SFや伝奇、ホラー小説においても、邪馬台国の謎に挑む作品が輝きを放っている。
■『魔獣狩り』シリーズ(夢枕獏 祥伝社ノンノベル:たぶん全25巻 1981年〜2010年)
30年ほど連載され続け、2010年秋に完結した外伝を含め全25冊に及ぶ超大作。人の精神に侵入できるサイコ(精神)ダイバーが活躍する伝奇SFエロバイオレンスアクションだ。
最初は空海のミイラを巡る争いだったのが、邪馬台国の財宝と「人をよく惑わす」とされる鬼道の謎、そして邪馬台国の比定地までが明かされる。国生みの謎を始め、空前絶後のスケールで展開され、鬼道を司る女性も登場する。ちなみに邪馬台国は●●山の付近だそうだ。
夢枕氏の伝奇小説では『陰陽師』シリーズ(文春文庫)、『闇狩り師』シリーズ(徳間ノベルズ)、『キマイラ』シリーズ(朝日ソノラマノベルズ)、『涅槃の王』シリーズ(祥伝社文庫)など傑作ぞろいだが、密教の世界観を基に宇宙や進化の謎を解き明かした日本SF大賞受賞作『上弦の月を食べる獅子(上・下)』(ハヤカワ文庫)は、私の読書史上ベスト5に入る大傑作だ。
■『カムナビ(上・下)』(梅原克文 角川ホラー文庫:1999年)
縄文時代では製作不可能なブルーガラスの土偶が茨城県で発掘される。ブルーグラスを瞬時に作る高温を得るための技術とは何か。神の火なのか…。考古学者が様々な陰謀に巻き込まれていくSF伝奇ホラーで、文庫上下巻1300ページの力作だ。
『魏志倭人伝』では、邪馬台国は冬でも生野菜を食べ、薄着で1年中暮らしている極めて温暖な亜熱帯風の気候として描かれているが、3世紀は地球全体で寒冷期(プチ氷河期)だったそうである。なぜ、邪馬台国だけが亜熱帯なのか。局地的気温上昇にスポットを当てている。
あまりにも壮大な宇宙観と本当っぽい裏付けの科学の世界に圧倒され、腰が抜けそうになること必至。その謎はSF伝奇なので御一読あれ。邪馬台国は●●にあったそうである。
■『邪馬台洞の研究』(田中啓文 講談社文庫:2003年)
私立伝奇学園高校の敷地内には、侵入絶対禁止の「常世の森」があり、そこに「卑弥呼の石」がある。そして、邪馬台国の財宝が眠っているという。主人公が所属する民俗学部員やヤクザ、タイ人留学生を交えて大騒ぎ。その顛末は脱力感必至。全3作を数える連作短編集の1編だ。
ラストシーンで、探偵役の少年が邪馬台国は●●にあったとする。昔々、天皇という呼称の前は「大王(おおきみ)」と言われていたそうだ。卑弥呼は「HIMIKO」。逆から読むと「OKIMIH」。オオキミというのだ。
田中氏はジャズ&本格ミステリーシリーズ『落下する緑』『辛い飴』(いずれも創元推理文庫)、傑作青春落語ミステリーシリーズ「笑酔亭梅寿謎解噺」(集英社文庫1〜3)などが素晴らしい。特に梅寿シリーズは、読み終えるのがもったいないと思うほどの傑作だ。〔次夜その九〕
2011年06月27日
2011年06月24日
第261夜:卑弥呼は滋賀県守山市出身【Book】(その七)
井沢氏によると、卑弥呼は殺されたそうだ。卑弥呼が死んだ紀元248年、皆既日食があった。太陽が隠れるということは一大事。他国と戦争中であり、皆既日食で兵の士気もがた落ちし、他国に負けてしまう。祭祀者・卑弥呼は役立たずとして殺された。
この作品の冒頭1ページ、死の間際の被害者が友人の主人公に電話し、「ヒミコは殺された」という謎の言葉を残して息を引き取る。しかも密室で殺害されていた。主人公の職業がトレジャーハンターという設定も独特だ。
その密室トリックにも天の岩戸伝説が色濃く反映されており、脱力感ただようまさかのバカトリックに感動すら覚える。クライマックスにおける、主人公と犯人の駆け引きなど、まさかそれはないよな、と思っていた展開そのままで、ただただ仰天した。
この作品は発表当時の時代背景のためか、他のミステリーと比較し、吉野ヶ里遺跡をかなり重んじている。九州説を標榜する井沢氏が比定する邪馬台国は、●●県●●市。おや、某作家と同じ説である。
井沢氏の江戸川乱歩賞受賞デビュー作『猿丸幻視行』(講談社文庫)は傑作中の傑作。歴史ミステリー、暗号、タイムトラベル、不可能犯罪に目がないマニアはぜひ。
■『箸墓幻想』(内田康夫 角川文庫:2003年)
浅見光彦シリーズで無敵の人気を誇る大御所渾身のトラベルミステリ。発表時期も2000年代と新しく、九州説を蹴散らし畿内説を押している。
タイトル通り、箸墓とは奈良県内の巻向遺跡の箸墓古墳。では、箸墓付近が邪馬台国なのだろうか…。箸墓古墳や巻向遺跡には、何が眠っているのだろうか…。
内田氏の文章はどこまでもクセがなく、流麗で美しい。エログロ描写は皆無だ。浅見氏の女性登場人物恋愛っぽいシーンなど、読んでいて恥ずかしくなるほどプラトニックだ。
爽やかなでオトコ前でお金持ちの浅見光彦氏だが、氏の旺盛すぎる好奇心と大きなお世話的おせっかいが事件をさらに複雑にする。一昔前のトレンディドラマのような展開が、後半は一転して昼ドラマのようなドロドロ劇に変貌する展開の落差がすごい。
この作品に限らず、邪馬台国ミステリー全般に言えることだが、小説の本文中に学者や作家たちが実名で頻繁に登場するので、虚実が分からない。ゴッドハンド事件のシーンなど、そんなバカ事件もあったなと懐かしさに浸ることができた。
内田氏の浅見シリーズを読んだのは思いっきり久々だったが、浅見光彦氏よりいつの間にか私の方がオヤジになっていたことに最も驚いた(浅見氏33歳、私37歳)。〔次夜その八〕
この作品の冒頭1ページ、死の間際の被害者が友人の主人公に電話し、「ヒミコは殺された」という謎の言葉を残して息を引き取る。しかも密室で殺害されていた。主人公の職業がトレジャーハンターという設定も独特だ。
その密室トリックにも天の岩戸伝説が色濃く反映されており、脱力感ただようまさかのバカトリックに感動すら覚える。クライマックスにおける、主人公と犯人の駆け引きなど、まさかそれはないよな、と思っていた展開そのままで、ただただ仰天した。
この作品は発表当時の時代背景のためか、他のミステリーと比較し、吉野ヶ里遺跡をかなり重んじている。九州説を標榜する井沢氏が比定する邪馬台国は、●●県●●市。おや、某作家と同じ説である。
井沢氏の江戸川乱歩賞受賞デビュー作『猿丸幻視行』(講談社文庫)は傑作中の傑作。歴史ミステリー、暗号、タイムトラベル、不可能犯罪に目がないマニアはぜひ。
■『箸墓幻想』(内田康夫 角川文庫:2003年)
浅見光彦シリーズで無敵の人気を誇る大御所渾身のトラベルミステリ。発表時期も2000年代と新しく、九州説を蹴散らし畿内説を押している。
タイトル通り、箸墓とは奈良県内の巻向遺跡の箸墓古墳。では、箸墓付近が邪馬台国なのだろうか…。箸墓古墳や巻向遺跡には、何が眠っているのだろうか…。
内田氏の文章はどこまでもクセがなく、流麗で美しい。エログロ描写は皆無だ。浅見氏の女性登場人物恋愛っぽいシーンなど、読んでいて恥ずかしくなるほどプラトニックだ。
爽やかなでオトコ前でお金持ちの浅見光彦氏だが、氏の旺盛すぎる好奇心と大きなお世話的おせっかいが事件をさらに複雑にする。一昔前のトレンディドラマのような展開が、後半は一転して昼ドラマのようなドロドロ劇に変貌する展開の落差がすごい。
この作品に限らず、邪馬台国ミステリー全般に言えることだが、小説の本文中に学者や作家たちが実名で頻繁に登場するので、虚実が分からない。ゴッドハンド事件のシーンなど、そんなバカ事件もあったなと懐かしさに浸ることができた。
内田氏の浅見シリーズを読んだのは思いっきり久々だったが、浅見光彦氏よりいつの間にか私の方がオヤジになっていたことに最も驚いた(浅見氏33歳、私37歳)。〔次夜その八〕
2011年06月23日
第260夜:卑弥呼は滋賀県守山市出身【Book】(その六)
続いて、大御所作家が挑んだ殺人事件付き邪馬台国ミステリーをご紹介する。
■『邪馬台国殺人旅情』(斎藤栄 祥伝社文庫:1988年)
九州北部の邪馬台国の比定地とされる4地域を回る旅行ツアーで起こる連続殺人。ちなみにその4地域は、「博多」「筑後大門」(福岡県山門郡瀬高町の女山)、「島原」(長崎・諫早も含む)、「宇佐」(大分県宇佐市)。たまたまツアーに参加した警視庁の警視正が名探偵ぶりを発揮。
300ページちょっとの間に殺人未遂もいれると5件発生する大盤振る舞いだ。事件の謎を解く手掛かりは魏志倭人伝を用いた暗号。天文学的確立の運命と偶然の積み重ねで極めて都合よく事件が進み、あっさりと解決する。最後の事件のカギをとく「ハニワ」という言葉の裏に潜む謎を光速で明らかにした美人姉妹の想像を絶する頭の良さに、思わず失禁しそうになる。
タイトル通り、旅情気分満点。2時間サスペンスの台本のようで、100分ほどで読み終えた。畿内説などカケラも登場しないかわりに、2時間旅情サスペンスらしく混浴露天風呂シーンもあるのだが…。
4か所の候補のうち、邪馬台国は●●にあるそうだが、極めて自信なさそうなのが印象的である。
■『卑弥呼伝説』(井沢元彦 集英社文庫:1991年)
往年のAV女優のビデオタイトルのようだが、『逆説の日本史』シリーズで名を馳せる井沢氏ならではの着眼点が迫力満点の歴史ミステリー。古代中国後の発音、現代まで続く(下の)名前を読み上げるタブー、卑弥呼ははたして本名なのか、古代の太陽信仰、天の岩戸伝説、卑弥呼の死因、神武東征など盛りだくさんの謎が、独特の井沢史観で明らかにされる。
卑弥呼は、古代中国読みでは「ヤマドゥ・ヒグミュカ(ヒムカ)」と発音する。当時の日本に文字がなく、卑弥呼というのは名前ではなく役職名ではないかとする。日本の使者が魏で「ヒミコ」と発言したのを、中国人が変な漢字を当てはめただけとする。奴国にしても倭にしても侮蔑用語であり、卑弥呼の卑もそうだ。ちなみに、ヒムカとは「日向」。今の宮崎だ。
宮崎の高千穂にはアマテラスオオミカミの天孫降臨伝説がある。アマテラスは卑弥呼なのか。日向→日に向かう→太陽を礼拝する→祭祀者→卑弥呼という迫力ある説を展開する。
天の岩戸伝説とは何か。拗ねて岩戸に籠ってしまったアマテラスをおびき出すために、アメノウズメノミコトがストリップを踊る。エッチな男の神々は大興奮。あまりの盛り上がりに思わず戸を開けてしまうアマテラス…。
井沢氏は、アマテラスは女性ではなく男性としている。その根拠の一つが、ストリップで興奮するのは女性ではなく男性という、極めて人間味あふれる理論だ。しかしストリップは、岩戸に隠れていたら見えなかったのでは…?神様なので、透視能力があったということか。〔次夜その六〕
■『邪馬台国殺人旅情』(斎藤栄 祥伝社文庫:1988年)
九州北部の邪馬台国の比定地とされる4地域を回る旅行ツアーで起こる連続殺人。ちなみにその4地域は、「博多」「筑後大門」(福岡県山門郡瀬高町の女山)、「島原」(長崎・諫早も含む)、「宇佐」(大分県宇佐市)。たまたまツアーに参加した警視庁の警視正が名探偵ぶりを発揮。
300ページちょっとの間に殺人未遂もいれると5件発生する大盤振る舞いだ。事件の謎を解く手掛かりは魏志倭人伝を用いた暗号。天文学的確立の運命と偶然の積み重ねで極めて都合よく事件が進み、あっさりと解決する。最後の事件のカギをとく「ハニワ」という言葉の裏に潜む謎を光速で明らかにした美人姉妹の想像を絶する頭の良さに、思わず失禁しそうになる。
タイトル通り、旅情気分満点。2時間サスペンスの台本のようで、100分ほどで読み終えた。畿内説などカケラも登場しないかわりに、2時間旅情サスペンスらしく混浴露天風呂シーンもあるのだが…。
4か所の候補のうち、邪馬台国は●●にあるそうだが、極めて自信なさそうなのが印象的である。
■『卑弥呼伝説』(井沢元彦 集英社文庫:1991年)
往年のAV女優のビデオタイトルのようだが、『逆説の日本史』シリーズで名を馳せる井沢氏ならではの着眼点が迫力満点の歴史ミステリー。古代中国後の発音、現代まで続く(下の)名前を読み上げるタブー、卑弥呼ははたして本名なのか、古代の太陽信仰、天の岩戸伝説、卑弥呼の死因、神武東征など盛りだくさんの謎が、独特の井沢史観で明らかにされる。
卑弥呼は、古代中国読みでは「ヤマドゥ・ヒグミュカ(ヒムカ)」と発音する。当時の日本に文字がなく、卑弥呼というのは名前ではなく役職名ではないかとする。日本の使者が魏で「ヒミコ」と発言したのを、中国人が変な漢字を当てはめただけとする。奴国にしても倭にしても侮蔑用語であり、卑弥呼の卑もそうだ。ちなみに、ヒムカとは「日向」。今の宮崎だ。
宮崎の高千穂にはアマテラスオオミカミの天孫降臨伝説がある。アマテラスは卑弥呼なのか。日向→日に向かう→太陽を礼拝する→祭祀者→卑弥呼という迫力ある説を展開する。
天の岩戸伝説とは何か。拗ねて岩戸に籠ってしまったアマテラスをおびき出すために、アメノウズメノミコトがストリップを踊る。エッチな男の神々は大興奮。あまりの盛り上がりに思わず戸を開けてしまうアマテラス…。
井沢氏は、アマテラスは女性ではなく男性としている。その根拠の一つが、ストリップで興奮するのは女性ではなく男性という、極めて人間味あふれる理論だ。しかしストリップは、岩戸に隠れていたら見えなかったのでは…?神様なので、透視能力があったということか。〔次夜その六〕

