たっぷりの葱を載せてブツ着丼。冷凍を湯がき、幾分の出汁とレトルトのぶっかけ。見た目だけなら自宅で余裕で再現できそうである。
唐辛子をパラリし、まずはカレー汁。……。想像の遥か斜め上を行っていた。レトルトっぽさ皆無。辛口でスパイシー。極上出汁と絶妙にベッドインしている。
平打ちきしめんの表面積でカレー汁を絡めとる。どしりとした至福。ごはんをぶっかけたくなる衝動に駆られながら、汁1滴残さないシャチホコ啜。我が下種な勘ぐりに反省する。

🍜2021年9月●日
11年ぶりの名古屋駅在来線きしめん、5回目で2021年啜り納めである。
朝7時過ぎ、多治見から名古屋駅に入線。8番ホームではなかった。何番ホームであったかは敢えて秘す。
ワンコイン、定番のかき揚げ(玉子入り)、みそ、カレーとビルドアップしてきたきしめん旅の掉尾は、「名古屋コーチンきしめん」。
価格は他の追従を許さない890円である。その次の価格帯がみそ、カレー、海老天の640円ゆえ、250円の開き。まさに25馬身ほど差がついている。
ノーマル(かけ)が360円。世界屈指のブランド鶏・名古屋コーチンのトッピング値段は890円-360円=530円。本体(きしめん)よりも遥かに高い。チャーシューメンでもあり得ない設定。もはや空前絶後のSFである。
麺大盛(1.5玉)が110円。在来線ラストきしめん、いっそのこと、キリの良い1000円にしよう。アラフィフオヤジの魅力が詰まった渾身のブルジョアジーである。
ドヤ顔で年輪を刻んだ職人オヤジにチケットを渡す。オヤジは何も話さず一瞥しただけ。
メニュー写真がないのでビジュアルが分からぬ名古屋コーチンきしめんに期待と不安に胸を高まらせる。1分ちょっとでオヤジは気だるそうに無言で着丼。
コーチン、小さめが3切。期待より不安が正解だった。1切あたり約176円。
気を取り直して出汁。……。こんなに薄味だったか。これは私のバカ舌の記憶違いだろう。
コーチン、歯ごたえがあり噛みしめると旨味がにじむ。出汁にコーチンの旨味が溶け込んで鴨南蛮的確変を期待していた私の修行不足。薄味のまま確変せず不動。ブレない一杯である。
1000円のブツを汁一滴残さず滅失させる。割と大きめの声で「ごちそうさま」とオヤジに声をかけるが、全くの無反応。ちなみに客は私一人だけ。職人は寡黙な方が味わい深い。
敗戦処理投手の気持ちを噛みしめながら店を出る。私の在来線きしめん旅2021も完結。
ホームを見渡すと<住よし>以外にもありそうだ。1つのホームに2か所きしめん屋がある線も。これから在来線でのきしめんは、かき揚げ一択。血涙を流しながら心に誓った。
