エニマクリン。朝食、昼食、間食、夕食のレトルト四重奏で構成される大腸検査食である。4食?入りで1320円。江崎Gリコ様の作品である。
私は年の1度の健康診断、3ヶ月の1度の血圧検診を受けている。20代の頃から同じ病院、同じ先生。2024年8月現在50歳の私を20年以上の主治医。健康診断では胃カメラである。
ある真夏の3ヶ月に1度の血圧検診の際、主治医の先生から大腸検査を勧められた。もう50歳なんだし、胃カメラしか飲んだことないのならなおさらと。
病院は盆でも暦通り。盆時期は出張もない。ひたすら自宅に引き籠るかファストフードチェーン、コーヒーショップをハシゴしながらPC猿打するだけ。何の予定もない。大腸検査が2024年夏の最大のビッグイベントに。
看護師さんから前日と当日の注意事項を詳しく説明された。検査の際にポリープなど見つかればその場で切除するから念のためパンツの替えと1泊する心準備をに念押しされた。
大腸検査を翌日に控えた真夏の盆の朝。注意事項を再度読む。朝食、昼食、間食、夕食の合間に、それぞれ時間を決められて水を400ml以上飲むようにとある。夕食は20時までに終わらせねばならず、21時には下剤を飲まねばならない。その下剤も事前に手渡されている。食事は冒頭のエニマクリンをすべて時間通りに食べるだけ。迷わない。ぶれない。便利である。
朝9時。朝食。「鯛がゆ」のレトルトをお椀に移してレンジでチン。口に運ぶ…。鯛の香りがする気がする。そもそも粥などいつ以来か。味が薄い。塩っ気がない。
冷蔵庫を開けて生卵を放り込んで醤油を垂らすか、漬物と味わうか…。ふと気づいた。恐らく、勝手なアレンジは許されないのだろう。粛々と食べ終えた。気分は禅僧である。
朝10時。水を500mlペット一気飲み。真夏なのでごくごく飲めるが、冬はキツいかも。この日は一歩も外出せずPCに向かう。単調な1日のアクセントがレトルト検査食である。
栃木県代表石橋高校の甲子園1回戦快勝に歓喜してすぐの13時半、昼飯。和風ハンバーグと白がゆ。食欲湧かぬ故、カレー皿に2種のレトルトを移し、見た目だけでもカレー風に。
レンジで温める。白がゆに和風の餡が絡んでなかなかの妙味。ハンバーグらしき物体もまあまあの満足感。美味しゅうございました。
14時と16時にそれぞれ再び水500ml一気飲み。ビールやチューハイなら何の苦もないが、水だけはなかなかノドに通らない。
17時、間食。グリコらしく「ビスコ」とゼリー。ビスコを口にするのはいつぶりか。ごくまれにスナックのチャームで出てくることを思いだす。
このビスコが前日に口にできる最後の固形物。知らなかったが、ビスコのキャッチコピーは「生きて腸に届く」。しみじみと胃と心に響いてくる。
朝から粥ゆえ、ビスコの甘さとほのかな塩気、バリバリした歯ごたえに感動。こんなに濃厚で旨いのか。普段口にしないチューブゼリーもリンゴ味で蕩けるように舌とノドを滑った。
そして18時、再び水を500ml。
19時ごろ最後の晩餐は「コーンポタージュ」。茶碗に移し替えて温める。清貧である。そして、20時に水を500ml飲む。アルコールは厳禁。アルコールのない夜など記憶にない。
この日の最後のミッションは21時。3種類の下剤服用である。
私のような不摂生野郎は大腸検査食を定期的に取り入れる方が健康になりそう。自由業者ゆえ時間に束縛されない利点はあるものの、きっちりと時間単位ですべきことを指示される社畜っぷりもたまには悪くない。人間は、完全な自由よりも適度な拘束が必要なようである。
大腸検査前日の食事。
朝食。
昼食。
間食。
夕食。
(付記:ここからは少々キタナイのでご注意下さい)
翌朝は2回。昨晩はたしか5回ほど。老廃物がどんどん消えていく。下剤恐るべし。
8時に病院。呑みにくいトロっとした塩水のような生ぬるい下剤を1時間かけて呑む。3時間後に合格が出るまで8回。水状態、色も限りなく透明に近いイエローでなければならない。都度看護師さん(若い女性)から便の状態を確認され、合否判定される。かなり恥ずかしい。
ようやく合格。妙に嬉しい。ズボンとパンツを脱いで前でなく後ろが空いた使い捨て短パンに着替える。オトコゆえ前空きパンツしか履いたことなし。後ろだけとは妙な感じだ。
ベッドに横になる。間髪入れずマンホールに内視鏡が。目の前の画面に映像が思いっきり映る。我がマンホールをドアップで初めて目視。しみじみ介護脱毛の重要性を思い知らされる。
内視鏡が大腸を這っていく。処男喪失。しかし、胃カメラより全然ラク。途中寝てしまい、いつの間にか内視鏡を抜かれていた。しかし、内視鏡で腸内をこねくり回されている時が一番便漏れしそうになる。力を抜けと言われるが、抜けるものではない。大惨事確実である。
1時間かけて飲む下剤。