2024年12月31日

第3569夜:観音通りの肉そば【浅草(東京)】

 浅草。日本屈指の観光地である。しかし、今やインバウンドのイメージが強烈である。

 富良野からバスで旭川空港。時間は9時半過ぎ。空腹を極めていた。コンビニで何か北海道っぽいものを…。「ざるラーメン北海道山わさび付き」を捕獲。カードラウンジで珈琲を飲みながら啜ろうとするが、麺が固まったままひっついて解れない。啜れず、齧りつくしかなかった。

 JALで羽田。京急で40分で浅草へ。いつぶりか。東武浅草駅まで距離がある。地上は外国人で溢れている。東武浅草駅で切符購入。特急列車の発車まで35分。昼飯を食う時間はある。

 パッと見渡す。チェーン系の飲食店が目立つ。アーケード街を含め一帯は鰻、寿司、天麩羅…。そこに殺到するインバウンド観光客。日本語が全く聞こえない。不思議なもので、これが今やすっかりいかにも浅草な風景に思える。

 私の昼は、浅草らしく「そば」に決めた。ただし、「中華そば」である。

 それほど悠長にラーメン店を物色する時間はない。日本中で見かけるチェーン系を外した上で、最初に視界に入ったラーメン店に飛び込むと決めた。その1発目がアーケード街<田中そば店>。旨そうなオーラがプンプン。当たりの予感しかしない。

 入口の横に券売機が。入る前にじっくりチェックできるから外券売は地味にありがたい。

 定番を位置する左上のボタンは「中華そば」850円。チャーシューメンと思しき「肉そば」1250円。私はラーメン店では9割以上の頻度でチャーシューメン(肉そば)を頼む。

 私の一つのオトナとしての目標に「値段を気にせずチャーシューメン」を頼むという理がある。「肉そば」のボタンを押した。他のボタンは…。特製肉めし、明太子ごはん。

 気になったのが「山形辛味噌らーめん」「数量限定バリ煮干しそば」「数量限定津軽煮干し中華そば」。この店、山形系なのか、(津軽)煮干し系か…。

 店内はカウンターが一席開いていた。他の席はすべて埋まっている。意外なことに、店内はすべて日本語。地元常連風もいる。期待が高まる。

 ライスは無料だった。平日限定11時から14時までの嬉しいサービスである。私の着座時間は木曜日の13時30分。バシっと決まった感がある。

 ライスの後、肉そばがカウンターからにゅっと登場。思わず口笛を吹きそうになった。極上の美女である。チャーシュービッシリで麺が見えない。中央の刻み葱とメンマが全体を引き締めている。スープは半透明。塩味なのか。

 胡椒パラリ。スープから…。あっさりと深い。塩が前面に出過ぎない。醤油でも塩でもない。煮干味はしない…。旨い。王道のようで革新。直球なのにわずかに変化している。

 肉を頬張る。笑みが漏れる。麺とスープの絡みもなかなかのロマンポルノ。時折ライスを口に運ぶ。肉、麺、汁、飯。私の奥底の雷門が御開帳した。

 卓上の「香唐」。シャントウと発音する特製唐辛子とある。最初のひと口は甘く、後から辛さが来るらしい。少しだけ投下。スープを口に…。

 辛みがシャープ。甘さはあまり感じないが、一味や七味唐辛子では出せない重層感のある辛さ。キリリと舌を引き締めてくる。気づけばスープ一滴残っていなかった。

 大満足で店を出る。時間は13時40分。10分後に特急が発車する。信号に引っかかっても6分ほどでホームにつくだろう。

 数年ぶりの浅草。雷門を見ず、仲見世通りも通らず、寿司や天麩羅、鰻をスルーし中華そば(ラーメン)に全集中。これぞ、旅行や神社仏閣、江戸風情に興味ないが、寸暇を惜しんでラーメンを啜りたいニッポンオヤジの昼メシである。

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旨さが確約された外観。

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期待以上。

(付記)

本年もこのバカブログをご笑覧いただき誠にありがとうございました。大晦日ゆえ「そば」ネタで。新年も御贔屓に。今夜もご安全に。


posted by machi at 07:50| Comment(0) | 東京都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月27日

第3565夜:背徳のモバイルブース【新橋・品川(東京)】

 4月26日金曜日の夜。このゴールデンウィークに突入する前夜に都内屈指の繁華街・新橋駅前の居酒屋で二十名以上が集う懇親会があった。

 十数年前の新長田時代、私が東京へ出張した際は新橋か田町に泊ることがほとんど。新橋でよく呑んだ。2010年に新長田を離れてから都内、特に23区とは御縁が滅失。泊まるどころか呑む機会さえ無くなっていた。月数回都内を通過するが、改札から出ることも稀になった。

 十数年ぶりの新橋呑み。17時半ごろからスタートし、呑み放題ゆえきっちり2時間で退席。店員さんから何度も退出をせかされた。入口にはお客が並んでいる状態だ。

 この日、私は品川から新神戸まで直通する終電の新幹線を予約していた。時間は21時。新橋から数駅ゆえ、余裕を持っても20時30分に発てば十分に間に合う。

 二次会に移行する雰囲気だ。1時間だけで中座しようと店内で煙草を吸っていたら、気づけば誰もいなくなっていた。グズグズして取り残されてしまった。

 1時間、どうするか。新橋駅前はまっすぐ歩けないほど人で溢れている。居酒屋からは人が外まで溢れ、ラーメン店も長蛇の列。十数年ぶりの新橋、酒と人に酔いそうになった。

 とりあえず品川駅へ向かうことに。京浜東北線で向かうと、一駅手前で停車したまま動かない。人身事故らしい。何もこんな日に、と思いながらホームを移動し山手線で品川駅へ。私が予約している最終便まで1時間。券売機の前も引くほどの行列だ。

 発車まで1時間。凄まじい人流。新幹線の改札内に入る前に売店エリアを覗く。毎週のように東京駅は利用しているが(ただし改札内のみ)、品川は久々。

 美味そうな弁当や総菜で溢れる中で眼を惹いたのが、愛してやまない<つばめグリル>のハンブルグステーキ。しかも、大きなサイズ発見。電子レンジで温めて頂けると書かれている。

 温めても新幹線に乗る頃には冷めている…。熱々を待合室で味わおう。しかし、ベンチシートが開いているか。これは賭けである。リュックには安ワインのフルボトルが入っている。ハンブルグステーキ(ハンバーグのこと)と赤ワインで新幹線発車まで楽しみたい。

 温めたブツを手に改札内待合室へ。ベンチシ−ト満席。ところが、5席しかない個室風ビジネスゾーンの1席が開いていた。しかも無料。注意書きに「飲食のみの利用は不可」とある。

 一瞬諦めそうになったが「飲食のみ」を深読み。飲食だけではダメだが、パソコンを開けば「仕事しながらの飲食」になりセーフになるのでは。

 モバイルブースは機能美に溢れている。照明、上着掛け、コンセント。パーテーションである程度の個室感もある。

 リュックからパソコンを取り出し、電源を入れた。打ちもしないパソコンを起動させ、仕事している感を出す。続いて赤ワインのフルボトルを取り出す。ハンブルグステーキのフタを外し、アルミホイルを剥がす。まだぬくもりがある。

 待合室の個室風モバイルブースで、姑息にパソコンの電源を入れ、赤ワインをラッパ呑みしながらハンブルグステーキを満喫。淫靡で背徳な秘密基地である。居心地が良すぎて、最終新幹線に乗り遅れそうになってしまったけれど。

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十数年ぶりの新橋周辺。

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久々に捕獲。温めて頂く。

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新幹線改札内モバイルブース確保。

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開封の儀。

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マイ個室状態。

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Yオコーのチーズパン、大好物。

posted by machi at 06:33| Comment(0) | 東京都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月07日

第3536夜:三丁目の文豪【新宿(東京)】

 新宿三丁目。新宿どころか都内、それも23区内で十年以上呑んだ記憶がない私は、新宿など改札から出た記憶もない(20242月上旬時点)

 ある夜、関東出張中にポカっと夜のスケジュールが空いてしまい、急遽田辺でお世話になった府中在住のF島氏と呑むことに。氏は新宿をご指定。しかし私は新宿など全く分からず迷子になるのは必定。

 氏と改札が1か所しかないという誠に心強い新宿三丁目駅で合流。地上に上がって徒歩2分ほどに<どん底>があった。

 圧倒的に味わい深い建物というか、ビルである。絶対に独りだったら入るどころか気づかなかった。店内は地下から3階まであるらしく、最高にシブい内装である。創業50年以上らしく、歴史がある。この雰囲気が一夜で作り出せない。

 生ビールで乾杯。2杯目からはドラフトギネス。ギネスがピッタリな空間である。店内はあっという間に満席に。

 お通しがバケットに生ハムとクリームチーズ。サラミとハムの4種盛、ポテトフライ、牡蠣オイル漬、マッシュルームに何かの肉を詰めた逸品(ブランチャというらしい)。

 どれも旨く量も多い。酒が進む。出てくるのも早い。あっという間にテーブル上が渋滞に。

 店の常連のことを「どんファン」というらしい。そのファンの面々が凄い。とても書ききれないが、俳優、声優、タレント、作家…。文豪・三島Y紀夫氏も「どんファン」らしい。

 私の趣味(の一つ)は読書だが、ミステリに偏っている。三島作品は全くの未読。それほどピンとこないが、この店に向かう途中に<池林房>という3文字表記の居酒屋が視界に入った。確か、S名誠先生のご友人が経営されている居酒屋でなかったか。

 椎名作品は小説からエッセイまで数百冊読んできた。最も「読んだ」作家である。そのエッセイに頻繁にこの店が確か登場していたはず。

 時間は21時に。F島氏も椎名エッセイのファンだった。歩いて1分。2軒目に立ち寄った。ほぼ満席だったが席の確保に成功。

 私はホッピー(黒)を頼み、ツマミに「東京べったら」と「グラッパ(ハチノスのイタリアン?)」、ウィンナー盛合せを注文。

 店員さんは皆さん若い。店内の客も若い。しかし、明らかに年配の従業員が一人おられた。その方が料理などを運んで下さる。マスクされているが、目元に見覚えがある。

 椎名エッセイでよくお写真で登場されるオーナー様だった。三島作品でなく椎名作品で20歳から40代半ばまで育った私には感無量。オーナー自らが機敏に動かれている姿に心打たれた。

 気づけば23時。私の宿は春日部。新宿で呑んだ経験もなく、そこから春日部まで深夜に移動したこともない。路線検索する。10分後の地下鉄に乗り、3回ほど乗り換えれば24時半に春日部に着くようだ。

 慌ててホームへ。府中在住のF島氏は逆方向の電車へ。東へ向かう電車が4分後に入線する。その時、猛烈な尿意に襲われた。乗換のタイミングや移動に自信がない。しかし、我慢できない。

 エスカレーターを駆け上がった。トイレが見えた。遠いが小走りを決めた。私にとっては年に1度もないアクションシーンである。

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新宿三丁目にそびえる城。

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歴史あり。

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パブらしいツマミ。

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牡蠣、だったかな。

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ハム、だったかな。

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憧れの居酒屋。

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「べったら」メニューは珍しいかも。

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グラッパ、だったかな。

posted by machi at 06:50| Comment(0) | 東京都 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする