2019年03月28日

第2159夜:土佐の小京都【四万十(高知)】

 小京都。この愛称で知られる街は日本各地に存在するが、南国高知の小京都といえば「中村」であるらしい。中村は四万十市の中心市街地である。

 ある初冬の遅い午後。中村駅に初上陸を果たした。タクシーで<新ロイヤルホテル四万十>へ。運転手さんから夜の呑み屋情報を色々ご教授頂く。

 ホテルは中心市街地ど真ん中。周囲は居酒屋やスナック豊富。これなら夜は放置プレイを喰らっても寂しくない。念のための捕獲しておいた岡山駅弁「ままかり寿し」が無駄になりそうだ。

 部屋は何故かツインルームにアップグレード。定価は分らぬが1泊素泊まり4320円。16時から大浴場に入ることができ、しかも温泉。神経痛にも効くらしく、痛風の私にはありがたい。

 宿泊客サービスでいろいろ選べる商品の中から「たまねぎかりんとう」を選択。館内の自販機はビールもジュースも価格を上乗せせずコンビニと同じ価格。良心的である。部屋のアメニティも珈琲、紅茶、緑茶がティーバッグだがそろっている。消臭スプレーもある。

 大浴場へ向かう。16時2分なので一番乗りかと思いきや、すでに先客1名。敗北感に打ちひしがれながら体と頭を洗い、温泉へ。絶妙の湯加減。長旅の凝りと滓が毛穴から湯舟に溶けていく。痛風で腫れている足にじかに温泉の効用が染み込んでくるようだ。もう仕事したくない。

 ミッション開始まで2時間。ホテルの市街地マップを見ると、偉人たちのお墓ばかり目立つ。お墓に1rも興味がないので、アーケード街を散策する。

 四万十といえば、私のイメージでは川である。四万十市のキャッチコピーも「川とともに生きるまち いままでもこれからも」。しかし私は以前から自然に全く興味がない。おそらく四万十に来るのは最初で最後。たとえわずかでも散策することで旅情気分を噛みしめる所存である。

 立派なアーケードである。居酒屋も多いが、シブい喫茶店が数軒ある。時計の修理専門店には唸らされた。コンビニもあり、チャレンジショップもある。ちなみにホテルから一番近かった居酒屋の屋号が「常連」。これほどイチゲンが入りにくい屋号もあるようでないだろう。

 今年(2018年)に埼玉県熊谷市に抜かれるまで、四万十市は日本観測史上最恐の暑さの記録地だった。夏場はさぞ暑いだろうが、この日は風が強く冷たい。

 商店街では「第1回まちあそび人生ゲーム タイムスリップしてきた玉姫さま〜」という謎のイベントが半月後に開催されるらしい。第1回というあたりが心騒がせる。

 19時から「幡多商人塾」。幡多は郡の名称でその中に四万十が含まれている。さらに細分化すると、四万十の中心街は「中村」。

 ミッション終了後、呑み屋が多く連なる四万十市の中心街でK知県中小企業団体中央会M崎氏と飛び込んだ居酒屋は<みやざき>。氏は店主夫妻と昔から知りあいのようだ。

 高知名物が味わえるだけでも有難い。氏は生だが、私は痛風が完治しておらずハイボールに。

 お通しはじゃこおろし。いきなり痛風の天敵である。しかし、高知からさらに西の四万十へは2度と足を運ばぬ可能性99%。乗り越えねばならぬ。じゃこ、噛みしめるほど旨味が溢れる。

 刺身の盛合せは鮪、鯨、貝などで構成。そして念願の鰹の塩たたき。鮪も鰹も痛風の敵としてはトップクラスだが、打ち倒す。ハイボール(かなり濃い目)では物足りない。冷やした四万十の地酒(おりがらみ・黒尊)をグラスで並々。

 久々に日本酒を口に運ぶ。……。高知が我が体内に入ってきた。刺身、鰹を口に運ぶ。……。我が全身、黒潮である。太平洋のプリン体をたっぷり含んだ恵みが我が末梢神経にまで染み渡る。

 マスターとも色々話させていただく。鉄板玉子焼きは演出の妙もあり、最高の味わい。あおさ海苔の天ぷらも高知名物。このあたりは痛風にも体にもよさそうだ。

 地酒と旨し料理でタガが外れた。生ギネスを注文。2週間ぶりのビールである。痛風など知ったことか。堕ちるとこまで、堕ちてしまえ。ギネス、旨すぎる。ビールの中でもギネスが最も愛しているかもしれない。しかも、生である。

 お替りしてると、鯨の皮とネギを甘辛く煮込んだ酒の肴に無敵料理がサービスされた。鯨の野趣あふれる風味が葱にも染み込む。鯨の皮は初めてだが、上品な野生。仄かに残るクセが旨味を倍加させている。

 大満足で店を出る。周囲はスナックも多い。しかしこの夜はオトナしくホテル直帰。男女入れ替え制のため誰もいない小浴場で体を伸ばし、部屋に戻ってウィスキーをヤリつつホテル備え付け漫画を読みながら寝落ち。

 ちなみにナイトキャップになった漫画は『喰いしん坊!』。フードファイター漫画である。私もフードファイターになれることを夢見ながら。いや、夢は叶えるものである。

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この日はこれでたったの4000円ちょっとだったはず。

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心憎いサービス。

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立派な商店街。

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土佐を満喫。
posted by machi at 07:35| Comment(0) | 高知県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月24日

第465夜:至福と背徳の屋台村【高知(高知)】

 ひろめ市場。高知市内中心市街地商店街に位置し、県内の郷土料理をはじめ様々な飲食店、物販点など60店舗以上が集積した、酒呑みにとっては夢のような巨大屋台村である。

 「ひろめ」とは、高知を「ひろめる」という意味に加え、土佐山内家の名家老の姓が「ひろめ」さんであり、ご家老の屋敷が現在のひろめ市場にあったことが由来だそうだ。

 1998年に誕生し、勢いは衰えず増すばかり。私はオープンして3年後に視察を兼ねて訪れたことがあるが、10年ぶりに再訪して、明らかに以前より凄味と活気に拍車がかかっている。

 施設中央や路地のような一画に、所狭しとテーブルが並んでいる。来場者は酒や店でお気に入りの酒や肴を買い込み、テーブルに持ち寄って堪能するシステム。撤収はアルバイトスタッフがワゴンカートを押しながら巡回し、随時片付けていくシステムだ。ほとんどのテーブルに灰皿が置いてあり、分煙思想を蹴散らす土佐っぽの気風が力強さ満点だ。

 施設自体は8時ごろから開いており、23時まで営業している。店によって営業時間がバラバラだが、10時ごろには飲食系の店が開きだす。

 私が訪れたのは日曜日の10時ごろ。すでに500ほどある席がほとんど埋まっており、すでに生ビールや地酒、料理を楽しんでいるグループや家族連れで激しく賑わっている。慌てて席を確保し、迷路のような酒呑みワンダーランド冒険の旅に出た。

 生ビールと焼酎に加え、様々な店で購入した高知名産郷土料理をズラリとテーブルに並べる。朝10時の生ビールが末梢神経まで沁み渡る。揚げたて熱々の「四万十鶏唐揚」を頬張る。……。ガリっと衣を歯で噛み切ると、肉汁がピュっと飛び出してくる。唐揚と生ビールという龍馬氏&お龍さんばりの相性に悶絶する。

 獲れたてのイワシの稚魚を生のまま味わう「ドロメ」。見た目は生しらすのようだ(分かりにくい例えですね)。ぽん酢をぶっかけて口に運ぶ。……。ネットリとして魚と磯の旨みが凝縮されている。高知に訪れないと味わえない珍味だ。

 アナゴ類の稚魚を生でいただく「ノレソレ」。純白の白で、形状はイカのようだが、よく見るとそれぞれに目があることが分かる。ドロメ以上に希少性の高い晩春&初夏の風物詩だそうである。箸でつまもうとすると、すごいヌメリにツルツルと滑り落ちる。

 そうめんのように口にツルツルと運んだ。……。生臭み皆無。イカでもなく、魚でもないけど魚類ということはハッキリしている独得の食感と旨みだ。

 高知県内の麦焼酎をグビっとやりながら、「田舎寿司」に挑む。にぎり鮨なのだが、ネタが魚ではなく野菜という精進料理さながらの逸品。様々な種類があり、私が購入したのは蒟蒻、筍、茗荷、葱(たぶん)といった陣容。ネタに下味が仕事されており、醤油いらずのヘルシーさだ。

 会場内は席を確保できず途方に暮れている来場者で溢れている。ひろめ市場システムは高知という気風と抜群の施設立地だからこそ最高を生み出しているのだろう。アレンジせず安易にシステムを他の街に導入しようとしても、幸せな結果は生まれない。土地に合ったシステムを一から構築することに勝るものはなし。

 午前中の飲酒がもたらす背徳の酔い心地とともに、高知に訪れないと味わえない至福の空間に陶然とした。

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早朝から呑んだくれで賑わう<ひろめ市場>

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ドロメ(上)&ノレソレ(下)

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ネタを野菜に見立てた「田舎寿司」

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2012年04月23日

第464夜:300年以上の伝統市【高知(高知)】

 日曜市。高知市中心市街地の追手筋沿い約1.3qに約500店舗が密集する日本最大の路上市である。毎週日曜日に開催され、観光客だけでなく地元民も殺到する土佐の風物詩である。

 日曜市の歴史は1690年に遡る。当時の土佐藩主が場所と日取りを定めて市立を後任したことが始まりとされ、現有システムになったのは1876年。300年以上の歴史と伝統が刻まれている。規模と場所は異なるが、約50店舗の火曜市、約90店舗の木曜市、約50店舗の金曜市もある。

 日の出から日没まで開催され、五感に訴えかける魅力満点の商材が簡易テントに溢れている。片側2車線を完全歩行者天国とし、両側に市が並ぶ。私は午前9時に訪れたが、まっすぐ歩けず先も見通せないほどの混雑ぶり。凄まじい活気だ。

 大きなグレープフルーツを思わせる文旦の鮮やかな黄色と酸っぱい香り、真っ赤なフルーツトマトの鮮烈さ、ぬか漬けの発酵した魅匂。筍、生姜、鉢植え、生鮮野菜、魚干物…、数えきれないほどの食材や加工品が溢れている。

 買物モードが炸裂する。私はうるめイワシの丸干や肉厚の原木椎茸などを購入。どれも圧倒的なボリュームと安さで、まさに高知市民の台所といった風情だ。

 数は多いわけではないが、しずる感あふれる飲食屋台も混じって輝きを放っている。朝9時過ぎの私に鼻孔に飛び込んできたのは、人間の理性を狂わせる四万十天然鰻の蒲焼串である。

 思わず購入した。炭火であぶられ、タレで飴色に輝いている。タレをこぼさぬように口に運んだ。……。柔らかく、臭みなく、ホロリと口の中で崩れる。甘さを抑えた辛めのサッパリダレに好感を持つ。思わずカバンに忍ばせていた土佐麦焼酎のペットボトルをグビリとやった。

 市の中ほどに、圧倒的な活気と行列を誇っている屋台がある。揚げたて練りテンプラのお店だったが、空前の人気を誇っているのが「いも天」。ガイドブック等にも外されることなく掲載されている日曜市名物。サツマイモの天ぷらである。

 グングン揚げられ、千手観音顔負けの手さばきと電卓に負けない暗算能力で行列をさばく女性店主に見とれてしまう。行列がどんどん前に動いていく。しかし、次々にお客が並ぶため、列が短くなることはない。

 ジャガイモは得意だがサツマイモが苦手な私だが、揚げたて熱々に挑戦してみた。……。ホックホク、ポクポク、フワフワ、サクサク。私のサツマイモ観念が桂浜の沖まで吹っ飛ぶインパクト、完成度、旨さだ。日曜市のこの屋台で揚げたてを味わうことが、いも天をもっとも満喫できる最強のシチュエーションなのだろう。

 時間が経つに連れ、来場者がさらに増えてきた。すでに売り切れている商品もある。毎週開催されているという事実もスゴイ。300年の伝統は宣伝を必要としない高みに達している。

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300年以上続く高知市内の日曜市

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