2025年06月13日

第3696夜:創業するなら佐野で【佐野(栃木)】

 <アルシオーネ・コート佐野>。北関東屈指の人気都市、佐野市の新都心、でなく最早「都心」かもしれない関東屈指のアウトレットモールに近接するウェディングガーデンである。

 秋が深まった平日の夜。このガーデンで「先輩創業者・創業塾OBによる座談会及び交流会」が開催された。

 佐野商工会議所が主催する創業塾、毎年大盛況である。私が佐野と御縁を頂くようになったのは令和4年度から。創業塾には十数名でなく数十名受講申し込みがある。受講料も創業塾の中ではかなり高額。それでも殺到する。近隣市の軽く56倍の盛況っぷりである。

 これまで10名近い創業塾OBから色々なお話をお聞きする機会があった。皆さん、口を揃えるのは「受講して本当に良かった」。特に受講生同士の交流が密であり、同窓会の雰囲気がある。実際に創業した際、同期の受講生同士のネットワークが大いに役立っているようである。

 しかし、コロナ禍において交流する機会を設けることができなかった年次OBたちがおられる。「創業するなら佐野で」をキャッチコピーとする佐野商工会議所は交流を求める熱い要望に即座に対応。同世代交流という「横串」だけでなく、世代を跨いだ「縦串」も突き刺した。

 た〜てのいとは〜♪。あの名曲の歌詞を創業塾でマトリックスする企画力と行動力。感服していると、その交流会の前半である創業者トークセッションの聴き手役を任された。

 市役所を(定年)退職後にイチからラーメン店を創業された女性、民間救命サービスという独特な分野を切り開いていた還暦越えの男性。そして、このウェディング場の支配人を兼ねながら様々なサイドビジネスを手広く広げている男性。

 私に与えられた時間は1時間。あっという間だった。聞き入ってしまい、時間を、進行を忘れてしまう。会場を埋め尽くした三十数名も感じ入ったようである。

 終了後は立食懇親会。恐らく来場者は100%自家用車。ゆえに飲み物はソフトドリンクだけ。会費は一人5000円。とんでもなく料理が豪華である。

 料理がどんどん追加される。むしろ5000円は安い。トークセッションの登壇者でもあった支配人が頑張って下さったのかもしれない。

 私はドリンクだけ口にして、料理には一切手を出さなかった。会費を払っていないためでもあるが、全集中ミッションを終えた直後はアドレナリンが駄々洩れで空腹感が1gも湧いてこない。日が沈むとアルコールと一緒でなければ固形物がノドに通らない。

 終了後、会議所の課長様に佐野駅まで送って頂く。1時間に1本の両毛線。小山の定宿に向かう列車は30分後。

 佐野駅前のコンビニが解体され新築工事中。駅前でアルコールを入手できないことは事前に知っていた。カバンからポケットバーボンを取り出し、誰もいないホームのベンチでグビリ。

 胃に火が灯った。ようやく食欲が湧いてきた。小山駅到着は22時半。さて、どうするか。

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豪華な会場。

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豪華な登壇者。

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豪華な料理。

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豪華な歓談。

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孤独なバーボン。

posted by machi at 06:21| Comment(0) | 栃木県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年06月10日

第3695夜:路地裏のクマさん【佐野(栃木)】

 <喫茶.903(きっさ・どっと・くまさん)>。20247月最終日に佐野駅からほど近い二条通り付近で新規創業した喫茶店である。

 オーナーのM島氏は2022年度のアヅマプレゼンツ企画にご参加頂き、2023年には鹿沼チャレンジキッチンをご経験。そして2024年、創業を実現された。

 氏の創業から3カ月半を経過した秋の午後。午前中に栃木市役所でミッションを終えて両毛線で佐野へ。打合せ後、佐野市役所のご担当者たちと「くまさん」へ。7人目となる佐野創業者インタビューの聴き手を務めるためである。

 訪問前から謎が2つあった。一つは、立地。もう一つが店名。立地というか、路地裏どころか路地の奥の奥。佐野市民でもまず分からない一角である。一日の店頭通行量は20名も満たないだろう。駐車場の有無どころか、車も入れない。

 屋号のくまさんも謎だった。何故なら、私なら見た目そのまんまだが、オーナーのM島氏はクマのイメージから程通りスレンダーなナイスミドルだからである。

 食事を楽しまれているご年配の常連様の隣で、入れたての美味しい珈琲を味わいながらたっぷりとお話を伺う。

 SNS(インスタグラム)の活用方法から経営理念、名物「ナポリタンスパゲティ」誕生秘話、内装のこだわりなど多岐にわたるお話に、都度首肯する。

 立地に関すれば、よほど見事で戦略的な告知、そして店そのものの実力がなければ二の足を踏む場所である。目立つ目立たないというレベルでない。しかし、常連だけでなく新規客も着実に増えている。女子高校生も来店するという。

 「立地に関係なく勝負できることを証明したかった」。勝負師である。そして、オープンしてまだ3カ月ちょっとなのに見事に勝利。佐野市外どころか千葉からの来店するそうだ。

 ご本人のビジュアルからほど遠い「くまさん」という屋号。M島氏はDラえもん好きらしく、ドRえもんの誕生日が93日だから「903」。数字のごろ合わせだった。

 昭和生まれでドラえもん世代の私だが、誕生日を50歳の今になるまで「66日」と思い込んでいた。昭和世代はなじみ深い絵描き唄のイメージが強いのだろう。

 正式な屋号は「喫茶.903」。喫茶と数字の間に「.(ドット)」が含まれているのがポイントである。詳細は割愛するが、どっとお客様に来ていただきたいという想いも込められていた。

 お客の8割が注文するという「ナポリタン」。ミートとナポリタンしか口にしないというM島オーナーに私も激しく首肯。

 私の外食スパゲティはナポリタンが9割、ミートが1割。ただしめったに作らぬ自宅スパゲティで、ナポリタンなど作り方が分からない。ケチャップをぶっかけるだけなら全く別の食べ物で少しも旨くない。

 自宅では市販缶をぶっかけるだけのミートソースか、茹でたてをチューブマーガリン、マヨネーズ、醤油をぶっかけてまぜまぜしたスパゲティしか自宅で口にしない。特に後者など、絶対に店でお金を取って出すことなどできないけれど。

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佐野屈指に熱い創業スポット「二条通り」にてオープン。

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スナックを居抜き。ゆえの味わい。

posted by machi at 07:53| Comment(0) | 栃木県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月03日

第3662夜:坂の下の酒【鹿沼(栃木)】

 坂下。会津地方では「ばんげ」と発音する地名である。下都賀地方(鹿沼)ではそのまんま「さかした」と発音する。ただし地名ではない。文字通り「坂の下のエリア」を指す。松山あたりでは坂の上に雲があるようだが、鹿沼では坂の下に呑み屋がある。

 鹿沼の‘坂上’<中華料理嘉蒂>でドラゴンハイボールや紹興酒をヤリつつ絶品中華を満喫した秋の夜、3人でタクシーで‘坂下’へ。向かった先は<えんちゃん>。串カツJu-Soから徒歩圏内の居酒屋。ジューソーM子店長行きつけであり、豪快なママが切り盛りしている。

 この店には半年ほど前にM子店長に連れられ1次会前の時間つぶしに同伴したことがある。その時はビールとカウンターにあった駄菓子で30分ほどだった。今回もたらふく中華を喰って呑んできたので、空腹感はない。呑むだけだ。

 M子店長のキープ焼酎を炭酸割りで頂く。お通しが鯖の塩焼と筑前煮。一口サイズの玉子サンドも。酒が進む味付けである。M子店長は常連さん方ともお知り合い。M越シウマイ次長もママと共通の知人がおられるようだ。

 M子店長オススメのおむすび(おかか)を握ってもらう。米全体におかかの風味。1ヶが大きい。添えられた紫蘇(たぶん)との相性も良い。空腹感なかったはずなのに一瞬で胃へ滅失。

 1件目(嘉蒂)の呑み始めが早かった。<えんちゃん>で2時間近く過ごしてもまだ23時にもなっていない。3軒目は私がリクエスト。地方都市の旅情あふれる場末スナックを。

 M子店長はどこかに電話して空き状況を確かめた。店の裏口から出ると、すぐ目の前に看板が。<ロリーナ>。この店もM子店長から耳にしたことがある。たしか、フィリピンのママがやっているのではなかったか。

 私は初ダイブ。ちょうど常連さんと入れ替わりに。ボックス席でM子ボトルをソーダ割で。

 ママのマシンガントークがさく裂。1件目の‘坂上’の中華料理嘉蒂のOオーナー(女性)は中国のご出身。2軒目の‘坂下’のママは恐らく生粋の鹿沼女。3軒目のママはフィリピン。鹿沼、多国籍である。

 ロリーナのママは日本に来て30年以上になるという。お店(スナック)も創業して30年ほどか。外国人が呑み屋さんで働くのは珍しくなく、むしろ日常の光景。しかし、お店を持つ経営者となると一気に少なくなる。

 鹿沼の坂下の夜を30年以上支えてきたロリーナのママ。今に至るまで、さぞ壮絶な苦労があったことだろう。ママは明るく笑い飛ばすだろうが、鹿沼創業塾でご講演いただいたらいかがだろうか。鹿沼でなくとも、私の担当する市町でお願いしようか。

 30分でお暇のつもりが2時間話し込んでしまい、空になったM子店長ボトルを追加した。

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坂の下の2軒目。

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おばんさいもおむすびも旨し。

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坂の下の3軒目。

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30分のつもりが120分。

(付記)

それから2か月後、鹿沼入りした際に<ロリーナ>のママが急遽体調を崩されて亡くなられたことを知った。あんだけ元気だったのに。心よりご冥福申し上げます。

posted by machi at 06:16| Comment(2) | 栃木県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする