2019年06月18日

第2216夜:用件を聞こうか……【下関(山口)】

 下関市立美術館。下関駅からバスで20分以上もかかるビューポイントに位置するこの美術館で、普段アートなど1gも関心が湧かない私のような輩でもスルーできない特別な催しが開催された。『連載50周年記念特別展 ゴルゴ13 用件を聞こうか……』である。

 全国各地の美術館などで巡回開催され、源平合戦終結の地・下関がフィナーレという。連載から52年目を迎えた2019年3月下旬の快晴の日、神戸から下関へ足を運んだ。フグもその他の観光スポットも軽く無視。目的はただ一つ。ゴルゴである。

 下関駅に正午着。駅構内の飲食店で海鮮ミックスフライ定食をツマミに瓶ビールをヤリながらバスの発車時刻を待つ。バスは唐戸市場、関門大橋などを通り過ぎる。つかの間の旅情気分を味わう。そして、美術館前へ。

 入り口で凛々しいゴルゴがお出迎え。自動ドアには「ズキューン」の文字が。

 館内はさいとうプロの生み出した貴重な原画の数々が。一つづつ食い入るように鑑賞する。

 連載開始は1967年。さいとう先生は御年80を超えるが、まだまだ健筆だ。シリーズ屈指の名作『海へ向かうエバ』も原画で1話まるまる読むことができる。壁一面に貼りだされたゴルゴがこれまで抱いた女たち一覧も圧巻である。

 作品に登場した数多くのモデルガンも展示されている。その提供協力が何故かすべて堺市役所。妙に納得させられ苦笑が漏れる。

 実際のモデルガンライフルを構えてみる。ズシリと重い。普段一人のワンショットなど絶対に撮影しないが、会場内の「ゴルジョ」に依頼。それにしても年配者が多い。私と同年代か、それ以上。そして意外なほど女性(熟女)が多い。

 さいとう先生の仕事場再現、先生のロングインタビューなどを満喫。売店も垂涎グッズばかり。たっぷり2時間弱、至福の世界に浸る。

 見逃せないコーナーがあった。船戸与一特集である。冒険小説の雄・船戸先生は別名義でゴルゴの脚本を数作品書かれている。私は情念と血飛沫煙る船戸節の大ファン。『猛き箱舟』『蝦夷地別件』『砂のクロニクル』をはじめ、南米三部作(山猫の夏・神話の果て・伝説なき地)、東南アジア5部作などかなりの数が我が本棚を占めている。

 会場のゴルゴファンは素通りしていたが、船戸先生のプライベートショットが割と雑にたっぷりと掲示され見入ってしまう。

 私は大学生の頃からゴルゴに似ているといわれてきた。今(2019年3月)より20年以上前で、20s痩せていた。当時からゴルゴ刈を始めた。今やゴルゴ的鋭さは皆無になり、S郷隆盛氏やBギンのボーカル氏そっくりと言われている。

 ゴルゴは世界どころか宇宙を股にかけて仕事しているが、私は日本国内限定である。

 ゴルゴは聞き手を他人に預けない(握手しない)が、私はしょっちゅう握手し、頭を下げている。

 ゴルゴの報酬は全額スイス銀行に前払いだが、私の報酬は報告書提出後に地元の地銀に2ヶ月〜1年遅れで振り込まれる。

 ゴルゴはほとんどしゃべらないが、私は飲み屋やスナックでペラペラしゃべっている。

 ゴルゴはどこに行ってもモテモテだが、私はどこに行っても気味悪がられる。

 ゴルゴの愛用武器はM16アーマライト変型銃だが、私の愛用武器はポストイットである。

 ゴルゴは18か国語に堪能だが、私は日本各地の方言のみ堪能である。

 自宅にはゴルゴ文庫版が150冊以上ある。すべて読み返すには半年以上かかりそうだが、もう一度ゴルゴ道について深く考察する所存。「世界一白ブリーフが似合う男」を目指さねばならぬ。

 これから私への依頼は、メールや携帯ではなく、KISS−FM(89.9)に讃美歌13番をリクエスト願います。用件を聞こうか……。無駄話も含めて。

190618ゴルゴ展@.jpg
魂のレベルで震える感動。

190618ゴルゴ展A.jpg
少々照れくさいが。

190618ゴルゴ展B.jpg
ロックオン。
posted by machi at 08:13| Comment(0) | 山口県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月24日

第1830夜:源平の夢【下関(山口)】(後編)

 辛子ポン酢でかぶりつく。……。フグの旨みがさらにくっきりする。エビシューマイ、イカシューマイは実食済だが、フグシューは初体験。旨みと香りは鼻から抜ける。五感で旨さを救い上げていく。

 さらに「さざえのつぼ焼き」が降臨。貝類の中で私が最も愛するが、さざえ。刺身もつぼ焼も大好物。アワビより愛している。このつぼ焼きも見事な一本焼。肝の苦みとコクが酒をさらに進ませる。

 そろそろ釜飯が炊き上がりそうだ。釜飯も、フグ釜飯である。一人鍋雑炊でない点にお宿の矜持、誇り、自信が感じられて思わず微笑する。固形燃料も消え、蒸らし状態に。

 チビチビ地酒をヤリながら残ったてっさなどをつまんでいると、フグの唐揚が3ヶも降臨。えっ、まだあるのか。

 熱々を頬張る。……。絶妙としかいいようのない塩加減。ポクポクした身とサクサクした衣が織りなす源平合戦。私は生まれも育ちも居住地も神戸なので当然のごとく平家びいきだが、この源平合戦は甲乙つけがたし。どちらが平家か分かりませんが。

 赤出汁、香の物をやりながらフグ釜飯を頬張る。この釜飯、チビチビつまむと十分な酒のサカナになる。しかし、チビチビつまんでいたら永遠に食べ終わらない分量。すべての料理が1人前と思えぬ。

 大満足。地酒も飲み干した。そろそろ出ようかとしたらデザートが滑り込んできた。フルーツ3種、そしてケーキ。恐るべき玉手箱である。

 温泉上がりのビール&地酒、そして絶品フグ懐石で満腹。酔いも心地よい。同じフロアに漫画コーナーがある。『スラムダンク』が全巻揃っていた。私がジャンプを卒業したころ始まった大傑作セイシュンバスケ漫画であることは知っている。

 1巻から3冊ほど部屋に持ち込む。面白い。窓から見える関門海峡のライトアップが消灯した。22時になったのだろう。その後に爆睡した。

 すっきり起床。朝の関門海峡も素晴らしい絶景。天気も良い。今朝も誰もいない大浴場を満喫し、8時半に朝食。ドリンクセルフだが珈琲呑み放題は嬉しい。

 料理もゴージャス。フグの身を梅か何か和えたもの、自家製奴、秋刀魚、明太子……。朝食も10分以上ありそうだ。気合が入っている。普段は朝飯食べぬが。温泉宿は別。おかわりはさすがに苦しかったが、綺麗に食べきった(杏仁豆腐までは辿り着きませんでした)。

 チェックアウト。信じられない安さ。地酒2本を会計に入れても1泊2食××000円程度。しかも土曜日宿泊。これから下関で泊まる際はこの竜宮城に泊まりたい。できれば1週間ほど逗留したい。館内の漫画を読破しながら生ビールを飲みまくりたい。夢の旅館である。

171124源平荘E.jpg
さざえのつぼ焼き。大好き。

171124源平荘F.jpg
フグ釜飯。

171124源平荘G.jpg
もう喰いきれぬ。

171124源平荘H.jpg
朝から酒をヤリたくなる朝食。

posted by machi at 08:01| Comment(0) | 山口県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月22日

第1829夜:源平の夢【下関(山口)】(中編)

 ノドの渇きがピークに。湯上りに冷たい生ビール呑み放題サービスが待っている。いそいそと着替えてロビーへ。陶器のマグカップに生を注ぎ、口に運ぶ。

 ……。私は、浦島になった。ここは竜宮城か。関門海峡にほど近いところに聳える陸のラビリンス。琥珀の奇跡がノド、食道、胃に滑り、毛細血管の隅々までホップが駆け巡る。4秒掛からず呑み干し、すかさず2杯目。1杯目と旨さが変わらない。そのままロビーで4杯ほど呑んでいると、夕食の時間になった。

 館内のお食事処へ。ドリンク注文の際、普段なら1000%生ビール(または瓶)である。しかし、つい先ほど生を数杯ノドに放り込んでいる。料理はフグ。日本酒、それも地酒が良いだろう。獺祭は高いので、手ごろな山口っぽい「奇兵隊」という300ml1000円冷酒を召喚。気分はタカスギだ。

 てっぴをツマミながら奇兵隊をやる。コリコリした食感がタマラない。フグの皮はなぜこれほど旨いのか。
ふぐ刺し(てっさ)が運ばれてきた。……。思わず目を剥いた。1人前とは思えぬボリューム。30枚は並べられているのではないか。フグ煮凝りが2ヶ、フグにぎり寿司が1カン添えられている。

 まずは1切箸でつまみ、ポン酢にチョン付け。口へ運ぶ。……。参りました。私はもう、討たれてもよい。このまま沈没しても構わない。竜宮城から帰れない。明日のチェックアウトの際、30歳以上老いても本望。てっさ、食べても減らない量。

一度試してみたかった、2、3枚を豪快に箸でさらう無法に挑戦。……。口内すべてがフグ。淡白な中に上品な甘味が舌の上に溶ける。歯ごたえもセクシー。間髪入れず、奇兵隊投下。私の中の関門海峡がチャクラのごとく回り始めた。

 一人鍋が煮えたようだ。火傷しそうになりつつフタを外す。大きなフグの身および粗の塊がドカンと浮かんでいる。野菜がほとんど見えないほどに。

 手羽先しかり、スペアリブしかり。骨の周りの肉が一番旨いことは古今東西自明の理。骨の周りの肉をセセリとっていく。てっちり(鍋)の魅力は他の具材との旨みが複雑かつ精妙に絡み合う一期一会にある。フグの旨みを吸い込んだ野菜もトロトロで絶品である。

 てっぴ、てっさ、てっちりでかなり腹が張ってきた。奇兵隊も第1陣が滅失したので第2陣召喚。すると、熱々のフグシューマイが2ヶも運ばれてきた。かなり大きい。〔次夜後編〕

171122源平荘B.jpg
「てっさ」と「てっぴ」。

171122源平荘C.jpg
「てっちり」。

171122源平荘D.jpg
「ふぐ焼売」。
posted by machi at 08:52| Comment(0) | 山口県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする