2011年09月05日

第311夜:御座敷でオトコ芸者【斑鳩(奈良)】(前編)

 法隆寺。世界一敷居が高いと噂される、天下御免の世界遺産日本第一号である。

 大仏様が鎮座する東大寺など奈良周辺の神社仏閣は観光した人は多いだろうが、法隆寺は意外と少ないのではないだろうか。私も訪れた記憶がない。そもそも、法隆寺がどこにあるのかも知らず、恥ずかしながらてっきり奈良市内と思っていた。法隆寺は、斑鳩町にあるのだ。

 天王寺から快速でわずか20分程度で、JR法隆寺駅に到着する。その北側に広がるのが「法隆寺北口商店街」。超人気レストラン<若竹>の女将さんが商店街会長を務め、ブティック<CECIL>のKるみ姐さんが爆発的なパワーで引っ張る女性上位の力強い商店街である。

 一昨年、奈良県庁様が企画され、私もお手伝いさせていただいた「奈良県商店街次世代リーダー塾」。奈良県内8市町(奈良・大和高田・大和郡山・天理・御所・五條・生駒・斑鳩)の商店主たちが参加され、法隆寺北口商店街からは4名の女性商店主が参加されていた。

 2011年9月より毎月1回、法隆寺北口商店街を中心とした斑鳩町の商工業者を対象としたセミナーが12月まで開催される。第1回目のセミナーは9月16日。一昨年のリーダー塾が御縁で、セミナー開催と成功を目指し、より一層商店主たちが交流を深めるキックオフ懇親会が9月1日に開催された。リーダー塾が御縁となって、懇親会に私もお招き頂いた。

 訪問先の兵庫県伊丹市から奈良県斑鳩町の法隆寺駅前に到着したのは18時ごろ。会場となるホテルの送迎バスが止まっている。私を含めて14名が乗り込み、バスが発車した。

 会場がどこか知らされていなかった私は、法隆寺駅近くのビジネスホテルと思い込んでいた。5分程度で到着すると思いきや、一向に辿りつかない。車中で隣席のみなさんと談笑していると、バスは住宅地を抜け、山道を登りだした。一体、どこに行くのだろうか。

 乗車すること30分。到着したのは<信貴山観光ホテル>。天然温泉露天風呂や真心のこもったサービス、絶品の懐石料理が充実している温泉宿だった。余談だが、信貴山を舞台にした「信貴山縁起絵巻」は日本4大巻物とされ、国宝に指定されている。

 法隆寺近くにはホテルも(あまり)なく、セミナーと懇親会会食を兼ねるような会場がないという。天下の世界遺産・法隆寺が屹立しているのだから、ホテルは溢れんばかりにあると思い込んでいた。懇親会に先立ち、私は30分ほど粗末な一芸でお茶を濁すことになっている。

 ある商店主は「法隆寺は立ち寄るところで、泊まる人はいない」と語り、別の商店主は「観光客のトイレみたいなもの」と自嘲気味に苦笑されていた。また、法隆寺北口商店街と法隆寺は徒歩で20分程度離れており、観光客が商店街を訪れることは少ないそうだ。

 仲居さんたちによるお出迎えの後、ミニセミナー&懇親会場に案内していただく。会場を見た瞬間、私は目を剥いた。コの字型に配置された、完全な慰安旅行風の宴会セッティングだ。〔次夜後編〕

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信貴山観光ホテル特別セミナー会場
posted by machi at 05:41| Comment(0) | 奈良県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月12日

第150夜:重い決断【奈良】(その四)

 圧倒的なベトナム風バルメニューである。私のエンジンが潤滑に機能し始めた。地酒が急ピッチでノドを通り過ぎた。

■ 五軒目:<酒房 亜耶> 【いか刺+地酒】
 
 ラスト5軒目である。かなりの満足度だ。近鉄奈良駅に近いビルの地下へ。
 
 私はバルイベントにおいて、常にテーマを設定し戦略を立てる。伊丹では寿司屋で5軒(第10夜〜第12夜参照)、守山ではホタルにちなんだ8軒(第13夜〜第18夜参照)という具合に。
 
 奈良では、私は軍師として特に采配を振るったわけではなかったが、一つの法則を貫いていたことに4軒目で気付いた。「ビール外し」という、バル世界ではかなり上級レベルの大技である。意識していなかったが、ベトナムも交じっているとはいえ、キーワードは「地酒」だった。
 
 せっかくなので、5軒目も地酒でシメたい。駅ビル地下の3軒の中から、バルメニューに地酒があった<酒房 亜耶>の暖簾をくぐった。
 
 賑わう店内のカウンターの腰を掛け、バルメニューをお願いする。店主に、ビールを外して地酒シバリを試みたことの意見を求めた。店主曰く「それは大正解」とのこと。自信が湧く。
 
 こちらのウリは、豊富な奈良の旨地酒に加え、舞鶴・野原漁港から漁師直送による日本海の新鮮な魚介類も加えられている。
 
 地酒とともに出された鮮魚の造りは、いか刺。ねっとりとした甘味がたまらない。上顎に絡みつくようなイキの良さ。地酒で追いかけると、口の中は舞鶴だ。

 たっぷり5軒、奈良を満喫した。近鉄奈良駅から鶴橋経由で、私はそのまま阪神線で三宮へ。他の2名はそれぞれJR環状線に乗り換え天王寺方面、大阪方面と見事に3路線に分かれていく。
 
 鶴橋は日本屈指の焼肉ストリートが駅前に伸びる。焼肉と言えば、冷たい生ビール。バルメニューでビールを外すという、金●アニキをスタメンから外すような大胆かつ重い決断を下したが、耐えきれなくなった。焼肉のケムリが、鼻だけでなく皮膚からもしみ込んできそうだ。
 
 ウツボM田とジャズH口に下車を命じた。ジャズH口が推奨する<吉田>に入った。友との約束を果たすために走りすぎたメロスのように、私は生ビールを注文。本日1杯目である。

 ゴッキュゴッキュ、ノドに飛び込んでいく。生ビールの旨さを再認識する。すかさず2杯目を注文し、ようやく落ち着く。焼肉とホルモンの盛り合わせをツマミに、ジョッキを重ねる

 他の2人は呑み歩き疲れからか、ペースが上がらない。一方、私は全盛期のシュー●ッハー氏のように、酒のペースとバカ話の勢いが止まらない。ビールは、私のガソリンである。

 どれほどの勢いでバカ話に興じていたか。隣のテーブルで自分たちの世界を築いていたカップルが
「今の話、詳しく聞かせてもらえませんか」
と会話に加わってきたほどの勢いである。〔終〕

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鶴橋焼肉には生麦酒
posted by machi at 06:43| Comment(0) | 奈良県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月11日

第149夜:重い決断【奈良】(その三)

 10種類から選ぶことができる地酒から1つチョイスし、大和ちぢみと堪能した。ちぢみ、予想より美味しかったことに驚いた。
 
 気持ちよく呑んでいると、バルの有段者・石G師範代があることに気付いた。

「バルチケット1枚700円で、地酒が300円。ちぢみが400円。これって…」

 初開催ではありがちなことである。一生懸命な美女の笑顔が、バルチケットサービス分なのだろう。酔いの覚めた私は、4軒目を急いだ。

■ 四軒目:<ベトナム料理コムゴン>【生春巻1本・揚春巻2本・ベトナム野菜+ベトナム地酒】
 
 バル美女3人が合流し、私たちは計8名の大所帯となった。時間は19時ごろ。バルは佳境に突入している。8人が一気に入店できる店はほとんどないことが、経験上容易に推測できる。私たちは二手に分かれた。
 
 ひがしむき商店街に戻った。ベトナム料理のお店がバルに参加しているようだ。お店は超満員だが、カウンターが4名空いている。バル参加者以外が店内のほとんどを占めていたが、運よくカウンターに陣取ることができた。
 
 賑やかな店内は、異国ムードたっぷり。普段からかなりの人気店であることが伝わってくる。

 メニューから、ドリンクを選ぶことができた。数種類のベトナム地酒がある。ベトナムの地酒は初体験である。私は「ルアモイ」という銘柄を選択した。呑み方はロックである。うるち米を原料にしたほのかな甘みが特徴で、ウォッカの一種であるらしい。度数は、45度。

 地酒が運ばれてきた。かなり大きめのロックグラスに、たっぷりと注がれている。一口啜った。ウォッ、これはキツい。独特のクセと匂いだ。ほのかな甘みどころか、かなりシャープ。舌を鋭利な剃刀が削っていくようだ。それにしてもすごい量である。呑みきれるのだろうか。

 料理が運ばれてきた。ベトナム風の遊び心が満載の編みバケットに皿が乗っかり、その上に生春巻1本、揚春巻2本、ベトナム野菜が盛られている。これは豪華だ。ベトナム独特の調味料・ニョクマムなども添えられている。

 生春巻に齧りついた。たっぷりに野菜が詰め込まれ、ヘルシーな味わい。生皮がプツンと歯で切れる感触も心地よい。揚春巻は、まずはそのままで。ライスペーパーに吸収された油のコクが口に広がり、具だくさんの中身がハノイの太陽を思わせる。

 地酒を口に運ぶ。すっきりと洗い流される。地酒だけで呑むとドライな味だが、ベトナム料理と合わせることで独特の風味が増すようだ。韓国焼酎と似た感じがある。

 地酒を口にした後、再度春巻を頬張る。先程より更に旨く感じられる。2本目はニョクマムを付けて楽しんだ。これまた独特だけど、味に奥行きがある。ペロリと平らげた。〔次夜完結〕

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まさにベトナム。地酒のパンチ力がすさまじい。
posted by machi at 06:43| Comment(0) | 奈良県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする