2011年04月05日

第207夜:今宵、バーで熱いお茶【舞鶴(京都)】(後編)

 東舞鶴商店街連盟の若きエース・T田氏から若手たちは様々な事業の説明を受ける。壮大すぎるプランに圧倒されながらも、大いに刺激を受けている。互いに刺激し合いながら、日々成長を続けるあ〜ほボイルド隊の面々に、私は目を細めた。
 
 ホテルの大浴場にて寒さで凍えた手足を伸ばし、湯船でたっぷりほぐしてから舞鶴の新鮮極まりない魚貝が堪能できる<どじ>へ。東舞鶴商店街連盟の重鎮の皆さまたちとの懇親会だ。
 
 生ビールでガシっと乾杯し、絶品の刺身、お通しとは思えない実力の鯵南蛮漬に痺れていると、鍋が運ばれてきた。
 
 この季節(2011年1月中旬)、アンコウ鍋が最高という。大きな切り身のアンコウがたっぷり。アンコウには七つ道具と称されるものがある。キモ・トモ(ヒレ)・卵巣(ヌノ)・エラ・柳肉(身)・水袋(胃袋)・そして皮。捨てるところのない食材で、冬の鍋には最高級だ。

 店のオリジナルとして、カニの足もたっぷり。アンコウ&カニ鍋。面倒くさがりの私は、カニは甲羅のミソしか食べないのだが、これは強烈に旨かった。一緒に煮込む野菜もトロトロで甘味があり、シメの雑炊も感涙だ。普段は麺派幹部の私だが、この鍋には悔しいが雑炊が合うようだ。
 
 場は大いに盛り上がり、ガンガン熱燗を呑み、喉が渇くと生ビールをゴキュゴキュしているうちに、夜の11時を回った。外はいつの間にか大雪だ。あ〜ほボイルド隊は二手に分かれ、私はバーに向かった。
 
 外はしんしんと雪が降っている。私はラフロイグやジントニックを呑みながら隊員たちと談笑を重ねていた。満員だった店内も、いつの間にか私たち3人しかいない。すると、店の美人オーナーが熱いお茶をテーブルの上に置いて下さった。
 
 嬉しいサービスである。ほっこり啜りながら何気なく時計を見ると、夜中2時前だ。閉店時間を確認すると、本来は夜中1時までらしい。

 その瞬間、我に返った。北近畿とはいえ、舞鶴は京都府内。このお茶は‘ぶぶ漬け’の代わりではなかろうか。本来ならあり得ない、バーで出される熱いお茶。早く出ていけという終了の合図と思われる。喜んで啜っている場合ではないのだ。
 
 そそくさと店を出た。いつの間にか雪が積もっている、懲りない私たちは深夜営業の中華料理店で「龍龍麺」なる、ローメン風のとろみたっぷり麺をズズッと啜った。
 
 体も温まり、シンシンと降り続く雪を浴びながらホテルに向かう。誰にも踏み荒らされていない新雪を踏みしめていく。キュッキュと音がする。街路灯が一面に降り積もった闇夜の雪を照らしている。日本海、冬の舞鶴のド深夜である。

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東舞鶴商店街連盟のみなさまと懇親会
posted by machi at 05:59| Comment(0) | 京都府 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月04日

第206夜:今宵、バーで熱いお茶【舞鶴(京都)】(前編)

 ぶぶ漬。京言葉でお茶漬けを指す。ぶぶ漬を活用した1000年の都・京都独自の必殺技がある。それは「ぶぶ漬どないどすか?」という問いかけだ。

 長居して面倒臭い客に、早く帰ってほしいという意思がオブラートに込められた殺し文句。これを言われた客は自らの振る舞いと状況を瞬時に察し、速やかに席を立たねばならない。言葉を真に受けて喜び、ぶぶ漬を待っていると無粋なヤツとして軽蔑されるそうだ。

 この必殺技とは直接関係ないが、ぶぶ漬とミステリーに目がない食いしん坊な読書家は‘裏京都ミステリーシリーズ’『ぶぶ漬け伝説の謎』(北森鴻 光文社文庫)を御一読あれ。美術、骨董、民俗、歴史、ユーモア、料理。北森氏のミステリーはどれも極上揃い。外れなしである。
 
 京都駅から特急タンゴディスカバリーに乗り、近畿の若手まちづくり屋たちと京都府の北端・舞鶴市に向かう。徐々に車窓が雪景色に変わり、何ともいえない風情がある。
 
 西舞鶴駅で下車し、商店街を見学する。軍港で栄える政治経済の中心・東舞鶴と異なり、西舞鶴は昔ながらの城下町。小京都的な風情が色濃い。
 
 昼食を食べる暇がなかった私は、観光案内所で「肉じゃがパン」を入手。齧りながら歩いた。肉じゃが入りのパン、としかいいようのない味で、パンの中央に埋め込まれたグリーンピースが、肉じゃがっぽさをさらに演出している。
 
 延々と続くアーケード商店街がある。東舞鶴も同様だが、舞鶴市内の商店街は何故かスポーツ用品店が非常に多い。

 大きめの本屋があり、外壁に思いっきり「教科書販売店」と書かれたPOPの真下に、大量のエロ本が販売されている。‘オトナの教科書’という意味だろうか。
 
 老舗の和菓子屋っぽいお店で「いわしサブレ」なるものが販売されている。イワシを魚粉にし、クッキーに練り込んだようだ。形もいわしっぽく象られている。
 
 試食させていただいた。しっかりした歯ごたえで、甘味が強い。イワシの主張は薄いが、どことなく魚の味がする。いつまでも口の中で余韻が残る独特の風味だ。
 
 アーケードを抜けると、北欧の城のようなアーチがそびえる商店街もある。昔ながらの商店街の風情が残る街並に、メルヘンチックなアーチがあまりにもシュールだ。
 
 城壁を眺めながら駅に戻り、東舞鶴駅に向かう。東舞鶴商店街地域の中心・八島商店街を視察。東舞鶴商店街連盟の伊B理事長にご案内していただき、「産直マート」や多目的施設「ほっとハウス」を見学。ここでは舞鶴名産も販売している。

 私は「じゃこあじ」という、煮干しよりも遥かに小さなアジの素揚を購入。これが絶品だった。塩加減、サクサクした食感。食べだしたら止まらなくなった。〔次夜後編〕

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東舞鶴・八島商店街にて
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2011年04月01日

第205夜:牡蠣丼に課せられた三つの掟【舞鶴(京都)】

 舞鶴かき。三方を緑に囲まれた舞鶴湾で育った極上の牡蠣である。舞鶴湾は水揚げ26トン(むき身)に達する、日本屈指の牡蠣産地だ。
 
 新鮮極まりない魚貝に恵まれたA級グルメの街・舞鶴では、冬になると「舞鶴かき丼」を堪能することができる。グルメマップの冬バージョンによると、 舞鶴市内約30軒で牡蠣丼を楽しめるそうだ。ちなみに夏は「岩がき丼」が提供されるという。
 
 「フードマイレージ」という考え方がある。地産地消にこだわることで、輸送の際に排出される二酸化炭素削減を目指す環境にやさしいグルメを指す。舞鶴かき丼にも、フードマイレージの思想が裏打ちされている、とグルメマップに書かれている。
 
 地球環境はもちろん大切だが、まずは何も考えずに絶品牡蠣と対峙し、頭をからっぽにして味わうに限る。貝類に目がない私が最も愛する‘貝族’、それは牡蠣である。

 グルメマップを片手に、数ある掲載されている店舗の中から<いけす料理 卑弥呼>の暖簾を潜った。注文はもちろん「舞鶴かき丼」だ。
 
 舞鶴かき丼を名乗るには、3つの掟が課せられている。

一.「舞鶴産のかき5個以上」と「舞鶴かまぼこ」を使用すること
二.舞鶴産のかきの「プリプリ感」を損なわないこと
三.おいしくて、また食べたくなること
 
 澄まし汁、漬物とともに蓋付きの上品な容器に盛られた牡蠣丼が運ばれてきた。蓋を外した。極上の世界が眼前に広がっている。特許庁認定の地域ブランド「舞鶴かまぼこ」が彩りを添えており、木の葉丼のようなオモムキだ。
 
 さっそく食べ進めた。出汁がたっぷりと白米に絡み、玉子のフワフワした半熟系食感もよい。牡蠣がなくとも十分に旨い。
 
 見るからにプリップリの牡蠣を食べてみた。口の中でプチンとはじけ、濃厚な磯の恵みが溢れてきた。加熱しているのに鮮度が全く失われておらず、瑞々しい。これが、まだ4つ以上入っているのだ。
 
 夢中で食べ進めた。澄まし汁に良く合い、漬物が口をキリっと引き締める。あっという間に食べ終えた。珍しくお茶を啜りながら、様々な牡蠣メニューに思いを馳せる。ちなみに値段は1,000円以下。地産地消だからこそ実現可能な低料金なのだろう。舞鶴かき丼は、ご当地でしか味わえない逸品である。
 
 外は大雪、一面が銀世界。吹雪が強まってきた。舞鶴湾は水墨画のような風情を醸し出す。鶴の代わりに鴨が海面を泳ぎ舞っている。

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舞鶴かき丼、プリップリ。
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