京料理。和のテイスト濃厚で上品かつ高級なイメージがある。私は京都にめったに足を運ばないので「京料理」と打ち出した料理(懐石など)を食した記憶がない。たぶん口にしたこともない。
京料理どころか「京」に縁遠い私だが、2024年残暑厳しい午後、京(京都)の台所・錦市場でミッションがあった。天下の錦である。我がまちづくり屋人生屈指の難易度であり、緊張感だった。
結果はともかく、ミッションを終えた。時間は17時前。安堵ゆえイッパイやりたいが、河原町や烏丸周辺の呑み屋情報が私には全く分からない。とりあえず神戸に戻ることに。
河原町は快晴だったが、三宮に到着すると引くほどのどしゃ降り。呑みに行きたいが、帰宅するか…。いや、どうしてもソトノミしたい。
駅前のドラッグストアで傘を買い北上する。向かった先は<亀遊>。絶品が楽しめるカウンター割烹である。ひとり故か珍しく予約せず入れた。店内は同伴風カップル2組が楽しんでいる。
生をほぼ一気飲み。手の込んだお通し3種でシアワセに浸る。いつもなら生数杯の後は地酒。この日は2杯目からハイボールに。大将手作りの「からすみ」が旨すぎる。そして、ハイボールに凄まじく合う。無限に酒が進む痛風の大敵である。
京の、じゃなく今日のオススメを観る。目移りする。鱧があった。鱧と言えば京都。京都以外でも割と食べる機会が増えているが、京料理の代表魚でもある(と思う)。
鱧と蓮根を天ぷらで。単品づつ頼むと量が多いのでハーフ&ハーフ。蓮根も京野菜っぽい雰囲気が何故かある。産地ではないだろうけど。
地酒に切り替えた。「酔鯨」の純米吟醸『秋あがり』。秋あがりという言葉を初めて知ったが、秋に相応しい。
メニューでひときわ存在をきらめかせているのが「松茸」。今日はご褒美呑み。思い切って贅沢するか。グデングデンに泥酔して記憶のないまま場末のスナックでボトルを下ろすよりは安いだろう。「土瓶蒸し」を選択。私、土瓶蒸しが最強に好きである。年に1度も食べられないが。
スダチを添えて降臨。フタを外す。松茸、鱧、海老。キュッと少しだけ絞り、再びフタをする。猪口に出汁を注ぎ、口に運ぶ…千年の都が広がった。鱧の終わりと松茸の走り、そして秋のすだち。1年間のわずかの期間しか味わえない奇跡の三重奏。
大金持ちは出汁だけ楽しみ具は喰わないそうだが、ヨゴレまちづくり屋の私は出汁を楽しみつくした後の具も楽しむ。いわゆる「出がらし」だが、これほど贅沢な出がらしもない。
何かのスィッチが入った。松茸の天ぷらも追加。1本丸々である。興奮が抑えきれない。目の前でイチから松茸を捌き、衣を付けて揚げるマスターの手さばき、永遠に見ていられる。
秋の山の神が降臨。人生初の1本まるまる天ぷら…。口内で、秋が爆発した。
先付三品。これだけでも酒が進む。
愛してやまない自家製からすみ。
鱧と蓮根の天麩羅(ハーフ&ハーフ)。
秋あがり。
土瓶蒸し降臨。
眼福。
秋の王者を一本まるごと。スダチを添えて。

