強烈な押しに負けていわし煎餅540円を買った足で、その隣の<小松まぐろ専門店>へ。大トロ、中トロ、ネギトロ、赤身、そのミックスなど様々なバリエーションのマグロ丼が超リーズナブルに楽しめるという。その前夜、地元商店主に午前11時までに入店することを強く勧められた。それ以降は満席になってしまうからという。
時間は10時前。店は市場らしく9時に開いているようだ。中途半端な時間のためか、客は誰もいない。最初にレジで注文して支払いを済ませるタイプである。
大トロ丼でも1500円、その3種ミックス(大・中・赤身)でも1000円ちょっと。私はデブメタボだが、鮪は赤身が一番好き。赤身丼はなんと550円である。
少し申し訳ない気分にもなり、いくら(200円)をトッピング。熱いお茶で体を温めていると、ブツが運ばれてきた。鮮烈な赤身の眩しさである。鼻息が荒くなる。大きめの御飯茶碗というサイズだが、みっしりと米が詰まっている。牡丹のように花開いたマグロの中央に、いくらがたっぷり乗っている。その横の食用菊の黄も鮮烈な指し色だ。
まずは味噌汁を一啜り。じんわりと旨い。五臓六腑に沁み渡る。昨晩の酒が浄化されていく。醤油をぶっかけず、小皿に醤油とワサビを研ぐ。赤身を一切れ箸でつかむ。醤油にたっぷり絡め、口に運ぶ。赤身特有の上品かつ豊潤、ワインのような旨みが口の中に広がる。
呑み込む前にすかさず米に食らいつく。ほのかな酢飯だった。マグロを頬張りつつ、酢飯バクバク。マグロと酢飯をバランスよく腹に入れていく。思わず目を細める。口角が上がる。極上の刺身でご飯をグイグイ呑み込む感覚。日本人で良かったとシミジミ感じる瞬間だ。
時折味噌汁を啜り、漬物でアクセントを奏でる。マグロをすべて食べ終えた。後は御飯が5分の1、そして、手を付けずにおいたイクラである。
醤油ワサビをここで一気に垂らし、一心不乱に食らいつく。ノドをグイグイ押し広げていく感触が官能的である。いくらのコクと旨みが酢飯に絡みつき、そこに醤油とワサビの絡みと塩っ気が包み込む。
私は、絶頂した。あっという間に食べ終えた。しかも、ホンマグロであるらしい。出発に余裕がある朝、ぜひ市場に足を運び、朝からマグロ丼を味わっていただきたい。酒田の醍醐味である。地酒が呑みたくて狂おしくなるけれど。隣接店舗のワンタンメンも魅力的だけれど。

格安絶品「赤身丼」(550円)にイクラ(200円)をトッピング。

綺羅星のごときメニュー群。