2013年04月09日

第699夜:謎の原日本民族「閉伊族」とは?【Book】

 『日本原住民史』(八切止夫 朝日新聞社)。日本人のルーツを神話の時代から考察する歴史書、というよりぶっ飛んだトンデモ系だ。オーパーツや超古代文明が大好物の私に、歴史マニアの東大阪瓢箪山商店街の大H氏が「アヅマさん、こういうの好きでしょ」と貸して下さった。

 冒頭3ページ目からいきなりぶっ飛んだ。「閉伊族」なる言葉である。盛岡から宮古へ流れる美しき閉伊川。下流域の宮古と山田は「上閉伊」、大槌と釜石は「下閉伊」と区別される。毎月閉伊川沿いに2時間半かけて盛岡宮古間を往復していた私にはなじみ深い名称だが、「閉伊族」なる人種は初耳(初目)。

 閉伊族は元々出雲地方の原住民。渡来系の古代大和朝廷に蹂躙されて本州最東端(今の岩手県宮古市)まで流れたそうである。流浪の民なのだろう。

 論旨は縦横無尽に駆け巡る。第二次世界大戦前まで、岩手県民が日本で一番背が高かったのは、閉伊族の後裔だからという。とにかく岩手人は東洋人より西洋人に体格が近いらしい。私にはその理由がさっぱり読み取れなかった。

 さらに論旨は暴走。岩手県には一人も美女がいないそうだ。古代東北の英雄・アテルイ氏を討伐した坂上田村麻呂氏が800年ごろに身目麗しい女性を京にすべてお持ち帰りしたため、完全にその子孫も美人は種切れになったと断言。一方、東北日本海側は美女が略奪されることはなかったゆえに「秋田美人」「山形おばこ」が今も存在する……。決して私の意見ではない。

 暴走は止まらない。閉伊族は完全無欠に討伐され、一部の勇敢な北海道に渡った人を除けば奴隷百姓とされ「集団コルホーズ化」されたそうだ(ああ、写し書きしていて怖くなる)。

 なぜ現代の東北人は質実剛健というか、黙々と命令通りに骨身を惜しまず働くのか。それは本質的なものではなく、そうせねば生かしてもらえなかった悲しき奴隷根性が今も引き継がれているからだという。この点、さすがに筆者も「言いすぎであろうか」と注釈を入れている。

 中途半端なホラー小説より遥かに恐ろしくなり、思わず奥付を見た。昭和47年発行。日本人のルーツ、身分制度や差別の根源を解き明かしながらも40年前の時代背景からか思いっきり差別を助長する(特に男尊女卑)表現を多用。昨今の出版物ではありえない危険さが横溢している。これを人権派の朝日が発行していたことに度肝を抜かれる。

 評論と思いきや、後半はいきなり小説タッチに変貌。なぜ日本人が唯一アジア人でフラメンコを好むのか。露払いの意味とは。なぜ商人は士農工商の最下層なのか……。クラクラする。

 著者の八切氏の代表者作は『信長殺し、光秀ではない』『徳川家康は二人だった』『上杉謙信は女人だった』……。私には、何も言うことはない。この著者の作品、文庫化もされていないようだが、古本屋では割と高値が付いているそうだ。

 虚実分からぬが、21世紀の学校教育では決して知ることのできない禁断の歴史感に触れることができる。朝日新聞社にはぜひ手直しせずに原文のままで復刊していただきたい。

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『日本原住民史』(八切止夫 朝日新聞社)

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2013年01月17日

第643夜:まちづくりのバイブル【Book】(後編)

 100円商店街・バル・まちゼミ。過去幾度となく似たような実施されてきたはずだが、ハイブリッドに進化。これからは専門会社設立が相次ぐ「まちコン」、大阪・粉浜商店街等で好評「ゲリラオークション」を加えた‘五人囃子’(すいません、強引でしたね)に発展するのか。

 ユニ●ロ社長が表紙を飾る『商業界(2013年2月号)』は、商店街三種の神器を大特集。前述執筆陣に加え、大阪商工会議所T部長や他の実践者たちが寄稿。学者も客観的でなかなか鋭い所見を発表。前述の本と合わせて目を通すと、さらに興味深い。理解度の深まりに差が出る。

 商店街三種の神器に興味を持たれた方は、中心市街地全体の活性化にも目を向けていただきたい。『中心市街地活性化のツボ』(長坂泰之 学芸出版社)は豊富な事例と活性化への道標となるツボ(キモ)を明快に紹介している。

 中心市街地活性化、商店街三種の神器を知る以前に、全く業界未経験のまちづくりチェリーな紳士淑女の必読書が『商業・まちづくり 口辞苑』(石原武政 碩学舎・中央経済社)。様々な商業・流通・まちづくり用語が五十音順に紹介・解説されている。

 最初からきっちり読まなくとも、索引を見て気に入ったページから読み始めてもよい。ページをめくると、あるキーワードが取り上げられる。その用語解説が「1」。この解説が極めて平易で分かりやすい。まちづくり童貞の方も一発で理解できるだろう。

 この本の最大の魅力は、一般的な用語解説に続く著者独自の視点を交えた「2」である。著者の石H教授は日本の流通・中心市街地活性化の第一人者だが、ご本人は極めて気さく。その人柄がにじみ出る軽妙洒脱かつ辛口な解説に、学術書の粋を超えてグイグイ引き込まれる。

 2段構成がお見事で、キーワードに隠されたもう一つの意味が浮かび上がってくる。自虐的な内容も多く、私のようなすれっからしのまちづくり屋も思わずニヤリとさせられる。

 普段はミステリかエッセイしか読まない私だが、今回ご紹介した作品群は著者と旧知を差し引いてもオススメだ。一方、おススメしないのが『銭湯帰りに、お好み焼き〜震災のまちから食のまちへ〜』(アスク出版)。私が10年ほど前に「神戸ながたTMO」名義で出した本である。

 まちづくりや商店街活性化をお題に出版社から頼まれたのだが、原稿用紙200枚予定がわずか10枚でギブアップ。挙句の果てに小学校時代の想い出に始まる雑記に終始してしまった。

 著名な装丁家&イラストレーターによる表紙、ガガガSPボーカル・コザックM田氏に帯の推薦文をいただいたにも関わらず全く売れず。私は読み返したこともなく、手元にすら残っていないが当然のごとく絶版。頼まれごととはいえ、よくこんなクダラナイ稚拙な文章と内容の本を出版したなと、今思い出しても赤面する。出版社の方々、申し訳ありませんでした。

 そんなまちづくりに何の役も立たない本にご興味がおありの奇特な方、ネットで探してみてください。10円ぐらいでどこかの誰かが売っているかも(定価は…、忘れました)。

130117『商業まちづくり口辞苑』.JPG
ユーモアたっぷりの名著。

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2013年01月16日

第642夜:まちづくりのバイブル【Book】(前編)

 三種の神器。日本古来より天皇家に代々伝わる宝物(鏡・剣・玉)を差すことが日本国の一般常識であるが、21世紀初頭の商業・まちづくり分野における「三種の神器」(Ⓒ兵庫県伊丹市A野副参事)とは何か。「100円商店街」「バル」「まちゼミ」のことを指す。

 それぞれの説明は割愛する。なぜなら『100円商店街・バル・まちゼミ お店が儲かるまちづくり』(長坂泰之編 学芸出版社)を読めば分かるからだ。各事業の創始者、フォロワーら実践者のリアルな声が本文だけでなく行間から溢れんばかりである。

 編著者N坂氏、推薦文寄稿の石H教授をはじめ、三種の神器を実践されている6名の著者は全員面識を頂いている。文体や論調にも各氏の個性が目に浮かび、思わず微笑んでしまう。

 まずはサラリと一気に通読。めったにないことだが、間髪いれず再読した。その際、私はマーカーを用意した。散りばめられた名言、心に残り響く名文にアンダーラインを引こうとしたが、すぐに断念した。マーカーだらけになってしまうからだ。

 「三方よし」「補助金を頼らない」…。とにかく分かりやすく、読みやすい。実施にいたる過程などはスリリングで、ミステリ小説のようである。私の前職・神戸新長田時代、これらと似たような事業を実施したことはあるものの、全く異なる事業だった。

 イトヘン(服屋等)華やかかりし高度経済成長時代と異なり、ごく一部の超広域型商業地区以外で、一般的な物販店舗は苦戦を強いられている。商店街の業種構成は大きく変わり、飲食・サービス業の割合が今後もますます増えそうだ。

 業種構成の多様化は、商店街が一体となって取組む売出しやガラポン抽選等の定番販促が時代にそぐわなくなってきた。ステージ鑑賞型イベントや装置型(ポイントカード等)も同様だ。

 これからは受け身の鑑賞型でなく、お客が主役の参加型イベントの時代である。組合単位でなくやる気漲る個店単位の連携で開催できることもポイントだ。

 商店街三種の神器は、出るべくして出た時代の寵児である。特に新住民が増えつつある商業地域には極めて効果的。新規客獲得に実に適している。

 100円商店街、バル、まちゼミ。これらは業界の専門用語である。これらの用語が一般消費者にも浸透しつつある。お店の認知向上や売上増加に直結する場面も何度も目にした。

 個店活性化および個店連携事業は、補助金に適用されにくく、行政のバックアップも得にくいことも事実だが、地域によって環境も違う。これらをコーディネートするまちづくり機関(NPO・会社)にとって存在感を高め経営基盤を安定させるチャンスでもある。

 講演やセミナーに引く手あまたの執筆陣だが、講義を拝聴する前に『100円商店街・バル・まちゼミ お店が儲かるまちづくり』(長坂泰之編 学芸出版社)を通読しておくことを強くおススメする。事前に目を通しておくと、講義の理解が10倍増すからだ。〔次夜後編〕

130116『100円商店街・バル・まちゼミ』.JPG

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