2025年02月25日

第3603夜:リアルまちゼミ【小倉(北九州)】

 腕時計のバンド。大学時代はTウン&カントリー、働き始めて20年間は3本のOメガシーマスター、40代半ばからSイコーダイバーウォッチが我が左手首の恋人である。

 50歳になってから程なくして、絶賛恋愛中のSイコーの腕時計バンドに亀裂が走った。倦怠期か。別れの危機である。何とか関係を修復せねば。鬼滅でなく亀裂は広がるばかり。

 これまで動かなくなった腕時計を修理に出したり電池交換は経験がある。元時計・宝飾店であり、現在手広く様々な事業を手掛けている北九州若松の盟友・U島氏に修理を頼んでいた。しかし20247月現在、若松へ足を運ぶ機会はない。

 そんな酷暑の午後、小倉馬借の定宿をチェックアウト。翌週から出張が続く。一刻も早く亀裂を修復したいが、どこに行けば良いか分からない。

 小倉駅へ向かう途上の魚町銀天街には超高級店(K林時計店)が屹立する。魚町の顔的専門店である。しかし他店の腕時計を、しかもバンド修理だけで店内へ飛び込む勇気が私にない。

 解決策を思案しながら銀天街を小倉駅方面に歩いていると「トケイ・貴金属」という文字が視界に。激シブの老舗宝飾店である。「トケイ電池交換」の文字も強調されている。店頭にはびっしりと「腕時計バンド」が展示されている。「SALE」というアルファベットと共に。

 藁にも縋る思いで飛びこんだ。職人気質な店主と邂逅。窮状を訴える。店主は嫌な顔をせず対応して下さる。手渡した腕時計バンドの亀裂状態をチェック。何故かドキドキする。

 医者と同じである。すぐに治療してくれれば安堵するが、手に負えないからと他の医者や病院に行けと言われたら絶望する。

 店頭には私のダイバーウォッチ用のゴムバンドはない。すると、どこかから箱が出てきた。その中には、黒いゴムのリストバンドが様々な種類収められていた。

 当然、同じメーカーの純正品でない。しかし、一刻も早く関係を修復したい。タフな夏を伴侶と共に乗り切りたい。

 似たデザインのバンドをいくつも幅をチェックしている。固唾を呑んで私は見守る。やがて、1本のバンドを紹介された。お見合いの気分とはこのことか。

 その彼女(腕時計バンド)に乗り換えることに。するとプロはものの3分程度でバンドを取り換えた。セール中ということでかなり料金も割り引いてくれた。そもそもの定価がいくらか分からないが、嬉しくて実にありがたい。心強かった。

 政令市・北九州の最強商店街、魚町商店街は店主が講師として技術やノウハウをレクチャーする「まちゼミ」を展開し続けている。大都市の最強商店街で「まちゼミ」に取り組んでいるのは、私の乏しい知識では小倉魚町以外存在しない。

 眼前で繰り広げられた「リアルまちゼミ」。巨大資本のチェーン店や大規模飲食店が林立する昨今、老舗のプロの技があまりにも眩しかった。

小倉H.jpg

大助かり。

小倉G.jpg

乗換。

posted by machi at 09:51| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月24日

第3602夜:午前0時の鰻重カツ丼ミニうどん【小倉(北九州)】

 『酒のほそ道』(ラズウェル細木)。掛け値なしに私のバイブルコミックである。

 2024年6月頃発売された最新第55巻の巻頭カラーの「冬」コーナーは『冬饂飩』。ラズウェル先生の俳句が添えられている(意味不明の方は第何巻でも良いから今すぐ購入してご確認下さい)。

 「北風や 強いて水割り 饂飩待ち」。

 何のうどんを待っているのか。「資」のピンク文字が眩しい舞の蒲鉾。明らかに「肉ごぼう天うどん」である。そして、なじみ深い店内の描写。言わずとしれた<資さん>である。

 作品のヒロイン「カスミ嬢」は「北九州のとある繁華街にあるチェーンのうどん店」で「寒風吹く真冬の夜更け」に「芋焼酎水割り」をヤリながら「おでん(大根・玉子・白滝・厚揚げ・丸天)」を食べた後の締めに「肉ごぼ天うどん」を待っている。「帰りにレジ横のぼた餅買ったら食べ過ぎかなあ…?でも、いいよね、旅先なんだから〜」と独り言も添えられている。

 蒸し暑いが幾分夜の風はまだ涼しさを含む7月の深夜0時ごろ。紺屋町でお好み焼を、堺町のスナックでお客差し入れのたこ焼やごぼう唐揚を満喫した後、我が北九州2大定宿の一角(Cラウンパレス)へ帰ろうと歩いていた。

 このルート、途中に<〇和前ラーメン>という関所がある。この関所のネギチャーシューメンという手形の惹きは壮絶。おでんも旨い。

 しかし、この夜は冒頭のバイブルが思い浮かんだ。<資さん>だ。24時間営業である。私もカスミ嬢と同じく、クソ暑いが芋焼酎水割り、おでん、肉ごぼ天うどんで決めようか…。

 注文はタッチパネルである。とんでもない季節限定メニューがあった。

 「うなカツとじ重」

 細々したバリエーションはあるが、王道は味噌汁付き。当然のごとく王道の少し斜め上を行く「ミニうどん付き」をタッチする。

 重の半分が鰻蒲焼、カツとじ。カツとじでなく牛肉なら牛丼チェーンの「うな牛」でおなじみ。しかし、この組み合わせは見たことがない。合わせようと思いついたこともない。

 タッチパネルの店舗メニュー紹介動画を食い入るように見ていると、背徳の悪魔が降臨。

 タレが別に添えられている。資さん名物である壷漬も小皿に多めに。迫力のビジュアルである。これで税込1340円は安い。

 ふと違和感があった。なぜ壷漬が小皿に…。卓上から無料取り放題壷漬が滅失していた。しかし、小皿で転生。量も申し分ないので互角。揚玉&とろろ昆布卓上入れ放題は健在だった。

 タレを垂らし、鰻蒲焼から…。濃い目で甘めのタレが米と合う。恐らく国産でないはずだが、皮も柔らかめで十分な満足感。

 鰻ゾーンを喰い終え、かつ重ゾーンへ。安定の味。深夜0時のカツ重。あまりも背徳すぎる。うな重には肝吸いだろうが、資さんのミニうどんに軍配を上げたい。ロゴ入り蒲鉾が見えないので寂しく思ったら、下に2枚沈んでいた。笑みが漏れた。

 深夜0時を10分ほど回った。大満足でお会計を済ませ、ブラブラ歩いて馬借の定宿へ。〇和前ラーメンはスルーする。しかし、ホテル真横のコンビニのプレミアムワッフルコーンアイスはスルー出来なかった。

小倉@.jpg

小倉祇園太鼓の練習中。

小倉A.jpg

<たち花>にて。

小倉B.jpg

梅シソ焼が好き。

小倉C.jpg

ムーランで常連さんの差し入れを頂く。

小倉D.jpg

北九州の至宝。

小倉E.jpg

最強クラスの背徳。

小倉F.jpg

スルー出来ぬ。

小倉.jpg

我がバイブル。

posted by machi at 08:00| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月19日

第3600夜:癒しのおいちゃん【小倉(北九州)】

 おいちゃん。北九州弁、それも豊前中心かもしれない方言である。近い標準語は「おじちゃん」「おじさん」「おっさん」か。ただし「おいちゃん」には好意が込められている気がする。好意の濃密さの順においちゃん→おじちゃん→おじさん→おっさん→ジジイの順か。

 女性に対する「おいちゃん」に対になる方言はないらしい。旦過市場のT木マネージャーとそんな話をしている時、彼女は「こばちゃん」はどうかと提案。思わず首肯した。定着するには数十年かかるかもしれぬが。

 そんな「こばちゃん」なT木女史と小倉で呑む機会が。翌朝に北Q州商工会議所でミッションのための前泊。超久々にミッションも決まった呑み会もない小倉の梅雨の夜である。

 試しに飛び込んでみたのが魚町サンロード2階の焼肉屋。卓上ハイボールを注ぎ呑み放題。ハイボールだけなら10100円。いくらでも延長できるらしい。

 生ビールも飲みたいので10200円弱の呑み放題に。肉の種類も豊富。どれも安い。安かろう不味かろうは激安焼肉屋にたまにあるが、この店は違った。肉もまあ旨い。ローストビーフユッケや白センマイ刺も秀逸。センマイ刺の「白」は珍しく、これだけでテンション上がる。

 1時間ほど飲み食いしたところで2軒目の堺町方面へ向かう。北Q州商工会議所のM渡部長と北九州の台所・旦過市場老舗惣菜店<今井商店>I井氏とのサシ呑み会に乱入するために。

 4人で乾杯。私は焼肉などで空腹感ゼロゆえ、生の後はSントリーオールドをガバガバ。

 M渡氏とI井氏は仲が良いらしく、たまにサシ呑みしているという。私も両氏とは数え切れぬほど酒席を共にしてきた。

 I井氏は依然は週に3日ほどしか店を開けていなかったが、今は5日も開けているという。御年たしか70歳ぐらいのI井氏は後継者を育成中らしく、事業承継も進んでいる。

 競馬やマージャン好きのI井氏は人気者。穏やかな笑顔とキップの良さが魅力満点。お店はいつも客が殺到し、惣菜は午後にはほぼ売り切れている。

 市場組合員に、支援機関に、お客に、呑み屋のマスターやママにも好かれている、まさに「癒しのおいちゃん」。たまに総菜を買おうとしたらお金を受け取ろうとしないので、逆に店に行きにくい。

 そんな今Iのおいちゃん、総菜屋を継ぐ前は大手設計事務所に勤めていたバリバリの設計士。当然に建築や設備、再開発にプロの視点で詳しい。私などより数億倍も。

 それからさらに2軒ハシゴした。最後の<ムーラン>で啜るそうめんが旨すぎる。誰からも愛し愛される今Iのおいちゃん。市場のマージャン仲間はたまにさらに踏み込んだ愛情で「ジジイ」と呼んでいるのを耳にしたこともある。

 そのことを指摘したら、氏は否定した。

「ジジィじゃあない。クソジジィだ」

小倉@.jpg

1軒目の白センマイ刺。

小倉A.jpg

1軒目の卓上ハイボールタワー。

小倉B.jpg

2軒目で合流。

小倉C.jpg

3軒目でステキな笑顔のI井氏。

小倉D.jpg

4軒目のムーランへ。

小倉E.jpg

鯨飲。

小倉F.jpg

爽やかなシメ。

posted by machi at 09:45| Comment(0) | 福岡県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする