2025年10月14日

第3773夜:すすりんぼうX「国生み」【尾道(広島)】

 千光寺。日本屈指の観光地・尾道の中でも観光客必須ポイントである。歩いて登れぬこともないが、ロープウェイで展望台へ。そこから山を下っていく。ロープウェイなどいつ以来か。 

 ロープウェイ、恐ろしくギュウギュウに詰め込まれる。もう一歩詰めろ、まだまだ乗ってくるからもっと詰めろ的な指示が係員から飛ばされる。都会の朝の満員電車クラス。

 風景など観れたものでないが、3分ほどで展望台に付く。そこにはロープウェイの苦行を忘れるほどの絶景が広がっている。これが、しまなみ海道なのか。尾道水道なのか。神秘的ですらある。天孫降臨、天地開闢、国生み…。スケールの大きな熟語が頭を過っていく。

 2024年9月から月1回ペースで尾道に通うようになり、この日が5回目。最終回でもある。これまで海沿いの海岸通りかアーケード商店街しか経験なかった。上から全体を眺めることである疑問点も解消。百聞は一見に如かずとはよく言ったものである。

 千光寺へ。太古に創建されたという。よくこんな急斜面にと感心する。岩山なのか、本堂のすぐ真上に巨大な岩が積み重なっている。境内は参拝客でびっしり。

 尾道の観光客はとにかく若い。カップルか若い女性同士など。日本人比率も高い気がする。この日は2月の平日。閑散期でもお構いなしのパワフルさである。

 商店街連合会T垣会長が作務衣を着た男性と談笑されている。30年ぶりにバッタリ会った小学校の同級生という。その男性、千光寺のご住職だった。参拝客で溢れる境内で、ご住職御自ら様々なお話を聞かせて頂ける。役得の極みである。

 文学の小道を下っていく。猫の小道も下っていく。コンパクトなまちなかに魅力がこぼれんばかりに溢れている。

 下山完了。ミッション開始まで50分。昼飯はもちろん尾道ラーメン。会長絶賛の2軒のうち、1軒は定休日ゆえ海岸通り別の1軒。

 行列ができている。店内はカウンターだけが8席ほどらしい。激シブの外観で、営業時間は11時から13時とある。私が絶対に訪れることのできない時間帯である。

 30分ほど寒風の苦行を耐え、店内へ。T垣会長は昔からの常連でイカついオヤジさんと談笑。会長の「あっさり&硬め」というイチゲンなら追い出されそうな注文もオヤジさん快諾。

 メニューはざっくり2種類。「中華そば」と「中華うどん」。それぞれに並と大がある。どこにも「尾道」の文字がない。地元に愛され続けているからこその表記である。

 私は「中華そば」の大盛にゆでたまご追加。程なくしてブツ降臨。黒目がハートになるセクシーさ。麺はストレートだが黄色い。スマホを取り出そうとして、辞めた。「撮影禁止」とあるからだ。隠し撮りしても音でバレる。会長に御迷惑をかけるわけにはいかない。

 ミッションは20分後に始まる。啜り終え、移動し、セッティングせねばならない。冷え切った顔と体が湯気とスープで恢復していく。

 私はあまり背脂を好まないのだが、背脂自体が衝撃の旨さ。至福の熊啜。しかし、麺が減らない。思った以上に量が多い。「もち米入り白米」という惹きの強いモノはスルーして正解だったかもしれない。

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ポスターより。

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しまなみ海道。

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尾道水道。

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巨石下の御堂。

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屈指の人気店(店内撮影禁止)。

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2025年08月17日

第3737夜:経験貯金【尾道(広島)】

 アクセ。銀座や麻布台ヒルズで数店舗、中国四国地方で数店舗展開されている日本屈指の高級アパレルショップである。このようなお店に私は全く御縁ないが、アクセグループを率いるのが尾道市中心市街地の商店街連合会を統べるT垣会長である。

 新年一発目の出張となった尾道に、4回目にして初めて宿泊することに。理由は一択。商連の皆さまたちと約10人で開かれる懇親会に参加するためである。

 ミッション終了後、ホテルに向かおうとするとT垣会長と1階でばったり。会長のご自宅はすぐ近くで、屋上からの景色をご案内頂く。会社でなくご自宅のエレベーターで4階へ。トレンディドラマでしか見たことのない部屋からの絶景。5階の屋上は365度のパノラマ。

 いったんホテルに荷物を入れ、懇親会会場の<蔵鮨>へ。私は道に迷い10分遅れで会場入り。すでに乾杯は終わっていたが、再度乾杯して頂く。ひたすらお詫びする。

 瓶ビールの後は会長おすすめの地酒。私は立場上、10人席の真ん中で会長の正面。冷菜5種、瀬戸内の地魚の刺身盛合せ、鰆煮付、蟹胡瓜酢、河豚唐揚、鱈白子おろしポン酢、握り盛合せ、苺…。尾道でラーメン以外の店は初めて。絶品料理に舌鼓乱打である。

 会長から様々なお話をお聞きする。就職活動、家業、兵法、マーケティング…。スゴすぎる。これほど凄い方に私はどんなミッションをこなせばよいのか。

 21時半ごろお開き。創業100年を迎えた<アクセ>のT垣社長(商連会長)と創業150年とう<梶田時計店>の6代目K田氏と尾道の歓楽街をご案内頂く。T垣会長は尾道で最高級のスナックへ。お通しが正月らしく蒲鉾と黒豆。会長のキープするボウモアや山崎をロックでガバガバやりながら会長からさらにお話を伺う。

 麻布台ヒルズ出店の経緯、内装費、オープン販促費、社員旅行…。私と住む世界があまりにも異なる。天井人である。会長は惜しげもなく様々な経営数値を教えて下さるが、とてもここには書けない。しかし「経験貯金」という言葉が印象に残る。

 意味は何となく推測できるだろう。ただし、私のような凡夫は経験が貯金にならず単なる浪費。経験を貯金にステップアップできるか単なる無駄遣いに終わるかで人生が分岐する。

 会長は学生の頃から現在まで様々な経験を貯金にステップどころかバッケンレコード級の大ジャンプ連発。私は宵越しの金は持たぬとただ浪費だけして何の蓄積にもなっていない。私のような半端が真似しようとすると、すべてを「敬遠貯金だから」と逃げを打つだけだ。

 1軒目開始の18時過ぎから2軒目終了の24時半までたっぷりとお話をお伺いした中で、もっとも度肝抜かれた逸話があった。アメリカ同時多発テロの日、ワールドトレードセンターから1.2qの場所に出張していたという。

 1.2qは、尾道駅から2軒目の高級スナックまでとほぼ同距離。その距離感だけが妙に生々しくリアルだった。

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2025年08月16日

第3736夜:すすりんぼうW「尾道家系」【尾道(広島)】

 尾道家系。尾道ラーメン+横浜家系ラーメンを掛け合わせた激烈ハイブリッドな混合種である。生物の進化を感じさせる。

 2025年初出張地・尾道は温暖な瀬戸内と思えぬ小雪舞う激寒。尾道駅着後、ミッション会場へ向かう。開始は50分後。道中で当然のごとく尾道ラーメンを啜る所存だった。

 アーケード商店街に入ってすぐ、海岸通りへ向ける狭い路地にノボリがはためいているのが視界に履いた。アーケード商店街も海岸通りも尾道ラーメン店でびっしり。軽く20軒があるだろう。路地に入り込むと、カウンターで7席ほどのラーメン店があった。思いっきり家系の店。しかし、尾道ラーメンもあれば家系も、そして冒頭のハイブリッドもあるとの店頭表示。

 飛び込む。旅行客と思しきカップルが旨そうに啜っている。券売機と対峙。マスターに尾道家系のボタンを聞くと、どれも同じと教えてくれた。「チャーシュウ()」に「にくめし」。新年一発目の遠出、気合の注入が必要である。

 ライスの器を渡された。セルフサービスらしいが、「にくめし」でないのか。分からぬままライスをセルフで茶碗に入れて待つ。

 ブツ降臨。強烈に旨そうな家系ビジュアルである。チャーシューびっしりで麺が見えぬほど。ほうれん草と海苔が心強い。

 マスターにライスが入った茶碗を渡す。すると、これでもかというぐらいたっぷりとあんかけそぼろをぶっかけて下さる。「わっしょい!わっしょい!」という幻聴が聴こえる。しかも「おかわりできますからね」の頼もしすぎる一言付き。

 胡椒をパラリし、まずはスープ…。家系の中でもかなりの極上。ただし、どのあたりが尾道なのか分からない。背脂は浮いていないが、ラード風の被膜たっぷりでコクは充分。私は背脂そのものはそれほど好まないので、むしろちょうど良い。

 尾道といえば魚介風味と背脂のコラボ。普段全国各地で啜る家系よりも魚介風味が濃い気がする。このあたりが尾道家系か。麺とのカラミも抜群で、チャーシューは分厚く柔らかく脂身少なく完全な私好み。

 半分ほど啜り、にくめしに挑む。チャーシュー丼みたいなモノと先入観を持っていたが、完全に斜め上に来た。これならチャーシューメンと被らない。生姜の風味が効いており、脳みそが溶けるほどに旨い。夢中でかきこむ。ご飯を大盛によそっていたのでこれで充分。

 残りのラーメンはニンニク、豆板醤、生姜で味変させて一気呵成。家系の汁を飲み干すのは山岡家ぐらいなのだが、こちらのお店の逸品も気づけば飲み干していた。

 大満足で外に出る。寒風が轟いているが、私の体は芯から暖かい。鼻息荒くミッション会場へ歩を進めた。

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posted by machi at 07:47| Comment(0) | 広島県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする