3度目の正直。使い古された常套句であり、使い古されるほど的を得た心理でもある。
日中の蒸し暑さが幾分和らいだ神々の聖地・出雲の夜。濃厚なミッションを終え、同世代の同行氏と2人で中町商店街の<ミートショップSイトウ>へ。
21時半ラストオーダーゆえ、毎回30分勝負を強いられるものの、とんでもない実力のド名店である。大人気も納得。肉屋直営の居酒屋と推測される。何を頼んでも期待を絶対に外さない。むしろ、かなり上回ってくる。
2カ月前にこの店にハマり再訪。生の後はメガレモンサワーの杯を重ねつつセンマイ刺、ハムカツ、チキン南蛮、ハラミ焼、カルビ焼…。肉の神が乱舞する。
滞在時間45分ほどで店を出る。お腹は満たされたが、もう少し呑みたい。同行氏に「かる〜く行きませんか?」。氏は「かる〜くなら」と2人で山陰屈指の歓楽街・代官町へ。
4度目の出雲の夜である。そのうち2回は予備知識なく代官町のスナックにイチゲンで飛び込んでみた。なぜか2回ともママでなくマスター。1回目は若いムキムキの青年、2回目はコワモテのオヤジだった。
3度目の正直である。今回も予備知識ゼロ。私の衰えた嗅覚に奮起を促す。ただ、あまり店探しに時間を掛けたくない。
ビルの奥や上層階でなく路面にスナック風の店があった。何となく賑わいオーラがある。天岩戸を開けるがごとくドアを引く。店内はボックスがほぼ埋まり、カウンターが数席あいている。カウンターの女性と目があった。満面の笑みで「どうぞ〜いらっしゃいませ〜」。
カウンターに陣取る。イチゲンであることを若くて美人で元気満点のママに伝える。ママの横には若い女性バイト。そして、厨房から惚れ惚れするほどムッキムキの毘沙門天が出てきた。ママの旦那さんという。
とりあえずハイボールを作ってもらい、同行氏と乾杯。店のシステムをお聞きする。耳を疑った。2時間呑み放題で3000円という。充分に良心的だが、特筆すべきでもない。しかし、女性のドリンクも無料に度肝抜かれた。
通常、女性に飲み物を勧めると平均で1杯(1本)1000円。呑み放題で安くても、入れ替わるレディたちに都度飲み物を勧めると知らぬ間に会計が跳ね上がる。ふと、近江守山の「No!と言える男」のことを思い出した。
申し訳ない気分になり、角瓶をボトルキープさせて頂く。日本中のスナックでボトルを入れるクセがある私。駄犬のマーキングと変わらぬが、少なくとも年明けまでは月1〜2回ペースで出雲の夜を過ごす。独り無聊な夜に駆け込むこともできる。
お客がひっきりなしに入ってくる。そして、皆さん若い。この料金とシステムなら安居酒屋より遥かにお得だ。
明るく気遣いも素晴らしいママや口数は少ないが多芸で笑みが素敵なマスターと談笑していると、2時間を経過した。かる〜く、のはずががっつりと重く。店を出ようとしたらママがゆっくりしてとおっしゃる。2時間は「原則」であり、満席でなければ時間無制限らしい。
この店で2つ目の度肝を抜かれた後、おでんを勧められた。マスターは料理人でもあるらしい。おでんを見繕って頂く。海老が迫力である。出汁が染みて絶品である。そして、このおでんは無料サービスだった。
おでんどころか、フードメニューはすべて無料という。釣りもされるマスターの釣りたても味わえる夜もあるそうだ。この夜、3つ目の度肝を抜かれた。楽園の名は<J●●>である。