<神鷹>。明石市内の酒飲みでその存在を知らない者、入ったことのない者はおらぬのではないかと思わせるほどの超有名店であり、掛け値なしの名店である。酒の神の使いである。
明石駅前が再開発される前、明石に立ち寄ると必ずこの店でイッパイやっていた。私が明石で愛してやまない2台スターが中華そば&焼きそばオンリーの<江洋軒>と<神鷹>である。
鳥取からスーパーはくとで三ノ宮まで直通。私はフラリと明石駅で途中下車し<神鷹>を目指した。その8日前、魚の棚商店街役員様との酒席の機会に恵まれた際は<神鷹>を訪れるタイミングが無かった。忘れ物を受け取りに行く感覚で駅前再開発ビルへ。
2店舗ある神鷹のうち<串かつ神鷹>の引き戸を開ける。こちらの方が幾分広そうで、スーツケースがあまり邪魔にならない気がしたから。真横に置いても問題ないカウンターの端が開いていた。ベスポジ。そもそも<神鷹>にスッと入れること自体が私の感覚では珍しい。
神鷹は定番かつ王道であり、旬を最大限取り入れた絶品の品々がリーズナブル。若い頃、この店の「カチワリ赤ワイン」にハマって、今でも激安ワインをジョッキと氷で楽しんでいる。
瓶ビールで一気に喉を開く。お通しがないことも自信の表れ。1品目は「菜の花おひたし」。この日は確か奈良のお水取りが確か終わった日。翌日から暖かくなり春を感じる気がするのは関西に住む者の季節感。爽やかでフレッシュな苦味が体を喜ばせる。
瓶ビールを追加し。2品目は<とり唐揚>。嬉しいことにチューリップが3本。齧りつく。ビールを流し込む。至福である。スパイス塩も持ち帰りたい旨さである。
瓶ビール2本後は明石の地酒「神鷹」冷酒(300ml)。神鷹の蔵元の直営なのだろうか。合わせる3品目は「蛍烏賊の酢味噌」。新鮮極まりないプリプリ、ワタの甘味とコクが酢味噌に絡み、辛口の冷酒が洗い流す。
4品目は串焼を3本頼む。「てっちゃん」「ももニンニク」「赤ひも」。カウンターには一味と七味が両方ある細かい気配り。私は一味派だが、この日は七味に。山椒も軽く振りかける。どれも絶品。1本づつにしたが、どれも3本づつにすべきだった。
冷酒がまだ残っている。同時フィニッシュさせるには、もう少しツマミたい。串カツやおでん、出汁巻など定番メニューも大充実だが、私は独りゆえ、どの店でもこの日のオススメメニューから戦略をほぼ組み立てる。独りの気軽さと、いろいろ食べきれぬ切なさの同居である。
5品目は「あじ南蛮漬」。甘みがあまりない酢に香ばしく焼かれた小鯵がヒタヒタ。玉葱と一緒に丸かじり。ゴリゴリの中に感じる淡泊な上品。冷酒が合う。
6品目をシメに。「かぼちゃサラダ」である。濃厚な甘みは、最早スィーツ。冷酒とも意外に合う。新たな居酒屋スィーツというか、締めの誕生である。
お客がひっきりなしに回転する。雨が降っているが、駅は目の前。最近、独り呑みの機会が激減した。そろそろ復活させようか。若い頃とは違った楽しみ方を学べそうである。
明石駅南口再開発ビル1階。
お通しが菜の花。春爛漫。
唐揚でなくチューリップが嬉しい。
市販では体感できぬプロの妙技。
一と七が両方なのも芸が細かい。
店のオリジナル(たぶん)。
酒が進む。
さらに酒が進む。
南蛮漬で舌を引き締める。
もはやデザート。

