2020年02月25日

第2385夜:奇跡の夜【熱海(静岡)】

 熱海の奇跡。その同名著書が3刷され台湾で翻訳出版される(2019年11月20日現在)ほど世界的に注目を集めている奇跡の街。それが熱海である。

 その著者である奇跡の人をはじめ岩手の雫石、北海道の帯広を再生させている方々が熱海へ集い、その極意を直接お聞きできる催しがあった。

 私は昨年度(2018年度:茨城県水戸市)に続き対談形式の聞き手としてクライアント様からご指名を頂いた。「アヅ子の部屋」続編である。

 熱海の前はほぼ毎週新幹線で素通りしていたが、上陸は初めてだった。また、恥ずかしながらこの指名をお受けするまで熱海は神奈川県と思い込んでいた。静岡県だった。

 11月下旬の暖かすぎる平日の11時ごろ。駅構内も駅前商店街も人でごった返している。後から知ったが、この日は普段と比べてかなり人が少なかったという。

 そんな熱海が十数年前は寂れていたとは改めて信じがたい。一人の男とその男を支える仲間が起こした奇跡を目の当たりにする。

 商店街は干物塩干店から漂う香ばしい香り、和菓子屋が奏でる出来立ての湯気、旨そうな地魚を取り扱う飲食店、土産物売場でびっしり。酒の肴が溢れる商店街を狂おしい気分で抜けながらミッション会場である温泉ホテルへ。

 贅沢すぎる懐石弁当を頂きながらの昼食会の後は、静岡県の女帝・M田姐さんの開会挨拶、主催者を代表して商店街振興の神様によるオープニング講演の後、アヅ子の部屋3連発である。

 タフなミッション終了後、十数人で奇跡の発火点・熱海銀座商店街へ。その2階にある海鮮居酒屋で懇親会。生の後は焼酎を鯨飲。

 刺身盛合せに息を呑む。鮮度最高の鮪、鯵などを従えて君臨するのは「金目鯛」。高級魚のなかの高級魚、居酒屋で提供される魚としても王様級である。一般の店ではだいたい時価。しかしこのお店は呑み放題付きコースで5500円。圧倒される。

 金目鯛をさっそく口に運ぶ。……。思わず膝を打つ。首肯しながら目をつむる。ねっとりした甘みの上品を極めた淡白、皮の弾力も好ましい。官能的な肌、じゃなかった舌ざわりである。

 続いて「金目鯛のしゃぶしゃぶ」。熱海の夜が祝祭に包まれる。野菜を先入し、さっそくシャブシャブ。ポン酢にチョン付け。……。刺身鮮度の金目鯛を湯にくぐらせる贅沢。桃色の肌がわずかな時間で白粉をまとい、熱海芸子の風情だ。ポン酢の酸味が絡み合い、情念の炎が灯る。

 真打が登場。「金目鯛の煮付」である。とんでもないデカさ。歓声が上がる。熱海の夜に聖者が降臨。奇跡が起こった。私は目玉部分のトロトロを独り占め。……。私の体もトロトロに蕩けた。脂っこさ、臭みゼロ。白身の上品なホクホクと、一緒に煮込まれた大根などの野菜も抜群。

 焼酎のスピードを加速させていると、揚物の盛合せ。圧巻、そして奇跡の2時間である。

 まだ20時半前。せっかくの奇跡の夜、まだまだ楽しみたいが地理感が全くない。予備知識も情報もない。しかし、頼もしい男がいる。S岡県庁のK山氏である。

 氏とはこれまで2,3回酒席をご一緒した記憶がある。氏の後を追い、向かった先はイタリアン。6人で陣取り、お店おすすめの赤ワインの後はひたすらハイボール。ピザも迫力あり旨し。プチ赤ウィンナー祭りも決行する。

 最後は3人で坂道を登りながら駅方面へ向かう。そのうちの一人である昭和の男前がグデングデン。大きな声で何か叫んでいる。呂律も回らず、足元フラフラのまま車道で謎のタップダンス。強引にホテルにチェックインさせても大きな目をキラキラ光らせながら後を追ってくる執念はターミネーターのごとし。正直、怖かった。

 最後は駅前のチェーン居酒屋へ2人で。お相手は我がクライアント氏であり、私が神戸新長田を離れてからフリー稼業を続けていられるのも、野垂れ死にせずに何とかメシを食っていけるのもこの御仁のおかげ。恩人の中の恩人である。

 恩人のおかげで、私は「特定の組織や地域に属さず、商店街や中心市街地活性化のお手伝いしかしないフリーの仕事」だけでメシを喰っているという奇跡のような幸運に恵まれている。最後は泥酔しながら駅前の<T横イン>にチェックインし、泥のように眠る。

 なかなかヘビーな二日酔いの朝。せっかく熱海の来て温泉に泊まらないというバカっぽさ。愛してやまない<東Yイン>だが、もしかしたら熱海だけはユニットバスが温泉かも。

 浴槽に湯をためるべく蛇口をひねった。……。奇跡は起きなかった。

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豪華な懐石昼食。

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会場びっしり。

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アヅ子の部屋2019。

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キンメ第1弾。

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キンメ第2弾。

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キンメ第3弾。

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2軒目のピザ。

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隙あらば日本中で赤ウィンナー祭り。
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2016年05月08日

第1448夜:天下無双のオンナ富士【富士宮(静岡)】

 赤富士。山頂に雲間が掛から見通し抜群の黄昏時、夕日が御山を照らし山頂の白が赤く染まる貴重かつ希少な自然の奇跡である。富士宮駅前商店街のアンテナショップ<フジサンサンマルシェ>で打合せ中、休憩がてら外に出ると富士が赤く染まっていた。

 2016年1月より浅間大社を抱える日本最強B級グルメの街・富士宮に御縁を頂いて3度目の訪問日に初めて富士山頂を拝むことができた。これぞ絶景。見とれてしまう。地元の方は特に珍しいものではないようだけど、日本人としてのDNAが騒いでくる。

 快晴の青空に屹立する白富士も天晴。日が落ちきる寸前の夜の黒富士も神秘的。駅前ホテルの窓から富士山を一望できる。窓が額縁のようである。窓という透明のキャンパスに描かれた朝日を浴びる御山は神々しさすら感じられる。私の腐りきった心と体も浄化されそうだ。

 打合せ中、市内の小規模作業所の方々が心を込めて作られた食パンが大量に差し入れされる。よく見ると、「富士登頂」と印字された紙袋もステキである。これを持ち歩いていたら富士山を登頂したと勘違いされそうだ。山登り自体に全く興味のない私は生涯登頂することはないだろう(山岳ミステリは大好物ですが)。

 帰宅した夜、パンを試してみた。バターの香りが豊潤で何もつけずとも焼かなくとも旨い。トーストすると旨さ倍加。アヒージョ缶詰を熱してオイルに浸せば最高級の酒の肴だ。

 ミッション終了後、商店街連盟M田会長と事務局サポート女性2人の計4人で浅間大社近くの小料理屋<のん紀>さんへ。この店、シブい。ミッション終了後に私一人が女性3人に囲まれて呑む機会など10年に1度かもしれず、柄にもなく緊張を強いられる。

 ママとM田会長のクロスマシンガントーク二人の女性も圧倒されている、というか慣れている。私がくちばしを挟む隙など皆無。この後で会長が予約して下さった天ぷら屋を訪ねるので食量はセーブ。生を3杯呑み、焼酎を湯割で。

 張り出されたメニューが見事な定番ぶり。メニューに「焼そば」とある。わざわざ「富士宮やきそば」と表記しないところが地元風情100%である。

 会長の同級生の店<天達>さんへ。富士宮唯一かもしれない本格カウンタースタイル。私は熱燗で。この燗の付け具合が絶妙である。おちょこを選べるのも嬉しいおもてなしだ。

 お通しは鮪やまかけ大盛。マスターが揚げたてをどしどし眼前に。海老、茄子、椎茸、アスパラ、たまねぎ、牡蠣、かき揚……。寿司と天ぷらはカウンターで味わいたい。時にはツユで、時にはレモン塩で。揚げたてを頬張り、熱燗で追いかけ、時折ビールでノドを潤す。会長もアルコールでますます口が滑らかに。マシンガンどころか連射バズーカだ。

 御飯、赤出汁、漬物が出てきた。宴の終わりも間近。私は満腹なので赤出汁だけいただく。お会計で驚愕。大都会の高級天ぷら屋の5分の1程度。富士山が噴火したほどの衝撃だ。

 会長とマスターとのトークバトル(9対1で会長優勢)にマスターの奥様も参戦。奥様は会長と女性同士で意気投合。マスター、反撃を試みるも秒殺で轟沈。反論を早々と諦めている。

 富士宮には様々な顔を魅せる日本一の富士山がある。白富士、赤富士、黒富士、小規模作業所のパン富士。そして雲を突き破り大気圏まで飛び出しそうな天下無双のオンナ富士である。

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快晴の昼富士。

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神秘的な赤富士。

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存在感のある夜富士。

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神々しい朝富士。

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何もつけずでも旨い、富士山をかたどった小規模作業所さんの食パン。

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揚げたて天ぷらがドシドシとカウンターに。

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天下無敵のオンナ富士。


posted by machi at 07:40| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月28日

第1442夜:黄金色の溶岩【富士宮(静岡)】(後編)

 ゴクリと唾を呑み込んだ。コップの水を口に含んで逸る心を抑えようとした瞬間、ビールが不可欠であることに気付いた。焼きそばとビール。無敵最強カップルベスト5位に入っている。しかし、25分後にはミッションが開始される。アルコールは当たり前だがご法度である。

 短い後ろ髪を惹かれつつ再度メニュー確認。「缶ビール350円」の下に「キ●ンフリー250円」があった。ノンアルコールビールである。普段は視界にすら入ってこないが、一際大きな輝きを放っている。私は恥ずかしさと誇らしさが入り混じった声で「ノンアル1本、お願いします」。

 若いマスターは「どちらにされますか?」と2種類のノンアルを提示してきた。まさか2種類もあったとは。キリ●フリーとオール●リー(サン●リー)。一瞬迷ったが、オ●ルフリーに。

 いきなり目玉を崩すのではなく、まずはイワシの削り粉がたっぷり掛かった裾野から攻める。箸でむんずとつかみ、グっと啜る。……。これほどコシの強い焼きそばは初めて。コシの強いうどんやそばは実食済だが、コシの強い焼きそばは初めてである。アクセントの肉とイカの噛み応えも心地よい。最初はコシの強さに戸惑ったが、2口目から慣れてくると旨みが伝わってくる。

 ノンアル缶をカシュっと開け、一気にノドに流し込む。焼きそばの旨さが倍加する。ソース味が占領している口内をサッパリシュワっと洗い流す。次のひと箸がさらに旨くなる。ビールでなくてもよい。冷えたノンアルは昼の焼きそばに欠かせない(夜はアルアルが欠かせませんが)。

 富士宮やきそば、あっさりだがコクもある。強烈な主張はないけれど、いつまでも飽きのこない完成した味。毎日でも食べ続けられる。大盛の上にコシもあるので満腹感が一気に襲ってくるが、いくらでもノドを滑っていく。箸が止まらない。

 3分の2を啜り終えた。いよいよ、目玉焼の黄身を崩す。クライマックスである。箸でチョンと突く。薄膜が敗れ、黄身が溶岩のように流れだす。茶褐色の裾野を流れる黄金色の溶岩。富士山頂は拝めなかったが、目の前の富士宮やきそばでお釣りがくるほどの満足感である。

 卵を絡めながら麺を啜る。……。いっきに官能的な味わいに確変。妖艶な熟女に筆おろしされている気分になる。

 その夜。ミッションを終えた私は富士宮から電車とタクシーを乗り継いで富士市吉原本町へ。数年来お世話になっているNPO東海道吉原宿S野氏とバカ話しながら痛飲。いつの間にか富士宮行きの終電が消失。NPOスタッフのAスミンに富士宮まで送っていただく。

 ホテルに近いコンビニへ。さすが富士宮、カップ焼そばも「富士宮やきそば」。思わずレジに向かいそうになったが、思いとどまった。富士吉原のご当地B級グルメ「つけナポリタン」を数年前に啜ったことを思い出したからだ。無性に食べたくなり、惣菜弁当コーナーへ。……。残念ながら、隣町のご当地B級グルメは王国には存在しなかった。

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富士宮やきそば&ノンアル。
posted by machi at 07:27| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする