「至福のカツ丼 温玉のせ」。福岡空港内のフードコートメニューである。値段は1,150円(コロナ前。令和7年は1,450円に)。提供元は<I出カツ丼>様。
フードコートは好きでないのでめったに行かぬが、福岡空港フードコートはかなり旨そうな店が揃っている。空港内のラーメン滑走路はすべて制覇(コロナ前)。
コロナ前の朝10時半。遅めの朝食、または早めの昼食である。ラーメンを制覇したので、カツ丼に標準を向ける。1,150円とはいえ「至福」を味わえるのだから期待が高まる。
ぼんやりセルフ水を飲んでいると、手渡されたブザーが震えた。カウンターで受け取る。スープと漬物が伴走する。トレイにはこの店のチラシというか、紹介が書かれている。
まずはカツを一口。カットされていて食べやすい。出汁はかなり甘め。ごはん部分も出汁が十分染みている。私はもう少し辛めの出汁が好みだが、慣れるとクセになるのだろう。
温玉をつぶすタイミングが難しい。半分食べ終えてつぶす。さっと黄身が広がる。コクとマイルドさがさらに増す。
食べ進めながら店紹介を読む。いきなり「名店育ち」とある。商品名も「至福」というワードを使っている点からも漲る自信があふれ出ている。
佐賀県内のちゃんぽんの名店の名物がカツ丼。「すべてが詰まっている幸せを運ぶ」とある。タレの返しは60年という貴重さだ。コメ、カツ、玉葱すべてに拘っているらしい。
2014年には佐賀TVのUMK(うまか48)で丼部門1位を獲得……。
読んでてお腹いっぱいになった。「名店」というのは他者が評価する言葉であって自分で名店と名乗るのはかなりの力技。ここまで突き抜けると逆に爽快でもある。
それから5年ぶりに福岡空港へ。珍しく朝ラー気分でなかった。井出カツ丼など8店舗が集うフードコート(2階)へ。午前中だが8割ほど席が埋まっている。
ビールをゴキゲンに楽しんでいる御仁が羨ましい。うどんが人気のようで多くの旅人が啜っている。ラーメン滑走路は3階なので、明確に住み分けられている。
5年ぶりの至福カツ丼に惹かれたが、この5年間で以前ほどカツ丼への渇望が高まらなくなった。老いを噛みしめつつ向かったのは<H多カレー研究所>様へ。
博多とんこつ黒カレー、あごだしカレーの2枚看板にトッピングを足していく。とんこつか、あごだしか。定番を訪ねると「黒カレーを注文されるお客様が多い」との模範解答。それにカツをトッピングすることに。
呼び出しブザーを手に待つこと10分。ブザーが震えた。受けとる。漆黒の黒である。紙コップに水を注ぎ、食べようとしたら「美味しいお召し上がり方」というショップカードが添えられていた。ステップ1から6まで細かな字でびっしり。
老眼で見えぬゆえ、気にせず夢中で食べ進める。甘さの中に辛さが潜んでいる。どのあたりが豚骨か分からぬが、なかなか重層的な旨味である。ルーがライスより多い点もポイントが高い。食べ終えながら、あごだしとの「あいがけ」があればと思いを馳せた。

