肉便器。字面からして卑猥、猥褻、背徳、狂気を連想させる変態極まりない3文字である。
日中が28度に達した4月の夜。K出氏率いる<野田ギルドハウス>運営チームとハウスから徒歩すぐの<VERY>へ。この店は夏に野田市商連の皆さまと足を運んだことがある。洋風居酒屋で、ビッグな大皿料理が絶品である。
ギルドチームのY川嬢、L氏の御両人はK出氏に劣らず優秀の極み。Y川嬢の冷静な毒舌はいつも場を和ませる。韓国出身・L氏の日本だけでなく世界を股に掛けた007ばりの活躍っぷりに毎回驚かされる。L氏と話すたびに、隣国のポテンシャルの高さに慄いてしまう。
今回はギルドを中心に活躍の場を広げつつあるカメラマン2氏も参戦。30代男性は現在はカメラが軸だがプロのカーレーサー。様々な特殊能力を有している異能の御仁。20代男性は大手企業を脱サラしカメラマンに。ご両人ともカメラでメシが喰えているという実力の持ち主だ。
私はこの中で圧倒的にオヤジ。皆さんの会話についていけないことも。野田市商連の空き店舗対策チームも若く感じるが、さらに若い面々。時の流れを痛感せずにいられない。
K出氏は野田の街なかのあらゆる難題を一手に引き受け、というか引き受けさせられている雰囲気。断れない性格に加え、リスクを背負いつつこなしてしまう能力ゆえ、頼りにされ過ぎているようだ。プラスワードではスーパーマン、便利屋。マイナスワードではドMあたりか。
K出氏が野田ミッション時の定宿・隣町の春日部まで車で送って下さることに。私は後部座席、助手席はY川嬢。
車中でK出氏の悲惨すぎる境遇を耳にする。目も耳も当てられない状態である。とても詳細は記せない。そんな状況を自虐し、氏は自身のことを「肉便器」と称した。
氏曰く、AVにムナクソ系というジャンルがあるそうな。女性を徹底的に凌辱するという。一般のSMの比でないらしい。内容を聴けば、そんなモノを観るヤツがいるのかと疑問を持つが、ジャンルとして確立されているという。
「肉便器の『器』は『姫』という字になるんですよ」
笑みを浮かべる氏の表情に狂気じみた光悦を感じる。
肉便「姫」は出演の対価として報酬が出るそうだが、K出肉便「器」は報酬どころか持ち出しという。彼の話を聴いていると、公衆便所や犬などのワードすら上品に覚えてきた。
春日部までの30分、ひたすら「肉便器」が話題に。そして、30分間車内爆笑。
私の周りのまちづくり関係者に、二つ名を有している者はあまりいない。最も著名なのが、愛知岡崎幕府の上様ことM井氏。上様には「まちゼミの伝道師」という無双の二つ名がある。
ちなみに私は自称「ヨゴレまちづくり屋」。K出氏は私の二つ名がお気に入りだったようだが、私はそもそも存在希薄かつ無名ゆえ全く浸透していない。稀に「大佐」と呼ばれる程度。
余談ついでに、何かで私が「ミスター空き店舗」と紹介されているのを目にした。私が空き店舗を増やしているようにしか思えない死神チックな二つ名。誰も招こうと思わないだろう。
私はK出氏に二つ名を贈ることにした。「まちづくりの肉便器」。話題は、氏以外に「まちづくりの肉便器」が全国に存在するかに移った。
私の少ない人脈を思い浮かべる。苦労されている御仁、頼られ過ぎている御仁はあれど、ここまでの肉便器っぷりは思い当たらない。そもそもホンモノの肉便器は監禁・軟禁状態で外界の情報すらシャットアウトされているはずなので、私などにたどり着けないはず。
私は「まちづくり肉便器サミット」を提案した。全国の肉便器が事例報告やパネリストとして自身の悲惨な境遇を語り尽くす。
昔は肉便器だったが今は違う、という人生逆転テイストは不可。現在も肉便器のままというオチも希望もない、これぞ肉便器的ムナクソ話に終始して頂きたい。しかし、サミットを開催しようにも、私の知る限り、現状ではK出の単独講演会になってしまう。
翌日、ギルドハウス集合解散で「空き店舗ツアー」が朝から開催される。ギルドハウスはトイレの位置が少し分かりにくい。
参加者からトイレはどこか聞かれたらどうしよう。K出氏が聴かれたら「オレです」。私が聴かれたら「ココです」とK出氏を指さすしかないのか。
頼もしい大皿の数々。
愛すべき肉便器の後ろ姿。

