2026年09月23日

第4016夜:鶴翼か魚鱗か【近江八幡(滋賀)】

 鶴翼。魚鱗。読んで字のごとくだが、古代中世の東洋における合戦の戦法である。映画『レッドクリフ』か何かで知った。

 鶴翼は陣形を翼のように広げ、包み込むように敵と対峙する。魚鱗は近接地密集型というか、鱗のような重なりの鉄壁防御から強烈な一点突破型の戦法に転じる。

 兵法など特段詳しくもないが、私はそのように推測している。ちなみに私にとってのガチの兵法書は北方謙三先生の『三国志』『大水滸伝シリーズ』である。

 2000年以上前の兵法は、令和の現代日本にも小売商業や飲食店の分野で通じるものがある。

 ある冬の正午前。近江八幡駅の北口を降り立った。ラーメン店<Dるま八>が聳えている。

 近江八幡はJR駅から半径300mしか知らぬ。南口はシネコン併設の大き目イ●ンや八日市方面へ向かう近江鉄道乗場があり、栄えている雰囲気もあるがよくわからない。北口になるとなおさら。近江八幡は滋賀県屈指のビッグシティであり、経験どころか見たこともどこにあるのかも知らぬが水郷めぐりが確か有名だったはず。

 駅前ロータリーには安土城築城450年と巨大看板が屹立。折しも2026年、大河ドラマの主人公は木下兄弟。安土城は幻の城だが、近江八幡市内にあったのか。

 店内へ。カウンターと奥のテーブル。すべて埋まっている。私の後の客は順番待ち状態だ。カウンターも隣との間隔が充分。清潔感に溢れ、店員さんたちの接客も非常に好もしい。

 ベースは豚骨ラーメンである。ノーマルをベースに塩とんこつ、醤油とんこつがある。まぜそばもあり、とんこつも魚介豚骨や新味などかなり領域展開している雰囲気。肉醤油など傾向が異なるメニューも充実している。

 トッピングメニューも豊富。替玉も1玉からハーフを選べる。麺の硬さも4段階調節で、ニンニクの量も選ぶことができる。

 セットメニューのバリエーションも心強い。焼飯、唐揚&ライス、チャーシュー丼に加え、この店の2大看板っぽい「豚丼」の推しっぷりが熱い。本場・帯広直伝とある。

 学生割引メニューもかなり充実。このバカブログで何度も書き散らしているが、学生や子供にやさしい飲食店はハズレなし。

 メニューを一通り確認し、混乱した。何を軸に攻めればよいかわからない。後から着座した客の迷わない注文、先客に運ばれてくる商品、バラエティに富んでいる。

 とりあえず、一丁目一番地の「とんこつ」に。醤油や塩は省く。シンプルなとんこつの「チャーシューメン」。セットも迷ったうえで何も頼まず。もう少し食べたければ替玉すればよい。

 水を飲みながらぼんやり。お客はひっきりなし。地元住民中心だろうが、JR近江八幡駅を利用したっぽいサラリーマン風も。

 ブツ降臨。麺はとんこつにしては珍しく黄色っぽい。かん水が効いているのか。チャーシューは6枚ほど。キクラゲがない。胡椒を軽くパラリ。まずはスープ…。九州人が全員首を傾げるだろう。これのどこが、豚骨なのか。

 神戸人の私だが15年以上毎月どころか毎週のように九州入りしていた。当然、本場を啜った経験は数え切れない。はっきりと別の味である。しかし、豚骨と思えば違和感あれど、予備知識なく啜れば極めて丁寧で上品かつ美味しいラーメンである。

 メニューには「すっきりやさしい味」とあった。まさに、その通りである。

 この店は「鶴翼」の陣を採用しているのではないか。濃厚でパンチのある料理はラーメン含め、その時は印象深く強烈な個性を楽しむ。中にはその個性においていかれる者もいるだろう。しかし、様々な商品を展開し、味は濃厚でなく比較的あさりで飽きの来ない味。いわゆる頻繁に通うことができる「常食系」。幅広いニーズに対応した「鶴翼の陣」である。

地方都市では飲食店の絶対数が少ないので、老若男女幅広く嗜好に対応することが望まれる。一方、都市部ではワン&オンリーな一点突破型で他店と差別化を図らねば埋没してしまう。ターゲットが先鋭化する。まさに「魚鱗の陣」である。

 鶴翼か、魚鱗か。専門店が採用すべき戦術は、都市の規模によって使い分けるのが正解かもしれない。ただし、地方都市でもSNS進展で鶴翼を成功させている店が決して少なくないのは、2000年の時を積み重ねた人類と戦法の進化である。

 では、AIならどの戦術を採用するのだろうか。

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近江八幡駅前。

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ビジュアルは関西風豚骨?

posted by machi at 08:33| Comment(0) | 滋賀県 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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