2020年10月17日

第2543夜:浜松駅弁「三四郎御辨當」【駅弁】

「三四郎御辨當」。1854年(明治21年)浜松で創業した自笑亭様の力のこもった駅弁である。

 三四郎とは、某柔道マンガの主人公ではなく文豪・夏目漱石氏の代表作「三四郎」(明治41年)の主人公・小川三四郎氏がモチーフ。熊本から激変する東京での生活を夢見て一人ぼっちで上京する青年の成長を描いている。

 レトロなパッケージに目を奪われた私は、浜松駅で購入し、新幹線に乗り込んだ。

 「……(思いっきり中略)浜松で二人とも申し合わせたように弁当を食った。食ってしまっても汽車は容易に出ない。…(思いっきり後略)」。

 私はこの名作古典は未読だが(自慢できないが)、パッケージや容器の中のウンチク紙に記載された作品冒頭のシーンである。

 この「弁当」は自笑亭の弁当であるそうだ。なぜなら、当時浜松駅で弁当を販売していたのは自笑亭のみ。作者の夏目氏も食べたと推測されるらしい。たっぷりの自信と一抹の弱気が入り混じった解説が心に沁みる。

 当時の駅弁資料は第二次世界大戦ですべて焼失し、詳しい中身は謎のままだが、明治38年に発行された雑誌を基に当時浜松駅で販売されていたと思われる駅弁を再現。その雑誌では浜松駅弁は「細鰻・玉子焼・蒲鉾・河魚佃煮・蓮根・椎茸を副食」と書かれていたそうだ。容器も木の折の2段重ねというこだわりぶりである。

 弁当を開いた。一の重はびっしりのおかず。二の重は清々しいまでに清冽な日の丸弁当だ。

 煮物(蒟蒻・蓮根・がんもどき・椎茸・人参)は1ヶづつがとにかくデカくて味が濃い。玉子焼きは大きくて分厚いものが2ヶ入っており、甘さは控えめだ。

 煮豆の甘さも濃厚だが、一粒づつ味わえるので酒のサカナとして長持ちする。わかさぎの佃煮は3本。これまた味が濃く、煮汁が口で弾ける。タクアンも実に分厚い。

 細切りされた鰻の蒲焼は酒のサカナに良し、ご飯のおかずに良しというスグレモノ。木の折なので白メシもいつも以上に旨く感じられる。

 とにかく、全体的におかずが大きくて味が濃い。パッケージでは現代風の味づけとしているが、なかなかのパンチ力だ。蒲鉾と梅干しが見事な箸休めを演じている。

 静岡限定なのかもしれぬが、緑茶缶チューハイが駅構内売店で売られている。これが実に濃厚駅弁に相応しい。口の中をサッパリと洗い流し、フレッシュな気持ちをキープし続けている。

 松山駅で味わった「坊っちゃん弁当」「マドンナ弁当」をはじめ、未食だが花巻駅には宮沢賢治氏をモチーフにした駅弁もある。日本の古典名作と駅弁のコラボは、味ももちろんだがそのウンチクが最高のスパイスである。

111208三四郎御辨當@浜松.JPG

(FB)
今月末(2020年10月下旬)に浜松へ行くことに。記憶を手繰るべく浜松ネタの死蔵ストックを引っ張り出す。ガラケーで撮影したと思しき画像を確認すると、2011年12月。1gも覚えておりませぬ。
posted by machi at 15:07| Comment(0) | 駅弁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月12日

第2441夜:伊丹空港「空のすき焼き御膳」【take-out】

 「空のすき焼き重」。伊丹空港で捕獲したすき焼き系空弁である。

 空弁というより駅弁世界において`すき焼´は定番ジャンルの一つである。特に地元にブランド牛が存在する地域はかなりの高確率で捕獲可能。肉系駅弁はブランド牛を甘辛く煮込んだ「牛肉弁当」と親しまれているが、それが派生すると第2グループが「焼肉弁当」「すき焼弁当」となる。第3グループは「ステーキ弁当」「しゃぶしゃぶ弁当」か。
 
 すき焼弁当は冷めても旨いところに大きな特徴がある。しかし、幾分味が単調になる弱点がある。箸休めの漬物が欠かせない。

 ある昼。伊丹空港で前述の「空のすき焼御膳」を比較して伊丹空港サクララウンジに持ち込んだ。空弁コーナーでは最高値の1,340円。中身が分からないがズシリと重い。調整元(販売者)はライトハウス様。以前捕獲した同じ調整元の空弁「空の肉重」の安定感とコスパに空弁を再評価せねばならぬ機運が私の中だけで目覚めていた。

 パッケージを開けた。……。目を見開いた。口が半開きになった。宝石のごとき玉手箱だった。少女漫画のごとく私の瞳は煌めいていたかもしれない。しかし少女漫画では絶対に出てこないコテコテ神戸オヤジの私は居てもたってもいられなくなり、ラウンジ内の無料生ビールコーナーへ猛ダッシュ。キンキンの冷えた生を一気に半分呑み干して、心を落ち着かせた。

 普通のすき焼弁当なら、肉、糸蒟蒻、牛蒡を甘辛く抜詰めたものが敷き詰められている。一面褐色の海だ。せいぜい人参の朱がアクセントになる程度。ところがこの空弁、恐ろしいほど具だくさん。定番具材に加え、舞茸、筍、栗、蕗……。パプリカの赤黄が目にも鮮やかだ。黒毛和牛肉もたっぷりである。小さめにカットされた具材が絶妙の酒のツマミになる。

 サイドも気合が入っている。ほうれん草白和え、出汁巻玉子、サンマの巻き物、鶏炭火焼、肉団子、ウィンナー……。桜漬の酸っぱさが舌を引き締める。さすがに手を出さなかったがデザート(たぶん抹茶わらび餅)までついている。

 空港内の飲食は一般的に下界より高値だが、この空弁は通常の駅弁よりも、外界の店よりコスパボリューム申し分なし。空弁だけでなく私が実食済のすき焼弁当の中で最高最強の酒のアテ弁当である。

 生があっという間に2杯無くなった。ご飯はそのまんま、チビチビつまんだオカズは半分以上残っている。ウィスキーに切り替えようか、それとも生か。生を半分呑んでからトマトジュースを注ぎ、レッドアイ作戦に切り替えるか。

 戦略を練っていると、搭乗時間が迫ってきた。

 私は涙を堪えて一気に白飯をかきこんだ。この空弁、一時間は持つ。最近の空弁の充実ぶりに改めて再検証せねばならない。

200512空のすき焼き御膳@伊丹空港(2015年8月実食).jpg
2015年8月実食(らしい。1gも覚えておらず)。
posted by machi at 07:54| Comment(0) | 駅弁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月08日

第2440夜:伊丹空港「泉佐野名物サンド」【take-out】

 イヌナキン。大阪府泉佐野市のイメージキャラクターらしい。ゆるキャラというより、超人。我ら80年代少年のオッサンたちをカギの頃に興奮の坩堝に陥れたあの『キ●肉マン』原作者・●でたまご先生がデザインされている。実に格好いい。

 日本中にゆるキャラを含めたイメージキャラは何体活躍しているのか存じ上げないが、ゆ●たまご先生デザインのキン肉超人キャラはそれほど多くないだろう。アン●ンマンのやなせ●かし先生が生み出されたご当地キャラは多いとお聞きしている。

 ちなみに北九州市黒崎地区で酔いつぶれると「キン`内´マン」に強制変身させられる。私も確か一度変身した(させられた)ことがある。

 イヌナキンと私の出会いは、伊丹空港の売店。朝7時半ごろ手荷物カウンターを潜りぬけ、腹ごしらえを試みた。飛行機の時間は8時ごろ。30分の持ち時間だ。

 頻繁に飛行機を利用する私はサクララウンジ使い放題のいつの間にやらサファイア会員に。ビールやウィスキーは午後から仕事を控える身として御法度だが、トマトジュース、珈琲、各種ジュースも飲み放題。のんびり寛ぐことができる至福の空間だ。

 呑み物と場所はサクララウンジで。食料を何にしようか。オニギリ、サンドイッチ、寿司……。売店の空弁コーナーに足を運んだ私に、圧倒的な存在感で飛びこんできたパッケージがあった。小学校時代夢中になったキン肉超人がプリントされている。

 思わず手に取る。`泉州まるかじり´とある。商品名は「泉佐野名物サンド」。あまりにも直球なネーミングにクラクラしながらレジへ。735円という価格に思わず目が覚める。

 泉佐野名物サンドイッチなのか。それとも泉佐野の名産をパンに挟んだという意味だろうか。泉佐野は泉州地区と思われる。泉州名物といえば私は水茄子しか思い浮かばない。水茄子の漬物は大好物だが、パンに合うのだろうか?期待よりも不安が大きくなる。

 珈琲とトマトジュースをデスクに置き、パッケージを眺める。調整元はオリエンタルベーカリー様。超人名は「一生犬鳴!イヌナキン」。……。何のことかサッパリ分からない。胸には泉佐野市の市章と思しきマークが刻みこまれている。なぜか豚のような耳がある。

 パッケージをさらに読みこむ。全然存じ上げなかったが、泉佐野は「犬鳴豚」というブランド豚を有するらしい。この豚肉をベースに泉州たまねぎ、泉州キャベツ(12月〜4月使用という細かさ)、生姜焼のタレ(地タレ)らしい「もんくたれ」を使用そうだ。「文句たれ(文句ばかり言う輩)」と掛け合わせているところが、いかにも泉州らしい。

 産地偽装表示が横行する中、自信を持って進めているところが頼もしい。肝心の味は……。マヨネーズがびしっと効いている。豚の甘味とキャベツの甘味、鮮度、歯ごたえ、生姜焼タレの甘味が渾然。パワフルな甘味のコンチェルトだ。思った以上にボリュームもあった。トーストサンドにするともっと旨いだろうが、文句をタレず黙々といただいた。

200508泉佐野名物サンド@伊丹空港.JPG

(付記)
今回の空弁ネタもテイクアウト応援ゆえ死蔵ストックから。恐らく2013年〜14年ごろ実食したと思しいが記憶皆無。
posted by machi at 07:19| Comment(0) | 駅弁 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする