極太2本。初秋の夜、北九州小倉魚町の超人気居酒屋で、旦過市場の八百屋の若大将から頂いた。丸太でもウィンナーでも、タフガイカップルのアレでもない。松茸である。
数年前も若大将から頂いた。お店で椎茸を買ったらお土産にと松茸を頂いた。度肝抜かれた。私に返せるものはないので、ただただ恐縮するばかり。
知らなかったが、松茸は冷蔵しておかねばヌメリがでるそうだ。帰宅は2日後。その日は定宿の冷蔵庫に保管し、翌日はミッション先まで5時間の移動を除いてホテルチェックイン後、間髪入れずに冷蔵庫へ。翌朝、取り忘れないよう冷蔵庫に「マツタケ!」と付箋を貼った。
帰宅途上、スーパーに立ち寄った。マツタケ晩酌を彩るためである。ただし、私は料理らしい料理ができない。せっかくの極太を活かしきれず台無しにする可能性高しだが、挑戦だ。
カゴにスダチ、鶏ささみ肉、三つ葉、黒毛和牛肩ロース薄切り(秋田県産)をぶち込んだ。値段度外視である。
アヅマ松茸料理の1品目。極太2本のうち1本を何とか斬り(細切り?)。ミニフライパンを電熱コイルで熱しながら、数本を軽く炙る。中まで火が通り切らないうちに皿に移す。スダチをキュっと絞る。塩を添える。「松茸の素焼き」である。
口に運ぶ…。秋が弾けた。シンプルゆえの奥深い妙味。たった数切れだが、割烹ならいくらするか。スダチが秋を盛り立てる。すかさず、冷しておいた出雲の地酒で追いかける。
2品目は冒険。同じようにフライパンで軽く炙り、バターなど常備していないのでマーガリンを垂らす。醤油も少し。「松茸のバター風味醤油焼」である。
素焼きが清楚な和装美人なら、バター醤油は妖艶な花魁。まさに店のナンバーワンである花魁な高貴と官能が抱擁するエロティックな味わいが広がる。
3品目は数年前に同じく頂いた際に試してハマった必殺業。賞味期限が7年前に切れていた茅乃舎の出汁を溶かし、ミニヤカンに注ぐ。松茸と鶏ささみ、三つ葉を入れ軽く沸騰させる。
ヤカンの出汁を猪口に注ぎ、スダチをキュッと絞って口に含む。少し余韻を楽しんだ後、冷えた地酒で追いかける。「松茸のなんちゃって土瓶蒸し」である。
出汁は薄めが良い。松茸の旨味が際立つから。汁を肴に酒を呑む醍醐味。ハモや銀杏があればより店っぽいが、鶏ささみでも抜群。もも肉でなくささみ肉が、我がこだわりである。
最後の4品目。極太の2本目を刻む。フライパンに黒毛和牛を広げ、松茸を添える。すき焼きのタレを回しかける。少しだけ火が通り、まだ赤身が残っている状態で溶き卵に浸し、口へ…。「松茸と黒毛和牛のすき焼き」である。
言わずもがなの口福。秋が膨らむ。笑みがとまらない。小倉方面に顔を向け、若大将Mコト氏に深く感謝した。
感謝の洪水。
(業務)スーパーで買い出し。
1品目はシンプルに焼いてスダチと塩で。
2品目は、バターがないのでマーガリン醤油で。
3品目はなんちゃって土瓶蒸し。最高。
具は松茸と和牛だけのすき焼き。贅沢の極み。
1本目は山口県の地酒。
2本目は鳥取県の地酒。
3本目は島根県の地酒。