これまで見かけた飲食店は<さくら野百貨店>フードコートのマクド●ルド程度。初上陸の北上において、一生で恐らく最初で最後に口に入れる食べ物がマッ●ではあまりにも芸がない。
脳内作戦会議を開いた。口の中も胃の受入体制も完全にコロッケ。駅構内の立喰そばに心惹かれるが、初心貫徹すべしという方針が正式に決定した。
1階フロアを見渡した。食品スーパーゾーンを発見。惣菜コーナーに北上コロッケが隠れているかも知れぬ。奇襲を浴びせるがごとく、ソロリと標的(惣菜)に近づいた。
山盛り陳列のコロッケを発見した。小躍りした私はさっそく捕獲を試みたが、よく確認すると「北海道コロッケ」と書いてある。ズッコケそうになった。恐るべきトラップである。
途方に暮れながら惣菜コーナーを去ろうとした瞬間、視界180度ギリギリにPOPが飛び込んできた。「北上里芋コロッケ」。もしや、北上コロッケのことだろうか。
小走りに近づいた。値段は1ヶ250円。一般の3倍もするコロッケは初めてだ。恐るべし北上コロッケと先制パンチを喰らいながらも少し冷静になると、その定義がよく分かっていないことに気付いた。POPにも説明が書かれていない。
再度スマホを取り出し検索する。いろいろ書かれていたが、要するに里芋を使うこと。また、普通の里芋ではなく「二子里芋」という銘柄のものを使用することが最低限の定義と思われた。それをベースに各店で様々なバリエーションが加わるという。
これが正式な北上コロッケなのか自信を持てなかったが、パックを手に取った。しっかりと冷えている。会計を済ます際、レジのお姉さんに温めることが可能かとお聞きする。サービスカウンターに電子レンジがあることをご教授いただく。
レンジがチンとなった。ぼんやりしていたためか、今度は持てないほど熱々に。ダイヤルを回し過ぎたようだ。私は館外に出た。外は一面の銀世界だ。
冬に屋内よりも屋外で食べた方が絶対に旨い食べ物が、私には2つある。コロッケと豚まんである。どちらも熱々が条件で、フーフーしながら寒い屋外で頬張る楽しさと喜びは筆舌に尽くしがたい魔力がある。
雪の歩道に立ちつくしたまま、私は人生最初でもしかすると最後の北上コロッケ(と思われる)をフハフハしながら齧った……。
確かに里芋独得のねっとりした食感である。粘り強いが、甘さは少ない。1ヶとはいえかなりのボリューム感。空腹も一気に満たされた。気のせいか分からぬが、寒さも和らいだようだ。
2012年に実食したらしい。

