2011年12月01日

第369夜:牛たんづくしに13年の歳月を思う【仙台(宮城)】

 牛たん焼。言わずとしれた仙台最強のA級名物である。

 2011年11月上旬、石巻から最終バスで仙台に戻る車中で、仙台在住の大学時代の友人にメールで連絡を取った。大学卒業後すっかり疎遠になっていたのだが、東日本大震災の後、旧友がネットサーフィン中にたまたまこのバカコラムにヒットしたそうで、メールにて仙台に寄ることがあれば連絡してほしいと言われていた。

 石巻で宿泊できず、急遽仙台に宿泊することになったため、友人のO川君に連絡を取ってみた。まさかアポイントが取れるとは思わなかった。

 夜9時前に仙台到着。昼に仙台駅構内で立喰そばを啜っただけなので猛烈な空腹に襲われている。ホテルに荷物を置いた私は友人と合流し、彼が勧めるままアーケード商店街の<利久>に入った。超人気牛たん専門店である。

 13年ぶりに小G君とビールで乾杯。人間とはこれほどまでに外見が変わらないものなのかと驚かされるほどそのまま。かくいう私も彼曰くそのまんまだそうだ。

 牛たんメニューだけで10種類以上もある。他にも心躍るメニューが豊富だが、せっかくなので牛たん一本勝負を選択。牛たんナイトの始まりだ。

 まずは定番中の定番「牛たん焼」。分厚くて柔らかい。塩加減も見事である。甘味、歯ごたえ。牛たんの魅力が全開だ。付け合わせの漬物のシブい仕事をしている。

 「牛たんソーセージ」は意外とあっさりした味わい。プツンと皮を噛み切る歯触りが嬉しく、その後に押し寄せる肉汁に感涙。生ビールが止まらない。

 正式名称はうる覚えの「牛たん燻製焼」(たぶん)は、スモークすることにより深みとクセのある香りが味の格式を上げている。余分な水分も抜け、歯ごたえがよりしっかりとする。

 私は生ビールからハイボールに切り替えた。アツアツ料理は生だが、冷菜系はウィスキーが好適である。ハイボールの炭酸がノドに心地よい。

 「牛たんマリネ」は酢の酸味が爽やかで、「牛たんテリーヌ」は独特の濃厚なコクにマヨネーズのまろやかな官能が加わる。ウィスキーをノドにグビグビ放り込む。

 大学卒業後の13年間の話より、旧友と再会すると脳内が過去にタイムスリップする。思い出話が尽きない。彼と出会った大学1年の冬に阪神大震災があり、17年を経た2011年、東日本大震災に見舞われた仙台で彼と呑んでいる。不思議な縁である。

 私は大学時代、様々なバイトが軌道に乗るまで貧窮を極めていた。その割に毎夜呑み歩いていた。酒は4リットル1000円程度の甲類焼酎、サカナは200円台のほっけや漬物などだった。

 30代後半になった私の目の前に、生ビールや牛たん料理の数々が並べられている。頭の中と外見は変わらないかもしれないが、呑む酒と呑む店、ツマミの豪華さは変わった。そして、こってりした食べ物に後半苦戦するようになった。牛たんづくしを決行して、肌身に染みた。

111201利久牛たんづくし(仙台).JPG
仙台<利久>で牛たんづくし

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
福岡県飯塚市から北九州市若松地区へ。その後移動して、広島県福山市で宿泊。福山駅周辺の様変わりに少し驚く。
posted by machi at 05:35| Comment(2) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月30日

第368夜:商売繁盛福の神・仙台四郎【仙台(宮城)】

 仙台四郎(本名は芳賀四郎)。明治期に仙台に実在した人物である。21世紀の現代、仙台では福の神と崇め奉られている。

 仙台氏は幼少期の事故で知的障害を患ってしまうが、いつもニコニコ人気者。仙台氏が訪れる店はなぜか大繁盛し、各店舗からひっぱりだこであったそうだ。存命中からその後利益にあずかろうと、存命中から他県にも招かれている。

 坂本龍馬氏のナナメ45度上向き加減13度の定番肖像写真のごとく、仙台氏も1枚だけ写真が現存している。若手落語家のようだが、この写真を大正時代に「福の神」として絵ハガキで売り出された。これがブレイクのきっかけとなったらしい。

 仙台といえば、世間一般では独眼竜・伊達正宗公。商売人にとっては、伊達氏ではなく仙台四郎氏を崇めたいところ。仙台氏の影響もあってか、仙台駅から連なる商店街は大賑わいだ。

 駅前の「ハピナ名掛丁」から「クリスロード」、「マーブルロードおおまち」と、アーケード街が続く。空店舗などもちろんなく、広々とした道路幅はまっすぐ歩けないほどの盛況ぶりだ。

 程なくして、アーケードがT字になる。イルミネーションが美しい「ぶらんどーむ一番町」と「サンモール一番町」。信号を渡ると、オープンモール型の「一番町四丁目商店街」だ。

 圧巻である。どの商店街も清潔で、人があふれている。駅前だけでなく、駅から離れても見事な回遊性を発揮している。

 アーケードに反響し、そこら中で美しいゴスペルの生調べが聞こえてくる。中心市街地商店街を中心に8会場でゴスペルフェスティバルが開催されていた。音楽に疎い私が聞いても、いいなと思う。

 サンモール一番町では、「マルシェ・ジャポン・センダイ」が開催されていた。雰囲気のある白テント、陳列、販売商品である。一般の露店と違い、ポップで爽快なこだわりが感じられた。魅力ある東北の食材が募っている。

 これらの賑わいは、仙台四郎氏のおかげなのだろうか。クリスロードのアーケードには、仙台氏を象った巨大バルーンが吊るされている。その横には神社があり、仙台氏もさりげなく祀られている。

 私は、仙台四郎氏のご尊顔を拝見すると、尻の穴がすぼまるような緊張感を覚える。東北出張の多い私はよく居酒屋などで指摘されるのだが、仙台氏は私とそっくりなのだ。

 私はこれまで西郷隆盛氏、BEG●Nのボーカル氏、中●彬氏、吉●新喜劇の川●座長に似ていると言われていた。それに加え、商売の神様・仙台四郎氏に姿顔が似ているとは極めて光栄。ただ、それだけでは物足りぬ。仙台氏のごとく、私が店や商店街を訪れると、そこは賑やかに繁盛する。そのような人物に、私はなりたい。

111130仙台の商店街.JPG
クリスマスムード満点。仙台四郎氏がサンタ役も務める

111130仙台四郎.JPG
商売繁盛の神様として崇められる仙台四郎氏

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
北九州市黒崎から福岡県飯塚市へ。ここに書ききれないほど深夜までみっちりこってりとした1日。昼食のインディアンカレー、深夜の立喰い肉うどんに興奮する。
posted by machi at 07:09| Comment(0) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月09日

第354夜:拝啓、震災のまちから〜52通目【気仙沼(宮城)】

 気仙沼ホルモン。全国的な知名度は分かりませんが、気仙沼に滞在していると頻繁に見かけるメニューです。ちなみに気仙沼は肉屋さんの占める割合が高いように思えます。

 私が宿泊手配できた場合に滞在している<金港館>の若女将さんから教えていただいた居酒屋を訪ねてみました。その名も<第二笑会議処>。日本全国様々な会議所を訪問しましたが、これほどユニークな「会議処」は初めてです。

 メニューで異彩を放っていたのが「気仙沼ホルモン」。気仙沼といえば平均2000円と思われるふかひれラーメンが有名ですが、新たなB級グルメなのでしょうか。注文してみました。

 カウンターの前に完成品が置かれました。キャベツ千切りがたっぷり添えられたホルモンの味噌炒めのようです。これが気仙沼ホルモンか…。余裕で箸を取り上げた私に、女将さんは「ソースで〜す」と小鉢にウスターソースを入れて、私に手渡してくれました。

 味噌炒めにウスターソース?全く今まで経験したことのない組み合わせです。心が乱れます。まずはそのまま口に。……。歯ごたえよく、味噌のコクがホルモンに絡み絶品です。

 続いてウスターソースに漬けてみました。……。この味を一言で表現する言葉は、地球上にないでしょう。合う合わないという次元を超越しています。不思議な味わいです。

 商店街やボランティアの皆さま方と訪れた焼肉店<さうす>でも、気仙沼ホルモンが出てきました。今回は大勢の気仙沼人と一緒なので正しい作法を教えていただきました。

 小鉢に千切りキャベツがこんもりと盛られています。それにウスターソースをドボドボとぶっかけます。焼きあがったホルモンをソースのかかったキャベツに乗せ、キャベツとホルモンを一緒に口に運ぶのです。味噌味塩味の違いではなく、ソースのかかったキャベツと一緒に味わう食べ方を含めて「気仙沼ホルモン」と呼ぶようです。

 ある日の昼、気仙沼駅近くにある<むーとん>という小料理屋に入りました。昼はランチを実施しており、メニューは基本的に「ラーメン」と「パンチ丼」のみです。パンチ丼?興味を引かれたので注文してみました。

 程なくして出てきたのは、白メシにホルモン味噌煮込みをぶっかけたもので、ネギがトッピングされています。朝食を食べる暇すらなかったので、ワシワシと頬張り、胃にすっ飛ばしました。……。素晴らしい旨さです。ホルモンの甘味と歯ごたえ、味噌の深みが白メシに混ざりあり、口の中は嬉しさのホルモンカーニバル。付け合わせのスープも見事でした。

 ちなみにパンチ丼、わずか500円とお得です。大盛、小盛もあります。大盛は1.5倍の「メガパンチ丼」、小盛は「ネコパンチ丼」と言います。

 ネコパンチ丼。80年代にハリウッドのセクシー俳優として知られ、いまやすっかりムキムキのB級アクション俳優になったミッキー・ロ●ク氏を思い出しました。

111109気仙沼ホルモン.jpg
<第二笑会議処>気仙沼ホルモン

111109気仙沼パンチ丼.jpg
<むーとん>パンチ丼

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
仙台から気仙沼入りする。会議や打ち合わせの後、ほろ酔い気分で暗闇の中旅館に戻ろうとガレキの街を歩いていた午前1時、パトカーに職質される。
posted by machi at 08:38| Comment(0) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする