前夜早めに爆睡し、すっきり快適な釜山の朝。ホテルから徒歩90秒ほどにある朝7時から頼もしく開いている<釜山参鶏湯>で同行氏らと朝食を取ることに。日本語が完璧にOKのお店であることも力強い。店に入ると流暢な「いらっしゃいませ〜」。耳に心地よい。
打合せや名刺交換もない単なる自腹視察旅行の醍醐味は朝酒である。瓶ビール3本注文。よく冷えて最高。胃袋に沁み込む。韓国海苔がビールのお通し。絶妙のツマミである。
屋号にもなっている参鶏湯を試したいが、私にとって参鶏湯は朝ではなく夜に酒を呑みながら味わう料理。何故なら神戸新長田時代の駆け出しだった20代半ば、新長田駅前の<遊倶楽部(現:居酒屋てんてん)>というパブで夜に参鶏湯をよく食べたからだ。「作ったから食べにおいで」とママからメールが入るとよく出かけたものである。
ママはたまに昼食の弁当も無料で作ってくれ、会社まで届けてくれた。受付で「アヅマく〜ん」と手を振る。社内から変な目でよく見られたものだ。
終電を無くすとよくこの店のソファーで寝かせていただいた。地下の店だったので明け方でも真っ暗だが、朝起きるとママが朝食を作ってくれた。「アカンでアンタ、こんな生活しとったら」とママに説教されながら食べた朝飯も懐かしい想い出である。
私とM氏は「あわびラーメン(9,000₩=900円)」、O中氏は「あわびお粥特上(15,000₩=1500円)」を注文。韓国海苔とは別にお通しが数品運ばれてきた(白菜&大根キムチ・刻み海苔・大根甘酢漬・いりこ)。これらを肴にビールをクイクイやっていると、ブツが降臨。
啜る前から明らかにインスタントと分かる麺である。中央に小さめのアワビが丸ごと1ヶ鎮座。半熟卵も浮かんでいる。そのビジュアルに思わず苦笑した。
まずはスープ。……。予想通りのインスタントだが、かなり複雑で奥深い味である。粉末をベースに様々な手が加えられている。そして、強烈に旨い。家庭では決して再現できないプロの妙味を感じさせる。麺もツルツルとインスタントだが、何故かぴったりと合う。
アワビを取り皿に移し、殻から外して一口で頬張る。……。アワビの旨みがスープに溶け出したからかあまり味がしないが、加熱したためホクホクした食感を十分に楽しめる。O中氏のあわび粥を一口もらったが、これは兜を脱ぎ捨てねばならぬ見事な本格派だった。
ちなみに我が初の釜山旅行で最も印象に残ったウマスムニダがこのインスタントあわびラーメンだった。完全にイルボン(日本人)向けメニューなのだろう。日本人の「あわび信仰」をよくご存じだ。インスタントラーメンだが、あわび入りで900円。高いか安いか微妙だが、私にはむしろ安く感じられた。日本でこれを出したら、間違いなく苦情が来るだろうけど。
それから10日後。台湾の台北市内のスーパーでインスタント袋麺「A1鮑魚麺」を捕獲した。日本円で530円(2016年5月4日時点)。超高額である。
自宅で手順通り作ってみた。パッケージのアワビの巨大さと現物とのギャップに目を剥きながら啜る。……。スープは旨いが、あわびの風味を感じることができない。私があわびを食べ慣れていないからだろう。
あわびラーメン@釜山参鶏湯。
早朝営業の頼もしさ。
日本語表記に安心。
ビールを頼むと韓国海苔が。
ラーメンだけでもお通しがたっぷり。
台湾で捕獲したあわびラーメン。

