2012年01月12日

第393夜:出来たてじゃこ天【松山(愛媛)】

 じゃこ天。地魚のすり身を揚げた練り天ぷらで、愛媛県、特に宇和島地方を代表する名産品である。松山市内でもじゃこ天を利用した様々なメニューを楽しむことができる。

 JR松山駅改札を出ると、真っ先に目に飛び込んでくるのは立食い&座り食いの店「かけはし」。改札を通った人々が吸い寄せられるように入っていく人気店だ。うどん、そば系以外にも丼や定食もある。私も松山を訪問した際は、思わず暖簾を潜ってしまう。

 注文するのは「じゃこ天うどん」。私は本来そば党なのだが、四国ではうどんをつい頼んでしまう。私が入った時間は中途半端な時間だったためガラガラで、ほとんどのイスは空いていたのだが、駅麺は立食いにこだわる変質的な私は、店内にわずかしかない立食い用スペースを選択。30秒ほどで完成したじゃこ天うどんを手渡してくれた店員さんは怪訝な表情だ。

 唐辛子をパラリと振り、ダシを啜る。……。上品なのにしっかりと個性がある。二日酔い気味の体に染みこむ。麺を啜る。ツルツルプツンプツンとした滑らかな舌触りとノド越しは讃岐風だ。讃岐系は四国を制覇しているようだ。

 じゃこ天を齧る。……。魚の味が凝縮されている。骨まですり潰したような野趣あふれる食感が独特である。色つやなどの見た目は決して良くないのだが、朴訥として自然、誠実にして直球、質素かつ王道。酒の肴にもピッタリの、栄養価あふれる逸品である。

 松山を訪問した際、居酒屋ではほぼ定番として注文するじゃこ天。私の泊まっているホテルの真ん前にある<のものも>という店に入った。ホテル従業員おススメの店だ。ご夫婦と思われるお二人が切り盛りしており、笑顔、接客ともに申し分ない見事さだ。

 瓶ビールを呑みながらテレビでスポーツニュースを見ていると、お通しが運ばれてきた。「煮穴子」とサービスの「宇和島ちりめんじゃこ」。小技の効いた地場の逸品に、心が擽られる。

 私は当然のように「じゃこ天」を注文した。カウンターから厨房が丸見えである。じゃこ天は普通に売っているので、それをさっと炙るだけかなと思っていた。特に気にも留めなかった。

 するとマスターは冷蔵庫からボールを取り出し、魚のすり身を丸めて油鍋に投じた。嬉しいことに、一から作り立て揚げたてを出していただけるのだ。

 濃いめの天つゆに浸されたじゃこ天。私の口の端が上に少し吊りあがる。笑みを抑えきれない。さっそく口に運んだ。……。アツアツだ。熱さとプツンとした歯ごたえの後に、魚の持つエネルギーのすべてが濃縮されたような力強い海の恵みが口の中であふれた。じゃこ天に秘められた実力は強烈である。

 余談ついでに、私が世界で最も旨いと確信する練りテンプラは、北九州市若松地区<○窓>さんの揚げたてテンプラ。今までの世界観が一変する驚愕の美味。ということで、神戸在住の私は今から(2011年12月12日午前)北九州市若松地区に行ってきます。

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<かけはし>立喰じゃこ天うどん

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<のものも>じゃこ天作りたて

東朋治フェイスブック⇒http://www.facebook.com/profile.php?id=100003195746267&sk=wall
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2011年12月14日

第378夜:世界最速鍋焼うどん【松山(愛媛)】

 鍋焼うどん。愛媛県松山市内の中心地を歩いていると、「鍋焼うどん」と書かれた看板、ノボリをよく見かける(気がする)。松山名物といえば菓子類を除けば「鯛めし」と思われるが、鍋焼うどんも名物なのだろうか。

 11月下旬というのに20度を超す暑さが、12月に入った瞬間一気に冷え込んだある日。12時前に高速バスで福山から松山入りした私は、13時開始の会合に備えて昼食を腹に入れることに。銀天街商店街をキョロキョロしながら物色する。寒いので温かい麺を啜りたい。

 銀天街商店街から延びる路地に「鍋焼うどん」と書かれた看板が見えた。<ことり>である。鍋焼うどんは調理に時間がかかるものだが、移動時間を入れても1時間弱あるから大丈夫だろう。引き戸をガラリと開けた。店内はほんわり温かい。

 店内は小上がりもテーブル席もあるが、すべて満席。私も相席させていただく。見渡すと、皆さん鍋焼うどんを啜っている。張り出されたメニューを見ると、わずか2種類というド直球勝負。「鍋焼うどん」(460円)と「いなりすし」(2ヶ240円)のみだ。

 メニューも2種類なので、用語を省略しても通じるだろう。私も常連を気取り、眉間に皺を寄せながら指を1本立て、シブい声を発した。「一つ、お願いします」。

 熟女店員さんは「は〜い、お一つで〜す」と厨房に声を掛ける。キマったな、と一人悦に入っていると、店員さんは私の前に水を置いてくれた。しかし、なかなか立ち去らない。

 私がキョトンとしていると、「460円です」とおっしゃられた。現金前払いだったのだ。常連を気取ってしまったため、店員さんもルールを知っていると思われたのだろう。私はヘコヘコ赤面しながら財布を取り出した。

 鍋焼うどんは調理に時間がかかる。最低10分は待つことになるだろう。店内を軽く見渡し、水を一口飲む。鞄から雑誌でも取り出そうとした瞬間、「お待ちどうさま〜」と運ばれてきた。

 私はテーブルに付いていた肘がガクッと外れそうになった。厨房に声を掛けてから1分も立っていない。40秒程度だろうか。立食いそば級のスピードだ。

 容器は土鍋系ではなく極めて熱効率の良いアルマイト系。フタを外す。湯気がホワリと立ち上る。具は肉、なると蒲鉾、きざみ揚げ、ネギ、玉子焼というシンプルさ。アルマイトのレンゲでダシを口に運ぶが、ダシもレンゲもとんでもない熱さ。そして、とんでもない旨さだ。

 うどんはモチモチの関西風。具も素晴らしいアクセント。常連は冷ますためにフタを器がわりに活用している。夢中で啜り終えた。途中から出てきた鼻水もすすった。

 外に出た。寒さで強張った体がほぐれている。体はホカホカ、心もホカホカ。おそらく日本一調理スピードの速い鍋焼うどんだが、手間暇とサービスはスローフードのようである。

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見るからに旨そうなシブい外観

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シンプルで旨くて安い<ことり>鍋焼うどん

(付記)
フェイスブックとやらを昨日より始めてみました。要領がまだよく分からないシロウトですが、チョコチョコがんばりたいと思います。ということで、ほんのごく一部の方々にご好評いただいておりましたこのバカコラムの≪蛇足≫は、フェイスブックに引っ越しさせていただきます。よろしければ、今後はソチラをどうぞ(⇒http://www.facebook.com/profile.php?id=100003195746267&sk=wall)。バカコラムは今まで通りに継続予定です。これからもご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。
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2011年12月13日

第377夜:鯛めしと亀の手【松山(愛媛)】

 鯛めし。愛媛県宇和島地方の郷土料理である。鯛めしをはじめ、瀬戸内や宇和島地方の様々な郷土料理を楽しめる店<有明>は、伊予鉄松山市駅地下街にある。

 定番と思しき鯛めし定食を注文。瓶ビールで喉を潤しながら、鯛めしの魅力が紹介されたメニューを熟読する。

 鯛めしとは、新鮮な宇和海の生の鯛を三枚におろし、だし汁、薬味、生卵を熱いゴハンにかけて食べる、全国でも宇和島にしかない独特の食べ物であるらしい。2007年、「宇和島鯛めし」として農林水産省郷土料理百選にも選ばれたそうだ。

 瓶ビールを半分ほど呑み終えた頃、定食が運ばれてきた。生卵が落とされただし汁に浸っている鯛をヅケとして口に放り込む。……。甘めのツユがシャキっとした新鮮な歯ごたえの鯛刺身を優しく包んでいる。充分なビールの肴だ。

 ヅケの鯛刺身を2切ほど、小鉢のおからを肴に瓶ビールを呑み終えた。浅蜊と素麺を具にした絶品のすまし汁を一口啜り、心を休ませてから鯛めしの調理に取りかかる。

 調理と言っても、ミニおひつから茶碗に白飯を盛り、ヅケ鯛刺を乗せるだけ。茶碗2杯分の白飯があったので、配分に細心の注意を払いながら1杯目は鯛刺しをオカズに白飯をワシワシ頬張った。……。ヅケ鯛の旨みが白飯に合う。18秒ほどで1杯目を食べ終えた。

 2杯目は、残ったヅケ鯛2切れほどと、つぶさずに慎重に泳がしてきた生卵、鉢縁にこすりつけられていたワサビを一気にミニおひつにぶっ掛けた。海賊の宴会である。

 レンゲを使わず、箸で啜り込むように口にぶち込んだ。……。鯛の淡泊な旨み、生卵の濃厚なまろやかさ、ワサビの鮮烈な爽やかなさ、白飯の上品な甘み、だし汁のコクが口の中でダイヤモンドを築き上げている。ノドを滑るように流れていく。

 瓶ビールを追加した。貝類に目がない私は2種類の初めて体験する貝料理を注文した。

 1皿目は「はしり貝」。緑色の殻に包まれ、爪楊枝で割れ目から引っ張りだすと、ヤドカリの本体のような物体が登場。口に放り込んだ。……。焼きイカのような味がした。

 勢いに乗った私は2皿目に‘亀の手’を注文した。‘亀の手’とは「せい貝」が正式名称。見た目は緑がかっており、亀の手にしか見えない。

 食べ方が分からずまごついていると、店員熟女がご教授して下さる。両側を持ち、軽くヒネリながら引っ張る。柔らかい殻が二つに外れ、その片側にピュっという感じで身が付いている。それをチュッと味わう。淡泊で旨みだ。

 たっぷりとある亀の手のさばきにも慣れてきた。楽しくなり、勢いよくヒネって千切ると中の汁が思いっきり飛び出して、目も鼻の穴もワイシャツもビシャビシャになった。

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鯛めし定食

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はしり貝

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亀の手(せい貝)

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
終日北九州市黒崎。夜は泥酔。
posted by machi at 08:52| Comment(0) | 愛媛県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする