2011年12月06日

第372夜:ビジネスホテルの隠微な楽しみ【松山(愛媛)】(後編)

 付属のタルタルソースをたっぷりと塗りつけ、かぶりつく。……。白身の王様・鯛の繊細かつパワフルな旨みが口の中いっぱいに広がる。残りはタルタルと醤油の合わせ技で楽しむ。

 地酒に切り替えた。私が産直ショップで購入したのは、日本酒ではなく小麦焼酎。「麦」焼酎でなく「小麦」焼酎だ。愛媛県産小麦を100%使用した梅錦山川梶i愛媛県四国中央市)の「一遍」。700mlで1200円程度。麦はこれまでも浴びるほど呑んできたが、小麦は初めてだ。

 いったん部屋を出て、製氷機コーナーでアイスペールにたっぷりと氷を補充する。部屋備え付けのグラスに氷を放り込み、ロックで味わう。口を付けてみた。……。ウィスキーのような香りと味わいである。芋、麦、米の三大定番以外にも黒糖、栗、紫蘇、昆布など様々な焼酎を試してきたが、これは初めての味わいである。スッキリとしつつ、深い味わいだ。

 なぜ「一遍」か。一遍とは人の名。浄土宗の一宗派・時宗の開祖で、松山市道後に生まれたらしく、誕生碑もある。このようなラベルのウンチクを読みながらホロ酔うのもオツなものだ。

 続いて「じゃこカツ」。じゃこ天は愛媛名産として一般的でコンビニでも売っているが、フライにしたものは初めて。ジャコ天のシンプルで強い旨みに油のコクが加わり、無敵である。補充した醤油を垂らすと、さらに小麦焼酎が進んでしまう。

 シメは「サゴシの押し寿司」。瀬戸内の魚・サゴシのバッテラ風だ。酢がしっかりと効き、昆布が臭みを消す。上品な脂が口の中で溶ける。

 アイスペールの氷が溶けてきた。最初はロックで、途中から溶けた水をグラスに注いで水割りに。キンキンに冷えた水で焼酎の味に変化を付けることができる。

 禁断の一人ホテル呑みのお伴は、活字ではなくTV。地上波ではなくBSの旅番組かスポーツがおススメだ。旅番組はマニアックなほど良い。ちなみに、有料放送(おわかりですね)は目が釘付けになり、サケやサカナどころではなくなってしまうので「ながら晩酌」には向かない。

 世界水紀行、ローカル線の旅、バスの車窓から、自転車つれづれ二人旅、奥の細道を行く、こころの原風景、修験道の道を歩く、イスラーム世界の建築を訪ねて、発見日本の旅歩き、故郷浪漫紀行、鉄道絶景の旅、ぶらり途中下車の旅、世界温泉遺産、にっぽん歴史街道…。恐ろしく地味だが、一人ホテル呑みには豪華なラインナップ。BGMとしても心地よい。

 私がたまたま松山のホテルで回したチャンネルは、某有名報道番組の解説委員が福岡県南部を紀行するシブ過ぎる内容。時事ネタや大事件には鋭い舌鋒の解説委員も、へえ〜、はぁ〜としかコメントのしようがないユルすぎる取材先がほとんど。地元の名産を不味そうに食べている表情もステキだし、死力尽くして感想を述べようとするもほめ言葉がなかなか浮かばない様子などは、衛星放送の醍醐味だ。衰退しきっている商店街をガチで訪問し、カメラの前で店の人に「寂しいですね〜」という会話の掴みも猛烈である。

 旅番組を横目に地酒と地元の名産惣菜を一人旅先のホテルで味わう。隠微だが止められないオトナの楽しみである。

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松山名産惣菜を揃えたビジネスホテル一人晩酌

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
ほぼ十三オフィスで久々のカンヅメ仕事。
posted by machi at 06:26| Comment(0) | 愛媛県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月05日

第371夜:ビジネスホテルの隠微な楽しみ【松山(愛媛)】(前編)

 <みしょうMIC>。松山市の中心地・松山市駅地下街「まつちかタウン」で営業する愛媛県産にこだわりを見せる産直ショップである。

 2012年3月ごろまで毎月松山に訪問している私にとって、一日の癒しと明日への活力を得るための夜の店選びは、失敗の許されない神聖な行為である。

 松山はおそらく四国随一の繁華街を誇る。呑み屋の数も凄まじい。ホテルの飲食店マップだけでも数十軒軽く掲載されており、店選びそのものに疲れてしまう夜がある。

 初めて訪れる街、年に1回もしくは5年〜10年に1回しか訪れない街ならば、土地の名物と旨い酒を求めて這ってでも夜を徘徊するが、月1回訪れている街では気持ちにゆとりがある。

 翌日の朝一番会議を控え前夜に松山入りした私は、ホテルにチェックインする前に繁華街ではなく駅近くで軽く一杯を考えていた。ただし、その夜はそれほど強い気持ちを持たなかった。

 何となくピンとこず、地下街を抜けてそのまま銀天街商店街に上がろうとした時、愛媛産直ショップが気になった。訪問するたびに前を通っているのだが、足を止めたのは初めてだ。

 店頭に並んでいる惣菜群に目を移した。一般的な家庭惣菜だけかと思いきや、郷土色豊かだった。興味を引かれた私の中で、何かが弾けた。今夜は愛媛県産の総菜と地酒にこだわったホテル一人晩酌の決行が閃いたのだ。

 店の中をグイグイ徘徊し、惣菜や地酒を買い揃えた。フカの刺身なるモノもあった。おそらくサメだろうが、部屋で一人サメの刺身を味わうことはあまりにもシュールなので断念。その他、加熱調理や切り分けが必要な食材も断腸の思いで振り切った。

 パック持ち帰り惣菜に欠かせないのが調味料である。一人ホテル呑みに欠かせない最強調味料コンビは、醤油とマヨネーズ。このコンビの守備範囲はイチ●―選手よりも広くカバーする。

 これまでもパックの刺身や寿司などを入手し、ホテルでイザ楽しもうとする時、醤油がないことに気づき、何度絶望したか分からない。

 産直店の調味料は1年以上使えそうなたっぷりサイズばかりなので、コンビニで100mlプチペットボトル醤油を購入。準備を整え、繁華街にある<ホテル1松山>にチェックインした。

 最上階にサウナと露天風呂を兼ね備えた大浴場がある。サウナで毛穴を開いた後、水風呂でキュッと毛穴を閉める。誰もいない露天風呂で一人羽を伸ばす。とろけそうだ。

 部屋に戻り、自販機の缶ビールを3分の2ほど一気呑み。一息ついてから冷蔵庫から晩餐を取りだす。ひとりほくそ笑みながら、隠微な楽しみの開幕である。

 初の総菜は白身フライである。しかし、ただの白身ではない。鯛である。私は今まで鯛のフライなど味わったことがない。分厚い2枚入りで、わずか280円だ。〔次夜後編〕

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松山市駅地下街「まつちかタウン」<みしょうMIC>

≪蛇足:週末のあ〜ほボイルド≫
岩手県宮古市から帰神。それにしても先週は豊後高田(大分)→中津(大分)→北九州黒崎(福岡)→飯塚(福岡)→北九州若松(福岡)→福山(広島)→松山(愛媛)→盛岡(岩手)→宮古(岩手)。自分でもボーゼンと呆れてしまった。
posted by machi at 06:37| Comment(0) | 愛媛県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月27日

第346夜:80分だけ文豪気分【松山(愛媛)】(後編)

 大理石を惜しげもなく使用した高級感たっぷりの霊の湯を楽しみ、浴衣に着替えて個室に戻ろうとすると、スタッフの方から「神の湯」も進められた。私のコースは、時間内(80分)なら両方の湯を楽しめるのだ。迷わず向かった。

 広々とした歴史を感じされる脱衣場、洗い場に湯船。大賑わいである。観光客も多いが、明らかに地元の年配常連客が多数を占めているようだ。石鹸やシャンプーの備え付けもなく、完全な下町風銭湯である。大きな違いは、湯船の中央にどっしりと鎮座する湯釜の存在である。こんこんと良質の温泉が流れ出している。

 先程は静謐の世界を楽しんだ。今度は賑わいあふれる下町風情に目を細めた。風呂に浸かっている最中から、肌がツルツルスベスベになるのを実感できる。

 再度白鷺模様の浴衣に着替えて、3階個室に戻った。せっかく風呂に入ったのだが、汗が引かない。扇風機を回し、ウチワで煽ぎながら涼を取る。

 程なくして、コースに付いているお茶菓子が運ばれてきた。輪島塗の天目台の熱い緑茶と、名物坊っちゃん団子である。熱いお茶を呑むことで、逆に一服の涼しさを感じることができる。

 道後温泉は大昔から偉人や文豪に愛されてきた。古くは大国主命氏や聖徳太子氏、万葉の歌人山部赤人氏に始まり、小林一茶氏、正岡子規氏、与謝野夫妻をはじめ、明治期の大物政治家らも名湯に親しんでいる。

 道後温泉、特に本館を決定的に世に広めたのが、文豪・夏目漱石氏の『坊っちゃん』である。夏目氏自身も松山の中学に教師として赴任した際、幾度となく通っていたそうで、小説中に「角田の温泉」として登場している。現在も館内3階に「坊っちゃんの間」として、夏目氏が通ったころのままの状態の一室が保存されている。

 汗が落ち着いてきた。ごろんと横になって少し体を伸ばした後、縁側に移動した。ウチワで煽ぎながら、眼下の往来を眺める。日々の疲れがフワフワと体から抜け出していく。ぼんやりを楽しんでいると、急にザザっと雨が降り出した。雨の匂いが部屋に入ってくる。とてつもなく風流である。

 数えきれないほどの偉人、文豪、大物たちが、この本館の、もしかすると私がいる同じ間で同じように縁側に佇み、日々の疲れを癒しながら、様々な文学の構想を練り、維新の元勲たちは明治、大正時代の日本の行く末を案じていたのかもしれない。

 至福の80分だった。風呂上がりに縁側で涼みながら、私がいる和室で寛いでいた文豪や偉人たちの思想に想いを馳せようとした。私も何か思想しようとした。しかし、できなかった。縁側の眼下に見えるレストランの「湯上りのビール冷えてます 道後BEER」という看板、ノボリが気になって仕方なかったからだ。

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風情と贅沢の道後温泉3階個室

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縁側からの眺め

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
現地マネージャー候補の入E氏が大活躍する北九州黒崎地区「第4回黒崎はしご酒大会」に参加。私はステージ上で出陣の掛け声という大役を仰せつかる。終了後、さらにはしご酒を決行。
posted by machi at 08:09| Comment(0) | 愛媛県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする