先斗町は10年以上前にカウンター天ぷら屋を満喫して以来。当時これほど外国人はいなかったと記憶する。何かのツアーなのか浴衣の男女も歩いているが、さすがに寒いだろう。ほとんどの店がメニューを外に出し、敷居を下げていることに唖然。しかもほとんどのメニューが英語など多言語併記。インバウンド効果を改めて肌身に実感する。
せっかくなので京都っぽい料理を味わいたい。しかし、豆腐や湯葉一択の店は外した。私はまだそこまで枯れていない。京都のおばんさいが望ましい。生ビールが早く呑みたい。
<天の川>という店に飛び込んだ。マダムと生ビールで乾杯。若竹煮、はんなり京の出し巻き玉子、お豆富しゅうまい、京の牛すじ煮込み九条葱いっぱい……。「京の」と表記するあたりに京都人のこだわりとプライドと自尊心が感じられる。どの料理も思った以上にしっかりとした味付けでビールが進む。地酒「月の桂」も試してみる。
ホタホタと京阪三条まで歩く。日も暮れてきた。マダムオススメの<伏見>というシブい居酒屋の暖簾をくぐる。木金土のわずか週3日営業という。思わず私は感嘆の唸り声を上げた。
魅力あふれる壁一面お品書きとコの字カウンター。ほぼ満席だがちょうどカウンターが2席程度空いている。観光客風は皆無だが、日本語ペラペラの外国人がいるあたりが京都らしい。
なぜ`伏見´なのか。ママがもともと伏見出身らしく、同じく伏見出身のマダムと軽く意気投合している。瓶ビールを頼むと、サッポロラガー(赤ラベル)。いきなりテンションが上がる。
メニューを凝視。200円程度から2000円弱と幅広い。見つけると頼まずに居られない大好物「鰹のたたき」を頼み、他に何を頼もうかと少し言葉を詰まらせていると、パンチ力満点の強烈なママが野太い声で「ひらめの刺身、食べるか〜。オススメやで〜」と語りかけてきた。虚を突かれた私は思わず「じゃ、じゃあ…ひらめも」。ディープ関西のノリである。
店内は老若男女バランスよい配分だが、学生も目立つ。学生が来るにはシブすぎる店である。もっとチェーン居酒屋など安い店に行けばいいのにと思いきや、この店は一品の量が半端なかった。どれも2人前以上ある。山盛りの野菜天ぷらが学生たちに運ばれていく。
「鰹のたたき」は数きれではなく、ひと房はあった。大根おろしと刻み葱が鬼のように盛られている。平目の刺身も分厚いのに、ゆうに1匹分。新鮮でコリコリで見た目も美しい。食べきれるかと思いきや、どちらも2軒目というのにあっという間に完食。
ビールは腹が張りだすので、熱燗に切り替える。菊正宗である。同じ大手でも伏見の酒(黄桜など)でないあたりが自由である。ちなみに、冷やでも燗でもキクマサは私にとって最も料理(特に和食)に合う日本酒である。〔次夜中編〕
逢魔が時の先斗町。
京阪三条のシブすぎ名店<伏見>。
アートというべきお品書き。
圧巻のボリューム。味も圧巻。

