この中から、仙台を舞台にした作品について、私にとっての「仙台度」を5段階で表してみた(低:1→高:5)。
■『死神の精度』(文春文庫)→ 仙台度:1
太古の時代から存在し、担当する人間の死を「可」または「見送り」を判断する死神が主人公の、6篇からなる連作短編集。日本推理作家協会賞受賞作である。
伊坂作品に珍しく、文体は1人称の軽ハードボイルドといった感じだが、死神のキャラ設定が素晴らしい。ミュージックが大好きで渋滞が何より嫌い。人間界にいるときはいつも雨。受け答えは天然ボケなど、何ともポップである。
死神は担当する人間に8日間張りつき、その間に「可」「見送り」を判断し「上司」に報告。8日後に自殺および病死以外の死を遂げる。その8日間は、取り憑かれた人間は死なない。
これらの物語ルールが、ミステリとしての重要な伏線になる。ちなみに、伊坂作品には登場人物に様々なルールが課せられているようだ。
作品はそれぞれ短編だが、最後に1冊の長編となる凝った展開である。どの作品もクオリティは極めて高い。その中の一篇『旅路で死神』が異色作である。
東京で殺人を犯した犯人が、死神とともに東北へある目的成就のために東北へ北上していくという、ロードノベル形式。この作品は現実の地名が多く、異質さを際立たせる。
最終目的地へ向かう途中、仙台郊外に立ち寄る。そこでちょっとしたシーンがある。
この作品は金●武氏主演で映画化された。私はすぐに分かってしまったが、なぜか神戸がロケ地だった。映画としての出来栄えもかなり秀逸。ヒロインの小西●奈美氏が唄う主題歌も良く、私はよく無意識で口ずさんでいたらしい。この主題歌も、大きく本編に関係する。
たっぷりと紹介に費やしたが、この作品集は私にとっての伊坂作品ナンバーワン。主人公の死神は、人間の情が理解できないという設定だが、すべての短編がホロリとさせる人情ミステリに仕上がっている。超絶技巧が凝らされた極上の作品集だ。仙台度はかなり低いが。
■『ラッシュライフ』(新潮文庫)→ 仙台度:5
『このミス』ベスト20にランクインし、私が初めて読んだ伊坂作品である。
文中で頻繁に取り上げられているのが、エッシャーの‘だまし絵’。5つの異なる物語が、最後に一つに収斂していく群像劇である。
旧友と思わぬ交友を深めることになった空き巣、新興宗教の教祖を崇める新人信者と教団幹部、不倫中の女医とサッカー選手、偶然拾った老犬に癒される中年失業者。そして、仙台に向かう途中の東北新幹線で仙台に向かう社内の画廊オーナーとその女性画家の卵。
これに、切断されたが再びひっついて歩き出す死体、予知的能力を持つ新興宗教のカリスマ教祖などが絡んでいく。
5つの異なる登場人物がドタバタ劇を繰り返していく。基本的には奥田英朗氏の‘ドツボ型クライムサスペンス’のようだが、さらにポップで寓意的である。
そして、舞台はオール仙台である。東北新幹線車中のシーンも、仙台に向かう途中なので仙台に加えていいだろう。仙台という箱の中で、時間軸を微妙にずらしながら展開していく。勧善懲悪的なエンディングなので、読後感も爽やかだ。
なぜ仙台が舞台なのか。作者は何かのインタビューで、仙台に住んでいるため地理感があるから、特に深い意味はないそうである。確かに、仙台でなくても良かったかもしれない。
ただ、画廊があって画家の卵が多く育つ文化的土壌があり、プロサッカーチームがあり、マンションが林立している。適度に街中でばったり出くわすかもしれない程度の人口過密度と中心市街地の集積度。新幹線が停車する都市。やはり、この作品は仙台が最も相応しい。〔次夜その三〕

