東京駅18番ホーム14号車付近。ウワサでは広大無比な迷宮・東京駅構内において2か所しかない立ち食いそばがあった付近である。「あった」という表現通り、2023年11月時点では存在しない。その跡地には「海苔弁当」専門店に入れ替わった。
コロナ禍は休んだり営業時間を短縮したりだったが、18番ホームで熱々を提供していた。駅そばマニアの間では全国的に有名な「かつ煮そば」があり、カツ丼もテイクアウトできるのでそのまま新幹線車内に持ち込んで熱々に食らいつける稀有な経験を提供してくれていた。季節ごとのかき揚げそばも四季折々で印象深い。
18番ホームは東海道新幹線の一角。私が知る限り、東海道新幹線には3本ホームあれど、ここだけ立ち蕎麦があった。コロナ禍でかなりの数があった売店も間引かれ、3分の2は5類になり半年近くなった2023年11月現在も閉まったまま。地味に不便である。
私はほか弁系テイクアウトでは99%「のり弁」。安さ、旨さ、ボリューム…。他の追従を許さない。駅弁においてはのり弁の占める比率は決して高くない。むしろ稀と言ってよい。
その中で郡山駅の調整元<福豆屋>様ののり弁シリーズは孤軍奮闘の趣。味も申し分なし。このバカブログでも以前書き散らしたはず。
ある秋の正午過ぎ。私の乗る新幹線がちょうど東京駅18番ホームに入線。14号車あたりに乗っていた。下車するとのり弁屋が聳えていた。
この日は早朝に小倉を発ち、東京で東北新幹線に乗り換え郡山を経由して会津若松へ向かう。新幹線乗換時間は20分。朝から何も食べておらず空腹である。
その24時間前。小倉へ向かう新幹線車内で新神戸駅弁「姫路城鶏のり弁」を腹に入れていた。世界遺産登録30周年記念である。
新神戸駅は淡路屋様とまねき食品様の2大調整元が東西の横綱。駅弁も大充実で新製品も頻繁ゆえチェック欠かせぬ。その中でも私はこの駅弁を選んだ。酒のツマミには具沢山の幕の内系を好むが、酒呑まぬ朝昼は単品一本勝負。のり弁が本能的に好き故か、見かけたら外せぬ。
巨大な竹輪磯辺揚げ、鶏照焼をメインに副菜も充実。人参の形がお城な点がこの駅弁の矜持か。喰い終わって気づいたが、ほぼ1年前、全く同じ駅弁を実食していた。
それから24時間後、18番ホームでのり弁を捕獲すること。駅弁売場は数あれど、のり弁はココ限定。それ以上に、営業時間が朝から14時まで。14時終わりはハードル高く、今まで御縁が無かった大きな理由だ。
何種類かあるようで、すでに2種類のみ。私が選んだのは「季節限定旅海苔弁(鰤照焼)」。1140円は駅弁としては普通だが、ほか弁なら3ヶ以上買える。3倍の価値を伝えて頂きたい。
東北新幹線上野駅を超えたあたりでフタを外す。「お品書き」があった。豪華な駅弁ではたまに入っているが、のり弁にお品書きなど初めて。鰤照焼、圧倒的な存在感を放っている。
「米」は山形県庄内平野で本間さんが丹精込めて育てたコシヒカリ、らしい。
「海苔」は香り豊か、口どけ滑らかでとろけるような甘みのある有明産、という。
「魚」はこだわり熟成で、旨味を最大限に引き出した焼き魚、とある。
「唐揚げ」は熟成仕上げ、肉の旨味をはっきり感じる鶏唐揚げ、だそうだ。
「副菜」はラー油でピリ辛に仕上げた、牛蒡の風味を活かしたきんぴら、ときた。
「漬物」は塩分8%仕立て、爽やかで食べやすい紀州産南高梅、と結んできた。
照焼に齧りつく…。味が濃い。濃厚である。噛みしめると旨味が弾ける。すかさず海苔メシで追いかける。
やるではないか。お品書きを封入するだけの自信に首肯。酒のサカナにも好適。しかし、もし駅ホームに3大ほか弁チェーンがあれば、恐らくそこでのり弁を買ってしまうだろう。タルタルソースを追加して。
新神戸駅で捕獲。
東京駅新幹線18番ホーム。
捕獲。
お品書き。
ゴージャス。
東北新幹線へ向かう途中、「かぬまシウマイ」ポスター発見。