2016年02月22日

第1394夜:手帖の大冒険【酒田(山形)】

 手帖。酒田での定宿<若葉旅館>でPC仕事の途中、手帖でスケジュールを確認しようとしたら、手帖そのものが見当たらない。スーツケース、ポーチ、ポケット、どこをひっくり返しても出てこない。どこかで置き忘れたのだろうか。時は初冬である。

 来年3月までの予定をびっしり書き連ねているアナログの私はバックアップなど軽く無視。思い当たるフシはないか。……。羽田空港の搭乗口でPCしながら手帖を開いた記憶がある。

 PCで「羽田空港・忘れもの」と検索。すぐに専用ダイヤルが表示。便利な世の中だと感心しつつ、すぐに電話。待たされるかと思いきやすぐにオペレーターの若いお姉さんらしき声。手帖の特徴を申し上げ、しばし待つ。

 ……。姉さんが再度電話口へ。一言目の口調から届いていないことが最後まで聞き終わらずとも伝わった。やはり見つからぬか。

 その後A●Aで羽田から庄内空港に向かったのだが、手帖を開いた記憶皆無。鬼揺のためPCせず、ひたすら『週刊文春』ミステリーベスト10特集を熟読していたことしか覚えていない。余談だが年度末の各種ミステリランキングは私の楽しみである。

 あまり期待せずAN●の遺失物センターをネットで調べ、電話してみた。すぐにオペレーターの若い女性(推測だが間違いなし)が電話口に。便名、座席番号を申し上げ、しばし待つ。

 姉さんが受話器に戻って来られた。名前を書きこんでいるかと聞く。手帖に我が名刺を張りつけている。未だに半年前(2015年4月)に引っ越した新事務所の住所と電話番号を覚えていないからだ。

 名前と名刺貼り付けを伝えると、「アヅマさんですね!はい、届いております!」とものすごく弾んだ声で吉報を伝えて下さる。私も諦めていたのですっかり有頂天だ。

 手帖は今、羽田空港にあるという。私と一緒に庄内まで来たが手帖だけ羽田に引き返したらしい。これから羽田から庄内へ飛行機で送るので明日空港で受け取ってほしいとのこと。最高最強のご対応である。

 その後、旅館の女将さんから前回忘れていた(らしい)カミソリと髭剃り用携帯ムースを手渡された。忘れていたことすら忘れていたが、手帖に続き幸運といえよう。 

 翌朝、無事空港カウンタ―で手帖を受け取る。感謝の洪水である。搭乗ロビーでPC猿打していると、館内放送が聞こえてきた。使用機材が雷の直撃を受け、点検のため20分ほど出発が遅れるという。

 私は羽田から伊丹へ乗り継がねばならぬが、間に合うだろう。すると、再度館内放送が。再度点検に時間を要しさらに遅れるという。ギリギリかもしれない。

 再度PC猿打していると3度目の館内放送が。さらに遅れるとのこと。やむをえない。雷直撃の機材点検。入念にお願いしたい。まあいいかと手を抜かれて墜落などしたら悲惨である。

 近くに座る東京在住と思しきオヤジが笑いながら激怒するという昔の竹●直人氏のギャグのように係員さんに詰めよっていたが、私の心は何の波も立たなかった。手帖を幾度となく飛行機に「一人で」乗せて頂き、親(私)の元に送り届けて下さったのだから。

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我が2015年版手帖。
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2016年02月21日

第1393夜:続・店主におまかせ【酒田(山形)】

 酒田中通り商店街プランづくりコース4回目。2015年5月から12月までの間で計11回の勉強会。この間、私にとって本当に様々なことが起きたが穴を空けることなく完遂できた。

 勉強会終了後、私の酒田ラストナイトは<笑快晴>。この店は酒田だけでなく全国でも屈指。いつも大人気だが、我々は会議終わりの21時以降に足を運ぶ。一回転もしくは二回転後なので予約せずとも何とか席を陣取ることができる。

 店主おまかせコースが無敵。1500円から2500円まである。前回は2000円コースでも大満足大感涙だったので期待に胸がはち切れそうになる。取り急ぎ生でガツンと乾杯だ。

 まずは胡麻豆腐(たぶん)。醤油を掛けずとも絶品の歯触り。蕩けそうである。続いて刺身5種盛り。一人一皿、それも各々数切れづつ。赤海老、鯵、平目、金目鯛、マゴチ。地魚のタップダンスに笑みが止まらない。すかさず熱燗に切り替える。刺身を口に含み、熱燗で追いかける。庄内の海が口の中で激しく満ちてくる。

 目の前に固形燃料式ミニ鉄板が設置された。その横はズラリと並べられた牛タンの味噌漬け。しっかり火を通し、少し焦げ目が付く方が旨いらしい。この店で初の「獣肉」である。

 ジュージュー音を立てだした。香ばしい匂いが立ち込めてきた。まずは何もつけずにそのまま熱々を口に運ぶ。……。味噌焼きは初めてだが、イケる。糸唐辛子を絡めても見事だ。

 続いて極厚の切身の煮付。ブリか、ハマチか…何と「さわら(鰆)」だった。魚偏に春と書く瀬戸内春の風物詩。酒田では脂の乗った鰆が秋に取れるという。魚偏に秋で「鰍(かじか)」のようだ。たまたま今回の出張中、夢枕獏先生の西行法師の視点から描いた夢枕版平家物語『宿神』(朝日文庫)を呼んでいた。ヒロインの一人が「鰍(かじか)」であることを思い出す。

 分厚い切身を口に運ぶ。……。鰆である。しかし、脂が乗っている。これが上品な出汁で軽く煮付けられ、クドさが消え純粋な旨みに昇華している。この後、かに玉のごとき餡かけ玉子が運ばれてきた。満腹なのにスルスルと入る。この旨さ、底なし天井なしである。

 店主にお任せ、外れなし。感動の余韻に浸りながら旦那衆らと談笑していると、最後の一品が運ばれてきた。天ぷらである。一人3ヶ。そのうち2ヶが牡蠣である。完全に幸せのノックアウト。私は最上川に身投げしそうになった。

 24時ごろ解散。ラストナイトなので、何か呑んで帰りたい。旅館途中の明け方まで開いているバー<アバディーン>さんへ。私も常連になり、マスターも常連さんも私のことを覚えて下さり話しかけて下さる。若い女性の「んだんだ」「んだの〜」という酒田方言が耳に心地よい。

 常連さんやマスターと談笑しながらディタソーダで熱燗こってりだった舌、ノド、食道をすっきり洗い流し、マイヤーズやラフロイグに切り替える。するとマスターが「アヅマさん、ハンバーグ召し上がれますか」。

 ハンバーグ?さすがに満腹なのだが…。すると、新メニューを試作しているので味を見てほしいという。嬉しいご相伴である。

 ラムをやりながら、ハンバーグ。……。野趣と洗礼、昼と夜、荒野と星空。ソースが旨い。ハンバーグが分厚い。シンプルな味付けが酒に合う。まさに「店主におまかせ」なラストナイトに私は酔いしれた。

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店主におまかせ、その1。

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店主におまかせ、その2。

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店主におまかせ、その3。

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店主におまかせ、その4。

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店主におまかせ、その5。

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店主におまかせ、その6。

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店主におまかせ、番外編。
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2016年02月19日

第1392夜:暴風雨と岡持【酒田 (山形)】

 岡持。うどん屋やラーメン屋の出前に欠かせないジュラルミン製(かな?)のケースである。最近あまり見かけないかもしれないが、「ド根性ガエル」の梅さんがよく利用していた。

 凄まじい暴風雨の中、庄内空港から昼過ぎに酒田市中心市街地到着。空腹である。歩くのも億劫なので市役所や旅館に近い<五十嵐製麺>さんへ。広々とした店内は最初に券売機ではなくレジでお支払いする独特のシステム。イチゲンにはかなりハードル高い。後ろが使えており、じっくりメニューを吟味する余裕と時間がないからだ。

 しかし、恐れるに足らず。酒田はワンタンメン王国。私もその虜。迷う必要ない。一応メニューを見る。よし、ワンタ・・・寸前で言葉が止まった。よく見ると「タンメン」だった。

 タンメンも好物ではある。特に野菜不足を実感している時、風邪気味の時はお世話になるが、私にとってワンタンメンには及ばない。

 私は、目を見開いた。口が半開きになった。鼓動が早くなった。背中に冷たい一筋の雫が流れた。雨ではないようだ。ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメン、白湯ラーメン、塩白湯、担々麺、焼肉ラーメン、みそ中華(味噌ラーメンとは違うらしい)、冷し中華、ざる中華、冷やしたぬき、もりそば、きつね、かき揚げ、肉……。ワンタンメンが見当たらない。

 この店の定番がどれか分からない。ラーメンなのか、味噌なのか、白湯なのか、それとも担々麺か…。迷ったら、一番端。ラーメンである。ワンタン無しは寂しいので「チャーシューメン」を召喚。この間、恐らく4秒ほどだが1時間以上経過した気分である。

 酒田のラーメンはかなりボリューム満点。スープもナミナミ。酒田では大盛りを頼まないのが私の対処法。すでにこれまで10麺ほど啜っているので、間違いない。しかし、動揺していたのか大盛に。追加料金100円である。

 外はスゴイ雨。マスターらしき方が頻繁に合羽を着こんで出前に行く。壮絶である。備え付けの地元新聞を読みながらボンヤリしていると、ブツが運ばれてきた。……。洗面器サイズである。スープが溢れんばかり。

 チャーシューも分厚く大きなものがたっぷり浮いている。メンマ、ネギという典型的酒田ラーメンスタイルである。見た目は醤油ベースで透き通り気味だ。

 まずはレンゲで一口。……おおぅ‼?思った以上にシャープでパンチのある切れ味である。醤油っぽさを前面に押し出した東大阪・高井田系と思わせる味わいだが、スープを呑み進めるとマイルドでコクがあり、やはり酒田系であることが実感できる。

 ビジュアルは酒田系だが、スープはニューウェーブ系を除けば濃い目。ちぢれ麺のノドごしとスープとの絡み合い具合が絶妙。「〜製麺」という屋号に外れなし。チャーシューが柔らかく肉厚で味が染み込んでいる。豚バラではなくロース(またはモモ)なのでサッパリと頂ける。

 外は地獄。中は天国。マスターが岡持を下げて戻ってきた。そして私が卓上のブツを啜り終える前にまた岡持を下げて店を出ていく。何とも言えない商売人の矜持に腹だけでなく胸もいっぱいに満たされた。

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写真では分かりにくいが、凄まじい暴風雨。

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至福の一杯。
posted by machi at 09:03| Comment(0) | 山形県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする