海無し県。日本にいくつあるのか知らぬが(調べたらすぐにわかるが)、私が頻繁に訪れるのは栃木県と埼玉県。2016年までは海無し県にほとんど縁無かった。2017年から濃密に足を運ぶようになり、必然的に飲み食いの機会が爆増する。
埼玉県ではホッピーと焼きとん、もつ煮込が我が三品同盟ゆえあまり魚介の入り込む余地が無かった。栃木県はそこまでこの三品同盟文化は色濃くなく、逆にバリエーションも増える。
足を運ぶ日本中のミッション先で、その地の名物、名産に舌を躍らせる。海あり県の中でも、漁港で有名な地などでは魚介に全集中。地酒を合わせる至福は天の祝祭である。
2018年頃から徐々に海無し県・栃木に足を運ぶようになり、2019年から現在(2024年6月)まで数え切れぬほど呑んできた。鹿沼、宇都宮、日光、佐野、栃木…。最も酒を呑んだ地はおそらく小山市だろう。小山呑みでも8割は西口駅すぐの創業五十余年<東>だろう。
私と同じ苗字なこのお店。大将も女将も苗字は全く違うのだが、私は愛してやまない。一度だけ独りで呑んだことあるが、それ以外は盟友・S氏と御一緒にだ。
6月中旬の午後。西口の自治会館で小山市内の不動産会社の3名の社長から栃木市と下野市のご担当者が様々なコトをお聞きする機会を設定。その不動産会社への声がけと会場手配をS氏に依頼。氏は私の意図以上の素晴らしい場をセッティングして頂いた。
私のダラダラした進行で予定より30分延長して終了。まだ日は明るい。自治会館から歩いて1分以内に<東>が屹立。西日が強くなってきた。まだ営業開始時間前だが、中途半端な時間帯。飛び込んでみると、快く席に座らせて頂いた。
チンチンに冷えた瓶ビールを一気に流し込む。すかさず2杯目。この日のお通しはホタルイカの煮付。無限に酒が進む。
この店はとんでもないぐらい魚が旨い。この日は鯨と鰹の刺身、鯖かっぱ(海苔巻)、そして北海道産のあん肝。普段はビールの後はハイボールを鯨飲するのだが、福島県の冷酒をシュッツと決める。旨さが膨らむ。心も膨らむ。
鯵はフライで。フワフワとサクサク。分厚い。付け合わせのポテサラも最高。ゆでただけのトウモロコシに初夏を感じる。胡瓜、白菜、蕪の漬物は日本屈指の極上の旨さである。
栃木県で呑む際、よく同行氏になぜ海無し県なのに魚が旨いのか尋ねることがある。当然、港はない。ゆえに鮮度の面では劣るはずである。それなのに、下手な港町より数百倍旨い。鮮度も良い。同行氏たちも首肯する。彼ら彼女たちが口をそろえる理由がある。
「海が無いから、魚へのあこがれが強い」。
いい魚を食べたい。食べさせたい。この一年が漁港からの距離を滅失させ、塩漬せずとも獲れたての鮮度を維持させる。人類の進歩と進化の一例である。