ある祝日の午後。午前中に自宅でパソコン猿打し、午後から急ぎ仕事なくフリーに。神戸湊川公園の2本立て名画座<パルシネマしんこうえん>に足を運んだ。
2本立ての構成は時代劇エンターテインメント『超高速!参勤交代』と、前述の『六月燈の三姉妹』。`参勤交代´は前評判通りの期待以上の内容。一方、`三姉妹´は予備知識皆無で、期待感もゼロ。2本立ての併映ゆえにもったいないという理由だけの消極的鑑賞だった。ところがこれが思わぬ拾いモノ。これだから2本立て映画鑑賞はやめられない。
家族の絆と再生がメインテーマと思われる『六月燈の三姉妹』のもう一つの裏テーマが「商店街活性化」。衰退一途の商店街ゆえに、後継者不足に悩まされている。嫁を迎えることもままならぬシーンが妙に丁寧に描かれている。三姉妹のオヤジ(和菓子屋)が「ウチの店が商店街を引っ張っていかねばならない(鹿児島弁で)」と熱く宣言している場面も見逃せない。
地元神社の「六月燈」という祭りに向け、商売そっちのけの様相で昼夜問わず準備に勤しむ商店街会長と若手商業者たち。ある夜、一日の準備を終えた会長と若手らが商店街のスナックへ。そこで、ベテラン・井上J氏演じる商店街会長が若手に向かって商店街活性化のための起爆剤となる爆弾提案をぶちかます。それが何と「アーケード新築」だった。
私は思わず目を見開き、理解に苦しんだ。会長の爆弾発言の後、わずかな拍手が起きた。おいおい、拍手している場合じゃないだろうと思わず声に出してツッコミそうになった時、若手から自己負担捻出やランニングコスト面から異論百出。ムキになった会長が「10分の9の補助金がもらえる」と言い返すシーンも。
「10分の9の補助?アーケード新築がそもそも補助対象になり得ない傾向が主流であるが、果たしてこんな補助メニューがあっただろうか?昔のTMO基金か?それとも、鹿児島県単独の制度なのか?……」。こんなことを思い浮かべてしまい、話の本筋に集中できない。
いったんこの議論はお開きになり、物語は後半へ。すると、同じように会長と若手がスナックで懇親しているシーンが。会長は何と「アーケードは諦めた。その代わり、入り口に大きなアーチをかけてはどうか」と懲りずに提案。道路占用使用料はともかく、思わずその方がまだ良いと首肯してしまった。これほど細かく商店街のハード事業に触れた映画を私は知らない。
地味なテーマだが話そのものは面白く、見終わった後は実にいい気分になった。しかし、本筋以上に裏テーマが気になってしまい、映画館を出るとほとんど商店街活性化のための議論しーンしか思い出せない。まちづくり屋の悲しい性(サガ)である。
地味な作品だが意外な傑作。

