チキン南蛮。スーパーの総菜コーナーの定番であり、居酒屋メニューでも確固たる地域を築いている。宮崎名物であることは周知のはずだが知らない人も多いかもしれぬ。それほど日常になじんでいる。タルタルソースフェチ(私)にはタマラナイ逸品である。ただし、いつから全国各地で定番になったのかはよく分からない。
幾分涼しさが出てきたが残暑厳しい秋の正午過ぎ。小倉から直通特急3時間40分ほどで延岡へ。新神戸から小倉までの2時間を足すとその遠さにしみじみする。
延岡訪問3回目にして初めての昼メシ機会が到来した。「した」というより「させた」。普段より1本早い特急(2時間に1本)に乗車。故に早起きした。延岡の夜は過去2回満喫した。居酒屋からのスナックが王道コース。ちなみにほとんどの街で、夜に私の選択権はない。
昼メシは自由である。私に店の選択権がある。チキン南蛮、辛麺あたり昼の王道名物か。
チキン南蛮は宮崎県の中でも延岡市が発祥という。その中でも「元祖」の店が<直ちゃん>。地域住民だけでなく九州全域からもお客が殺到する超人気店と聞く。
ネットで検索すると「30人待ち」「10人待ちでラッキー」など恐るべき盛況っぷりにたじろぐ。場所は我がミッション先でもある山下新天街のすぐそば。駅から徒歩3分ぐらいか。
歩を進める。時間はもっとも混雑する12時半ごろ。ある一角だけ行列があったのですぐにわかった。7人しか並んでいない。私は8人目。かなりラッキーなようだ。待っている間にメニューを決めて店員さんに伝える。接客も抜群に素晴らしい。
メニューは基本的に鶏定食3種。元祖チキン南蛮、日向鶏たたき風、もも焼定食。ライス大盛や小盛、ライスや味噌汁のお代わり、ドリンクなどがマトリックスされる。
10分ほどで店内へ。カウンターの端というベスポジへ案内される。ゆったりと間隔がある。数名の店員さんが見事や役割分担をこなしている。お客は常に途切れない。そして、たまたまかもしれぬが客のチキン南蛮の注文率は100%だった。
我が定食が降臨。味噌汁、ライス(大盛)、ミニ冷奴、床漬、そして、チキンカツ…。
瞳孔が開いた。眼前の光景を咀嚼できぬ。圧倒的な違和感に包まれた。1秒後、その正体に気づいた。タルタルソースがない。別皿にもない。故に「チキンカツ」と認識してしまった。
しめじの味噌汁で心を落ち着ける。この味噌汁も絶品。味噌汁が旨い店の定食にハズレなどあろうはずがない。カツを一切れ箸で掴む。皿の下にたっぷりのタレがキャベツと共に渦巻いている。一切れは大きくて分厚い。
齧る…。サクっとした食感の後に押し寄せる甘酸っぱい旨味の洪水。濃厚なのにさっぱり、柔らかくてジューシー。すかさずライスで追いかける。無双の抱擁が生まれる。
床漬の酸味もフレッシュで口内を最高にリフレッシュ。味噌汁おかわりもメニュー化されているが深く首肯できる。タレにひたされたキャベツ、もはやツマミである。ライスは大盛にして大正解。「元祖」を思う存分堪能した。
お会計の際、レジ横にこの店オリジナルのチキン南蛮のタレが売っていた。560円のペットボトル。スーパーで買ったチキンカツにこのタレをドボドボかけてキャベツを添えれば、限りなく自宅でも類似を楽しめるのではないか。
この後のミッション途中、名物の話題になり、<おぐら>さんという延岡市内で数店舗展開しているチキン南蛮屋の話をお聞きした。その店がタルタルを添えた発祥という。元祖タルタルなし派とタルタル派、25世紀になっても決着がつかないハルマゲドンである。
超ラッキー(らしい)。
「元祖」のレタリングに風格。
シンプルかつ熱いメニュー。
元祖チキン南蛮。県外人(私)には最初チキンカツ定食にしか見えなかったけれど。
自宅で「もどき」を満喫中。

