乱舞。蛍、阿波踊り、よさこい…。世に乱舞は数あれど、春日部市武里地区で乱舞するのは煮干」である。それも朝7時から夜9時まで。そして、煮干の乱舞が最も光り輝くステージはどこか。清流でも路上でも広場でもない。ラーメンである。
煮干が思う存分乱舞する舞台(ラーメン店)が東武武里駅西口に屹立。ロータリー沿いでなく1本奥まった場所ゆえ、地元民以外はたまたま出くわすことは珍しいかも。この店の存在は喫煙スペースで知った。真隣だったから。
まだまだ肌寒い3月の夜。神戸から武里へ。ミッション先への準備集合時間まで15分の余裕があった。この日は朝から何も腹に入れておらず空腹を極めていた。
時間的に立ち蕎麦がベストだが、私の知る限り武里にはない。煙草で一服するか…。喫煙スペースに着いた瞬間、煮干の乱舞場が視界に。私のお尻が青白く光りはじめた。
フラフラと清潔感溢れる白暖簾をくぐった。店内はカウンター数席。若いサラリーマンが一心不乱に啜っている。
券売機スタイルである。淡麗と特濃、醤油と塩のマトリックス。最もオススメっぽい左上が淡麗肉中華ソバ(醤油)。値段は1600円…。一瞬戸惑った。トッピングを足しまくっていつの間にか1500円近くなったことはあったが、最初から1600円ボタンはかなりのレアだ。
その下が「特濃肉中華ソバ(醤油)」で同一値段。かけソバが1100円、中華ソバが1300円。肉中華はいわゆるチャーシューメンなのだろう。
初ダイブ店はオススメに従うが天国への鉄則。しかし、淡麗と特濃で同値段なら「特濃」である。角のハイボール缶でも同じ値段なら度数濃い目を手にしてしまう。悲しいサガである。
待つ間、様々なPOPに目を通す。POPというより、注意書きである。かなり細々としたルールが存在するようだ。ただ、その通りと首肯する理も多数。
目立たない箇所に「本日の煮干」が紹介されていた。特濃が「長崎エソ」「境港平子」「長崎ざっぱ」「三重グレー」。なんと4種もブレンドされている。淡麗は「千葉背黒」「伊吹いりこ」「長崎エソ」「島根アジ」「高知背黒」の5種。いりこにこんなに種類があったのか。
度肝抜かれていると、特濃肉中華が眼前に。焼豚も1種類でない。刻み玉葱とメンマがトッピング。そして、観るからに濃厚なスープ。麺は白地のストレート、
まずはスープ…。濃いなんてもんじゃない。ドロドロ。そこに複雑な旨味が幾重も層を形成。舌の上で煮干が乱舞。情熱的である。麺と絡めるとスパゲティ状態。ドロレスである。
世に煮干ラーメン数あれど、ラスボス級の濃厚さ。私のような煮干ラーメンフェチは一啜必須。店を出て紫煙を上げていると、若いカップルが嬉しそうに店内へ入って行った。
営業時間は朝7時から。力強すぎる乱舞場である。
濃厚の極み。
朝7時は力強い。