日本酒に切り替えた。境港の千代むすび、鳥取の日置桜。どちらも辛口でシャープ。千代がより鮮烈な辛口だ。
メインの握り降臨。桶に3貫×5種。目を剥いた。言わずもがなの圧巻。店頭のA型看板にも強調されていたが、圧倒的な自信が感じられる。肉系2貫、魚系2貫、そして穴子。どれもタレらしきものが掛かっており、シゴトが施されている。この点だけは江戸前だ。
炙りたての鳥取産和牛サーロインから…。溶けた。もちろん寿しは大好物だが、牛、豚、鶏、羊などの獣肉系はあまり旨いと思ったことがない。変わり種だな、ぐらいの認識。むしろスルーする。「本当に旨い寿司を食べたことありますか?」という店のキャッチに首肯した。
続いて、恐らく鳥取産和牛のローストビーフ。少しだけ山葵をチョン。噛みしめるほどに上品な赤身の旨味が溢れる。高貴なのに柔軟。艶やかにして貞操。まいりました。
地酒で心宥め、3貫目の中トロ。文字通り、トロけた。シツこさ皆無。舌触りも夜の味。
最後は穴子。何かトッピングされている。口に運ぶ…。濃厚なコクが加わった。全く新たな薬味である…。後から知ったが、クリームチーズだった。穴子寿司にクリームチーズをのせようなど考えつかない。センスであり、冒険であり、勝利である。
〆の粗汁と一緒に「米子茶碗蒸し」が。初耳だ。「牛骨ラーメン」「さばしゃぶ」はノボリはためき、取扱店マップ的なチラシもある。しかし、米子茶碗蒸しとは…。第三の名物か。
蓋を外す。まあ、普通のビジュアル。具を味わう。旨い。カニ、鶏肉、三つ葉…。
ほんのわずかだが、異質な食感がある。ただ、その正体が分からない…。理事長が解を我らに与えた。「春雨」だった。米子茶碗蒸しには春雨が入るそうな。
面白い。発想も、食感も。そして、何よりも茶碗蒸しとしての完成度が高すぎる。これだけで無限に呑める。粗汁は薄味仕立てでその分アラの風味が浮きだっている。
唐揚あたりまでは、まあ普通の創作系程度に思っていた。中盤から後半にかけて一気にまくってきた。満足感が駆け上がった。そろそろお開きに、というタイミングで、口直しでないガチのデザート。プリンである。
私、49歳になって初めてプリンにハマっている。『めしばな刑事タチバナ』の影響が色濃い。「プリンの道」を歩むべく、デザートと対峙。
前半のミニサイズの面影なし、手加減なしのプッチンプリンサイズ。いくつかのフルーツがトッピング。淡麗と濃厚が交互に押し寄せてきた。
米子の夜。理事長チョイスの最高の店を堪能できた。理事長が帰り際、もう一軒あると我らに伝えた。それは、次年度のお楽しみにおっしゃる。粋な笑みである。もう一度、米子に来れる予感が湧きたってきた。
眼福。
試啜。
桃源。
感謝。