2016年07月05日

第1488夜:あわびラーメンの秘密【釜山(韓国)】

 参鶏湯(サムゲタン)。鶏肉ともち米をメインに様々な漢方系具材を煮込んだ韓国の伝統薬膳料理である。家庭料理なのか高級料理なのかよく分からぬが、30年以上前に読んだ某グルメ漫画でも紹介されていた。余談だが、私は小学校低学年からグルメ漫画愛読小僧だった。

 前夜早めに爆睡し、すっきり快適な釜山の朝。ホテルから徒歩90秒ほどにある朝7時から頼もしく開いている<釜山参鶏湯>で同行氏らと朝食を取ることに。日本語が完璧にOKのお店であることも力強い。店に入ると流暢な「いらっしゃいませ〜」。耳に心地よい。

 打合せや名刺交換もない単なる自腹視察旅行の醍醐味は朝酒である。瓶ビール3本注文。よく冷えて最高。胃袋に沁み込む。韓国海苔がビールのお通し。絶妙のツマミである。

 屋号にもなっている参鶏湯を試したいが、私にとって参鶏湯は朝ではなく夜に酒を呑みながら味わう料理。何故なら神戸新長田時代の駆け出しだった20代半ば、新長田駅前の<遊倶楽部(現:居酒屋てんてん)>というパブで夜に参鶏湯をよく食べたからだ。「作ったから食べにおいで」とママからメールが入るとよく出かけたものである。

 ママはたまに昼食の弁当も無料で作ってくれ、会社まで届けてくれた。受付で「アヅマく〜ん」と手を振る。社内から変な目でよく見られたものだ。

 終電を無くすとよくこの店のソファーで寝かせていただいた。地下の店だったので明け方でも真っ暗だが、朝起きるとママが朝食を作ってくれた。「アカンでアンタ、こんな生活しとったら」とママに説教されながら食べた朝飯も懐かしい想い出である。

 私とM氏は「あわびラーメン(9,000₩=900円)」、O中氏は「あわびお粥特上(15,000₩=1500円)」を注文。韓国海苔とは別にお通しが数品運ばれてきた(白菜&大根キムチ・刻み海苔・大根甘酢漬・いりこ)。これらを肴にビールをクイクイやっていると、ブツが降臨。

 啜る前から明らかにインスタントと分かる麺である。中央に小さめのアワビが丸ごと1ヶ鎮座。半熟卵も浮かんでいる。そのビジュアルに思わず苦笑した。

 まずはスープ。……。予想通りのインスタントだが、かなり複雑で奥深い味である。粉末をベースに様々な手が加えられている。そして、強烈に旨い。家庭では決して再現できないプロの妙味を感じさせる。麺もツルツルとインスタントだが、何故かぴったりと合う。

 アワビを取り皿に移し、殻から外して一口で頬張る。……。アワビの旨みがスープに溶け出したからかあまり味がしないが、加熱したためホクホクした食感を十分に楽しめる。O中氏のあわび粥を一口もらったが、これは兜を脱ぎ捨てねばならぬ見事な本格派だった。

 ちなみに我が初の釜山旅行で最も印象に残ったウマスムニダがこのインスタントあわびラーメンだった。完全にイルボン(日本人)向けメニューなのだろう。日本人の「あわび信仰」をよくご存じだ。インスタントラーメンだが、あわび入りで900円。高いか安いか微妙だが、私にはむしろ安く感じられた。日本でこれを出したら、間違いなく苦情が来るだろうけど。

 それから10日後。台湾の台北市内のスーパーでインスタント袋麺「A1鮑魚麺」を捕獲した。日本円で530円(2016年5月4日時点)。超高額である。

 自宅で手順通り作ってみた。パッケージのアワビの巨大さと現物とのギャップに目を剥きながら啜る。……。スープは旨いが、あわびの風味を感じることができない。私があわびを食べ慣れていないからだろう。

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あわびラーメン@釜山参鶏湯。

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早朝営業の頼もしさ。

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日本語表記に安心。

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ビールを頼むと韓国海苔が。

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ラーメンだけでもお通しがたっぷり。

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台湾で捕獲したあわびラーメン。
posted by machi at 07:47| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月04日

第1487夜:エースで4番【釜山(韓国)】

 <NUEVO>。屋号の意味は全く分からぬが、我ら3人がお世話になっている釜山観光ホテルから徒歩1分程度の夜の繁華街にあるモダンでシックで広々としたダイニングバーである。

 驚愕のお通し16皿や悶絶感涙海鮮盛り合わせなどにヒートアップした心の野生を沈めるべく、再訪を誓った海鮮居酒屋から徒歩10秒の冒頭で触れたバーへ。M氏曰く、以前は海鮮料理の店だったそうだが、いつの間にかバーになっていたらしい。

 オープンデッキは満席なので店内へ。バーで禁煙は辛いが、煙草を吸いたければ外に出れば無問題(モウマンタイ)。屋外は寒かったのでちょうど良い。

 ウェイターがメニューを持ってくる。ハングル語だが英語が併載されているので私でも指さし注文可能。3人ともギネス(8,000₩=800円)に。満腹だったがフレンチフライ(10,000₩=1,000円)も追加。私は日本中どの街で呑んでもフライドポテトとウィンナーを注文するが、釜山でもそのスタイルを貫くことにした。

 店内も混み合ってきた。お客は皆20代前半と思しき若々しさ。日本人のオッサン3人は浮き気味である。さすがにこの店で韓国焼酎を飲んでいる客はいない。皆さんビールのようだ。

 先ほど注文を取りに来てくれたウェイターが店内を走り回っている。一人で注文を捌いているようだ。注文を聴くときはメモも取らぬ(取る暇がない)が、腰をほぼ直角に曲げてオーダーを聴く姿勢が見事。天晴な切れ味である。

 他にも従業員はいるようだが、実質的に彼が注文、配膳、会計まで一人でフロアを回している。3人分以上の仕事をこなしている。まさにエースで4番の働きだ。国内外を問わず、最近間近で触れた接客では圧倒的1位の実力である。どの世界でも彼は一流になれるだろう。

 フレンチフライが運ばれてきた。定番のスティックタイプにポテトチップスが一部混在している。ポテチに指を伸ばす。……。おや、温かい。口に運ぶ。パリッとしているのに柔らかい。どうやら揚げたての自家製ポテトチップスのようである。嬉しい不意打ちだ。

 ギネス呑了。再度ドリンクメニューを観る。「Draft Beer」と「Botoled Beer」に分かれてそれぞれ数種類メニューがあった。韓国はボトル一択と思っていたら、生があったとは。

 「Premier OB」という銘柄をピッチャー(1400ml)で注文。値段は14,000₩(1,400円)。エースで4番が私の指さし注文を間違えることなく素早く運んで来て下さった。ブツはしっかり冷えていて、クリーミーな泡もウマスムニダ。グラスで5杯分あった。

 大満足で22時頃店を出た。いったんホテルに戻る。釜山経験豊富な同行2氏は酔いと疲労で眠りにつくという。私は初の釜山ナイト。モッタイナイ。一人で深夜の繁華街を徘徊しようと作戦を練るため何気なくベッドで横になりガイドブックを広げた瞬間、爆睡してしまった。

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バイト(たぶん)の鑑。目線の低さと腰の角度が素晴らしい。

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前は海鮮料理店だったそうな。

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お通し16品&海鮮盛合せ&プルコギで痛飲した後に。

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釜山滞在中唯一の「生」ビール(ピッチャー)。

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揚げたて。
posted by machi at 06:40| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月03日

第1486夜:16皿のお通し【釜山(韓国)】(後編)

 釜山経験豊富なM氏がホテル近くでアタリを付けていたエリアへ。よく流行っている海鮮系料理店が道路を挟んで対面にある。思いっきり地元人で溢れている。

 呼び込み熟女の見事なタイミングに惹かれ<コンポナールコチャ>というお店へ。屋外テーブルに陣取る。名刺を頂いたがハングル語一色で一文字も読めぬので、屋号の読み方をお聞きした。3秒後には忘れそうな複雑怪奇だったので、すかさずレシートの裏に書きこんだ。

 まずはメッチュ(ビール)で乾杯。釜山では基本的に瓶ビールだ。メニューは日本語表記並列なので頼もしい。「海鮮盛り合わせ」(35,000₩=3,000円)と「炭焼きプルコギ」(25,000₩=2,500円)を注文。昼は炭火七厘焼肉だったが、プルコギは別物と推測する。

 メッチュをヤリつつ談笑していると、2回に分けてお通しが運ばれてきた。……。私は顎がハズレそうになった。お通しだけで16皿もある。最早お通しの域を超えている。

 タコ酢、生野菜、サツマイモのフライ、何かの野菜の煮付、コーンチーズ焼、スープ、貝の煮物、辛子明太子、ニンニク酢、玉子焼……。これだけで充分な気分になる。虫を炒った小皿もあった。テーブルの上はすでに空きなし。これらを片っ端から片付けていかねば、メインディッシュが鎮座するスペースを確保できない。

 メッチュをヤリつつ迷い箸を伸ばす。百花繚乱。メッチュは腹が膨れるので韓国焼酎に切り替え。ショットグラスでストレートのまま呷っていく、韓国スタイルの鯨飲方法である。

 オネエさんが空いた小皿を随時下げていく。そして少し空いたスペースにドカンと大皿を投下。思わず目を見開き、うわぁと感嘆の悲鳴を上げた。

 凄まじいスピードでぶつ切りにされた蛸の足がうねり、皿から勢いよく飛び出している。鮑も2ヶ。海鞘の刺身もたっぷり。刺身の「海鮮盛り合わせ」だった。ごま油やコチュジャンに浸して頬張るそうだが、我ら日本人のためにワサビ醤油を別途用意して下さる芸の細かさだ。

 早速動きまくっているタコ足を箸で捉え、ごま油に浸して口に運ぶ。……。コリコリの鮮度が素晴らしい。タコ刺しはボイルしたものか、ほんのわずかに湯通ししたものが日本では一般的。タコしゃぶは半端ない旨さだが、これほど鮮度の良い蛸を口にしたことがない。口の中でもクネクネと暴れている。吸盤が舌に引っ付く。鮑もコリコリ。海鞘も臭みゼロで鮮度抜群。

 第二のメインディッシュであるプルコギも降臨。こちらは食べやすい定番の味。ボリュームたっぷり。コチュジャンも良いが、マヨネーズに付けるとマイルドなジャンク感が増してムヒヒと口角を上げてしまう。

 16皿の無料お通しや海鮮盛り合わせ、プルコギがたっぷり過ぎてなかなか減らぬ。よって焼酎(350ml)を何本もおかわりする。屋外なので少々寒いが、通りの賑わう風景や釜山人の佇まいも目から愛でる極上の酒のアテである。

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ずらり並べられたお通し。これ以外にも登場。

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無敵。

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海鮮盛り合わせ。生蛸大暴れ。

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プルコギ。マヨネーズに合う。

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路上にて。
posted by machi at 11:36| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする