2025年06月22日

第3700夜:名物探偵アヅン【鳥取(鳥取)】

 名探偵Kナン。ホームズ、ポワロ、金田一(祖父と孫)、明智、火村、江神…。古今東西名探偵は数あれど、少なくとも国内では最も人気のあるマネーメイキングディテクティブ(金を生み出す探偵)だろう。ちなみに昭和49年生の私にとってコナンは「未来少年」だ。

 急に冷え込みだした11月中旬の朝。三ノ宮から鳥取へ向かう「スーパーはくと」がコNン列車。外装だけでなく車内もロンドンディテクティブな雰囲気。床、ドア、遮光カーテンまでコナン一色。手洗の鏡は蝶ネクタイのトリックアート。少ししゃがんでパシャリ。

 私は『週刊Sンデー』で育っていない。タッチ、うる星やつらなど名作が揃う80年代はまだしも、Kナンは確か90年代にサンデー連載開始。『マガジン』K田一少年と双璧。漫画もTVアニメも馴染みなく、たまにTVで映画版を放映することがあれば観る程度。

 映画版、ミステリというよりド派手なアクションアニメである。札幌ススキノの風俗案内所が『名案内コナン』だったことを思い出した。

 自動改札が導入されていない鳥取駅着。駅員さんに切符を手渡して、タクシーで商工会議所へ。たっぷり150分休憩なしミッション終了後、タクシーが捕まらないので智頭街道沿いをホタホタ歩いて鳥取駅へ。さすが山陰。氷雨まじりで凄まじく寒い。体が冷え切った。

 鳥取駅構内には名物と唄う『砂丘そば』がある。愛読コミック『駅弁特急』でも取り上げられていた。鳥取市へは2度目となったが、砂丘は未踏。

 生まれてから20年間、須磨海岸まで自転車で10分に住んでいた。漁港なら徒歩10分。海は好きだが、砂丘というか、海岸に興味が湧かない。

 砂丘に興味ないが「砂丘そば」には興味噴出。屋号を背負う最安値『砂丘そば』430円のボタンを押して震えながら店内へ。昼時は行列だが、17時はさすがに閑散。カウンターも4人掛けもパーテーションで区切られている。いまだにウィズコロナモード全開だ。

 ブツを受け取る。具はネギと2切の竹輪のみ。ほぼかけそばである。蒲鉾なら朱が刺し色になるが、竹輪が出汁の色と同化。まさに、砂丘的虚無哲学の世界が広がっている。

 出汁は甘さのないキリリとした切れ味。清貧を噛みしめつつ出家気分を味わう。夢中で熊啜。体が心から温まった。空腹も満たされたが、90分後に懇親会という連絡が入った。

 我が全国各地の定宿(T横イン)へ向かう途中、駅弁売場を覗く。前述の『駅弁特急』で作者が日本一と称してやまぬ駅弁が鳥取駅弁『元祖かに寿し』。

 調整元「アベ鳥取堂」様は十数種類の駅弁を取り扱う日本屈指の雄。17時で残っているのは『元祖かに寿し』以外すべて売り切れ。懇親会終了後、ホテルに戻って独り2次会の晩酌の肴に残りわずかの1箱を捕獲。鳥取の地カップ酒も抜け目なく購入した。

 懇親会は<吉鳥>。焼鳥メインの屋号っぽいが、魚介が熱い。鳥取砂丘名物のらっきょ、旨い。知らなかったがハタハタも名物らしい。アタマからバリバリ。めちゃくちゃ旨い。

 究極が「もさえび」。鮮度がすぐに落ちるゆえ地元でしか流通しない幻の海老らしい。これを焼いたものをバリバリ。9月から春先までらしい。旨すぎて鳥取の地酒に切り替える。

 出汁巻、ポテトフライ、チーズ春巻、焼鳥。どれも安定の旨さ。そして圧巻が刺身の盛り合わせ。巨大な天然鯛の生け作りに鳥取山陰の海の幸がびっしり。これで5人前3000円以下は恐れ入る。超人気も納得。もさえびも生で頂く。味噌が最高である。

 20時半ごろお開き。宿に戻る前にコンビニへ。鳥取のご当地ラーメン「鳥取ゴールド(牛骨ラーメン)」のカップ麺を買いたかったが売っておらず。私の自宅近くのスーパーでも売っているのが。しかし、「でかまる」35周年復刻版があった。食べた記憶かすかにある。懐かしい。

 ユニットバスに入り、懇親会前に捕獲していた鳥取の地カップ酒で「元祖かに寿し」。旨いけど、『でかまる』のシンプルな醤油が強烈な印象を残した。

IMG_6045.jpg

近畿〜山陰を疾走するコナン特急。

IMG_6041.jpg

入ってすぐは迷宮の入口。

IMG_6042.jpg

床のデザインがロンドンチック。

IMG_6043.jpg

シートカバーにも。

IMG_6044.jpg

窓の遮光はコミックが。

IMG_6040.jpg

洗面台のトリック。

IMG_6048.jpg

駅員手渡し昭和ストロングスタイル(3カ月前まで)。

IMG_6065.jpg

鳥取駅構内の名物店。

IMG_6071.jpg

禅問答のような「砂丘そば」。

IMG_6082.jpg

砂丘名物「らっきょ」。

IMG_6083.jpg

ハタハタは秋田以外にも鳥取で名物らしい。

IMG_6085.jpg

鳥取県でなく鳥取市内でしかほぼ流通しないという幻の「モサエビ」。

IMG_6089.jpg

これで3000円以下。何というポテンシャル。

IMG_6095.jpg

部屋に戻って。

IMG_6098.jpg

日本屈指の有名駅弁。

IMG_6099.jpg

しみじみと懐かしい味。

posted by machi at 08:02| Comment(0) | 鳥取県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月25日

第3654夜:淡紅の中の墨黒【鳥取(鳥取)】

 『駅弁特急(ぶらり旅)』。駅弁マンガの代名詞は『駅弁ひとり旅』だが、『駅弁特急』も負けずに食欲と旅情をそそる。『ひとり旅』は全国満遍なく、『特急』はかなり関東近郊に偏っているが、『特急』の作者がぶっちぎり1位と激推しするのが鳥取駅弁「元祖かに寿し」である。

 1999年からまちづくり屋稼業に身を転じ25年目の晩夏。初めて鳥取駅へ。かに系駅弁は割とメジャーで全国各地で見かけるが、あまり手を伸ばしたことがない。最大の理由は「高い」から。 

 もう一つは、味がどうしても均一になり幕の内系と比較すれば酒のツマミになりにくい。私にとっての駅弁の使い方は‘酒のツマミ’が99.3(アヅマ感覚)である。

 正午に鳥取駅に到着。集合時間は1時間後。駅構内の売店や駅弁売場を物色する。山陰らしく海鮮系珍味が魅力的だが、梨に代表されるスィーツも充実。裏の鳥取名物かもしれないレトルトカレー、牛骨ラーメン、らっきょうなども存在感を見せている。

 この夜は岡山駅前に宿を確保。20時半過ぎの終電特急に乗らねばならない。その前に懇親会が予定されている。飲み食いするのだが、全く初めての街、初めてお会いする方々、初めての店。8時間後の未来が見通せない。ちなみにコンビニを除く売店は19時までには閉まるようだ。

 岡山行き特急乗車時間は約2時間。地ビールは売店に売っているがコンビニにはない。ちなみにコンビニは地酒もない。何かの協定があるのか。帰路の酒肴を補充しておくことに。

 鳥取県内から鳥取市内の蔵元に絞って300mlの地酒を購入。懇親会後ゆえ、ツマミでなくスィーツをお供に。選んだのは圧倒的売場面積と巨大な『わたしの推し土産全国1位』POPが迫力の『因幡の白うさぎ』。米子でも売っていたが、米子は因幡でなく伯耆ゆえ買おうと思わなかった。

 一番少量の5ヶ入りを手にレジに向かう。そして、駅弁売場へ。明治32年創業という『アベ鳥取堂』様の独占。かなりラインナップも豊富である。

 冒頭の『元祖かに寿し』だけでなく、かに系駅弁が他にもいろいろ。肉系、幕の内系も存在感を放つ。鬼太郎系もキュートだ。

 その中で異彩を放つのが『黒めし いかすみ弁当』。同じ海鮮でも、圧倒的なカニの中のイカ。淡い紅の中にうねる墨の黒。貴族令嬢の集まりの中で屹立するたたき上げな野武士。

 空気頭が真っ黒でなく真っ白になり、気づけば捕獲していた。後から思い出したが『駅弁ひとり旅』の主人公が選んだのは『黒めし』だった。

 休みなく90分歩き、休みなく150分話し合い、120分の絶品料理と談笑と鯨飲後、特急に乗り込む。車内は空いている。空腹感はあまりない。

 動き出して20分ほど経過し、地酒をラッパ呑みでグビリ。安堵感が押し寄せる。そして『黒めし』のフタを外す。墨色の米の上に具がびっしり。バラエティに富んでいる。

 一口で噛み切れない姿イカ醤油煮が2ハイ、いか入りつみれ醤油煮、いか炒り煮…。いか尽くしである。そして、噛みしめるほどの甘みと深みが増すいかすみ炊き込み飯。地酒が抜群。歯がどうなっているか分からぬが、この夜は女性と接することもない。お宿も機械でチェックインだ。

 黒の後は、白。『因幡の白うさぎ』である。初めて実食する。封を開ける。肌は白くなく、妙に人間っぽいまさに肌色。黄色人種の色合いである。兎というより鼠に見えないこともない。

 キュートなカレ(カノジョ?)に頭からかぶりつく…。白あんである。濃厚な甘さだが、辛口の地酒に意外なほど会う。甘いものが苦手だった10年ほど前では絶対に考えられない組合せ。狼のごとく5匹も食べきることができなかったけど。

1.jpg

数千冊の我が蔵書コーナーの駅弁コミックゾーン。

2.jpg

鳥取駅構内の充実の駅弁売場。

3.jpg

全国1位は凄い。

4.jpg

お宿の岡山へ2時間。

5.jpg

万全の体制。

6.jpg

迫力のパッケージ。

7.jpg

イカづくし。最高。

8.jpg

初の白うさぎ。

posted by machi at 06:05| Comment(0) | 鳥取県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月24日

第3653夜:若桜街道と智頭街道【鳥取(鳥取)】

 鳥取市。県庁所在地であり、山陰屈指の大都市である。駅前再開発事業が進捗中の鳥取駅から鳥取城跡や博物館、病院、市民会館が集積するゾーンまでが「22軸」で構成されている。

 2核1モールは(まちづくり業界限定の)一般用語だが、22軸は聞きなれない。その2軸が「若桜街道」と「智頭街道」沿いに展開する商店街群である。

 ようやく秋の涼しさが体感できるようになった93連休明けの午後、鳥取商工会議所関係者の皆さま数名に「22軸」をご案内頂く。地元関係者を除けば、初訪問は私だけ。

 空港クラスの巨大アーケード「サンロード」を抜けて民芸館通りを抜け、若桜街道(本通り)へ。リノベーションが盛んなようで、見事な施設が点在する。様々な情報誌も発行されており、プレイヤーも多様で多そうだ。商店街が運営する「パレットとっとり」もなかなか出来ることでない。

 若桜街道、つまり1軸だけで60分以上。ほぼすべてにアーケードが掛かっている。平成17年竣工故、比較的新しい。異様なまでの柱の多さに圧倒されつつ、道路対面からアーケードの2階以上の連なりがみられる。昭和20年代の大火の後に建築された「防火建築帯」である。

 あまりなじみのない言葉である。私自身、この5文字を知らなかった。しかし、同様の街並みは様々な街で拝見している。

 ちなみに鳥取市は東京、横浜、大阪、名古屋に続き全国5位の防火建築帯の施工面積。隣店舗と壁面が接している建物が多く、アーケードもあるので解体や新築はかなり大変そうである。

 若桜街道の1軸のみ視察後、会議所へ。たっぷり3時間、休憩なしミッション。終了後、駅周辺歓楽街の懇親会場まで車で送って頂く。そのルートが「智頭街道」。こちらもお店がびっしり。鳥取の中心部、商店街だけでも凄まじい店舗数。それ以外も含めると何店舗あるのか。

 私のグズグズしたミッション仕切りのため、懇親会は30分遅れの18時スタート。翌朝10時から山口県内でミッションゆえ鳥取市で宿泊すると間に合わず、岡山に泊ることに。

 7人で乾杯。初めての街、初めてお会いした人々。たっぷり歩き、しゃべり倒したこともあり、生ビールが瞬殺。3杯目からはハイボール鯨飲。

 料理は懐石方式。大皿を取り分けるのではなく、一皿ずつ提供される。手の込んだ先付三寸、刺身5種盛、海老と野菜の炭火焼、煮物、茶碗蒸し、そして和牛ステーキ。どれも絶品である。〆はマグロのヅケ丼と吸物、そして和スィーツとフルーツ。最後まで全力である。

 皆さんヨソモノ初見の私にも気軽に話しかけて下さる。まちづくり関係者が募っているので話題は当然にまちづくりだが、何故かある一角だけ下ネタに横ぶれする。何度軌道修正しても、下ネタに寄っていく。7人はすべて男でなく、紅一点も。紅一点は慣れているのか苦笑い。

 20時30分過ぎの特急に乗らねばならない。お開きとなり、駅まで委員長が送って下さる。鳥取名物「牛骨ラーメン」のノボリが眩しい。前年度、米子市で何度も啜った。絶品だった。

 帰路の信号待ちで、次回(2カ月後)も懇親会はあるのか聞いてみた。力強く「もちろん」とのこと。次回は翌朝に他市のミッションを入れず、鳥取市で宿泊することを誓った。

1.jpg

空港のごとき駅前の巨大アーケード。

2.jpg

リノベーション物件。

3.jpg

防火建築帯。

4.jpg

商店街で運営する商業施設「パレットとっとり」。

5.jpg

若桜街道。

6.jpg

智頭街道。

7.jpg

宴の始まり。

8.jpg

どれも絶品。

9.jpg

和牛最高。

10.jpg

名残惜しい夜。

posted by machi at 08:03| Comment(0) | 鳥取県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする