2025年04月16日

第3646夜:長月の錦【京都(京都)】

 台所。一般家庭のみならず、独り暮らしのアパートでも設置されている機能である。料理をする場所だが、洗面所を兼ねている御仁をおられるだろう。風呂を兼ねるツワモノも。

 台所が比喩になる場合がある。いわゆる「〜の台所」である。令和時代において「()九州の台所」といえば旦過市場、そして、「京の台所」といえば400年の歴史を誇る錦市場である。ちなみに旦過が100年、大阪黒門は200年の歴史を誇る。

 私は阪神大震災で壊滅したが、神戸新長田地区「丸は市場」の漬物屋の倅である。1階が店舗で上階に住んでいたので、まさに生まれも育ちも「市場」である。

 商店街と市場は似ているようで異なる。丸は市場が無くなっても、神戸新長田時代の11年間は「丸五市場」、フリー後に「旦過市場」に携わるようになった。北九州では「黄金市場商店街」「門司中央市場」「プラザ祇園」にも御縁を頂いてきた。

 そして旦過と私に縁が出来て10年目の2024年、天下の錦市場へお伺いする機会を得た。単なる観光や買い物でなく、ミッションとして。

 天下の錦である。私ごときヨゴレのまちづくり屋が関わって許される格式でない。調子こいた批評どころか感想すら気軽に口にすべきでない。錦市場に関わるということは、渋谷センター街や心斎橋商店街に関わることと同義である。

 15年前に錦市場を歩いた記憶があるが、定かではない。2010年にフリーになり、京都市内で1度もミッションなど経験がない。

 ミッションの約1か月前の暑さ厳しい盆明け、阪急に乗って烏丸へ。錦市場へ向かった。予習である。事前視察である。こんな自主的経験はフリー15年目初である。

 狭い通路は外国人で溢れかえっている。日本人買い物客を見つける方が難しい。黒門市場もそうだが、十数年前はどうだったのか。

 京都らしく、生鮮よりも加工食品が圧倒的。漬物、練天麩羅、豆腐、ちりめん…。旨そうである。市場のDNAが流れている私はテンションが上がる。

 旦過市場とは商品の売り方、客層、業種構成、何から何まで異なっている。旦過のように、地元優先で観光客を重視しないのに、空き店舗などなくびっしり埋まってお客で賑わう市場の存在は奇跡であることを痛感する。

 勝手に錦偵察から3週間後の9月、錦市場の事務所内で事務長様からいろいろお話を伺う。守秘義務のためこんなバカブログでも活字化は許されないが、貴重な2時間だった。

 どこかでイッパイやりたかったが、京都の地理感が皆無。河原町から阪急特急に乗り込む前、駅売店で「秋味」を購入。カシュッ、グビビ。缶デザインがいかにも京都である。

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今日の台所の入口。

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阪急電車にて。

posted by machi at 07:54| Comment(0) | 京都府 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月09日

第1841夜:高瀬川のホビット荘【京都(京都)】

 高瀬川。何となく文学の香気漂う名前の川である。高瀬川は京都木屋町通り沿いに流れている。めったに京都市内へ足を運ばない私は、高瀬川沿いをぶらつくのが初めてだった。実に風情があって気持ちいい、ある10月の秋晴れの正午前だ。

 木屋町界隈に限らないだろうが、明らかに日本人よりアジア系の賑やかな方々が圧倒的な存在感を放っている。そして、異様なまでのラーメン店の数に圧倒される。1000年の都と様々な食文化が融合して謎の惑星になりつつあるのかもしれない。

 ラーメンを愛してやまない私である。正午前の空腹到来。どこかで啜ろうか。しかし日本語以上に外国語表記が目立つ店ばかりで少し興ざめする。

 ラーメンを断念し、京阪三条方面に向かうとライブハウスが地下にある。めったに京都に近寄らぬ私の目的地は、そのライブハウス。私の新長田時代の部下であり妹のような存在でもあるモグの通算●回目の結婚パーティが開かれたからだ。開園ギリギリに到着。スーツ着ているのは我が新長田チームぐらいで、他は思いッきりラフな服装だ。

 超普段着の司会者が登壇。ようやく始まったか。モグはその数か月前に開かれた我が家の宴会に参加し、婚約発表していた。旦那はお会いしたことがない。どこだ、新郎は。キョロキョロしていると、司会者と思しき御仁が実は思いッきり新郎。思わず絶句する。

 私はたまたまだが1番前の超アリーナ席。乾杯前からいきなり新婦のモグを挟みドリカム編成の3人が三味線演奏。間髪入れず琉球舞踊と思しきお二人の女性がステージへ。その距離があまりにも私と近い。

 モグはテーブルを回りながら愛想振りまいている。旦那、高砂に放置プレイ状態である。信じられぬほど不味いソーセージに顔を顰めながら痛風ゆえハイボールをガバガバ空ける。

 メインセレモニーと思しき鏡開き。新婦モグが選んだらしいぐい飲みに樽酒を注ぐ。木の香りが豊潤な日本酒をガバガバやっていると、唐突にモグが実のお姉さんの伴奏で歌い出した。

 彼女が私の部下になったのは十数年前だが、確か当時は男女デュオで活動中だった。信じられぬほど売れていなかったと記憶するが、仕事はホントに良くできた。私の中では年齢はともかく何人目かの妹のような気分だった。頼りにもしていた。それから紆余曲折たっぷりで今に至ったのだろう。私も年1回以下の頻度で会うかどうかだったが、見た目も全然変わらない。

 そんなことを思い出しながら歌を聞いていると、今度は新郎がビッグバンドを率いて登壇。曲は『ロード・オブ・●・リング』のホビット荘やエ●ヤを思わせるケルティッシュ。誰かが踊りだした。私も特別サービスで立ち上がり、ステップを踏んで踊る。汗ダクダクだ。

 地下鉄で京都へ。同行氏らと呑み直すべく三宮へ。しかし、50分以上ある。売店でロング冠を5本買い新快速に持ち込むが異様に混んでいる。とても座れない。それでもめげずに乾杯。

 それから三宮のビアホール、新長田の串カツ屋、最後は我が自宅。14時間ほど呑んだだろうか。そういえば映画に出てくるホビットたちは酒好きだ。私はホビットのような愛らしさはないが、短躰でクセ毛で毛深くてイタヅラ好きなところだけは似ているはずだ。

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鏡開きの1次会。

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謎の姉妹デュオ。

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2次会。

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3次会。

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4次会。

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末永くお幸せに。
posted by machi at 18:21| Comment(0) | 京都府 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月06日

第1229夜:夜の「伏見」と先斗町【京都(京都)】(後編)

 身も大きなしじみがたっぷりの赤出汁をじっくり味わっていると、ママが他の客に寿司を売りだした。確かに赤出汁を呑んでいると、満腹なのに寿司をツマミたくなる。しかし、一切れが異様にデカすぎる。結局誘惑に負け、平目と鯖と穴子の押しずしをマダムとシェアする。

 穴子は柔らかくてジューシー。鯖は脂が乗っているのに酢の塩梅が絶妙でクドクない。すっきり食べられる。満腹なのに胃に収まっていく。持ち帰りは1本1500円。私は穴子と鯖を持ち帰ることにした。ズシリと重い。他店の倍のサイズ。マダムの分も含め計3本持ち帰ることをママに告げた。ママは私の目を見て一言放った。「愛している」。

 超満腹で店を出る。観光客と外国人で大賑わいの風情あふれる祇園を歩く。私は祇園童貞である。桜が咲き始め月明かりに照らされている。千年の都のソコヂカラを思い知らされる。

 先斗町に戻る。シメはBARで。ウィスキー専門バーは幾度もドアを潜ったが、ウォッカのみに絞ったBAR<NAKANISHI>へ(正式にはロシア文字)。

 カウンターだけのシブイ店内とシブいマスターがキマっている。壁面を埋めるボトルはすべてウォッカ。同程度の銘柄を取り扱っているバーは銀座に1軒あるらしいが、そこは他の酒も置いている。ウォッカだけは日本唯一このお店だけらしい。創業15年以上になるという。

 私はウォッカベースのカクテルは経験あれど、ウォッカのストレートは未だ童貞である。冷凍庫でキンキンに冷えた何かの銘柄をショットで口に運ぶ。……。シャープ。甲類焼酎に近い味だが、チンチンに冷えているからか思ったよりも呑みやすい。

 度数は40度ちょっと。ウィスキーとほぼ同じ。私は居酒屋ではハイボールだが自宅やバーではウィスキーやバーボンはほとんどストレートなので慣れている。クイクイ呑めてしまう。

 他の銘柄を試す。甘く感じられた。焼酎もウィスキーも銘柄で味が全く異なるように、ウォッカも千差万別。これからボトル買いし、自宅で試してみようと誓う。

 ストレートでシュッとした舌をレーズンのパウンドケーキが甘さで包み込む。ウォッカに合うツマミといえる。マダムはウォッカベースのカクテルをスイスイ空けていく。

 年に1度の伊丹市民オペラに毎年出演しているマダム。本番2日前を控え、呑みすぎ喋りすぎ唄い過ぎは禁物。ノドをセーブせねばならない。

 そんなマダムと私はド素人だがオペラ話で談笑していると、マダムがいきなり歌い出した。度胆抜かれた。他に客はいない。マスターもニヤニヤと苦笑している。マスターにマダムが「すいませんね」と軽く謝る。するとマスターはステキなシブイ笑みで「いえいえ、もっと聴いていたかったです」。

 祇園、三条、先斗町。その日の午後まで全く想定していなかった夜の京都散策。中年男女が酒をじっくり楽しめるオトナの街である。

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アジア系観光客が制圧。

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先斗町のウォッカ専門バーにて。
posted by machi at 07:37| Comment(2) | 京都府 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする