2025年03月19日

第3621夜:電光石火の陣【小倉(北九州)】

 公共施設。一般のオトナなら何のことか分かるだろうが、定義をご存じだろうか。「原則、24時間解放され、誰でも無料で利用できる施設」である。似たような用語に「都市利便施設」「建築利便施設」がある。

 冒頭で引かずにページを閉じなかった紳士淑女、この後もよろしければお付き合い下さい。

 亜熱帯な8月初日。汗ドッボドボで旦過市場事務所へ。そこで国交省とその外郭機関(MINTO機構)からたっぷり3時間レクチャーを頂く。

 今後の旦過市場の再整備、5年後、10年後、100年後の骨格づくりのための極めて重要なレクチャー。その本番は翌日だが、私は他県へ行かねばならず参戦が叶わない。

 そのレクチャーにおいて、冒頭の「公共施設」「都市利便施設」の違いや重要性をご教授頂いた。これ以外にも初めて目に耳にする知識、情報、制度ゆえ我が空気頭が萎んでしまった。

 ほぼ間髪入れず旦過市場の商店主や役所とのカイギ。ごりごりの2時間強。改めてコンセプトづくりの重要性や適性賃料と相場賃料のギャップ、熱量の増減を思い知らされた。

 濃厚な疲れがへばりついたまま、小倉で一番の人気店かもしれない<焼鳥本陣>へ。ビールの大瓶が380円。何度もこのバカブログに恥筆している。キンキンに冷えた琥珀の奇跡がノド、食道、胃に滑り落ちる。一瞬で体内に吸収される。4人で瓶ビールがどんどん滅失していく。

 お通しは「もずく」。私、酢のものが好物である。暑い夜の最高クラスのお通しである。

 瓶ビール、テーブルへの着瓶が注文後30秒ほどだった。お通しを堪能すると、すかさず巨大な洗面器サイズのボウルに海鮮サラダが飛来してきた。

 ニラレバ、雲仙ハムソテー、ポテトフライ、モッツレラシーズの油あげ包み…。これらの実力ある武将たちが疾風怒濤、電光石火でテーブルという名の陣を固めていく。消費スピードに追い付かない。ビールで乾杯し、武将たちが1分おきに着座。陣明け5分で鉄壁の布陣が敷かれた。

 4人で大瓶を10本ほど呑みつつ、時折レモンサワーを挟む。焼鳥の盛合せは圧巻。真打登場の迫力と華がある。

 気心の知れた戦友たちとの酒宴。昼のレクチャー、夜の会議では思いつきもしなかった発想の転換に唸る。昼と夜には見えなかった光明が陣に差し込んだ。

 <本陣>に当日予約せず4人入れたのは奇跡の行幸。桶狭間クラスの確率である。老若男女、<本陣>になだれ込む。スキなし。空白なし。何回転しているのだろうか。

 旦過ミッション終了後、N村氏のご配慮で2回に1度は<本陣>である。暑い夏、渇きをいやし、瞬時に空腹を満たす電光石火っぷり。もはや、公共施設であり、都市利便施設であり、建築利便施設である。

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2025年03月12日

第3614夜:スィッチオン【小倉(北九州)】

 スィッチ。電源を通す物理的所作以外に、人に限らず生物には多かれ少なかれ何かのモードが発言するスィッチがある。スィッチがもたらす効果は「やる気がでる」「気合が入る」。電気を通すなど物理的所作では「推す」が、精神世界では「入る」と表現する。

 ある蒸し暑い日の夕刻。北九州の台所・旦過市場に近接する商工貿易会館へ。メインミッションの30分前に簡単な打合せがあった。時間の単調あれど、必ず事前に実施されるルーティンである。その際にスィッチが入るということがあまりない。内容の確認中心だから。

 特にこの日は疲労が濃かった。朝に栃木県小山市を発ち、7時間近くかけて小倉へ。その前日は朝が下野、昼が宇都宮郊外、夜が佐野という栃木県内トリプルヘッダー。疲れが抜け切れておらず、とても「スィッチが入る」状態でなかった。

 ところは会議資料に目を通した瞬間、思いっきりスィッチが入った。旦過プロジェクトに携わって丸10年。数字が見えてきたことは幾度もあったが、タイムリミットが迫る中、具体的な「目標数値」が提示され、その実現に向けて動き出すという明確さが広がった。

 事前打合せ終了後から本番が始まるまでの5分間、本番中における我がスィッチ議題、そして本番終了後の30分間。私は先走り、勇み足、空回りを続けた。疲れを1gも感じない。「ハイ」になっている。めったにない「まちづくりハイ」というヤツか。

 <本陣>で冷たい瓶ビール大をヤっている第1陣と合流。珍しく大人数な8名に。燃え盛ったスィッチを冷やすべく、チンチンに冷えた瓶ビールで落ち着かせる。旨い。ビールが旨い夜は、充実した一日の証。ただし、空転し続けていたけれど。

 ポテトフライ、焼鳥、塩辛、ごぼう唐揚、出汁巻玉子…。私の好物が並ぶ。

 最近、旦過ミッション終了後の呑み会は最初から最後までビール派が勢力を拡大していたが、この日はオヤジ比率が高く、久々に麦焼酎派が巻き返す。90分もしないうちに焼酎ボトルが空になった時点でお会計した。

 この日の私はテンション高かった。スィッチの余熱が残っている。クールダウンすべく2軒目の<ムーラン>へ。管理運営会社T中常務、旦過火災以来久々にお会いした旦過の守護神・H田県議もご一緒に。

 ムーランは会議所M渡部長の数十年に及ぶ牙城。M渡氏、この夜はムーラン不在。H田先生はM渡氏と同級生か何かで非常に仲が良い。時間は22時半。M渡部長の携帯を鳴らす。そして15分後、本当に顔を出されるとは思わなかった。

 M渡部長秘蔵のウィスキーや焼酎を鯨飲しながら、マスターの素麺を啜る。旨い。翌日は久々に帰神し、自宅でオンラインだけ。ようやく、この日の私のスィッチがオフになった。

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外に出ると、小倉祇園太鼓の練習中。

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北九州屈指の超人気店。

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安い、早い、旨い。

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絶対に頼んでしまう雲仙ハムステーキ。

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ムーランにて。

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夏の〆はサッパリと。

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2025年02月25日

第3603夜:リアルまちゼミ【小倉(北九州)】

 腕時計のバンド。大学時代はTウン&カントリー、働き始めて20年間は3本のOメガシーマスター、40代半ばからSイコーダイバーウォッチが我が左手首の恋人である。

 50歳になってから程なくして、絶賛恋愛中のSイコーの腕時計バンドに亀裂が走った。倦怠期か。別れの危機である。何とか関係を修復せねば。鬼滅でなく亀裂は広がるばかり。

 これまで動かなくなった腕時計を修理に出したり電池交換は経験がある。元時計・宝飾店であり、現在手広く様々な事業を手掛けている北九州若松の盟友・U島氏に修理を頼んでいた。しかし20247月現在、若松へ足を運ぶ機会はない。

 そんな酷暑の午後、小倉馬借の定宿をチェックアウト。翌週から出張が続く。一刻も早く亀裂を修復したいが、どこに行けば良いか分からない。

 小倉駅へ向かう途上の魚町銀天街には超高級店(K林時計店)が屹立する。魚町の顔的専門店である。しかし他店の腕時計を、しかもバンド修理だけで店内へ飛び込む勇気が私にない。

 解決策を思案しながら銀天街を小倉駅方面に歩いていると「トケイ・貴金属」という文字が視界に。激シブの老舗宝飾店である。「トケイ電池交換」の文字も強調されている。店頭にはびっしりと「腕時計バンド」が展示されている。「SALE」というアルファベットと共に。

 藁にも縋る思いで飛びこんだ。職人気質な店主と邂逅。窮状を訴える。店主は嫌な顔をせず対応して下さる。手渡した腕時計バンドの亀裂状態をチェック。何故かドキドキする。

 医者と同じである。すぐに治療してくれれば安堵するが、手に負えないからと他の医者や病院に行けと言われたら絶望する。

 店頭には私のダイバーウォッチ用のゴムバンドはない。すると、どこかから箱が出てきた。その中には、黒いゴムのリストバンドが様々な種類収められていた。

 当然、同じメーカーの純正品でない。しかし、一刻も早く関係を修復したい。タフな夏を伴侶と共に乗り切りたい。

 似たデザインのバンドをいくつも幅をチェックしている。固唾を呑んで私は見守る。やがて、1本のバンドを紹介された。お見合いの気分とはこのことか。

 その彼女(腕時計バンド)に乗り換えることに。するとプロはものの3分程度でバンドを取り換えた。セール中ということでかなり料金も割り引いてくれた。そもそもの定価がいくらか分からないが、嬉しくて実にありがたい。心強かった。

 政令市・北九州の最強商店街、魚町商店街は店主が講師として技術やノウハウをレクチャーする「まちゼミ」を展開し続けている。大都市の最強商店街で「まちゼミ」に取り組んでいるのは、私の乏しい知識では小倉魚町以外存在しない。

 眼前で繰り広げられた「リアルまちゼミ」。巨大資本のチェーン店や大規模飲食店が林立する昨今、老舗のプロの技があまりにも眩しかった。

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大助かり。

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乗換。

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