2019年11月02日

第2308夜:ツインエアーズロック【安孫子(千葉)】

 唐揚そば。関西ではあまり見かけぬタネだが、東日本ではこれまで浜松町駅、郡山駅構内で対峙してきた。いずれもかなりの満足感である。ツユの染みた唐揚の衣も実に旨しである。

 ある寒い冬の雨の朝8時。ホテルから歩いて潮来駅へ向かう。イコカが使えない昭和の改札だが、駅員もいない。券売機に対峙するが、何故か北朝霞までのチケットが買えない。

 駅員さんを奥から捕まえ切符を買おうとしたら、何故か潮来駅から北朝霞駅までは同じJRだが発券できないらしい。1660円の切符を買い(券売機の上限)、差額を北朝霞駅で払ってくれとおっしゃる。

 首を傾げながら1時間に1本の成田方面行へ。成田で乗り換え安孫子、新松戸を経由し北朝霞へ。かなり接続が良くても2時間40分の長旅である。すべて普通列車だ。ちなみに新松戸駅の立体ホームの複雑さは折尾駅クラスである。

 前々日の夜に襲ってきた歯痛がかなり治まっている。今治水が効いたのだろうか。長旅の途中、腹が減ってきた。外は氷雨。こんな日は湯気煙る立ち食い蕎麦に勝る惹きはない。

 乗換の我孫子駅でふと思い出した。この駅のホームには全世界の駅そばマニアで知らぬ者なき有名な逸品がある。「唐揚そば」である。なぜ有名なのか。理由はその巨大さにある。

 我孫子駅をぐるりと見渡し、1番ホームへ向かう。ここまで来れば電車は10分の1本ペース。蕎麦を楽しむ時間もある。歯痛も治まってきたので、久々にガツンと歯ごたえのあるブツを喰いたい。麺類と、ガツン。唐揚そばしか思いつかない。

 店内は満員である。唐揚そばは1ヶ(440円)と2ヶ(540円)。店内客の半数が唐揚そばを頼んでいるようだ。

 私はガツンと2ヶ入りに。行列に並ぶがすぐに着丼。唐揚2ヶがデカすぎて蕎麦がほぼ見えない。丼が小さく見える。店頭のビジュアルポスターよりデカいのではないか。汁を啜ろうにも、そばを手繰ろうにも、まずは唐揚1ヶを完食せねば次に進めない。

 一味をパラリし、エアーズロックにかぶりつく。……。ザクっとした衣の歯ごたえが力強い。その後に鶏もも肉の旨味が口の中でステップを踏む。汁に浸してかぶりつく。ソリッド感が薄まるかわりに衣が出汁を吸い、味が確変する。もも肉も温められて旨味が増す。

 1ヶ完食した段階でかなりの満足感である。蕎麦もコシがあり香りも豊か。濃いめの出汁とよく絡む。唐揚の衣の脂がつゆに溶けだして思わず目を細め、口角を上げる。

 もう一つのエアーズロックに挑む。出汁に浸かっているので渾然一体。それにしても大きい。何とか喰い切ったが、1ヶで十分かもしれない。しかし再度券売機に対峙したら、一瞬迷いながらも2ヶのボタンをきっと押すはずである。

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安孫子市民のソウルフード(たぶん)。

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立ち寄らずにいられない吸引力。
posted by machi at 07:28| Comment(0) | 千葉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月31日

第2306夜:衣から覗く淡黄の肌【千葉(千葉)】

 生ゆば。いかにも京都的な和の高級感漂うおぼろげで儚い豆腐料理の一種(たぶん)である。湯葉という漢字も風流で、鍋にさっと泳がすと湯の中でにヒラヒラ舞う木の葉を連想させる。

 様々な料理法があるのだろうが、私はさっと湯がいてポン酢に浸したものしか経験がなかった。ゆばの旨さ、風流が少し理解できるようになったのは30歳を超えてから。それまでは全く心が動かされることもなかった。大抵のオトナ(特にオトコ)が同じようなものだろう。

 千葉市の中心地である京成電鉄千葉中央駅前で、一日一麺を達成すべく午前10時ごろ、ホタホタ散策を試みたが、ラーメン店はまだ開店していない。立ち食い蕎麦の店も発見できず、あきらめかけた時だった。私の目に、「手打ち」「24時間」「蕎麦」などの文字が飛び込んできた。

 某全国カレーチェーン2階のガラス戸に、これらのキーワードが踊っている。店名は<岩井のお蕎麦>。心強い限りだ。早速2階に駆け上がった。

 店内はカウンターとテーブル席で構成。完全に居酒屋風の造りだ。店内の巨大TVはワイドショーを流している。朝でも昼でもない中途半端な午前10時。客は私一人だけだ。

 券売機系の立喰い蕎麦なら迷わず天ぷらそばを注文するが、試しにメニューを見る。各種麺類だけでなく、居酒屋メニューもかなり充実している。目移りする中で、豆腐系専用ページがあった。その中の「生ゆば天ぷらそば」に心を鷲掴みされた。

 メニューを再度じっくり見る。これが朝10時ではなく、午後から仕事もなければ、完全に朝から蕎麦屋で一杯モードに突入していただろう。24時間営業の手打ち蕎麦は、日本初だそうである。チェーン店でないのに、本当にすごい。店主の岩井さん、いつ寝ておられるのだろうか。

 徹底的な味のこだわりは、メニューに記載された迫力満点のワードに満たされている。名店で修行した店主、無農薬の蕎麦畑栽培、蕎麦粉づくり、源水手打ち、3種の節を使ったダシ、秘伝調合の返し、化学調味料は一切使用せず……。

 鋼のようなスキのなさだが、手打ちでコシが強いため、柔らかめも希望に応じていただけるそうだ。強さのなかに優しさを感じる。

 至高のブツが運ばれてきた。私のゆば概念を覆すような巨大天ぷらが3ヶ。茄子天ぷらとワカメ、刻みネギが彩りを添えている。スープは真っ黒ではなく、私の好む関西風の透明感だ。

 レンゲでダシを啜る。……。五臓六腑に沁み渡る。思わず目を閉じ、幸せの吐息が漏れる。麺を啜る。……。手打ちならではの歯ごたえとコシの平打ち麺。蕎麦粉の香りも高い。

 生ゆば天ぷらを齧る。……。熱々の汁が口の中に飛びだした。あっさり味のゆばが油を吸いこみ、出汁という湯に浸かり、フワフワのトロトロに。衣が少しはだけ、淡黄の肌を覗かせる。衣の油が出汁に沁み出し、コクが倍増する。モロモロ、ズルズル、ジュルジュル…。混然一体。

 天ぷら系蕎麦は、衣がツユに溶けグズグズになった後半のカオスが、最も官能的で魅力的。年増悪女の深情けのような熟した色気のある味になる。

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posted by machi at 14:22| Comment(0) | 千葉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月30日

第2305夜:1ポンドの腹音、第5ラウンド【千葉(千葉)】

 <鉄板牧場>。ありそうでなさそうな力強い店名の(おそらく)チェーン展開しているステーキハウスである。

 京成電鉄千葉中央駅の隣接する高架下風の一画は、飲食チェーン店が軒を連ねる。その中で私にとってひたすら眩しく輝いていたのが<鉄板牧場>。巨大ポスターに「メガステーキ」が思いっきりクローズアップされていたからだ。

 メガステーキは1ポンド。つまり450gである。1ポンドステーキの捕獲をライフワークに加えている私に見逃すことはできない。それほど空腹でもなかったのだが、店内へ進軍。券売機でメガステーキのボタンを押す。1980円。1ポンド系としては安値といえる。

 水を呑みながら、ぼんやりと店内を見渡す。ステーキ以外にもチキン、ハンバーグもあり、なサイズも様々。スーツ姿のサラリーマン中心だが、女性の一人客、それも年配のお姐さんの占有率も高めだ。

 皆さん、頻繁に入口付近に足を運び、ライスとスープをお代わりしている。このお店、ライスとスープが食べ放題という。しかもライスは契約農家直送のあきたこまちを唄っている。

 私は1ポンドと対峙する時、ライスもサラダも無視してひたすら肉のみを攻めるのだが、あきたこまちは最も好む銘柄。心が乱れる。

 思いっきりジュージュー音を立てながら、鉄板に載せられたブツが運ばれてきた。鉄板の周りをグルリと紙で巻いて覆い、ハネが飛ばないよう気配られている。希望者には紙エプロンも配られる。

 店内は誰も付けていないが、私は何の照れもなく装着。特にカレーうどん系では必須アイテムだ。常に持ち歩きたいほどである。

 紙を外す。分厚く大きなレアステーキが2枚。鉄板の余熱で徐々にウェルダンされる。卓上の調味料を様々駆使するのも楽しみが増す。

 まずは岩塩と胡椒で。口に運ぶ。……。アメリカ産ビーフのワイルドでサッパリした旨みが広がる。霜降りでは味わえない豪快さだ。

 ソースは3種類。オリジナル、ステーキ、玉ねぎである。それぞれを少しづつ掛けて味の違いを楽しむ。どれも見事な実力。

 卓上に醤油もあったので、バターが乗っかった部分の醤油を数滴垂らす。口に運ぶ。これぞ日本人のステーキである。

 ステーキをおかずに、炊きたてあきたこまちを頬張る。ノドを押し広げながら流れ込む感触がたまらない。

 焼野菜とポテトはほとんど残してしまったが、あきたこまちをお代わり。タレの沁みたステーキとの相性は恐るべし。あっという間に450gが胃に収まった。

 1ポンドの腹音シリーズ、これで第5ラウンドに突入。全12ラウンドに向け、ようやく中盤に差し掛かってきた。

(付記)
今年の台風や豪雨で千葉のヤラレっぷりが悲惨すぎて、応援の意味もこめて死蔵ストックから千葉ネタ発掘。しかし恐らく7年以上前と思われるので読み返しても記憶皆無。タイトルも内容も「第5ラウンド」とか書いているが、間の2〜4ラウンド記憶も紛失。画像が残っていただけでも奇跡。とはいえ、しばらく死蔵ストックからネタ発掘になるが千葉応援である。

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1ポンド(450g)。
posted by machi at 07:02| Comment(0) | 千葉県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする