2016年05月08日

第1448夜:天下無双のオンナ富士【富士宮(静岡)】

 赤富士。山頂に雲間が掛から見通し抜群の黄昏時、夕日が御山を照らし山頂の白が赤く染まる貴重かつ希少な自然の奇跡である。富士宮駅前商店街のアンテナショップ<フジサンサンマルシェ>で打合せ中、休憩がてら外に出ると富士が赤く染まっていた。

 2016年1月より浅間大社を抱える日本最強B級グルメの街・富士宮に御縁を頂いて3度目の訪問日に初めて富士山頂を拝むことができた。これぞ絶景。見とれてしまう。地元の方は特に珍しいものではないようだけど、日本人としてのDNAが騒いでくる。

 快晴の青空に屹立する白富士も天晴。日が落ちきる寸前の夜の黒富士も神秘的。駅前ホテルの窓から富士山を一望できる。窓が額縁のようである。窓という透明のキャンパスに描かれた朝日を浴びる御山は神々しさすら感じられる。私の腐りきった心と体も浄化されそうだ。

 打合せ中、市内の小規模作業所の方々が心を込めて作られた食パンが大量に差し入れされる。よく見ると、「富士登頂」と印字された紙袋もステキである。これを持ち歩いていたら富士山を登頂したと勘違いされそうだ。山登り自体に全く興味のない私は生涯登頂することはないだろう(山岳ミステリは大好物ですが)。

 帰宅した夜、パンを試してみた。バターの香りが豊潤で何もつけずとも焼かなくとも旨い。トーストすると旨さ倍加。アヒージョ缶詰を熱してオイルに浸せば最高級の酒の肴だ。

 ミッション終了後、商店街連盟M田会長と事務局サポート女性2人の計4人で浅間大社近くの小料理屋<のん紀>さんへ。この店、シブい。ミッション終了後に私一人が女性3人に囲まれて呑む機会など10年に1度かもしれず、柄にもなく緊張を強いられる。

 ママとM田会長のクロスマシンガントーク二人の女性も圧倒されている、というか慣れている。私がくちばしを挟む隙など皆無。この後で会長が予約して下さった天ぷら屋を訪ねるので食量はセーブ。生を3杯呑み、焼酎を湯割で。

 張り出されたメニューが見事な定番ぶり。メニューに「焼そば」とある。わざわざ「富士宮やきそば」と表記しないところが地元風情100%である。

 会長の同級生の店<天達>さんへ。富士宮唯一かもしれない本格カウンタースタイル。私は熱燗で。この燗の付け具合が絶妙である。おちょこを選べるのも嬉しいおもてなしだ。

 お通しは鮪やまかけ大盛。マスターが揚げたてをどしどし眼前に。海老、茄子、椎茸、アスパラ、たまねぎ、牡蠣、かき揚……。寿司と天ぷらはカウンターで味わいたい。時にはツユで、時にはレモン塩で。揚げたてを頬張り、熱燗で追いかけ、時折ビールでノドを潤す。会長もアルコールでますます口が滑らかに。マシンガンどころか連射バズーカだ。

 御飯、赤出汁、漬物が出てきた。宴の終わりも間近。私は満腹なので赤出汁だけいただく。お会計で驚愕。大都会の高級天ぷら屋の5分の1程度。富士山が噴火したほどの衝撃だ。

 会長とマスターとのトークバトル(9対1で会長優勢)にマスターの奥様も参戦。奥様は会長と女性同士で意気投合。マスター、反撃を試みるも秒殺で轟沈。反論を早々と諦めている。

 富士宮には様々な顔を魅せる日本一の富士山がある。白富士、赤富士、黒富士、小規模作業所のパン富士。そして雲を突き破り大気圏まで飛び出しそうな天下無双のオンナ富士である。

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快晴の昼富士。

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神秘的な赤富士。

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存在感のある夜富士。

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神々しい朝富士。

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何もつけずでも旨い、富士山をかたどった小規模作業所さんの食パン。

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揚げたて天ぷらがドシドシとカウンターに。

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天下無敵のオンナ富士。


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2016年04月28日

第1442夜:黄金色の溶岩【富士宮(静岡)】(後編)

 ゴクリと唾を呑み込んだ。コップの水を口に含んで逸る心を抑えようとした瞬間、ビールが不可欠であることに気付いた。焼きそばとビール。無敵最強カップルベスト5位に入っている。しかし、25分後にはミッションが開始される。アルコールは当たり前だがご法度である。

 短い後ろ髪を惹かれつつ再度メニュー確認。「缶ビール350円」の下に「キ●ンフリー250円」があった。ノンアルコールビールである。普段は視界にすら入ってこないが、一際大きな輝きを放っている。私は恥ずかしさと誇らしさが入り混じった声で「ノンアル1本、お願いします」。

 若いマスターは「どちらにされますか?」と2種類のノンアルを提示してきた。まさか2種類もあったとは。キリ●フリーとオール●リー(サン●リー)。一瞬迷ったが、オ●ルフリーに。

 いきなり目玉を崩すのではなく、まずはイワシの削り粉がたっぷり掛かった裾野から攻める。箸でむんずとつかみ、グっと啜る。……。これほどコシの強い焼きそばは初めて。コシの強いうどんやそばは実食済だが、コシの強い焼きそばは初めてである。アクセントの肉とイカの噛み応えも心地よい。最初はコシの強さに戸惑ったが、2口目から慣れてくると旨みが伝わってくる。

 ノンアル缶をカシュっと開け、一気にノドに流し込む。焼きそばの旨さが倍加する。ソース味が占領している口内をサッパリシュワっと洗い流す。次のひと箸がさらに旨くなる。ビールでなくてもよい。冷えたノンアルは昼の焼きそばに欠かせない(夜はアルアルが欠かせませんが)。

 富士宮やきそば、あっさりだがコクもある。強烈な主張はないけれど、いつまでも飽きのこない完成した味。毎日でも食べ続けられる。大盛の上にコシもあるので満腹感が一気に襲ってくるが、いくらでもノドを滑っていく。箸が止まらない。

 3分の2を啜り終えた。いよいよ、目玉焼の黄身を崩す。クライマックスである。箸でチョンと突く。薄膜が敗れ、黄身が溶岩のように流れだす。茶褐色の裾野を流れる黄金色の溶岩。富士山頂は拝めなかったが、目の前の富士宮やきそばでお釣りがくるほどの満足感である。

 卵を絡めながら麺を啜る。……。いっきに官能的な味わいに確変。妖艶な熟女に筆おろしされている気分になる。

 その夜。ミッションを終えた私は富士宮から電車とタクシーを乗り継いで富士市吉原本町へ。数年来お世話になっているNPO東海道吉原宿S野氏とバカ話しながら痛飲。いつの間にか富士宮行きの終電が消失。NPOスタッフのAスミンに富士宮まで送っていただく。

 ホテルに近いコンビニへ。さすが富士宮、カップ焼そばも「富士宮やきそば」。思わずレジに向かいそうになったが、思いとどまった。富士吉原のご当地B級グルメ「つけナポリタン」を数年前に啜ったことを思い出したからだ。無性に食べたくなり、惣菜弁当コーナーへ。……。残念ながら、隣町のご当地B級グルメは王国には存在しなかった。

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富士宮やきそば&ノンアル。
posted by machi at 07:27| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月27日

第1441夜:黄金色の溶岩【富士宮(静岡)】(前編)

 富士宮やきそば。言わずとしれた日本最強の知名度を誇るご当地B級グルメである。「B級グルメ=富士宮やきそば」という公式が成り立つほどだ。日本最大のまちづくり祭典「B−1グランプリ」で第1回と第2回を連覇。経済効果は9年間で439億円(HPより)に達するという。

 富士宮やきそば学会様のHPによると、その特徴は「麺のコシ」にあるという。そしてさらに12の特徴があるそうだが、印象に残ったものを抜粋要約する。

 「市内にある4つの製麺業者の富士宮やきそば蒸し麺」を使用し、「炒め油はラード」で、ラードを絞った後の「肉かす」を加え、「イワシの削り粉(だし粉)」を振りかけ、キャベツは「富士宮の高原キャベツの中の水分が少なく歯ごたえのよい秋キャベツ」。水は「富士山の湧水」で調理の際の水加減がコシの強さの重要なポイントであるらしい。

 神戸新長田の前職時代、「そばめし」「ぼっかけ」でまちおこしのお手伝いに従事していた私だが、富士宮やきそばを本場で啜る機会に恵まれなかった(はず)。憧憬を長年募らせていた2016年初春、富士宮商店街に御縁を頂くことができた。富士宮やきそば童貞を喪失するチャンスである。

 ある冬の正午過ぎ。富士宮駅に降り立った私は、荷物を預けるためにミッション会場へ向かった。残念ながら富士山頂が雲に覆われて見えない。開始は13時。正味の持ち時間は40分程度。市内に何店舗あるのか存じ上げないが、せっかくなら地元人オススメの店で筆をおろしたい。

 商店街連盟M田会長に会場近くのオススメ店を尋ねる。即答されたのが徒歩2分ほどの<虹屋ミミ>さん。駅前商店街から路地に入った所に位置し、オレンジ色のノボリがはためいていなげれば素通りしてしまいそうな小さな店だが、旨そうなオーラがプンプン放たれている。

 メニューを見る。ベースの「やきそば(500円)」があり、肉・イカ・卵・桜えびを追加料金(100円〜180円)でトッピングするスタイルだ。私は`店長一押し!‘とあった「ミックスやきそば(700円)」大盛(200円)を召喚。肉・イカ・卵入り。単品トッピングより100円お得である。

 焼き上がる間、店内を見渡す。一枚の賞状が額装されている。目を凝らす。平成15年に実施された「第1回富士宮やきそば鉄人グランプリ」で鉄人に輝いた(優勝?)という。何気なく紹介されて予備知識ゼロで入ったが、いきなりの大当たり。筆おろしのお相手がTVで活躍するセクシータレントようなものである。

 ジャツジャというそばが焼ける音、ソースをジュワーっと鉄板に上から垂らした際の爆音、そして狂おしく香ばしい焼きそば独特の香り。……。胃がキュンキュン悲鳴を上げ始めた。

 「おまちどうさま〜」と日本最強B級グルメが皿にこんもりと盛られて眼前に降臨。半熟の目玉焼が中央に鎮座している。目玉焼の下に広がる茶褐色の裾野。本日曇天で拝めなかった富士山の如き神々しいビジュアルである。〔次夜後編〕

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富士宮やきそばの鉄人のお店。

posted by machi at 07:04| Comment(0) | 静岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする