2016年12月15日

第1597夜:八戸オンナの強さの源流【八戸(青森)】

 協議離婚。オトコとオンナの別れには様々な種別があるかもしれないが、大勢の親族友人職場関係者の前で永遠の愛を誓い合った二人が、諸般の事情で永遠の愛を取り消す際に用いられる最もポピュラーな別れの作法である(ような気がする)。

 昼は蒸し熱いが夜は涼しさを感じさせる青森県八戸市9月中旬の夜。月1回恒例の勉強会の後は毎回違う会場による懇親会。目の前にセッティングされた小鉢類を肴に地元最強の蔵元「八鶴」社長持ち込みの超プレミア日本酒を鯨飲。社長の横で呑む市場にあまり出回らない酒を浴びる至福。プチアル中まちづくり屋の醍醐味と言える。

 焼鶏も天晴な旨さだが、カレ―鍋が食欲をそそる。刺激的な匂いが空腹を刺激する。絶妙の加減に煮込まれた豚肉や野菜を口に運ぶ。すかさず地酒で追いかける。カレーライスに合うとはあまり思えないが、カレー鍋に日本酒は好適。Yシャツをドロドロにしながら呑み喰い談笑する。

 数人で2軒目へ。メイン通りではないところに妖しく輝いている<キューテイー>。場末感漂う外観だが、店内は若いマスターが切り盛りする本格的なバー。このギャップが最高である。

 同行の紳士淑女らと談笑しながらカクテルやスコッチの杯を重ねる。私の八戸の夜、それもスナック限定だが欠かせないアイテムが増えた。<南国>さんの出前唐揚である。この唐揚、私にとっては東日本で最も旨いキラーコンテンツ。満腹だったのだが、これは別腹である。

 時間は24時を大きく回った。店を出る。街中には至る所に偉人を称える碑や案内板がある。最も新しいネタが八戸出身の伊●香選手国民栄誉賞おめでとうポスター。八戸は訪れるたびに新たな発見があり、常に新鮮な驚きに包まれる。

 同行氏たちと宿泊ホテルまでプラプラ歩く。その途中にもいろんな碑があり、解説して下さる。へぇと感心しながら耳を傾けていると、N崎氏が私に「八戸は協議離婚発祥の地なんですよ!」

 協議離婚発祥の地?最初、言葉の意味が頭に入ってこなかった。その証拠を示す碑もあるという。しかも、ホテルへの道筋にあるそうだ。

 現場に到着。レリーフが壁面に埋め込まれていた。名称は「プリマドンナ原信子 原たま生誕の地」。以下、全文である。

 「日本オペラ草創期から、大正〜昭和初期の全盛期に三浦環(みうらたまき)に続くプリマドンナとして活躍した原信子は、明治26年に大工町17番地のこの地で誕生しました。また、片山潜夫人となり、後に石橋湛山の仲介で協議離婚した原たまも、明治2年にこの地で誕生。」

 男尊女卑の時代。「三行半」が最もポピュラーだった時代に協議離婚を実現させた新進性。すぐ近くにも文豪・川端康成氏の奥様の碑も。大川端の奥様、どう想像しても苦労していたはずである。

 八戸オンナの強さは、五輪4連覇の最強女子や毎回トップ当選する`美人すぎる市会議員‘(残念ながらどちらもお会いした事ありませんが)たちに受け継がれているのかもしれない。

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世界最強女子は八戸産。

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最高のプレミア地酒。

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食欲そそるカレー鍋。

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場末スナックにしか見えぬバーの外観。

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同行の紳士淑女たちと。

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夜のキラーアイテム。

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協議離婚発祥の碑。
posted by machi at 07:41| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月24日

第1584夜:暗黙のルール【八戸(青森)】

 中華そば200円の衝撃冷めやらぬその翌日。11時半に八戸のホテルをチェックアウトし、2日連続で中華そば200円食堂へ足を運んだ。前日に中華そばと稲荷寿司2ヶで300円という最安値コンビだったので、最高値メニュー「カツカレー」500円を試してみたかったからだ。

 11時半開店だが、すでに満席。常連に相席させていただく。私は大きめの出張カバンと紙袋を持っていた。すると、別テーブルで定食らしきメニューを喰っているオヤジが荷物はそちらに置けと指示してきた。店主が早めに飯を喰っているようだ。厨房では年配の熟女とおそらくその娘さん(店主の女房?)が忙しそうにしている。店内は全員定食を喰らっている。

 客が3人入ってきた。店主オヤジがココ(自分が座っていたスペース)が空くから座れと指示する。遠慮して外で待とうしている3人連れに座って待つように再度指示。その3人連れにオヤジは「この時間帯は定食中心だから、他のメニューは時間がかかる」と話している。

 なるほど、ゆえに皆さん定食を食べているのか。私のカツカレーはかなりイレギュラーだったようで申し訳ない。私の眼前の相席オヤジはたっぷりライス、味噌汁、おかず数品に夢中で挑んでいる。メニューによると、定食は何故か時価。いくらなのだろうか。

 カツカレーが運ばれてきた。福神漬も食べ放題。すごい量である。あれ、カツは…?ルーの下に隠れてきた。しかも巨大である。口に運ぶ。……。マイルドな家庭味である。

 本格的なスパイス利きすぎシャバシャバカレーよりもドロリと家庭風を私は愛する。ゆえにカレーライスに関しては外食より家食派だ。カツもかなりの巨大さ。半分ほど夢中で食べ、卓上の中濃ソースをたっぷり掛けて後半戦に挑もうとした。

 隣のテーブルの店主オヤジは食事が終わったようで、自分で食器を重ねて机を拭き、厨房に入って食器を洗いだした。席を立つ前に相席の3人組に座り位置を指示していた。忙しい時間帯の厨房2人態勢が3人に増員。これから本番なのだろう。

 そこで、信じられない光景を目にした。洗い物を終わらせたオヤジは、お金を払い出した。「ごちそうさ〜ん」と出ていった。えっ?客だったのか。ちなみに定食値段は350円だった。

 私の目の前のオヤジも食べ終え、食器を重ねて厨房に入って食器を洗いだした。すると別席の親子連れも厨房に入って洗いだす。まさか、食器を下げるだけでなく洗うこともセルフなのか。それとも、常連が独自に気を利かせた自主的振る舞いなのだろうか。食器洗いセルフサービスを告げる張り紙もない。

 2度目の訪問なのに、店内ルールがさっぱり分からない。昨日は私より先に会計した常連がいなかったため分からなかった。昨日私は食べ終えた容器を放置して店を出てしまった。

 食べ終えたら勝手に厨房に入って食器を自分で洗わねばならないのか。その疑問と不安で、最後は味が分からなかった。生まれて初めて、料理を食べ終わるこということが怖くなった。

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最強コスパのカツカレーライス。ルーに隠れて巨大カツが。

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決死の店内撮影(2日連続訪問の初日)。あのカウンターの奥の厨房へ、ルール分からぬイチゲンが飛び込む勇気を試される。

posted by machi at 07:15| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月23日

第1583夜:50年前の中華そば【八戸(青森)】

 <宝来食堂>。八戸の中心市街地・二十六日町に屹立する超レトロな外観の老舗である。八戸では珍しく昼から夜まで通し営業されている。

 ある肌寒い7月中旬の15時。八戸中心部に到着した私は、空腹を癒すために15時でも開いている店をネット検索。ホテルに近いこと、チェーン店でないこと、ラーメンを啜りたいこと、初ダイブする店というすべての条件を満たしていたのが冒頭の<宝来食堂>さんだった。

 緊張しつつ店に入る。おろおろしながら空いている席に座る。店内は超常連と思しき後期高齢者たちが甲類焼酎を店の熟女たちとだべりながら呷っている。

 壁面メニューを観た。……。私は顎がハズレそうになった。見間違いかと思い、何度も目をこすり、凝視した。中華そば200円。繰り返すが、200円。かけそば250円より安い。玉子丼300円、カレーライス300円、カツ丼400円、カツカレー500円…。45年以上前から値段を上げていないそうだ(店内に貼りだされた新聞によると)。

 厨房に向かって「中華そば!」と叫ぶ。我がオーダーを受託いただいたようだ。しかし、中華そば200円だけでは申し訳ない気持ちになる。ミッション前なので酒は注文できない。

 中華そばの次に安いメニューがかけそばだが、中華そばとの取り合せは異常すぎる。玉子丼やカレーライスは少々重い。おにぎりありますかと尋ねたら、稲荷寿司があるとおっしゃる。ラスト2ヶというので、2ヶ頼む。

 秒殺で運ばれてきた稲荷寿司はコメがぎっちり。揚げは甘めの濃い目だが、飯の量が多すぎて揚げの味があまりしないほど。1ヶでおにぎり2ヶ分詰まっているのではなかろうか。

 中華そばが運ばれてきた。最初は200円という価格からあまり期待していなかった。ビジュアルは透き通った鶏ガラベースの醤油味である。煮干しもほのかに香る。

 胡椒をパラリと振りかけ、スープを啜る。……。絶滅危惧種寸前のあっさりとした滋味。深くて淡いのにコクがある。チャーシューも1枚だがしっかり味が濃い。メンマもたっぷり。ちぢれ麺がスープに絶妙に絡む。途中。稲荷寿司が大きすぎてスープで流し込む。

 大満足の大満腹。お会計はたったの300円。稲荷が1ヶ50円だったとは…。店を出て七夕祭準備中の縁日屋台を覗いたけれど、宝来さんの衝撃が強すぎてどれも高額に感じてしまう。

 味を長年守り継いでいる店はあれど、値段まで守り継いでいる店は稀。昭和40年代、中華そば200円は高いか安いか分からない。相場だったのだろう。

 手抜きなしの中華そば、200円。立食い蕎麦屋のラーメンよりも安い。出汁も手間暇かけているそうだ。消費税は苦しいだろうが頑張って頂きたい。こんな店こそ軽減税率を適用すべきだ。22世紀もこの値段ならスゴイ。ドラ●もん以外に確かめようがないけれど。

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老舗食堂の面構え。

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衝撃のメニュー表。

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これ全部でたったの300円。
posted by machi at 07:30| Comment(0) | 青森県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする