まずは饅頭が運ばれてきた。ポン酢のようなタレに浸して口に運ぶ。……。小籠包に近い味わいか。旨い。思わず首肯する。私のイメージ通り完璧にオーダーが通っていた。
水冷麺の大盛が運ばれてきた。中々の迫力である。昨昼と同じく麺の色は深緑。寒天みたいなものが大量に浮いているが、何かと思いきや氷だった。たっぷりの赤黒い味噌ダレ、千切りキュウリ、ゆで卵の輪切りがトッピングされている。ハサミも置かれているが、これは昨昼に麺をカットしている様子を見たので無問題。私は敢えてカットせずに挑んだ。
スープを啜る。……。強烈に冷たい。辛味噌をスープに溶かして麺もグチャグチャに混ぜると、一気にスープが深紅に染まった。あっさりなので酢と液体辛子をたっぷりぶち込み味を引き締める。麺を啜り込む。……。強烈なコシである。味噌ダレに絡まりウマスムニダ。
金属箸が重く、麺も強烈なコシなので旨いけど、顎も手もつかれる。大盛はいくら啜っても減らない感覚だ。何故か啜れば啜るほど冷たさが増す。大量の氷が溶け出しているのだろう。冷えた口の中に温かい饅頭を放り込むと、ムヒョムヒョ笑いたくなる官能の旨さだ。
レジにこの店の名刺があったので持ち帰る。店の壁面メニューも念のために撮影。すべてハングル文字なのでさっぱり読めない。
その3時間後。釜山港フェリー乗場で暇を持て余していた私は、観光案内所で韓国人のオネエサンに先ほどの店の読み方を聴いた。M氏は隣のソファーで爆睡。O中氏は行方不明だ。
店の屋号は<ジョントンスゥミルミョン>。意味は「伝統ヨモギ冷麺」だった。まさに冷麺一択のお店。深緑はよもぎを練り込んでいたのだ。そして屋号の下にキャプションがあった。読み方は`ミルミョンイヤギ´。「冷麺物語」という意味らしい。ちなみに絶品の饅頭は「じゃがいも餃子」だった。じゃがいもの味は分からなかったが、8ヶ入りでわずか300円である。
私が覚えたメッチュ(ビール)以外のハングル語に`ミルミョン(冷麺)’が加わった。韓国風冷麺といえば、私が知る範囲で神戸(新長田と板宿の「ちょこっと」)と盛岡。山形名物冷やしラーメンは未経験だが、一般的な冷し中華(冷麺)も韓国風冷麺も大好物である。
日本の冷し中華は昼食に啜ることもあるが、盛岡や神戸板宿では焼肉や呑んだシメである。独特の酸味のある鮮やかなノドごしがシメに好適なのだが、あっという間に胃袋へ消える。呑んだ後にはちょうど良い量だが、昼飯なら食べた気がしないかもしれない。ちなみに釜山大学前で啜った水冷麺大盛、盛岡で啜った水冷麺大盛より量は倍、値段は半値である。
釜山最後の食事、華麗な地元密着の冷麺物語で閉じることができた。マシッソッソヨ、チュルゴウォッスムニダ、ットオルッケヨ!(美味しかった。楽しかったです。また来よう!)

水冷麺大盛。ヨモギを練り込んであるので麺は緑色。氷がびっしり。

絶品だったじゃがいも饅頭。