■令和7年:土用の丑の日(1日目)の3日後
2年ぶりに多治見駅の改札を出る。日本屈指の鰻処ゆえ、名店が鰻のように犇めいている。市のゆるキャラも鰻である。
この数年、2024年を除いて土用の丑あたりの盛夏に3回程度多治見入りすることが私にとって夏の風物詩。訪れるたびにまちなかの開発が進んでいる。勢いを感じさせる。
日本屈指に暑い街・多治見。気温は36度だが体感は40度越えの殺人日射光線が容赦なく降り注ぐ13時。多治見活性化を統べる「たじみDMO」O口最高執行責任者(COO)と打合せも兼ねて昼鰻へ。氏が多忙なら部下を、とリクエストしていたが若大将自らのご出陣である。
19日の土曜が土用の丑で、この日は3連休明けの平日。3連休疲れか、COOが回った2〜3件は定休か臨時休業。そんな中、多治見最強の人気店<うな千>は大賑わい。さすがである。
観光客風でなく、地元民で鰻屋が賑わう点が多治見らしさの一つ。昼のど真ん中を避けたためか、三組程度の順番待ち。12時台なら10組以上は待つだろう。外に居たらトーストされるので中の待合場でCOOと10分ほど談笑していると、順番が来た。広い店内は満席である。
これまで10軒程度は多治見で鰻を満喫してきた。毎シーズンとも<うな千>は必須。パリっとした焼き加減、甘すぎない絶妙もタレ加減も超絶に私好みである。
私は鰻屋では丼でも重でも‘昼’は「特上」と決めている。‘夜’はビールや日本酒をヤリつつ肝焼、う巻、白焼などを満喫。シメに蒲焼(+丼か重)ゆえミニか梅にすることも。当然のごとく「特上丼」を注文。ライスも大盛に。
今更余談だが、松・竹・梅・ミニ・並・上・特上といったランク付けは鰻の「質」に影響しない。単なる「量(サイズ)」の違いだけ。何となく「梅」「並」とかを注文すると卑屈になりがちだが、堂々とふるまえば良い。私はただ鰻をたっぷりと食べたいだけである。
暑い夏に涼しい店内で熱いお茶を飲む風流を楽しみつつ店内を見渡せば、51歳の私と40代半ばのCOOは最年少の部類。多治見のご年配は精力的である。
吸物、香物、珈琲ゼリーを従え特上が降臨。蓋を外す。恋焦がれる少女の瞳になる。山椒をパラリ、追いタレせず、まずはストレートで1切を口へ…。
これぞ国産、老舗の名店。これぞ、多治見。天典、魂魄、清流、灼熱、そして夢実。毛細血管のすべてに旨味が跳ねていく。すかさずライスで追いかける。笑みが止まらない。
吸物で心を落ち着けワシワシ喰らう。さすが特上の大盛、なかなか減らぬ最高の魔法。半分ほど食べ終え、追いタレ。ライスの中からさらに蒲焼が。嬉しいイリュージョンである。
蒲焼の後のコーヒーは格別。故にデザートはコーヒーゼリーなのか。私はこの店以外で口にすること無きデザート。フレッシュのコクが官能的である。〔次夜後編〕
多治見の頂点。
至福の特上。ご飯の中にもうな隠れ。

