2012年02月06日

第410夜:悪夢を吉夢に取り違え【斑鳩(奈良)】

 「斑鳩町および法隆寺北口商店街の名物は何か、商品開発として考えてみる」。これを共通テーマに、JR法隆寺駅前の法隆寺北口商店街では2011年10月から毎月1回、若手事業者をはじめ商店街以外の方々も交えてセミナーを開催してきた。2012年1月23日に開催された第4回セミナーでは、既存の斑鳩、または奈良名物がズラリと集められ、試食品評会となった。

 「大和育ち 香りのおだんご」、カリっと食感「大仏饅頭」、デザインがユニーク「五重の塔バームクーヘン」、「せんとくんチョコエクレア」、奈良県平群産「おいも納豆」、「やわらかたまごサブレ」、「キャラメル菓子 パスタ・デ・ポン(黒糖・メープル)」、「みたらし団子」、石鹸がなくても洗えるタオル「和紡健康タオル」、奈良女子大とのコラボ「奈良漬を使ったケーキ」など多様だが、圧倒的な割合を占めるのはスィーツ系だ。

 前述の商品群は斑鳩町のメーカーが作っている商品が大半だが、斑鳩町というより奈良県全体をターゲットにした土産物系が多い。

 斑鳩色を前面に押し出した日本酒4合瓶も2種類登場。『斑鳩の里』と『夢違』。特に『夢違』は720ml2,000円と高額だが、スッキリとしてノドにすべるように流れつつ、味はふくよかだ。

 品名の由来は夢違観音(ゆめたがえかんのん)。法隆寺にある飛鳥・白鳳時代の仏像である。悪夢を吉夢に取り違えることのできる観音様として軽く1,000年以上信仰を集め、大飢饉や太平洋戦争など国難時に注目され続けてきた。嫌なことがあった時、この酒を鯨飲してサクッと忘れることができればステキかもしれない。

 「夢違(ゆめたがえ)」信仰は良くない表現では‘現実逃避’なのだろうが、どうしようもなくツライ時にすがる存在があったことで救われた人も少なくないに違いない。

 既存の商品に加え、斑鳩らしさ全開の新商品が生まれるかどうか。ちなみに「いかるが牛乳」は斑鳩町と関係がないらしい。様々なアイデアが皆さんから溢れだしてきた。

 デザイン中の聖徳太子ゆるキャラ「太子ニャン」&「ニャン得太子」、地元名物「茶がゆ」の再評価と新展開、古代チーズ、柿タルトなどたっぷり。ポックリ寺という寺があるそうで、そこから連想した「ポックリむき栗」、‘鐘がなる→金がなる→懸賞付き商品’など広がるばかり。

 法隆寺の近くに学会の耳目を集めた「藤ノ木古墳」がある。古墳の石棺の形をイメージした弁当箱を作成し、出土品をおかずで表現。剣はエビフライ、勾玉はエビというアイデアには思わず唸った。これを機に商店街オリジナルデザインの包装紙や紙袋を統一するのも良い。

 前述の日本酒「夢違」を作った会社<ももたろう>さんが、斑鳩町ゆかりの古代日本最大ヒーロー・聖徳太子氏が好物だったという謎の食材を用いた新商品を開発中。きちんと史実も基づいているという。最終となる第5回セミナー(2012年2月16日)に間に合えば、試作品がお披露目されるかもしれない。

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法隆寺北口商店街活性化セミナー(第4回)

東朋治フェイスブック⇒http://www.facebook.com/profile.php?id=100003195746267
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2011年11月29日

第367夜:夕暮れに鐘が聞こえた法隆寺【斑鳩(奈良)】

 法隆寺。日本最初の世界文化遺産に登録された世界最古の木造建築である。日本最強の木造寺院はもちろん奈良にあるのだが、奈良市から15kmほど離れた斑鳩町に屹立している。1500年ほど前に聖徳太子氏が建立されたそうだ。

 私は今まで、法隆寺に訪れたことがなかった。あるのかもしれないが、全く記憶にない。煩悩にまみれた私は、そもそも法隆寺は奈良市内にあり、東大寺の近くにあると思い込んでいた。

 2011年10月から、法隆寺北口商店街が主催する活性化セミナーが毎月開催されている。私の役割は「笑点」に例えるなら歌丸師匠のような立場なのだが、毎回最初に前座を務め、お先に勉強させていただいている。それにも関わらず、法隆寺未体験ではあまりにもお粗末。2011年11月中旬、秋のベストシーズンにようやく法隆寺を訪ねることができた。

 商店街のT木女史のご案内で広大な境内を散策。西大門を潜り、西院伽藍へ。金堂や五重の塔は外国人を含めた観光客、修学旅行生で賑わっている。

 大宝蔵院は人類の遺産と言うべき飛鳥・天平文化の宝物が展示されている。現在は冬季にあたり、拝観時間は16時半で終了。私が大宝蔵院に飛び込んだのが16時15分。普段は大混雑で展示物をじっくり見ることなど叶わないそうだが、駆け足見学だったものの、施設内は私一人。これほどの贅沢はなかなか経験できない。眼福である。

 東大門を抜けて東院伽藍へ。著名な夢殿がある。管内の施設や展示物はほとんどが国宝または重要文化財。外観はともかく、展示物や仏像などの撮影は厳禁。携帯電話の使用も制限されている。その分、落ち着いた静謐を体験できる。まさにワビサビの世界だ。

 16時ごろ、境内にボワ〜ンと鐘が響いた。空は幾分曇っていたが、夕日も差し込んでくる。紅葉が色づき始めている。おそらく日本で最も有名な俳句の一つ「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」(正岡子規氏)を連想しないわけにはいかない風景が時空を超えて広がっている。

 法隆寺からほど近いところに藤ノ木古墳がある。聖徳太子氏の活躍した時代と微妙にかぶっている円墳で、未盗掘の上に様々な土器が大量出土。考古学マニアのみならず一般にもその名は知れ渡った。誰が埋葬されているのかは分かっていないそうだ。

 少し小高い丘から斑鳩町の全景を見渡す。無粋な高層建築は皆無で、法隆寺五重の塔がもっとも高い。雷の避雷針にしか見えず、よく延焼しなかったものだと感心する。

 竜田川沿いは紅葉が美しいそうだ。1500年前の首都というべき、奈良県斑鳩町。現在人口27000人ほどの小さな町だが、Kるみ姐さんはじめ活性化をけん引する法隆寺北口商店街女性部が様々な仕掛けを企画している。地層の下にも、町の中にも、商店街にも数えきれない資源が眠っている。ゆるキャラ「パゴちゃん」もスタンバイ中。まずは、名物づくりからスタートである。

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夕日を浴びる天下のあの世界遺産を独り占め

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藤ノ木古墳を独り占め

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斑鳩町名物(商店街名物)を検討する法隆寺北口商店街活性化セミナー

≪蛇足:昨日のあ〜ほボイルド≫
中津(大分)から黒崎(北九州)入り。会議終了後、毎度のことながら深夜まで痛飲しグデングデン。
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2011年09月06日

第312夜:御座敷でオトコ芸者【斑鳩(奈良)】(後編)

 みなさん着席された。岡D会長ご挨拶の後、懇親会に先立ち私が下座で起立しまま、粗末なまちづくり芸を披露した。

 私は良く自分を「オトコ芸者」に、人様の前でお話をさせていただく場を「御座敷」と例えてきたが、本当に「御座敷でオトコ芸者」を掛け値なしに体験できた。光栄である。

 豪華懐石料理が卓上に並ぶ。次々と仲居さんが空いた皿を片づけ、同時に新しい料理を運んでくる。私は商店主の方々と談笑を重ねながらお酌に回る。時には商店主や仲居さんがお酌して下さり、カニを食べるのは極めて不得意な私のために仲居さんがほぐしていただけるなど、芸者とお大尽の両方の気持ちを味わうことができた。

 21時ごろ御座敷が終了。バスで帰路に着く皆様を宿の方々と一緒に手を振りながらお見送りした後、商店街が私のための用意して下さった部屋に案内された。

 部屋に入った瞬間、歓喜が脳天を突き抜けた。6人ぐらいが泊まれる純和室に、ひと組の布団がすでに敷かれている。絶景を眺める窓際には応接セットも用意され、もちろん風呂、トイレはセパレートだ。呑み物が冷やされた冷蔵庫もある。たった一人で、温泉旅館の一室を独占したことはなかった。何という贅沢だ。

 浴衣に着替え、露天風呂付き大浴場の暖簾を潜る。客は、私一人。体と頭を洗った後、広々とした内風呂に飛び込む。疲れが芯から抜けていく。つかの間の湯治気分だ。

 東朋治、37歳。どうしてもしてみたいことがあった。温泉湯船での平泳ぎである。37歳の中年には禁断の振る舞いと言える。誰もいないので、ついに試すチャンスが到来した。

 膝上までの高さの浴場で、バシャバシャと平泳ぎしてみた。太っているのでスムーズに泳げず、体が沈む。メタボ腹が風呂の底にあたる。立派すぎる腹とは逆に、立派ではない私のやんごとなきモノまで底で擦れてしまい、激痛と変な感じを同時に味わってしまった。

 露天風呂へ。近畿地方を台風が直撃するそうで、ライトアップされた竹林がザワザワと強風を煽られている。台風の影響か、信貴山は風がとても涼しい。本当に気持ち良い。

 手足を伸ばす。サラっとしながらもセクシーな肌触りの泉質である。今月から、月の出張が25日を越えそうだ。翌日は温泉宿から直接、静岡県藤枝市へ移動する。

 移動疲れや体中の檻が、湯船に溶けて消えていく。目をつぶる。何も考えない。私は、天と一体になった。天地一体を体感した後は、2つの妄想が押し寄せてきた。

 一つ目はもちろん、冷蔵庫で私を待っている冷えたキ●ンラガー(もちろん、瓶ビール)。温泉宿には瓶ビールが相応しい。二つ目は、温泉宿自慢の豪華懐石風朝食のことである。

 旅芸者の私にとって、想像もしないご褒美だ。まちづくりに携わって、本当に良かった夜だった。斑鳩町の商業活性化のために、私自身さらに芸を磨き、精進せねばならない。

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温泉宿の和室を独りじめ

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豪華な朝食
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