2013年12月06日

第860夜:牛丼戦争〜映画『箱入り息子の恋』より〜【Cinema】

 『箱入り息子の恋』。神戸市内の名画座で2本立て上映されていた、シブめの豪華キャストが織りなす劇場公開映画である。同時上映されていたもう一本の映画を観たかった私にとって、全く予備知識もなく、何の期待もしていなかった作品だった。上映開始から2時間。観終わった後、思わずこのバカブログで取り上げてしまうほどの強烈な衝撃を受けた。

 主人公は、非社交的で出世も野心もなく呑みにもいかず友達もおらず、昼飯は自宅にいったん食べに戻る役所勤めの30代半ばの男。趣味は格闘ゲームと蛙の飼育だが、ひょんなことがキッカケになり、10歳近く若い社長令嬢とお見合い。二人ともすぐに相思相愛に。透明、華麗、上品……。35歳の童貞オトコには不釣り合いな美女だが、ある身体的障害を抱えている。

 交際への反対や心配、様々な障害を乗り越えながら愛をはぐくむ二人。類似作品も多いかもしれぬが、決定的に違う点がある。牛丼の<Y野家>が極めて重要な役割を果たしているからだ。ゆえに今回のバカブログは「牛丼戦争」シリーズに位置付けた。

 家に昼飯を食べに帰らず、外で喰えと両親に説教された主人公。毎昼<Y野家>で並盛を注文するようになる。主人公、微妙に少しだけ成長した姿を見せる。

 お嬢様と付き合い始めた主人公。お嬢様、当然のごとくY野家に行ったこともなく、おそらく牛丼そのものを食べたことがないと推測されるほどの箱入りぶり。タイトルは『箱入り息子の恋』だが、明らかに『箱入り娘の恋』の方が相応しい展開だ。

 箱入りお嬢様、主人公にY野家で牛丼を食べてみたいとねだる。主人公、戸惑いながらも自分の世界に引き入れることができ、得意満面。箱入りお嬢様がファストフードや立ち呑み店などに庶民派男に連れて行かれ、いちいち色々なことに感動して好感度を挙げるシーンは、ある意味お約束といえる。Y野家、これで2度目の重要シーンでの登場である。

 シアワセ絶頂の2人だが、ある事件をきっかけに離別を強いられる。だが、お互いが忘れられない。そして、3度目の最重要Y野家シーン。……。号泣。Y野家で牛丼を食べるだけのシーンなのだが、涙が止まらぬ。私だけではない。館内が啜り泣きでコダマする。ネタばれになるのでこれ以上書けぬが、これほど泣かせる牛丼映画は古今東西他に存在しないはずだ。

 3回目のY野家シーンで、お嬢様が食べ放題の卓上紅生姜のフタを下に落としてしまう。両隣りのサラリーマンの迷惑そうな表情。……。これは基本的にコメディ映画だが、要所で心にぐさりと突き刺さるセリフ、シーンが挟まれる。欠点とは、健常者と障害者の違いとは……。

 最初、そして2回目のY野屋シーンが絶妙の伏線であることが3回目のシーンで明らかになる。M屋やSき家では出せないY野家ならでは空気感。観終わった後、映画館を飛び出し、M屋でもSき家でもなくY野家に飛び込んだ。ぜひDVDで買うなり借りるなりご覧あれ。観終わった後、Y野家牛丼をきっと食べたくなるはずだ。そして、優しい気持ちになれるだろう。

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映画『箱入り息子の恋』

【ONLY POWER,NO BRAIN!】
 一昨日(131204)はまちゼミ界の暴れん坊将軍・愛知岡崎M井氏が三陸宮古でまちゼミ指南。心震えるご指導に宮古商人も私も深く感動。懇親会で堪能した鮑の肝刺山盛りにも深く感動。そのまま上様らと鯨飲モードに。
 昨夜(131205)は宮古市末広町商店街夜会議終了後、旦那衆と私が愛する東北限定「キ●ン遠野産ホップ‘生’ビール」呑み収め。ジョッキ7杯程度で焼酎湯割に切替。商店街旦那衆やママさんらとTVに映るフィギュアスケートに大興奮。店内が一体に。
 今朝(131206)はこれから商店街朝会議。今日の三陸宮古は曇天。気合一発。皆さま、今夜も御安全に。
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2013年05月16日

第721夜:パンティをかぶると、人は強くなれるのか?【Cinema】

 『変態仮面』。1990年代初期に『週刊少年ジャ●プ』で1年ほど連載されていたらしいマンガである。20年の歳月を経て、2013年春、実写映画化されるニュースがネットを中心に飛び交っていた。私はその斬新なポスタービジュアルに興味を惹かれ、コンビニで映画化に合わせて発売されていたコミック全4巻を購入。電車の中で読み始めた。

 表紙もインパクトが大きく、コンビニコミックなのでカバーなどなく恥ずかしさを強いられた。パンティをかぶった変態高校生が表紙のマンガをニヤニヤしながら電車の中で読みふけるメタボ中年変態オヤジ。さぞ周りに、特に女性には恐怖を与えてしまったかもしれぬ。

 SMクラブでバイトする女王様な母とM気質の刑事の父(殉職)を持つ格闘家高校生が、女性のパンティをかぶると親譲りの変態の血が覚醒。人間のもつ潜在能力をマックスにまで高め、変態的必殺技を用いて悪を懲らしめる…。石仮面をかぶると吸血鬼になるが強烈に強くなることは知っていたが、パンティをかぶっても強くなるとは、恥ずかしながら存じ上げなかった。

 私はこのマンガの存在を全く知らなかった。タイトルすら初目初耳だった。私がジャンプ愛読者だった期間は小学校低学年から中学卒業ぐらいまで。以降、『週刊少年マガ●ン』『モー●ング』『ビッグコミ●ク(スピリッツ・オリジナル)』に移行していった。

 変態仮面の連載は、ちょうど私のジ●ンプ卒業と入れ変わりだったようだ。主人公と同じ高校時代にリアルタイムで読んでいたら、私もパンティをかぶっていたかもしれない。しかし、パンティをかぶっただけで強くもならず悪も懲らしめないなら、本当にただのヘンタイだ。

 『変態仮面』の持つ強烈にクダらない世界感、よくこんな作品を天下のジャンプで連載していたなという出版社の度量(昔、ジャンプで連載していた『シェイプア●プ乱』という下ネタマンガがあったのをこのバカ文章を書きながら思い出した)にシビれた私は、フラフラと兵庫西宮のシネコンに足を運んだ。奇跡の実写化とされる映画版を観るために。

 映画は原作のチープな世界感を維持しつつ、マニアックな役者陣で脇を固め、映画独自の妙な豪華さも醸し出している。主人公の若手俳優も見事だったが、敵役の偽変態仮面の熱演に感動。続編はないと思われるが、映画史に残る怪作だ。よく劇場ロードショーできたものである。

 観終わった時、私はふと考えた。まちづくり業界で変態仮面に変身できるほどの肉体美を誇るサムライはいるのか。……。一人だけ、いた。和歌山県T辺商工会議所のエレファントマン・O崎中小企業相談室長である。彼の十八番・ヌギヌギ宴会芸にパンティをかぶれば、紀南最強の中年変態仮面の誕生だ。ぜひ覚醒していただきたい。娘さんは、大学生らしいけど。

 上映前、私は危惧していたことがあった。それは、チケットを買う際のやり取りだ。「何をご覧になられますか?」「……、変態仮面、お願いします…」。想像するだけで恐ろしい。

 劇場に着いたとき、チケット売り場はすべて自動発券機に変わっていて驚愕した。安堵と拍子抜けを同時に味わいながらロビーで入場を待っていると、館内アナウンスが聞こえてきた。

 「長らくお待たせいたしました。間もなく19時25分より上映の、へ、変態仮面の入場を開始いたします…」。声が震えている。思わず同情。ビジュアル以上に、罪なタイトル名である。

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パンチ力満点のビジュアル。

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2012年06月24日

第505夜:波動砲を命中させる心構え【Cinema】

 『宇宙戦艦ヤマト』。1977年にアニメ放映が開始され、以降幾多の続編が作られてきた宇宙SFの金字塔。遂に実写版が2010年12月、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』として放映された。

 実写版劇場公開時点で36歳だった私は、正直申し上げてヤマト世代ではない。私のアニメ歴は、幼少期は『ドラ●もん』『怪物●ん』などの藤子作品。小学時代は『キン肉マ●』『キャ●テン翼』など。ヤマトは私より5〜10歳程度年配にとってはストライクゾーンと思われる。

 私の知っているヤマトは、主要登場人物のぼんやりとしたイメージしかない。ストーリーは全く分かっていなかった。極めて新鮮な気持ちで、実写版ヤマトを見た。

 2199年、地球侵略を狙うガミラス帝国の遊星爆弾で地球は放射能に汚染させ、生き残った人類の一部は地下に潜り絶滅寸前。地球上から緑が無くなった。そんな折、14万光年以上離れたイスカンダル星から謎のカプセルが地球に到着。そこには、絶滅寸前の人類を救う可能性のある唯一の手段が記されていた。1年以内に放射能除去装置を入手して帰還しないと、地球も人類も滅びてしまう。その情報を希望に、宇宙戦艦ヤマトはイスカンダルに向けて出発する。

 主人公の戦闘班班長・古代進を木村拓●氏をはじめ、豪華キャストが島航海長、真田技師長、徳川機関長、佐渡船医を演じている。沖田十三艦長役の山●務氏は圧倒的な存在感だ。

 私が戸惑ったのは、ヒロインの森雪を演じる黒木メ●サ氏。私の持つ雪のイメージは、たおやかで優しく菩薩のようだったが、圧倒的な目力を見せつける黒木氏ではピンとこなかった。しかし、攻撃班のエースパイロット役と分かり納得。原作は生活班班長兼看護婦だったのだ。真っ青な顔のデスラー総統を誰が演じるのか非常に気になったのだが…。

 映画のテンポや辻褄、演技や演出、CGのリアルさはともかく、私が驚いたことが2点あった。

 1点目は、これほど頻繁にワープしていたのかということだ。私が出張で新幹線や飛行機を多用するような感覚で用いられている。エネルギーは大丈夫だったのだろうか。

 2点目は、ヤマト最大の武器「波動砲」の乱射である。私は、波動砲は最後の手段と認識していた。これも、割と気軽にぶっ放している。外したら大ごとだ。

 様々な地域活性化策で、細かい打ちあいより一発で決着を付ける波動砲のようなメガトン企画はあるのだろうか。神戸・新長田では、鉄人28号等身大モニュメントがまさに波動砲だった。

 まちづくりでも宇宙戦艦でも、関わった者なら一度は波動砲をぶっ放してみたいと思うはず。ただし、映画(ヤマト)のラストのように、リーサルウエポン(最終兵器)はカミカゼ的な諸刃の剣。波動砲を命中させる最も大切なことは、企画そのものよりも「退路を断つ」という心構えかもしれない。

東朋治フェイスブック⇒http://www.facebook.com/#!/tomoharu.azuma
posted by machi at 07:17| Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする