2012年02月07日

第411夜:拝啓、震災のまちから〜69通目【気仙沼(宮城)】

 <マンボ>。気仙沼復興商店街で力強く営業している喫茶店です。喫茶店なのですが、昼時はランチ客で満員になります。中でも大人気メニューがラーメン系。マンボさんのラーメンの絶品ぶりは私もよく耳にしていましたので、ある冷え込んだ昼、復興野郎Bチームの面々と引き戸を開けました。

 メニューを見ます。ラーメンやカレーの他に、豚キムチ丼やキムチチャーハンなどもあります。S井現地マネージャーが私に、<マンボ>さんのキムチがいかに評判良く好評であるかを私に語りかけてきました。白菜の他に大根などもあります。一気に興味が湧いてきました。

 キムチ最強の友は、熱々ゴハンしか考えられません。個人的にキムチはパンチが強すぎて、酒のサカナには向いていないように思えます。定番のラーメンに半ライスと漬物が付いたお得なセットとともに、定番の白菜キムチを注文しました。

 談笑していると、ラーメンが運ばれてきました。モウモウとした湯気が冷え切った顔を温めてくれます。キムチも運ばれてきました。何とパッケージに入っています。確か400円程度だったと思いますが、すごいボリューム。とても食べ切れそうにありませんが、マスターは残った時は皆さんそのままお持ち帰りされると言います。

 スープを啜りました。……。王道の醤油味で、さっぱりあっさりの中の深いコクと旨みが凝縮されています。人気も納得です。麺も意外なほどボリュームたっぷりです。

 キムチを口に運びました。……。目が見開き、ぶっ飛びました。辛いのに甘味があり、塩加減と酸味も絶妙。奇跡的なバランスを保っています。シャキシャキの歯ごたえも嬉しい限り。

 すかさず口の中に熱々の白飯を放り込みます。……。脳天からつま先まで歓喜が稲妻のように背骨を貫きました。舌がスリーセブンでフィーバー状態です。キムチ、ライス、ラーメンスープのローテンションを繰り返すうちに、確変モードに突入してしまいました。

 半ライスとはいえ普通の中ライスほどあったのですが、キムチもまだたっぷりと残っています。私は思わずお代わりしてしまいました。2杯目もあっという間に消えてしまいます。

 すっかりマンボキムチの虜になった私は、翌日の昼も突撃。注文したのは「キムチチャーハン」大盛。気になって仕方ありませんでした。

 厨房からごま油の焦げた香りとチャッチャ、カンカンと炒める音が響いてきます。はやる心を必死で抑えていると、ドカ〜ンとキムチ色のチャーハン(当たり前ですが)とサービスの玉子スープを従えて降臨。あらゆる複雑で豊かな香りが鼻に飛び込んできます。

 スプーンで豪快に口に運びました。……。虹色の味といいましょうか。キムチの程良い辛さがごま油とミックスし、旨みがさらに増幅しています。夢中で口に運び続けました。体の芯から余分な老廃物が燃やされていくような清浄も楽しむことができました。

 ただいま2012年2月7日午前6時30分。前夜に東京で深酒した私はこれから気仙沼に向かいます。昼食はどこで食べようか、今から嬉しい悩みに身悶えています。

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気仙沼復興商店街<マンボ>自家製特製キムチ

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<マンボ>必殺のキムチチャーハン
posted by machi at 06:48| Comment(0) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月30日

第405夜:拝啓、震災のまちから〜68通目【気仙沼(宮城)】

 ふかひれラーメン。気仙沼最強の知名度と高級感を誇る超A級グルメです。ちなみに「ふかひれ」とは、サメのヒレを乾燥させた食材で、主に中華料理に使われます。この高級食材の活用に革命を巻き起こしたのが、気仙沼南町商店会を本店とする東北屈指の寿司の名店<あさひ鮨>。「ふかひれ寿司」は気仙沼観光に外せない極上の逸品です(私は未食ですが)。

 気仙沼ラーメンなるものを味わったことがあります。一般的な醤油ラーメンにサンマなどのツミレが具として入ったものと思われます。王道の気仙沼ラーメンと言えば、やはり「ふかひれラーメン」なのでしょう。

 2011年9月上旬に気仙沼入りしてから、ふかひれラーメンは私ごときには手の届かない高値のヒレでした。ラーメン1杯3,000円というウワサも耳にします。数多くの飲食店が津波で壊滅し、ふかひれラーメンを取り扱っている店すら把握できていませんでした。

 2012年1月下旬、魚町1区商店会の皆さま方とCPのY川氏、T大院中退のS井氏ら復興野郎Bチームの面々と今後の商店街活性化の方向性、区画整理等を議題にした意見交換会が開催されることに。会場は魚町1区の中華料理店<やまと>。湾内に面した店舗は2階まで撃沈しましたが、懸命な復旧作業によって2011年12月21日、津波から見事に立ち直りました。

 意見交換会に先立ち、腹ごしらえすることに。メニューを見ました。ラーメン450円という破格の安値に心が温かくなります。目をスライドしていくと、アンダーラインを引かれた上に特大のポイントで記入された一文に目が止まりました。「ふかひれラーメン 1,100円」。

 1杯3,000円と思いこんでいたマボロシのA級ラーメンが、想定の3分の1で味わえるという破格のチャンス。定番ラーメンの3倍弱という価格ですが、めったにない機会です。一瞬の躊躇の後、声高らかに注文しました。

 モウモウと湯気を上げながら出てきたブツは、ボリュームも破格。まずはレンゲで一口スープを啜りました。トロミがかった餡かけ風です。麺を啜りました。ノド越しよくツルツルと食道を滑っていきます。細かく刻まれたタケノコが素晴らしいアクセントです。

 茶色の三日月がラーメンの具として鎮座しています。これが、ふかひれです。慎重に口に運びました。……。シャクシャクとした歯ごたえの後、トロリと口の中で溶けるようにほどけます。ほどけた後、濃厚な旨みと中華のパンチが口の中に充満します。高貴かつ桃源、究極にして至高(某マンガみたいですね)。スープの一滴まで残さずに啜りきりました。

 後日、他の商業者の方々とふかひれラーメンの挑んだことを話しました。ひとしきり扱っている店の味や値段で話題に華が咲きます。ただし皆さん共通していたのは、観光客を対象にしたラーメンで、地元民はめったに口にしないとのこと。神戸で生まれ、育ち、今も住む私が神戸ビーフを食べた記憶がほとんどないのと同じなのでしょう。

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気仙沼<やまと>ふかひれラーメン
posted by machi at 07:01| Comment(4) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月27日

第404夜:拝啓、震災のまちから〜67通目【気仙沼(宮城)】

 職務質問。街で見かける不気味な男、犯罪の香りがプンプン漂う輩など不審者を警邏中の警察官が呼び止めて行動を問いただす緊張感あふれる行動です。

 深夜1時。気仙沼の商業者たちと鯨飲し、私は真っ暗なガレキ道を懐中電灯片手にフラフラと一人、宿までの道のりを歩いていました。

 側溝を歩いていた私の後ろで、いきなり車が急に止まった気配がしました。バタンと大きな音を立ててドアが開きます。

 私の背中は恐怖に震えました。酔いも一気に覚めました。以前、灯りのない夜道はとにかく危険で、地面が陥没、冠水しているだけでなく、どんな不審者が潜んでいるか分からないと注意を促されていたことをすっかり忘れていました。女性が深夜に一人でガレキの街を歩くことなど、ピラニアの水槽に自分から手を突っ込むようなものでしょう。

 私は上下作業着に安全靴、懐中電灯のみを携えています。私から身ぐるみを剥いだところで、メリットはないでしょう。私のメタボ体系に目がない男色家の欲望のはけ口にされるのでしょうか。わずか1秒ほどの間に、走馬灯のごとく様々な不安が空気頭に充満しました。

「アノ〜、どちらに行かれるんですか?」

 背後から声が聞こえました。振り向けば、パトカーが止まっていました。2名の警察官が私に近寄ってきました。車体には千B県警と書かれています。暴漢ではなく安堵しました。

アヅマ「えぇ、宿に帰るんです」
警察官「どちらにお泊りですか?」
アヅマ「はぁ、すぐ近くの旅館です」

 私はここで初めて、不審者として認定され職務質問されていることに気づきました。初めての経験です。さらに踏み込んだ質問が飛んできます。

警察官「何をしていたんですか?」
アヅマ「……。呑んでいました」
警察官「……。私の顔に息を吹きかけて下さい」

 警察官は唇が触れそうな距離まで顔を近づけてきます。これが女性警察官だったらなと、一瞬妄想が走りました。私も「ふぅ〜」と酒臭い息を男性警官の顔に吹きかけました。

警察官「はい、オッケーです。酒の匂いがしましたね。本当に呑んでいたのですね」

 怪訝な表情を浮かべる私に向かい「いやぁ〜、こんな夜中にガレキの中で何をしているのかと思いましてね」。確かにそうですね。

 飲酒運転と異なり、警察官の顔に思いっきり酒の匂い漂う息を吹きかけ、ほめられるとは思いませんでした。不審者に注意していたつもりでしたが、私自身が不審者だったようです。
posted by machi at 09:08| Comment(0) | 宮城県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする