2015年01月07日

第1123夜:いりこはうどんだけじゃない【観音寺(香川)】(前編)

 伊吹島。香川県観音寺市沖合に浮かぶ、いりこの一大産地である。讃岐うどんの出汁に欠かせない。いりこはうどん出汁だけでなく、そのまま食べることで栄養価も高く、様々な料理に応用できる。かっこいいイメージキャラクターも「いりこマン」も活躍している。

 ある秋の昼過ぎ。2度目の観音寺訪問となった私は、うどん県に訪れたにも関わらず、うどんを啜る暇がなかった。観音寺駅前にはざっと見渡しても見当たらない。駅前の観光案内所で観音寺うどんMAPを捕獲する。かなりの軒数だが、徒歩圏内は少なそうだ。

 私は訪問する商店街の近くにある一軒に狙いを定めた。空腹である。気持ちを急かせながら店に突撃すると、何故か閉まっている。マップの情報では定休日でも営業時間外でもないはずなのだが…。4秒ほどで気持ちを入れ替えた。まあ、よくあることだ。

 そのまま目的先の<茶屋ガーデン>へ。商店街専務理事のF田氏がオーナーのレストラン。個性的かつ広々とした店内は、若い女性グループやカップルでびっしり。度胆抜かれる。F田氏は観光協会会長も兼務されており、観音寺の魅力を市外、県外、全国、世界に発信すべく日夜獅子奮迅のご活躍をされている。様々なブランド商品の開発も手掛けられている。

 案内されるまま奥に向かうと、F田氏と商店街Y田理事長が遅めの昼食を取られていた。私も同席。定食も魅力的だが、私としてはうどん一択。しかし、レストランなのでうどんはなさそうだ。せめて麺を啜りたい。スパゲティの種類は豊富そうなイメージがある。

 F田氏が「いりこスープスパ」を勧めて下さった。私の空気頭に照明が灯った。観音寺は日本最強のいりこの産地。うどんは数あれど、いりこを前面に押し出したスパゲティがこの店でしかお目にかかれぬはず。心震える素晴らしいメニューである。もしうどんがメニューにあっても、私はスープスパを選択しただろう。打合せしながらも、期待に胸が高まる。

 程なくしてブツが運ばれてくる。……。思わず見とれた。ニンニクとオリーブオイルの香りが食欲をさらに喚起させる。いりこも原型そのままトッピング。その名に相応しい。

 大根おろしと絡めながら啜る。……。目の前に、青空と海とオリーブ畑が広がった。観音寺だけど、なぜか地中海を思い浮かべる。西洋と東洋ががっちり握手している。茹で加減も抜群で、濃厚と淡白が同居するハイレベルな合わせ技。私は夢中で熊啜する。最後は行儀悪いが、直接皿に口を付けてスープごと啜り喰う。最高だ。

 レジ横には様々ないりこにまつわる商品が置かれている。オーナーのF田氏にすっかりご馳走になってしまった私は、「いりこ」と書かれた徽章を購入。さっそくジャケットに着ける。自分自身がいりこマンになったような気分になり、実に誇らしい。F田氏の運転で、お店から1分ほどの商店街事務所に向かった。〔次夜後編〕

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絶品。いりこスープスパ。
posted by machi at 18:48| Comment(0) | 香川県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月08日

第1068夜:お金に不自由しなくなる夢の港町【観音寺(香川)】

 寛永通宝。江戸時代に長年にわたり主力を担った銭貨である。寛永13年(1636年)から幕末まで鋳造され。時代劇の大ヒーロー・銭形平次親分の必殺技としても広く知られている。

 日本の2大銭形といえば、団塊世代以上なら平次親分、アラフォー団塊ジュニアなら「ル●〜ン、タイホするぅ〜!」でお馴染みのあの警部。そして、現実世界における寛永通宝の銭形といえば、香川県観音寺市。寛永通宝が市のシンボルの役割を果たしている。風光明美な港町で、レンタサイクルも人気を集めている。

 2014年8月下旬。残暑が照り付けるも日陰は涼しさも感じさせる正午過ぎ。岡山から特急で1時間。私は初めて観音寺に足を踏み入れた。駅前商店街を散策する。経産省「がんばる商店街30選」にも観音寺商店街連合会が選出されているほど様々な事業を展開されている。

 商店街のキーマン・F田氏に商店街やその周辺をご案内いただく。上市、中央、柳町、中洲本通、駅通、栄町、七間橋の各商店街。区画整理された筋と昔ながらの風情が色濃い路地など多様な顔を見せている。ポケットパークが異様に乱立していることも特徴か。どの店も構えは大きく、昔はさぞ景気が良かったのだろうと忍ばれる。

 「Shop in Shopプロジェクト」が要注目である。一見ひとつの店だが2つ以上の業種が入っているという試みだ。パンフによると、メガネ屋でたこ料理、クリーニング屋の中に餃子屋、仏壇屋の中でビリヤードバー……。実に面白い。期待が高まる。

 様々な店を組み合わせ増やすことで店主同士や客同士のコミュニケーションも生まれ、多様なニーズに応える夢の場所づくりが推進する。「よるしるべ」なる街歩きイベントも魅力的だ。

 風光明媚な景勝地であり観光地でもありそうな観音寺は、四国霊場唯一の1寺2霊場を有している港町。奈良時代の高僧が開山した第68番・69番札所が観音寺・神恵院らしい。

 以前は某冷食メーカーの本拠地であった観音寺は、漁だけでなく加工から流通まで地域内で完結すする一大産業クラスターを形成していた。少々意味が異なるが、6次産業化のハシリといえないこともない。現在は冷食に代わる新たな地場産業への舵転換の最中なのだろう。

 F田氏の運転で高台へ。`いりこの島´が見える。観音寺は今でも良質な煮干(いりこ)生産が盛ん。讃岐うどんに欠かせぬいりこ出汁はこの島が支えているのだろう。

 高台の下は広大な砂浜が広がり、巨大な銭形砂絵「寛永通宝」に驚かされる。サイズは東西122m、南北90m、周囲345m。恥ずかしながらこの存在を知らなかった。外国人(特に台湾人)に大人気という。近くで観るとただの盛土だが、上から観ると宙船に見えなくもない。

 伝承では1633年(寛永10年)、藩主様を歓迎するため一夜で出来たと伝えられている。これを見れば健康で長生きし、お金に不自由しないそうだ。実際、観音寺は裕福な人が多いという。巨大寛永通宝を眼に焼き付けた私もこれからお金に不自由しなくなればいいけれど。

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巨大な銭形砂絵。
posted by machi at 06:56| Comment(0) | 香川県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする