駅長対抗ご当地「丼」総選挙。JR九州管内の主要駅約30の駅長が「うまい店」として認定した店の丼を猛プッシュし、予選投票を経て門司港駅前にて決勝イベントが繰り広げられる、燃え滾るように熱く濃いイベントである。
残暑厳しい夕暮れ。9カ月ぶりに門司港へ向かう途中の小倉駅改札内で総選挙ポスターが視界に。北九州市内では門司港駅長、小倉駅長、西小倉駅長、戸畑駅長、黒崎駅長、折尾駅長の自信に満ち溢れた近影と、各駅長が激推しする丼の画像が。
ラーメン、かつ丼、カツカレーが3大昼メシな私にとって、丼を頂く際は95%かつ丼。4%鰻丼で、その他もろもろが1%か。この中で小倉駅長の推す丼に見覚えがあった。そして小倉駅では、小倉駅長激推し丼がソロで巨大ポスターに紹介されていた。
「旦過市場 黒兵衛のとりかつ丼」。
駅長の吹き出しで「サクサクぷりぷりコスパ最高」とある。そして、その説明書きも。私自身、このかつ丼を幾度となく味わってきた。駅長の激推しに激しく首肯する。
小倉駅構内は飲食店がたっぷりで、丼を扱っている店も決して少なくないだろう。しかし、小倉駅から離れた旦過市場を推すあたり、真実、正義、愛情が感じられる。JRグループのテナントである小倉駅構内を推したい気持ちを凌駕する、黒兵衛の実力といえる。
それから1カ月後。午後イチで旦過市場に隣接する商工貿易会館で打合せし、いったん馬借の定宿へ向かう途中に<黒兵衛>に近接する。時間は14時半前。空いている時間帯かも。
15時から定宿の部屋でたっぷり2時間オンライン会議が控えており、チェックインやPCセッティングを考えると店内で喰らう時間はない。テイクアウトの腹を決めた。
店内では数人の客が駅町激推しを喰らいついている。普通か大盛で迷った私の口から「ダブル」という言葉が漏れた。洗面器サイズである。50歳になってから初のダブル。オトコの野生を取り戻すには、ダブル完食しかない。
待っている間、店外へ。旦過は再整備に向け旧中央市場を解体工事中。その仮囲いがせり出している。仮囲いに「わたしの旦過市場」という市民から寄せられたメッセージや思い出エピソードが貼りだされている。
微笑ましく目を細めて読んでいると、丼が出来上がったようだ。ずしりと重い。
定宿に持ち帰り、オンライン会議を終えてフタを開けたのは2時間後。まだ十分に温かいという魔法。紅生姜と七味がたっぷり小袋入りで添えられている。
ワシワシと喰らう。無我夢中。旨い。泣けてくる。さすがダブル、後半キツくなったが一気呵成で完食。オトコの野生を取り戻した。
それから1時間15分後、旦過市場会議で黒兵衛のオーナーと隣の席になった。駅長激推しイベントの話の手ごたえを持ちかけた。優勝できそう?という私の問いに、オーナーは「11位を狙っている」と答えた。控えめというより、よく分からなかった。
後ほど知ったが、予選で10位以内になると門司港駅前の決勝イベントに進む。ただ、オーナーはあまりにも忙しすぎること、趣味のキャンプに行けなくなること、異様に経費が掛かることなどから決勝進出の一歩手前を狙っていたようである。
熱いぜ、JR九州。
北九州市内の駅長の推し丼。
小倉駅長様は旦過市場のとりかつ丼。激しく首肯。
小倉駅長の推し店。
工事中の仮囲いに掲示された心温まる応援メッセージ。
推し丼をテイクアウト。