おいちゃん。北九州弁、それも豊前中心かもしれない方言である。近い標準語は「おじちゃん」「おじさん」「おっさん」か。ただし「おいちゃん」には好意が込められている気がする。好意の濃密さの順においちゃん→おじちゃん→おじさん→おっさん→ジジイの順か。
女性に対する「おいちゃん」に対になる方言はないらしい。旦過市場のT木マネージャーとそんな話をしている時、彼女は「こばちゃん」はどうかと提案。思わず首肯した。定着するには数十年かかるかもしれぬが。
そんな「こばちゃん」なT木女史と小倉で呑む機会が。翌朝に北Q州商工会議所でミッションのための前泊。超久々にミッションも決まった呑み会もない小倉の梅雨の夜である。
試しに飛び込んでみたのが魚町サンロード2階の焼肉屋。卓上ハイボールを注ぎ呑み放題。ハイボールだけなら10分100円。いくらでも延長できるらしい。
生ビールも飲みたいので10分200円弱の呑み放題に。肉の種類も豊富。どれも安い。安かろう不味かろうは激安焼肉屋にたまにあるが、この店は違った。肉もまあ旨い。ローストビーフユッケや白センマイ刺も秀逸。センマイ刺の「白」は珍しく、これだけでテンション上がる。
1時間ほど飲み食いしたところで2軒目の堺町方面へ向かう。北Q州商工会議所のM渡部長と北九州の台所・旦過市場老舗惣菜店<今井商店>I井氏とのサシ呑み会に乱入するために。
4人で乾杯。私は焼肉などで空腹感ゼロゆえ、生の後はSントリーオールドをガバガバ。
M渡氏とI井氏は仲が良いらしく、たまにサシ呑みしているという。私も両氏とは数え切れぬほど酒席を共にしてきた。
I井氏は依然は週に3日ほどしか店を開けていなかったが、今は5日も開けているという。御年たしか70歳ぐらいのI井氏は後継者を育成中らしく、事業承継も進んでいる。
競馬やマージャン好きのI井氏は人気者。穏やかな笑顔とキップの良さが魅力満点。お店はいつも客が殺到し、惣菜は午後にはほぼ売り切れている。
市場組合員に、支援機関に、お客に、呑み屋のマスターやママにも好かれている、まさに「癒しのおいちゃん」。たまに総菜を買おうとしたらお金を受け取ろうとしないので、逆に店に行きにくい。
そんな今Iのおいちゃん、総菜屋を継ぐ前は大手設計事務所に勤めていたバリバリの設計士。当然に建築や設備、再開発にプロの視点で詳しい。私などより数億倍も。
それからさらに2軒ハシゴした。最後の<ムーラン>で啜るそうめんが旨すぎる。誰からも愛し愛される今Iのおいちゃん。市場のマージャン仲間はたまにさらに踏み込んだ愛情で「ジジイ」と呼んでいるのを耳にしたこともある。
そのことを指摘したら、氏は否定した。
「ジジィじゃあない。クソジジィだ」
1軒目の白センマイ刺。
1軒目の卓上ハイボールタワー。
2軒目で合流。
3軒目でステキな笑顔のI井氏。
4軒目のムーランへ。
鯨飲。
爽やかなシメ。