ある残暑厳しい正午。12時前に品川駅着。乗換列車迄1時間以上。いったん改札を出て高輪口へ。品川駅周辺で昼食を取る際、95%はこの品達ゾーン。いつもはサラリーマンで賑わい人気店は行列だが、この日は閑散としている。……。全店閉まっていた。コロナ営業自粛なのか。
大きな道路を挟んだ対面にラーメン店と洋食屋(つばめグリル)があることは知っていた。しかし信号を渡るのが面倒でその前を通ったことがなかった。
ハンブルグステーキ(つばめグリル煮込みハンバーグ)も垂涎極上だが、どうせなら入ったことになきラーメン店へ。<風神>。カウンターだけの店内で年配オヤジ2人が切盛りしていた。
かなりの混みっぷりである。ラーメン、つけ麺、担々麺を軸に様々なトッピングバリエーションがある。ライスと餃子のセットもある。
初めての店では定番に限る。私にとって定番はオーソドックスな醤油ラーメン。つけ麺や冷し中華ではない。ただしラーメン(700円)だけも味気ないので「チャーシュー麺(890円)」召還。品川駅前でチャーシューメンが900円以下で啜れるシアワセ。
お客がひっきりなし。実力か、品達休みの影響か、そもそも品川にランチ店が少ないためか。
ぼんやりメニューを見ていると、ブツ降臨。かなりオーソドックスである。ワカメとメンマが多め。チャーシューも分厚いサイズがたっぷり。
胡椒をパラリし、まずはスープ。……。ユネスコが大至急絶滅危惧種に指定して保護すべきあっさり鶏ガラ醤油である。
麺はツルツルして、コシがあるというよりのど越しが好い。チャーシューも柔らかくシンプル。かなりの総合点を叩き出している。
品達のラーメン店はどこもかなり個性的な味。品川駅周辺はすさまじいほどの開発が進む未来都市。リニアが開通した際には品川駅はどのように変貌しているのか。しかし、オヤジさん2人が醸し出す鶏ガラ醤油の良心は50年後も変わることないだろう。
お客が並びだしたので、スープを啜り切ってお会計。1000円払うと、160円お釣りが来た。
あれ?890円だから110円のお釣りではないのか。オヤシさん、ラーメンの腕は落ちていないが、計算が回らなくなってきたのか……。
ふとレジ横のPOPが視界に入った。私が座っているカウンター座席には視界に入らなかった。
「コロナ・熱中症に負けない 応援セール がんばれ!人類! 麺類オール50円引き(令和2年9月10日)まで」。
この日は令和2年9月8日。私も人類の末端中の末端として、コロナに負けず頑張ろうと心に硬く誓いながら、2週間前に熱中症にかかってしまった栃木県(小山市)へ向かった。

風格。

円熟。

感動。
(付記)
後日知ったが、品川駅高架下「品達」は改修工事か何かで2020年3月ごろ閉鎖したという。品川で下車する機会と想いが100分の1以下に激減しそうである。