『幸ふく弁当』。調整元が「徳山ふくセンター」様であることが示すように、瀬戸内臨海屈指の工業都市・周南市の新幹線のぞみ号停車駅・徳山駅の一択駅弁である。
2013年にただ知人と呑むためだけに立ち寄ってから11年後、ミッションとして徳山改め周南に月1回ペースで訪れるように。
初回と2回目は正午過ぎに徳山駅に着いた。改札内の売店をチェックすると、正午段階で『幸ふく弁当』は完売の札が。POP写真もないため、御姿を想像するしかなかった。
そして3回目の訪問となった9月下旬。この日は朝10時からミッション故、9時半過ぎに徳山駅へ。改札を出る前にコンビニ内の駅弁売場へ…。幻の駅弁は冷蔵ケースの中で泳いでいた。それも、1匹でなかった。
ガシっと手を突っ込み、幻をつかみ取り。鼻息荒くレジへ持ち込んだ。
徳山駅前再開発ビル内の会議室で10時に始まったミッション、終了は15時半。前回もだが一歩も地上に出ることなく、大地を踏むことなく駅隣接施設だけで過ごし、帰路に就く。
新神戸駅まで直行のレアなのぞみ号が20分後に入線する。座席をネットで確保し、売店で発泡酒ロング缶と山口県東部の中心市・岩国市の地酒を買う。ちなみに周南は中部らしい。
岡山のホテルで無料配布されていた山陽新聞を読みながら発泡酒をカシュッ。徳山から新神戸までぴったり90分。広島を越えたあたりで、駅弁と地酒をテーブルに並べた。
山口では「ふぐ」ではなく「ふく」と表記する。幸ふく弁当、2段重である。税込1000円は令和6年現在、駅弁全体としても圧倒的な安値の部類に入るだろう。
上段はびっしりのおかず、下段は恐らくふく出汁の炊き込み飯。箸袋に記された「ふくの話」も味わい深い。超要約すると、ふくの故郷は下関などではなく徳山であるという。
地酒にはプラカップの猪口が付いている。ラッパ呑みも野趣だが、猪口に注ぐと心にゆとりが生まれる。気分は『光る君』である(第1話しか観ておりませんが)。
舌を地酒で湿らせて、上段のおかずと対峙する。ふく南蛮漬、貝柱フライ、肉味噌さつま揚、ウィンナー、鯖塩焼、小松菜としらすの煮びたし、煮物(筍・蒟蒻・椎茸・蕗)、キンピラ…。
圧倒的な幕の内であり、酒のサカナである。どれも上品なのに味もしっかりしており、酒がススム。肉味噌さつま揚、齧ると味噌が飛び出してきた。ふくは「鉄砲」の異名がある。まさか、隠し鉄砲だったのか。
たきこみ飯は言わずもがなの至福。冷めてもジューシーで旨い。この幻の駅弁、1500円でも安い。ただし、午前中しか手に入らぬだろう。帰りの15時半、念のために水槽(冷蔵ケース)を覗いてみたが、影も形も一匹もいなかった。
新幹線改札内にしか生息していないと推測。
午前はたっぷりと回遊。
午後は滅失。
まずはノドを開く。
シアワセの駅弁。
山口の地酒。猪口カップが嬉しい。
眼福。
前夜の残りをスィーツに。
(付記)
それから1か月後、いきなり300円ほど値上げしていた。それでも十分に安いと感じさせる逸品である。今までが安すぎたのである。

