2011年04月25日

第221夜:風邪の松原【能代(秋田)】(後編)

 松林の中を、軽快にレンタサイクルで風を切るのも悪くない。それよりも、パソコンの入ったバッグをロッカーに預けてしまいたい。歩き疲れた上に、体も冷え切った。熱いホットコーヒーで一息つきたい。
 
 案内所のドアの前に立った。閉まっている。無情にも「本日休館」の張り紙が。私が訪れた月曜は休館日だったのだ。風の松原案内所を勧めて下さった駅前案内所の秋田美人たちが、悪女に思えてきた。悪女ほど魅力的というのは、古今東西の通説ではあるけれど、ボディブローのように後からジワジワ効いてくる。
 
 ここまで歩いたのだから、松林を散策してみる。他の4つは存じ上げないが、日本5大松林であるそうだ。舗装されたジョギングコース(6q)の中に、小道に分かれるようにウッドチップ歩道、トリムランニングコースなるものがある。
 
 私は松林の奥に足を踏み入れていった。爽やかな森林浴というより、死後の世界を彷徨っている気分になる。あまりにも寂寥感が漂っている。
 
 冬を間近に控え、枯れ枝や落ち葉が目立つ。晩秋の松林は、幽界に繋がる異界の扉だ。そして、驚くほど人とすれ違うことがない。案内所が定休日なので、余計に少ないのかもしれない。
 
 途中でさっぱり方角が分からなくなり、不安になる。「日本の音風景100選」だが、人はおろか虫や鳥のさえずりすら聞こえず、吹き荒ぶ風の音しか耳に入らない。一瞬だが、雹混じりの雨がサッと降ったとき、私は激しく後悔した。もちろん傘などない。
 
 土の道は、雨が降ったのか濡れて湿っている。私は革靴である。ぬかるみを歩くと、靴の中に泥が入りそうだ。森のような松林の中心部で、私のようにネクタイにスーツ、革靴、バッグにパソコン入れて散策しているヤツなど、まずいない。不審者にしか見えないだろう。
 
 それにしても、圧倒的な松林である。自然界には、まっすぐに直立したものは存在しないという。確かに、たとえ1000本の松林の中で木と同じ色の電柱が立っていたとしたら、おそらく一発で見つけることができるだろう。分岐点に立てられた案内看板が、かなり遠くからでも分かるのだ。表示も極めて分かりやすく、遭難の心配はなさそうだ。
 
 巨大な樹木が頭上をふさいでいるので、うっすらと暗い。しかし、空気が濃い気がする。松の香りが大気に溶け、私の細胞を活性化させようとする。ウッドチップの小道を踏みしめると、自然が育んだ独特のクッションが気持ちいい。これだけの松林を独り占めしていると思えば、贅沢極まりない貴重な体験である。私の心が浮足立ってきた。
 
 私は思いっきり、空気を吸い込んだ。しかし、吸いこめなかった。なぜなら、寒さで鼻水があふれていたからだ。

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日本屈指の松林を独り占め
posted by machi at 08:24| Comment(0) | 秋田県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月22日

第220夜:風邪の松原【能代(秋田)】(中編)

 能代名物は何か。フリースロー成功記念品の一つだった「アッた!あった!のしろ味 能代のうまいもんMAP」を見た。能代商工会議所様が発行しているようだが、1日3回、1回当たり5分間のフリースローを成功させないと入手できない幻のマップと思われる。

 うまいもんマップによると、「八目うなぎ鍋」が数軒で味わえるそうだ。ヘルシーな上に、滋養強壮にも効き目があるそうである。写真を見る限り、4人以上で堪能する鍋のようだ。他には「能代うどん」「桧山納豆」などがあり、野菜は「白神ねぎ」「山うど」「みょうが」が特産品のようである。

 白神ネギを使った「白神NEGI味噌ピザ」が紹介されていた。手頃な感じだが、26cm1200円と記載されている。1ピースでも販売してくれるのだろうか。

 市場のすぐ間に、商工会議所が運営していると思われる観光案内所を発見した。能代駅前ホテルの御座敷にて私が粗末な一芸を披露するまで、5時間以上ある。見渡す限り、時間をつぶす場所がない。案内所オススメのスポットをご教授いただいた。親切丁寧だった。

 余談だが、案内所の女性陣、ナマハゲが面を外して逃げ出すほどの美女ぞろいである。秋田最大の地域資源は、白神山地でもきりたんぽでも、稲庭うどんでもナマハゲでもなく、秋田美人であると思われる。
 
 案内所の女性に進められたのが、前述の「風の松原」。歩いて20分程度で辿りつく。駅からまっすぐ1本道であるそうだ。

 長期出張が続くと、運動不足になる。移動時間がほとんどのため、常に座りっぱなし。その上、地元の名物をたらふく腹に収めるので体は膨張の一途をたどってしまう。数年前、JR富山駅構内で落としたキップを拾おうとしゃがんだとき、ズボンの股間部分を無残にビリリと音を立てて、引き裂いてしまった苦い経験がある。
 
 運動がてら、ウォーキングも悪くない。私は「風の松原」を目指し、歩き始めた。すれ違う地元民、特にかなり年配の女性が、北国の風雪を顔の皺に刻んだ、実に味のある顔をしている。着こなしも、社会科地理の教科書の写真に出てくるようである。
 
 2010年11月中旬の能代は、気温を軽く摂氏5度は軽く下回っている。手袋が必要なほど、風が冷たく厳しい。ごくたまにすれ違う地元民は、真冬の北海道のように厚着を重ねている。どんよりとした雲が空を覆い、今にも雨が降りそうだ。
 
 20分ほど歩いて、「風の松原」に辿りついた。<サン・ウッド能代>という案内所があり、休憩所として利用できる上、無料のレンタサイクルがあるという情報を、駅前観光案内所の美女から入手していた。〔次夜後編〕

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「風の松原」へと続く道。能代中心市街地。
posted by machi at 06:44| Comment(0) | 秋田県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月21日

第219夜:風邪の松原【能代(秋田)】(前編)

 風の松原。秋田県能代市の海岸沿いに連なっている、東京ドーム163個分の面積という日本最大級の規模を誇っている黒松林である。
 
 風の松原は、日本のナントカ100選に、6つも選ばれている。

「21世紀に残したい日本の自然100選」
「21世紀に引きつぎたい日本の名松100選」
「森林浴の森・日本100選」
「21世紀に引きつぎたい日本の白砂青松100選」
「日本の音風景100選」
「かおり風景100選」
 
 強烈な海風が運んでくる砂から街を守るために、江戸時代に植樹されたそうである。防風林として現役でも活躍中だ。

 ほとんど区別がつかないのだが、とにかく「21世紀に引きつぎたくなる」松林ということだけは理解できる。「名松100選」と「白砂青松100選」の違いは、私のような自然に無理解な空気頭にはなかなか区別できない。

 能代駅のホームでフリースローのリベンジを果たした私は、意気揚々と改札を通り駅舎を出た。すぐに私は途方にくれた。時間は朝9時半。駅の待合所しか時間をつぶす場所が、周りを見渡してもなさそうだ。
 
 駅前にあった<能代駅前市場>が開いていた。中を除くと、スーパーのような設えだ。産地直売所とパンフには銘打たれていたが、いわゆる「共同セルフ方式」(集中レジ方式)を採用していると見受けられた。
 
 肉屋、魚屋、八百屋など数店舗数業者が集まり、それぞれが食品スーパーにおける精肉部門、鮮魚部門、青果部門などを担当する。ただ、牛乳や卵、インスタント食品やパン、ティッシュペーパーなど、それぞれの業者で扱っていない日配品などを仕入れるため、共同で会社を設立。店長を外部から雇い入れ、集中レジやその他の商品の販売仕入れを任せる方式である。
 
 諸刃の剣の要素も強いが、高度化資金を借り入れし、小売市場の生き残り策としてかなり前から行われている手法である。
 
 旅先の食品スーパー巡りは、醍醐味の一つである。今回除いた能代の市場も、観光客相手というより地元住民を対象とした様子。品ぞろえも個性的だ。
 
 数種類もある見事なキノコ類、ジュンサイの瓶詰、漬物、地元港から水揚げされたらしい鮮魚に地野菜が目に眩しい。〔次夜中編〕

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能代駅前市場
posted by machi at 08:29| Comment(0) | 秋田県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする