2021年10月11日

第2786夜:やらまいか【浜松(静岡)】

 やらまいか。静岡県浜松市エリアの方言で「とにかくやってみよう」「やろうじゃないか」を意味する(らしい)。浜松市は「やらまいかスピリッツの街」を標語にしているという。

 実にポジティブで前向きな方言である。加齢とともに「やらまいかスピリッツ」が日々減退している私には耳に痛い言葉でもあり、気合を入れ直してもらえるパワーワードでもある。

 梅雨真っただ中の7月中旬の夜。浜松駅前で1時間だけ喉を潤してから駅前のクールでスタイリッシュなビジネスホテルにチェックイン。荷を解いてから歓楽街(田町)へ向かう。

 コロナ禍以降から浜松(舘山寺)と御縁を頂くようになり、何回か浜松で呑んだ。そのほとんどが駅構内。田町という繁華街へは初めて味を運ぶ。なかなかの充実度。さすが昔は家康公の、今は大企業(Sズキ・Yマハなど)の城下町である。

 <じねん>という割烹居酒屋の暖簾をくぐる。カウンターには高校同級生で浜松在住のC氏が。氏と数年ぶりのサシ呑みである。C氏は20時に予約入れてくれていた。緊急事態やまん延防止以降、20時に店を予約という今までの当たり前な行動が最早新鮮である。

 しっとりとした雰囲気の店。カウンターの紳士淑女は皆さま上品な雰囲気。我らアラフィフオヤジ2人も静かに生で乾杯する。

 生の後は浜松の地酒を3種類。それ以外に「女泣かせ」という演歌風の艶っぽい酒も。エシャロット、鰹刺身、焼竹輪、鯛粗炊やステーキなどに舌鼓。

 C氏と呑むと、高校時代の話はあまりせず「今」の話で弾むから心地よい。

 23時から全世界リモート会議に参加するという多国籍企業勤務のC氏と別れ、駅前ホテルに戻る。22時半にもなっていなかったのでホテル正面の居酒屋に飛び込む。店内は若いサラリーマンやカップルでなかなかの賑わい。一軒目とは異空間である。

 ツマミに浜松餃子と名物らしいホルモン炒め。酒は、ホッピー。注文すると、ホッピーが来る前に乾杯の注意書きを読んでおくように店員さんから言われた。

 一人ゆえ乾杯する相手もいない。注意書きを読む行為の意味も訳も分からない。読まずに軽くスルーしていたら、ホッピーが運ばれてきた。

 何故か女性店員さんはグラスを置いた後も動かない。そして、いきなりとんでもないことを言い出した。

 「私が『やらまいか!』と叫んだら‘大きな声’で『おいしょお!!』と叫んで下さい」

 えっ?はぁっ…?。何そのローカルルール……?。チョッ、おまっ!

 店員さん「やらまいかぁ!」
 アヅマ「お、お、おいしょぉ〜……」

 これが注意書きの内容なのか。消え入るような声で語尾が震えた。壮絶に恥ずかしい。

 「やらまいか」の意味は後日知った。「おいしょお!」は推測つけどいまだに分からない。私には「やらまいか!おいしょお!」スピリットを醸造できないようである。

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風流。

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鮮烈。

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奇策。

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王道。

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典雅。

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旧友。

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溺愛。

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名物。

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錯乱。

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恐怖。
posted by machi at 04:10| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月10日

第2785夜:東西の分岐点【浜松(静岡)】

 東日本と西日本。どこが境目なのか私も分かっていないが何となく名古屋か静岡あたりかと推測される。厳密にはこのあたりは「中部(中日本)」だろうけど。

 東日本と西日本の違いは何か。西はうどんで東はそば。西は牛で東は豚(肉じゃが・もつ煮込など)。西日本では豚串(やきとん)にあまり出会わないが、東では鉄板である。

 鰻しかり。西は腹開きで東は背開き。西は蒸さずパリパリに、東は蒸すのでふっくらさっぱり。

 神戸人の私は西日本人だが、東と西をフラフラ行き来してると、どちらにも当然の良さがある。

 私にとっての西と東の最大の違いは、(立ち食い)そばにおける「出汁」の違いに尽きる。味も色目も明らかに異なる。

 ある7月の夕方。舘山寺温泉門前通りのスナックの私とたぶん同世代ママに浜松駅まで送って頂く。ママのマシンガントークを拝聴しながら、話題はラーメンの話に。

 舘山寺エリアは深夜にラーメンを啜れる店がなく、ママにシメのラーメンをお願いする客が後を絶たないという。その気持ち、痛いほど理解できる。

 ママは湯を沸かし、カップ麺を提供するそうだ。呑み屋で啜るインスタントラーメンは、なぜか自宅で啜るよりも億倍旨い。値段は市販の5倍以上になるけれど。

 ママは圧倒的な「どん兵衛」派であるという。私もどちらかといえば同派閥。何年か前から明らかに麺の質が変わった。たまに赤いきつねのジャンクな縮れに抗えない夜もあるけれど。

 どん兵衛も赤いきつねシリーズも、西日本と東日本で出汁の味が異なっているのは、麺道の有段者には周知の事実。薄口醤油&昆布だしの西日本と、濃口醤油&鰹だしの東日本。

 フタには「W」と「E」の記号が印字されている。Wが西日本、Eが東日本。どん兵衛はさらに北海道バージョンもある(北の利尻昆布バージョン)。

 浜松はどちらか。ママもあまり意識したことないそうだが、恐らく東(E)とおっしゃる。

 そんな不毛だけれどシアワセな会話を楽しんでいると、浜松駅に到着。昼のうなぎが全く消化されておらず空腹感は皆無だが、ノドは猛烈に乾いている。うなぎは喉が渇く。

 駅前のチェーン居酒屋へ十年来のクライアント戦友氏と飛び込む。19時までドリンク半額だったので、きっちり19時まで静岡らしく生茶ハイを喉にガンガン放り込む。うなぎの脂をさっぱりと洗い流してくれる。それから旧友と会うために、私は夜の帳へ消えた。

 翌朝。浜松駅に着いたら新幹線15分以上の待ち時間。特段腹は空いていないが、視界に飛び込むのが改札内の立ち蕎麦屋<自笑亭>。浜松駅弁界の絶対王者である。

 「立ち喰い天ぷらそば」注文。昨日、浜松のうどん出汁は東日本系か西日本系かを確かめるチャンスである。

 結論……出汁は東日本、天ぷらは西日本。

 そういえば、東日本の天ぷらは具沢山のかき揚げだが、西日本はほぼ天かすだけのストロングスタイルだったことを思い出す。浜松、まさに日本のど真ん中であった。

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駿府の絶対王者。

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東西の分岐点。
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2021年09月06日

第2765夜:世界一の鰻密地帯【浜松(静岡)】(後編)

 小鉢、肝吸、香の物を従えて美鰻降臨。……。かなりの密っぷりである。人間の密は敬遠されるご時世だが、小宇宙(丼)の中の鰻密は大歓迎である。

 この美鰻を観て興奮しない輩はいない。大きくて分厚いハーフサイズが2枚。照りも濃い目で極上の風情。褐色の美鰻に私のウツボも直立気味である。丼のご飯もかなり多そうだ。

 山椒は2種類。ミルで挽く本格派と定番の粉山椒。山椒の使い分けなんて初めて。貴重な機会。ミルで挽く。……。山椒の香りとは、これほど鮮烈なのか。

 まずは肝吸い……。上品の中に野趣が溶け込んでいる。ほわぁと歓喜の呻きが漏れる。準備が整った。そして、美鰻に告白……。

 一瞬にして結ばれた。辛め、濃い目のタレも私好み。箸でふわりとちぎれる柔らかさの中に、幾分のパリッと感もある。まさに東日本と西日本の間。

 肝串に齧りつく……。当たり前だが、専門店でない居酒屋やスーパーの肝串とは別モノ。柔らかく、臭みもなく、コクと旨味と野生が下に残る。ああ、日本酒をヤリたい。

 表面の2枚の蒲焼を食べ終えると、下からもう1枚美鰻がチラリズム。ご飯で蒸されてふっくら美鰻である。飽きることなく抱きしめられる。

 鰻の肝串がまだ2本残っている串から外して丼にぶちまける。蒲焼と肝の丼。肝串丼など我が半世紀近いバカ人生の中でも最高クラスの贅沢。酒を呑みながらだと絶対に行わない無法。背徳感と高揚感が入り混じった初めての気持ちに。

 鰻の肝とライスを今まで(もったいなくて)一緒に味わったことなかったが、新たな地平が広がった。肝の苦み、たれの甘み、ライスの包容力がくんずほぐれつである。

 至福の時間は10分も持たなかった。早く〇〇すぎた。お会計すると、何故か10%オフ。ひたすらペコペコ頭を下げるついでに、レジ横のご自由にお持ち帰り下さいとあったオリジナル鰻うちわも厚かましく捕獲する。

 大満足で外に出る。いい天気である。店の斜め前にある<KUSHITANI CAFE>が開いていた。珈琲ラージサイズを楽しみながら鰻うちわで涼を得る。ミッションを控え、体中にエナジーが駆け巡っている。

 縁結びの舘山寺。私は美女ではなく美鰻と縁が結ばれた。帰りは世界一セクシーなキャッチフレーズ「夜のお菓子」を持つうなぎパイを大量に買い込まねばならない。

 「昼のお菓子」なら何の高揚感もないが、「夜のお菓子」。鰻が精力増強に貢献するという通説は、科学的な根拠よりもうなぎパイのキャッチフレーズから浸透したのかもしれない。ケースに入ったうなぎパイも、かなりの密っぷりである。

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世界遺産。

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リノベカフェで。

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力強い団扇。鰻好き必須アイテム。
posted by machi at 07:27| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする