2015年07月25日

第1259夜:眠ってはいけない寝台列車【観音寺(香川)】

 観音寺日帰り駅弁ひとり旅。週に2度目の観音寺。新神戸駅で往復のチケットを購入する際、帰路は観音寺からの特急終電が岡山まで直通しないため、途中坂出でさらに特急に乗り替えねばならぬことを切符売場のステキなお姉さんに伝えられた。親切なお姉さんは行程表もプリントアウト。特急サンライズという車両に乗り替えて岡山まで行くそうだ。

 岡山駅到着後、駅弁2ヶ捕獲。遅めの昼用と、帰路の特急用である。観音寺駅の売店は8時半で閉まってしまい、ローカル駅弁もあることはあるが売切確実。行きの特急車中は「牛肉駅弁大将松茸入り」。冷めてもうまい実力駅弁の調整元は広島三原の浜友さんである。

 パッケージを開けた瞬間、マツタケの香りがプ〜ンと香る。時期は6月中旬。どう考えてもシーズンではないが旨かった。ミッションを控えているため、ノンアルビールで耐え忍ぶ。

 食欲の抑えが効かずもう一つの駅弁に手を出しそうになった時、携帯が着信で震えた。毎週のように通っている八尾市役所からの着信である。電話の先は、優秀な若手職員氏。アヅマさんのものらしき見覚えのあるデジカメが見つかったのだが、という電話だった。

 その2日前、夕方からひたすら八尾ミッションが続き、21時から明け方4時まで鯨飲。その過程でデジカメを無くしてしまったことに気付いた。結局見つからず、観音寺から帰った翌日にデジカメを買わねばならぬと思っていた矢先だった。嬉しくて気持ち持ちも弾む。

 ミッション終了後、特急終電ギリギリなので駅まで車で送って頂き、駅前のコンビニで素早く缶ビールなどを捕獲。終電に乗りこむ。帰路のツマミも岡山駅弁「いいとこ鶏弁当」。歯ごたえありなのに柔らかく、味の沁み込んだ御飯もビールやチューハイのツマミに好適だ。

 30分ほどで坂出に到着。あわただしく下車し、5分後に岡山行きの特急が来るのでホームで佇んでいると、車両が入線してきた。思わず、目を剥いた。異様に立派である。カラーリングも上品かつ美しい。中に入る。まさかの寝台車両だった。岡山終点と思いきや、終点は東京。

 全席指定らしく、私はチケットに記載された場所に行くと、寝台フェリーの雑魚寝部屋のようだが、微妙にマジ切られている。私は、茫然とした。ミッション疲れと心地よい酔いが眠気を誘う。ごろんとなる。畳の上にじゅうたんを引いたような反発力だが、清潔で気持ち良い。

 睡魔に吸い込まれそうになるが、爆睡してしまうと目覚めれば朝6時の東京。どうしても帰らねばならぬため日帰りにした意味が消失する。快適なのに、眠ってはいけないという矛盾。寝てはいけない寝台列車は30分強で岡山到着。後ろ髪引かれながら降りる。かなり乗りこんできたようだが、少なくとも岡山で下車した輩は私しかいなかったように思う。

 私は凄まじいほど新幹線や特急を日々利用しているが、寝台列車がまだ走っていたことに驚愕。乗りテツでも撮りテツでもなく食べテツ(駅弁&駅そば)なので、そのあたりの事情は詳しくない。少なくとも寝台列車は、数年前にエジプトの南部からカイロまで移動して以来だ。

 岡山から新神戸まで30分。新幹線でバーボンをヤリながら、岡山駅売店で捕獲した瀬戸内名物で最近周囲を席巻しているレモン味いか天の姉妹版「すだち味のり天」をツマみつつ、華のお江戸に想いを馳せた。
 
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列車内とは思えぬ。
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2015年07月24日

第1258夜:白味噌いりこだしスィーツ【観音寺(香川)】

 <器屋茶房がらん堂>。観音寺市柳町通商店街のM鍋氏が経営する陶器屋と喫茶がハイレベルで融合している、独特のシュールな雰囲気を醸し出しているお店である。店内は大正ロマン香るレトロな雰囲気。美しいデザインのコーヒーカップなどが店内で展示販売されている。

 ホットコーヒーを飲みながら商店街の旦那衆と談笑する。店内はオペラ風のバロックな音楽がBGMとなり、居心地抜群。M鍋氏は温厚で笑顔のステキな紳士。ガンガン押してくる肉食系商店主が多い観音寺では癒しの存在である。そんな氏を慕い、様々な人が相談に訪れるという。私以上にまさに「よろず相談アドバイザー」である。氏は「当初の想定していた客層と違うのだけど…」と苦笑いしているが。

 旦那衆と様々な案件を打合せしつつ、観音寺の観光を牽引するF田氏が開発中の2種類のスィーツを試食させて下さった。F田氏は豊潤ないりこだし「讃岐の素」の仕掛け人。いりこといえば出汁、いりこ出汁といえば讃岐うどん。いりこを使った定番の概念を覆す挑戦である。

 あくまでも試作品ということだが、見た目は普通のマドレーヌ、もう一つはラスクにしか見えない。香り高いコーヒーとともに、さっそく試してみる。

 まずはマドレーヌから。……。中から白っぽい白あんが。それに潮の香りが漂っている。「白みそいりこだし白あんマドレーヌ」(仮称)である。字面に起こすとキワモノだが、甘いものが苦手な私でも旨い。塩っ気がかなり効いているが、これを徐々に落ち着かせていくという。これから試行錯誤を重ねていくそうだ。正式名称も気になるところである。

 ラスクにも何か文字らしきものが書かれている。これも白味噌いりこだしを使用。塩っ気はより強いものの、万人受けしそうだ。名称もパッケージも楽しみである。観音寺土産の定番だけでなく、讃岐うどんにとって代わって香川名物に昇華するかもしれない。ラスクは文字が書ける。観音寺名物の巨大砂アート・寛永通宝のデザインなどもいいだろう。

 雑穀民族の日本人は欧米人より腸が1.5倍も長いらしく、乳酸菌が必要らしい。ヨーグルト1ヶ分の乳酸菌は白味噌小さじ1杯に相当するという。健康志向にもマッチしている。ビールやチューハイは厳しいが、ウィスキーや焼酎などの蒸留酒にはこのスィーツは合いそうだ。

 頭が茹りそうなほど濃密な勉強会終了後、<萬月>さんで懇親会。メガジョッキ生(1g)が喉に沁みる。3時間喋り倒したあとなのでなおさらだ。柳町で雇用したS氏(25歳)も参加。商店街としてを2年かけてタウンマネージャーとして育成したいという。

 山崎ハイボールに切り替え、メニューから讃岐名物を探す。「さぬきコーチンポン酢和え」があった。名古屋以外にもコーチンがあったとは。皮はカリカリ、肉は歯ごたえがあるのにジューシー。確かにコーチンの味わいであるだ。

 香川といえば讃岐うどん。観音寺も御多分にもれずうどんのメッカだが、駅周辺で見かけない。観音寺訪問3度目なのだが、一度として定番のいりこだしの効いたさぬきうどんを食していない。これまでにゅうめん、スパゲティ、スィーツを食してきたけれど。いりこだしさぬきうどんへの道遠し。

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いりこ風味のマドレーヌとラスク(ともに試作品)。
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2015年01月08日

第1124夜:いりこはうどんだけじゃない【観音寺(香川)】(後編)

 観音寺の地域資源は凄まじいほど豊富である。いりこ、歴史、寛永通宝、風光明媚、空海上人ゆかりの史跡、四国88か所、巨大砂絵、そして瀬戸内全域で仕掛けられている島アート。他にも商店主だけでなく様々な観音寺ファンが市内外を問わず集まり、日夜様々なイベントやユニークな企画を手掛けられている。それらを統べるのが、理事長とF田氏だ。

 悩ましいテーマもあるが、じわりじわり前へ進むたっぷりロングランの勉強会を終え、理事長とF田氏とホルモン系居酒屋へ。店内は若いカップルたちで溢れている。街なかはご年配が多いが、若い人が集う店も数多くあるようだ。

 地酒の杯を重ねる。甘目のどぶろくはジョッキで。口当たりが良く、呑み過ぎると轟沈しそうだ。タラを使っていない名産の蒲鉾が実に旨い。歯ごたえ抜群。淡白かつ奥深い旨みが広がる。観音寺の恵みを堪能する。談笑は尽きることがない。

 店を出る。F田氏が蕎麦を喰おうと私を誘う。おや?うどんではなく、蕎麦なのか。氏の後ろをついていく。真っ暗な路地を歩む。地元人にしか分からぬ真っ暗な回廊を進むと、思いっきり重厚と歴史ある店構えが眼前に浮かぶ。料亭または割烹の老舗<とらや>さんだ。観音寺は老舗が多い。ちなみにY田会長は160年、F田氏は300年以上続く御家柄。

 明らかに上品かつ裕福そうな紳士がカウンターでゴキゲンにされている横で、F田氏は釜揚げそうめんを注文。そもそも、メニューに麺類はどこにもないが、地元有力者であるF田氏ならではの裏メニューであるようだ。私は2束茹でていただく。

 地酒を再度やりながら談笑していると、グツグツとブツが運ばれてきた。釜揚げうどんは経験済だが、釜揚げそうめんは未だ童貞。素早く喰わねば伸びてしまう。

 いりこがたっぷり効いた出汁に薬味をぶち込み、熱々を浸して啜る。……。口の中で、いりこの凝縮した旨みが弾けた。目の前に砂浜が広がる。陽光が差し込み、海が煌めく。ノドごしも最高最強。あっという間に眼前から消えた。私は、しばし放心した。

 まだ40代という4代目ご当主と若奥様から「富座帳」(大正15年)を見せていただく。そのまま触ることすらはばかられる財産だ。慎重に捲る。達筆が踊っている。ビィル、ハンバーグなどをハイカラな文字も。これは、世界商業遺産である。余談だが、世界遺産は不動産にしか指定されず動産には指定されないことをつい最近知った。

 ほろ酔い加減でホテルへ向かう。秋の夜風が火照った顔に心地よい。昼はスープスパ、夜のシメに釜揚げそうめん。うどん県でのまさかのうどん外しだったが、讃岐うどんに外せぬいりこを外すことはなかった。

 観音寺。2度目の訪問だったが、宿泊は初めて。私はオヤジだが、日本中から若者が町おこしの応援のために観音寺へ集まる理由が少し分かった気がした。

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観音寺商店街が誇る両巨頭と。

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感動、釜揚げ素麺。

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特別に見せていただいた大正十五年の富座帳。

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文字から文明開化の香り漂う。
posted by machi at 09:24| Comment(0) | 香川県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする