある明るい商店街」となるか。前者を選択するのなら私は二度と当地を訪れることは絶対にないし、御縁が復活する要素も皆無。後者であれば、私も歯車の一つに。米子本通りは、後者だった。

 おもてなし対策、歩いて楽しい環境整備、戸板市などのイベン強化…。80の具体策を6つの方向性に絞り込んだ。

 「ゆっくり ほっこり 本通り」

 「よってごしない 米子ほんどおり」

 10カ月の熟考期間を経て生まれた2つのキャッチコピー。米子らしい緩やかで優しくて寛容な旋律である。

 力強く引っ張るリーダーのK益理事長は美容師。御年古希だが、見た目は50歳にしか見えぬ。初めてお会いした際、私(当時49歳)と同世代と思い込んでいた。

 理事長にはミッション終了後、毎回異なる市内の名店に連れて行って頂いた。どの店も印象深く濃厚で絶品。理事長の気配り、男気、行動力、聡明さ、先見性…。漢のなかの漢である。

 理事長を底支える献身が、鳥取県C小企業団体中央会M本米子所長。氏とは私が20代前半の頃、神戸新長田でお世話になった。それから紆余曲折を経て四半世紀ぶりに邂逅。それも、同じミッションに挑む盟友として。2人の漢がいなければ私は米子に来ることもなかった。

 初回訪問時から気になっていたのが、駅前角地の貸店舗。そこには巨大なPOPで「テナント募集 超空室対策」。様々な接頭語としての「超」の使い方は数あれど、「超空室対策」は斬新の極み。しかし、当初は対策は進んでいなかったように見えた。

 私の最後の米子の朝。この前を通りかかったら絶賛内装工事中だった。焼肉屋がオープンするようだ。超空室対策、効果があったようである。寂しさを凌駕する爽やかな朝になった。

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撤去工事中のアーケード。屋根撤去故、雨が降るトリックアート状態(2023年晩秋)。

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見上げれば、天。

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最後の研修。

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超対策。

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超対策、成功。おめでとうございます。

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2024年08月13日

第3478夜:親子の絆【米子(鳥取)】

  親子。人間であっても動物であっても、「絆」はなかなか切り離せないものである。しかし、人間界においては絆が滅失する例も少なくない。では、ニワトリとタマゴの親子はどうか。

 <このみ>は米子入りの際、最も足を運んだ昼飯屋。半年間で6回のうち4回訪れた。あとは<ローダン>というラーメン屋。あと1回は何も食べる暇がなかった。

 米子のソウルフードは「牛骨ラーメン」らしい。「さばしゃぶ」も名物。さばしゃぶは2回目の夜の思う存分満喫した。

 <このみ>も我がバカ舌に自信はないが「牛骨」。どこにもその表記ないが、たぶんそうだろう。豚骨でも鶏ガラでも魚介でもない、独特の風味だからだ。すっかりハマってしまった。

 私が米子入りするのがたまたまだが何故か14時半前。飲食店がシエスタの時間帯である。この店はシエスタせず働きっぱなし。

 故に14時半や15時という微妙な時間でも、昼のゴールデンタイムを逃した地元の常連客がひっきりなし。注文に耳を澄ませると、焼き飯や定食が人気のようだ。

 過去3回は「チャーシューメン」「スタミナラーメン&お好み焼きセット」「チャーシューメン+唐揚&生卵トッピング」。最後の昼餐は…。米子へ向かう特急車中でひたすら何を頼むか考えていた。気づけば2時間を経過し、米子駅に着いていた。

 メニューを見る。チャーシューメンに気持ち9割傾いたが、土壇場で定食が捲ってきた。そして、差した。「唐揚定食」をライス大盛で注文。そして、ラーメントッピングメニューである生卵を別皿で追加。私も常連風の頼み方ができるようになってきた。

 店内のスポーツ新聞に目を通していると、若い男性がご来店。焼飯をご注文。続いて女性の独り客で焼飯に紅生姜多めというツウっぷり。常連の風格に目を細めていると、ブツ降臨。

 巨大な唐揚が6ヶ、ライスも大盛どころか特盛サイズ。生卵の黄身が眩しい。鶏唐揚と生卵。親子丼ならぬ親子定食である。

 まずはスープ…。嬉しくなった。牛骨ラーメンのスープのようだ。旨い。スープが啜りたかったので、結果的に定食は大正解。

 唐揚、何もつけずに旨い。ジューシーで味が濃い。ライスに合う。生野菜に添えられたマヨネーズや卓上の一味も駆使しながら、大きなサイズを6ヶ平らげた。箸休めの昆布佃煮もシブい役割を果たしている。

 ライスが3分の1になった。卓上の醤油を生卵に垂らし、軽くかき混ぜてライスにオン。一気に啜り込む…。ほんの少しの違和感を感じた。その後、違和感が確信に変わった。醤油でなく、ソースだった。

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15時頃の救世主。

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ボリューム満点。

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2024年08月12日

第3477夜:100年後の市場デザイン【小倉(北九州)】

 『旦過「食」のまちデザインエリアプラットホーム』。旦過市場役員、旦過総合管理運営竃員、国立大学教授、超人気一級建築士、福岡県警が集う、50年後、100年後の旦過市場を考える、後世に伝えるための会(プラットホーム)である。事務局は北九州市建設局旦過チーム。

 その第1回目の会議5分前、市長閣下が降臨。一同起立。拍手でお迎えする。私も起立。

 このプラットホームに私のようなモグリでヨゴレのまちづくり屋も末席を許された。しかし、座り位置が末席どころか、私の斜め前が市長、真正面が管理運営会社社長、右隣が市場商店街会長。最前列というか、超アリーナ席というか。戸惑ってしまう。

 私は役割を与えられていた。司会による一通りの概略説明の後、発言の口火を切ることだ。

 私の背後にはマスコミが数社。TVカメラも数台。私の顔や発言などは放映されないだろうが、市長の斜め前ゆえ背中が写り込んだかもしれない。ちなみに、何を話したかあまり覚えていない。たいした発言でなかったことだけは覚えている。

 メインは「旦過のおはこ」。市内の大学生が旦過の食材でお弁当を作るという企画。なかなかに映える。現物はなかったが、旦過の未来を、もしかすると50年後も旦過で買物しているかもしれない大学生の取組は貴重で重要だ。

 この夜がこの日の7つ目のご公務という市長。バイタリティが凄まじい。笑みを絶やさず理知的で、一度会えばファンになるという事前情報そのまんまの方。私もファンになった。

 3年後のことも予測不可能なのに、30年後、50年後、100年後のことなど全く分からない。コロナでキャッシュレスと無人化、飲食店に限らず店舗内での接触機会が激減した。この流れは止まることなく、行きつくところまで行ってしまうだろう。

 この世から「硬貨」「紙幣」が無くなっているかもしれない。スーパーどころかショッピングモール全体が無人化されているかもしれない。すべての労力を人間以外のナニカが提供しているかもしれない。商店街や市場の完全ネット化が当たり前の世かもしれない。

 旦過に限らず全世界の市場、商店街の100年後はどうか。「対面販売」「人間が接客」という極めて貴重な経験ができる「非日常のテーマパーク」と化している気もする。

 要するに、未来はガンガンに明るくないが、絶滅することなく貴重な存在として世界遺産に登録されている可能性も無きにしもあらずだ。

 終了後、旦過総合管理運営会社M尾社長らと5人で<黒船>。M尾社長とは数年ぶりにゆっくり吞んで話す。それから2時間半後、新たに3人合流。うち一人は今夜の司会者で、泥酔している。転げたり、壁に頭をぶつけたり、森O会長に抱き着いたりと大暴れ。

 このような無頼の事務局がある限り、旦過の将来は100年後も安泰である。

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日曜の夜の安堵。

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秋の味覚。

posted by machi at 09:58| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする