「燻煙香箱」。焼ベーコン、焼スモーク豆腐、粗びきソーセージ、燻し鶏つまみ、燻し豚なんこつ…。益子町の「とん太ファミリー」様とのコラボとパッケージにある燻製の駅弁である。
宇都宮は駅弁発祥の街であり駅であるらしい。すべての調整元は北関東を統べる<松廼屋>様。宇都宮駅でこれまでかなりの種類を味わってきたが、入れ替わり激しく出会いは一期一会。迷って逃すと永久の別れになる。
「燻煙香箱」は明らかに新顔。捕獲後、すぐ横の駅コンビニで栃木県内のカップ地酒を数種類捕獲。その夜、懇親会から定宿に戻り、ユニットバスでコリを解してからフタを外した。
これほどの酒ツマ駅弁があるだろうか。特に豚なんこつは刮目の秀逸。散々呑んだ後だが缶チューハイロング缶が瞬殺。宇都宮の地酒「黄ぶな」をチビチビやりつつ夕刊を読みふける。
おかずが無くなった。びっしりと真っ白なライスが広がっている。出張に常備している四次元ポーチからふりかけを取りだした。
翌朝。6年間の及んだ栃木県ミッションを終え、帰神する。今度はいつ宇都宮駅を利用するか分からない。隣接する鹿沼市に我が関東支店(串カツJu-So)あれど、JR宇都宮駅を経由するか分からない。宇都宮駅の利用が我が生涯最後の朝になるかもしれない。
駅弁売場へ。前日は夕方だったのでいくつか売切れていた。10時前だったのでフルラインナップ。実食済駅弁はスルーし、未食をチェック…。異様なまでの存在感を別の意味で放っている作品があった。「みぶのサビかん」。駅弁秋の陣北関東エリア賞受賞駅弁とある。
この名称は栃木県に馴染なければ意味不明だろう。翻訳すると「壬生町のワサビ入りかんぴょう巻」の略。寿司ネタの中でも屈指の地味さを誇る「かんぴょう巻」一択の駅弁だった。
国産かんぴょうの98%は栃木県で生産されているという。18世紀初頭、壬生藩主のお殿様が近江より種子を取り寄せたことで広まったという。知らなかったが、「ゆうがお」というウリ科の実をヒモ状に裂いて夏の日差しで乾燥させたものらしい。ちなみに全国で出回っているかんぴょうのほとんどが中国産だろう。栃木県のかんぴょうは高価である。
かんぴょうといえば宇都宮市と小山市に挟まれている下野市一択と思っていた。下野市のマスコットキャラはかんぴょうだし、石橋駅前にはかんぴょうと書かれた看板が並んでいる。
岐路の新幹線。宇都宮のカップ酒をチビチビやりながらサビカン(わさび入りかんぴょう細巻)をつまむ。キャッチコピー通り「甘さの中にツンとしたワサビの辛み」そのまんまの味。
地味で清貧だが、異様なまでの満足感がある。「〆のひと皿」として推奨しているらしい。値段は1050円。スーパーなら300円以下だろうがそれを上回る駅弁ならではの演出が眩しい。
私の寿司屋の〆ネタは煮穴子か穴きゅう巻、玉子が多い。これからかんぴょう巻にしてみるか。ただしワサビを多めに加えてもらった「サビかん」で。

